鉛筆画・デッサン初心者のための風景描画ガイド!

デッサン

 どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

 さて、鉛筆を手に、白いスケッチブックや紙上に広がる風景を想像してみてください。大きな雲が空を覆い、その下には樹木や道、美しい建造物、そしてキラキラと光る水面が広がっています。

 しかし、それをどのように描けばいいのか分からない、という人も多いのではないでしょうか?この記事では、鉛筆画・デッサンの初心者でも簡単に風景を描けるような、基本的なポイントを紹介していきます。

 また、空気遠近法や透視図の基礎、そして具体的なモチーフの表現方法など、幅広くカバーしています。一歩一歩、丁寧に解説していきますので、あなたも鉛筆画・デッサンでの風景描写に自信を持って取り組めるようになるでしょう。

 それでは、早速どうぞ!

基本技術の習得

        国展入選作品 誕生シリーズ 2012 F130 中山眞治

 鉛筆画やデッサンの美しさは、その基本に宿ります。細かなテクニックや高度な技術を学ぶ前に、まずは基本技術の習得が不可欠です。ここでは、風景描画の初心者がマスターすべき基本技術について掘り下げます。

鉛筆の持ち方から線の引き方: デッサンの基礎

        国展入選作品 誕生シリーズ 2015 F130 中山眞治

最初の段階では「画家の持ち方」で楽に描いていきましょう

 鉛筆の持ち方は、デッサンの質に大きく影響を与えます。鉛筆の握り方や、線を描く際の鉛筆の角度は、線の太さや強さを変化させることができます。

 初心者のうちに、適切な持ち方を意識して練習することで、より描線をコントロールできるようになるでしょう。線の質感や、その強さや弱さは、風景の奥行きや質感を表現する際に極めて重要となります。

 まず一番初めに画面に取り組む場合には、鉛筆を人指し指・中指・親指で軽くつまむように軽く持ち、描く対象の輪郭をリラックスして、イスに深く掛けて足を組まずに制作を始めましょう、この姿勢であれば、長く描いてもそれほど疲れが出ません。

 基本は、楽な気持ちで、一切の束縛から解放されたイメージで、対象となるモチーフの輪郭を上記のような「画家の持ち方」で描いていきましょう。この時には、最初からこれだと言える輪郭線はないはずなので、たくさんの輪郭線を伴った全体のデッサンを終了させます。

トーンを入れていく順序は一番濃い色のところから始めましょう

 そして、全体のバランス及び割合や比率を再度確認しましょう。この時点での全体の確認は非常に大切です。なぜならば、描き進んでしまってから、途中で「つじつまの合わない」場面に直面してしまうことがあるからです。

 次には、このたくさん描いた線の中でも、「これだ」と言える線があるはずですから、それ以外の線は、練り消しゴムを練って先端を「マイナスドライバー」のような形状にして不要な線を整理しましょう。

 これ以降の描き込みには、文字を描く際の握り方に変えて、全体の細部へ描き込みを進めていきましょう。そして、全体への描き込みがある程度できた時点での描き方については、あなたが画面に収めようとしている全体の中の一番濃い色のところから描き始めましょう。

 そして、その次に描くところは、1段明るいところというように、徐々に明るいところを描いていきます。全体的にトーンを入れ終わりましたら、最初に描き込んだ一番濃かったところをもう一段濃くしましょう。一番明るいところには、練り消しゴムで拭き取りましょう。

階調(グラデーション)と陰影: 鉛筆画の奥行きの付け方

 グラデーションは、色の変化や明暗を滑らかに表現する技術で、鉛筆画のリアルな描写や奥行きを強調するための重要な要素です。

 線を重ねることで深さを増しますが、それ以外にも鉛筆の硬さを変えて質感を変えるなどの方法もあります。また、陰影は物体の形や光の方向を明確に示すものであり、陰影を効果的に使用することで、平面的な作品が立体的に変化し、生命が宿ります。

 これらの基本技術は、風景描写をする際の土台となるものであり、初心者はもちろん、経験者も定期的にこれらの基礎を見直し練習することで、さらなるスキルアップができます。

風景の主要要素をキャッチ

 風景描写において、その魅力は細部の表現にあります。スケッチブックや紙上には、さまざまな要素が組み合わさって豊かな風景が広がります。

 そして、その主要な要素を的確に捉え、描写することで、見る人に感動を与えることができます。ここでは、風景の主要要素をキャッチし、それをいかに表現するかのポイントに迫ります。

空と雲のデッサン: 大空の広がりを感じさせる方法

            出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 大熊弘文氏

 空は風景画の背景として、その雰囲気を大きく左右する要素です。青空、夕焼け、曇り空など、さまざまなシーンでの空の色や雲の形を捉えることで、風景に深みや雰囲気を加えることができます。

 雲の質感や形、そしてその日の気候や時刻を反映する色合いの変化に注意を払いながら描写することで、リアルな空を表現できるようになります。

樹木や草花の描き方: 自然の細部を魅力的に表現

            出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 三澤寛志氏

 樹木や草花は風景の前景や中景として、作品の中での存在感を強める重要な要素です。木の種類や季節による葉の変化、花の咲き方など、自然の細部に目を向けることで、風景画にリアルさと豊かさをもたらすことができます。

 特に木の枝や葉の陰影、花びらの質感など、細かな部分の表現に工夫を凝らすことで、より魅力的な風景を描くことが可能になります。

 風景の中のこれらの要素は、その場の雰囲気や特徴を伝える鍵となります。初心者から上級者まで、これらの要素を的確に捉え、技術を磨くことで、感動的な風景描写ができるようになれるでしょう。

 ただし、あなたが描こうとしている風景の中のすべてを克明に描くことは、必ずしもすばらしい作品の完成にならないこともあります。それは、画面の中の主役や準主役となるモチーフを画面全体で引き立てる工夫が必要だということです。

遠近法(パースペクティブ)の理解と活用

        国展入選作品 誕生2000-Ⅰ F80 2000 中山眞治

 風景描写における遠近法は、絵に奥行きと立体感をもたらす魔法のような要素と言えるでしょう。遠近法の理解とその活用によって、平面的なスケッチブックや紙上に実際の空間を再現することが可能になります。

 本章では、この重要な技術、すなわち遠近法をどのように理解し、効果的に活用するかについて探求していきます。

1点透視と2点透視の基本: 空間を感じさせる風景の描画法

            出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 石原崇氏

 1点透視は、絵の中心に一つの消失点を持つことで、遠近感を持たせる基本的な遠近法の形式です。これは、鉄道の線路や道路が遠くの地平線に向かって収束する風景などでよく見られます。

 一方、2点透視は、2つの消失点を持ち、特に建物や都市の風景において、さまざまな角度からの視点を再現するのに適しています。これらの技法を理解することで、空間の奥行きや立体感を鮮明に捉えることができます。

             出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 石原崇氏

遠近法を活用した風景の奥行き表現

        出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高橋新三郎氏

            パリの屋根 1996 F10 中山眞治

           サン・ドニ運河 1996 F10 中山眞治

           ノートルダム寺院 1996 F10 中山眞治

 遠近法は、物体が遠くにあるほど小さく描写される原理を利用して、奥行き感を強調する技術です。例えば、前景の大きな木と背景の小さな木を描くことで、視点からの距離感を強調することができます。

 この原理を活用することで、風景の中の異なる要素間の関係性や空間的な広がりをより正確に表現することが可能となります。

 遠近法の理解とその正確な活用は、風景描写の質を大きく向上させる鍵となります。リアルな奥行き感や立体感を描写に取り入れることで、見て下さる人をその風景の中に引き込む、魔法のような効果を生み出すことができます。

質感と 迫真性(リアリティ)の追求

         坂のある風景Ⅰ F1 鉛筆画 2019 中山眞治

           坂のある風景Ⅱ F1 鉛筆画 2019 中山眞治

 風景描写の魅力は、そのリアルさや質感に大きく依存しています。質感とは、物の表面の感じや特性を表現することです。

 リアリティとは、実際に存在するような、生命感溢れる表現のことです。質感とリアリティを追求することで、絵はただの平面から、見てくださる人をその場所へ誘う力強い作品へと変わります。本章では、質感とリアリティの追求について探っていきます。

鉛筆の筆圧と選択: 細部の質感を際立たせる

        出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 大熊弘文氏

 鉛筆の筆圧や鉛筆の種類(硬さや柔らかさ)は、質感を表現するうえで極めて重要です。木の皮のゴツゴツとした感じや、滑らかな水面、さらには風になびく草の柔らかさなど、細部の質感を正確に捉えるためには、適切な筆圧と鉛筆の選択が不可欠です。

光と影を捉える: 絵に迫真性(リアリティ)と深みをもたらす

            出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 大熊弘文氏

 光と影の扱いは、作品に迫真性と深みをもたらす鍵となる要素です。光が当たる部分とその反対側の影の部分を正確に捉え、表現することは物体の形や質感、そして立体感を際立てられます。

 特に、太陽の位置や光の強弱を考慮しながら描くことで、絵に時間の流れや場面の雰囲気を加えることができると同時に、質感とリアリティの追求は、風景描写における高度な技術と表現力を発揮します。

 そして、これらをマスターすることで、作品は次のレベルへと進化します。見てくださる人の心を捉え、実際の場所へ誘うような強力な描写を目指して、日々の練習と挑戦を続けましょう。

風景の鉛筆画・デッサンの完成と総仕上げ

            出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 石原崇氏

 風景の鉛筆画・デッサンは、基本の技術や質感の追求、迫真性の表現といった要素が組み合わさって、一つの完成された作品へと昇華されます。

 鉛筆画・デッサンの最終段階では、全体のバランスや総仕上げのテクニックが非常に重要となります。本章では、風景デッサンを完成に導き、総仕上げのポイントに焦点を当てて解説します。

全体のバランスの確認: 一つ一つの要素が調和する風景

             出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 三澤寛志氏

 作品を制作する際には、特定の部分に集中しすぎると、全体のバランスを見失うことがあります。

 鉛筆画・デッサンの終盤には、全体を一つの大きな「かたまり」として捉え、再度、各要素が適切な位置と大きさで配置されているか確認することが必要です。この段階での調整は、作品全体の調和や統一感を保つために不可欠です。

総仕上げのテクニック: ハイライトの追加と微調整

             出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 石原崇氏

 風景デッサンの総仕上げは、作品の質を更に高めるための重要なステップです。特に、ハイライトの追加は、作品に光や生命感を与えるポイントとなります。

 太陽の反射や水面の輝き、木の葉のテカリなど、ハイライトを適切に入れ込んでいくことで、作品全体に奥行きと輝きをもたらします。

 また、微調整の工程で、細かな修整や加筆を行うことで、作品の完成度を最大限に引き上げることができます。風景の鉛筆画・デッサンの完成と総仕上げの工程は、アーティストの感性と技術が試される瞬間です。

 それぞれの要素が調和し、全体が統一された作品として成立するための努力と緻密な作業が求められますが、完成した作品を通じて、見てくださる人に感動を与えられる、風景の鉛筆画・デッサンを目指しましょう。

まとめ

 風景の鉛筆画・デッサンは、単に自然や都市の風景を再現するだけではなく、アーティストの技術と感性が組み合わさって生み出されるアートの一形態です。この記事では、風景の鉛筆画・デッサンの多様な要素に焦点を当て、その魅力と奥深さを探求しました。

 まず、基本技術の習得は、デッサンの土台を築く最初のステップです。筆圧のコントロールや鉛筆の選択は、質感を豊かに表現するための鍵となります。

 特に、鉛筆の筆圧の変化は、木の皮の質感や水面の反射など、風景の繊細な部分を描写する際の強力なツールとなります。

 次に、パースペクティブの理解と活用は、平面的なスケッチブックや紙上に深みと立体感をもたらします。1点透視や2点透視といった基本的な技術を活用することで、リアルな空間感を作品に取り入れることが可能となります。

 質感と迫真性の追求は、鉛筆画・デッサンが現実の風景を再現する上での不可欠な要素です。光と影の扱いやハイライトの追加など、練習を重ねることで習得できるテクニックが、作品を鮮やかで生命感あふれるものに変えていきます。

 そして、最終的な総仕上げの段階で、作品全体のバランスを確認し、微調整を加えることで、一つの完成された風景デッサンへと昇華します。風景の鉛筆画・デッサンの真髄は、技術だけでなく、アーティストの感性や独自の視点にも大きく依存しています。

 この記事を通じて、風景の鉛筆画・デッサンの基本から応用までの技術や考え方を学ぶことで、あなたも感動的な作品を生み出す力を手に入れることができるでしょう。

 毎日の練習とこの知識を組み合わせることで、風景デッサンの世界での新たな挑戦と成果を楽しんでください。

 尚、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。それは、あなたの制作する画面全体を使って、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事を参照してください。

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ではまた!あなたも未来を応援しています。

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