どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
さて、鉛筆だけで美しい花の絵を描くなんて、難しそう…。そう思っていませんか?実は、基本的なテクニックとヒントを理解していれば、誰でも美しい花の鉛筆画やデッサンを楽しむことができます。
この記事では、初心者でも簡単に取り組める花の描き方をステップバイステップでご紹介します。
タッチの基本や、トルコ桔梗、スズランなど、さまざまな花の具体的な描き方から、実際の作品への配置のコツや明暗のポイントまで、幅広く解説します。
アートに興味があるけど、どこから始めればいいかわからないという人、必見の内容となっております。今日からあなたもアーティストとしての新しい旅をスタートさせてみませんか?
それでは、早速見ていきましょう!
関連記事:鉛筆画で初心者が簡単に花を描くポイントとは?
鉛筆画で淡い色の花を描く
境内にて① F4 2021 中山眞治
境内にて② F4 2021 中山眞治
描き始めの筆圧に気を付ける
鉛筆画・デッサンにおいて、淡い色の花を描く際には筆圧がとても重要です。最初から筆圧を高めて描くと、後で修正が難しくなります。軽く、優しく線を引くことから始めましょう。
グラデーションをスムーズに
淡い花の魅力はその繊細さです。一定の筆圧ではなく、グラデーションを意識して変化をつけることで、花の淡い色や立体感を出すことが可能になります。
明暗を意識する
淡い色の花にも、部分によっては、しっかりとした明暗が必要です。影の部分を少し濃くすることで、花が浮き出て見える効果が得られます。
具体的な注意点
花は花弁の重なりと形を線でしっかりとらえてから、濃淡と形態感を表すタッチ(※)で花芯から外へ伸びることを意識して、花弁のカーブに沿って陰影をつけると良いでしょう。
丸いものには、その丸さに沿った陰影をつけましょう。具体的には、次のタッチ(※)の章を参照してください。
尚、白い花の陰影は、2Hなどで優しくソフトに描き込みましょう。そして、光の方向を意識して、明るい部分と暗い部分のコントラストをつけることで、立体感のある花の重なりを表せます。
上の2点の作品にあります背景は、構図を入れた作例ですが構図のことは気にせずに、花はどんな感じで描いているのかを観察してください。
タッチ(※)とは
出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 大寺聡氏
タッチの基本概念
出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 三澤寛志 氏
タッチとは、鉛筆や筆を使ってスケッチブックや紙に線や点を描く方法のことを指します。このタッチ一つで、作品の表情や質感が大きく変わります。
タッチの種類
線の太さや強弱、点の密度など、タッチにはさまざまな種類や技法があります。これを変えることで、作品に動きやリズムを生み出すことができます。
タッチの重要性
良いタッチは、作品の質を大きく左右します。独自のタッチを持つことで、アーティストとしての個性やスタイルを確立することができます。
具体的な注意点
本来、モチーフにタッチがあるわけではありませんが、鉛筆デッサンではタッチを用いて面の方向や形態を表現できます。上記画像を参照してください。
尚、タッチとは、「モチーフの形状の成り立ちを印象として判別できる手法」という解釈がありますし、「画面上に残された筆や絵具の跡が作家の個性を表わす要素」という見方もできます。
そして、モチーフが前光(真上からの光)の状態で、陰影がわずかしかない場合や、白いモチーフをあまり黒くせずに表現したい場合にタッチを使い分けると効果的です。
上の出典画像のように、立方体では3つの角度が出るように3種類のタッチを使ったり、円柱の場合には、円柱の長軸の方向と丸みに沿ったタッチを重ねます。
布においては、シワに沿ったタッチ・人体では、輪郭線の近くの面に沿ったタッチ・樹木の場合には丸みを表すタッチと幹の方向に沿ったタッチであらわしたりします。尚、白い花などでは、花弁のラインに沿ったタッチを使います。
鉛筆画・デッサンでトルコ桔梗を描く
トルコ桔梗 1996 F6 中山眞治
造花のバラ 1996 F10 中山眞治
トルコ桔梗の形状を観察する
まずは、トルコ桔梗の形状や特徴をじっくりと観察しましょう。花びらや中心部の構造をしっかりと捉えることがポイントです。
基本形からスタート
描き始めは、大雑把に全体を捉えて大きな形からスタートします。花の全体の形を大雑把にとらえ、その次の段階で詳細を加えていく方法が効果的です。
詳細と質感を追加
トルコ桔梗の花びらの質感や、中心部の細かい部分を描くことで、作品はリアルさを増していきます。筆圧の変化を利用して、質感を表現しましょう。
具体的な注意点
この花では、5弁が集まった杯(さかずき)と考え、中心を決めると描きやすくなります。花を描く場合には、単に花を描くのではなくて、花瓶や一輪挿しなどで描きやすいものも一緒に描きましょう。
安定感のある花瓶や一輪挿しに生けてある花は、見る人に安定感や安心感を与えることができます。
また、一つの花瓶などに花束を描くような場合には、さまざまな角度に花が向いていると多様性を表すことができると同時に、一輪だけは真正面に向けて描くと、その花の視線を感じられるような印象を与えることができます。
やがて構図を取り入れて、構図上の主役の位置に正面を向いた花を置くのも楽しいでしょう。
その際には、準主役の花は主役よりも目立たぬように描き、主役や準主役以外の花は更に目立たない描き方をすることで、主役が活き活きと描写できます。
鉛筆画・デッサンでスズランを描く
スズラン 1998 F30 中山眞治
スズラン 2021 F1 中山眞治
スズランの特徴を把握する
スズランは細長い葉と、下向きに咲く小さな白い花が特徴的です。まずは、これらの形や特徴を正確に観察しましょう。
描き始める場所の選定
スズランの茎から描き始めると、バランスよく全体を配置することができます。茎のカーブを意識しながら、花や葉を追加していきましょう。
繊細な質感を表現する
スズランの花びらは薄く、透明感があります。軽い筆圧と細密な陰影画法で、その繊細な質感をしっかりと表現しましょう。
上記の作品はスズランですが、本来スズランの花は上のF1の作品のように、全部うつむいているものです。しかし、F30の作品では、そのうつむいているスズランの花と目が合うような角度で描いてみました。
こんな風に、それぞれ作品に楽しい仕掛けを考えてみるのは面白いものです。
そして、F30の作品では目立つ主役に反して、画面下の方の花には「意図的に手を抜いて」、ハイライトを利かせた正面を向いている主役の方へ視線が集まるように工夫しています。
鉛筆画・デッサンで身近な花を描く(名も知らぬ雑草の花など)
路傍の花 F4 2021 中山眞治
身の回りの花を観察する
歩道の隅や庭の片隅にも、美しい雑草の花が咲いています。日常の散歩中に、それらの花をじっくりと観察することから始めましょう。
雑草の花の特徴を捉える
雑草の花であっても、しっかりとした形や特徴を持っているものですが、その独自の形状や質感を正確に捉え、鉛筆画・デッサンで表現することは楽しいものです。
アーティスティックな表現を追求
雑草の花には、一般的な花とは異なる独特の魅力があります。その魅力を最大限に引き出し、アーティスティックな作品を目指しましょう。
上記画像のモチーフは、道端に咲いていた雑草の花です。現物の花の大きさは10~20mm程度の花でしたが、よく見てみると、とてもユニークな形の花であることに気づきました。
高価で優美な花ではなくても、あなたの自宅のそばに咲いているたとえ雑草の花であっても、このようにモチーフにすることができます。ひっそりと控えめに咲いている花であっても、あなたの描き方次第で引き立ちます。
ここでは取り上げていませんが、それこそ5mm程度の雑草の花であっても、可憐な花を咲かせているものも多いのです。
あなたが、鉛筆画・デッサンの制作に慣れるまでは、戸外にイーゼルを立ててというわけにはいかないでしょうから、あなたの近所で興味の湧く花々をデジカメやスマホで撮って、自宅のパソコンで拡大して制作してみましょう。
鉛筆画・デッサンで変わったモチーフ(フォックスフェイス)を描く
また、ここには作品を掲載していませんし、花でもありませんが「フォック スフェイス」という植物をモチーフにするのも面白いかもしれません。是非試してみてください。次のような植物です。そうです。まるで狐の顔なのです。^^
フォックスフェイスの形状を理解する
フォックスフェイスは特徴的な形状をしています。その独特な形をしっかりと把握し、大雑把な形状から描き始めることが近道です。
色彩のない表現に挑戦
フォックスフェイスは色鮮やかですが、鉛筆画・デッサンでは光と影で表現しますので、明暗や質感の表現に注力しましょう。
個性的なタッチで魅力を引き出す
フォックスフェイスの魅力を引き出すためには、個性的なタッチが必要です。独自の描き方や陰影画法で、作品に深みを持たせましょう。
具体的なアドバイス
このフォックスフェイスは、複雑な形状ではありませんので、あなたの自宅にある机のスタンドの明かりを使えば、陰影をハッキリと確認しながら描くことができるはずです。
場合によっては、このモチーフを枝から外して描いても面白いかもしれませんね。画像のモチーフの色は黄色ですが、それをモノトーンで表現するのも面白いのではありませんか?
そして、この植物の形状は曲線を基本としていますので、枝から外して単体で描く場合には、四角や三角の角張ったモチーフと一緒に組み合わせて描くと、個々のモチーフの個性を際立てられるでしょう。
また、この製作の場合には、光を受けて輝いているフォックスフェイスの背景に、濃いトーンを持ってくることで、フォックスフェイスがリアルに表現できます。
尚、濃いトーンのモチーフの背景には、淡いトーンを用いることで、それぞれのモチーフを引き立てることができます。
鉛筆画・デッサンで花を描く参考例(造花)
薔薇 1994 F6 中山眞治
造花の利点を活かす
造花は枯れることなく、変色や変形も少ないため、初心者にとって最適なモデルです。安定した一定の形状で、細部の練習に集中することができます。
造花の質感を捉える
造花も自然の花と同様、表面には独特の質感があります。この質感をしっかりと捉えることで、鉛筆画・デッサンがよりリアルに感じられます。
繰り返し練習を重ねる
一つの造花を使って、何度も描き直すことで、描写技術の向上が期待できます。異なる角度や光の当て方を変えて練習しましょう。
具体的なアドバイス
造花はどうしても、生花と比較するとリアリティーが乏しくなります。できるものであれば、生花でデッサンしたいものですが、生花は時間をかけて描くことは難しいのです。
生であるだけに、わずかな時間でしおれたり、枯れたりするからです。このような場合には、当初は造花や写真で練習して、やがて描くことに慣れて来ましたら、できるだけ長持ちする花で試してみましょう。
造花の場合であっても、花瓶などが丹念に表現できていれば、それなりに見映えのよい作品になります。この場合には、できれば複雑な形状の花は避けて、白い簡単な構造の花を描くようにしましょう。
あなたの自宅のスタンドの光を当てて、陰影がはっきりと掴める状態で描くことがおすすめです。また、黒い下敷きの上にモチーフを置くと、きれいな影までを作品に加えることができます。
鉛筆画・デッサンで花を描く配置の明暗とバランスとは?
出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高橋新三郎氏
明暗の基本を理解する
明暗とは、物体の立体感や深みを表現するための技法です。光の当たる部分は明るく、影の部分は暗く表現することで、リアルな表現ができます。
花の配置と明暗の関係
花の配置によって、その明暗のバランスが大きく変わります。中心から放射状に花を配置すると、中央が強調できる効果をあらわせます。一方では、側面からの光で描くと、花の形や質感がより際立ちます。
バランスの取り方
鉛筆画・デッサンで花を描く際のバランスの取り方は、花の大きさ、数、配置などによって決まります。全体のバランスを考えながら、空白の部分も活用して、視線の流れを意識しましょう。
具体的なアドバイス
色や質感の異なる対象を配置するときは、形の組み合わせだけを見て構図を決めずに、白と黒の鉛筆デッサンでは明暗のバランスを考慮した配置も必要になります。
明るい調子、中間の調子、暗い調子を持った対象を配置する場合は、暗い部分が重なっていたり、明るい部分が重なっていたりして、それぞれの形や特徴があいまいにならないように、明暗の対比を効果的に生かすことも大切な要素です。
例えば上の出典作品では、手前から明るい、暗い、中間の調子の順に配して、モチーフを重ねても形があいまいにならないように配慮してあります。このようなメリハリの利いた配置が大切ということです。
まとめ
鉛筆画・デッサンで花を描くことは、アートの愛好家や初心者にとって非常に魅力的なテーマです。特に、自然界の美しさや繊細さを捉えることができる花は、鉛筆画・デッサンの題材として最適です。
本記事では、花を描く際の参考例や配置の明暗、バランスの取り方について詳しく解説しています。まず、鉛筆画・デッサンでの参考例として造花を取り上げました。造花の大きな利点は、変色や変形が少なく、長時間同じ形状で観察できる点です。
これにより、初心者でも練習を重ねることで、花の質感や形状を正確に捉える技術を磨くことができます。さらに、造花の質感を細かく観察することで、鉛筆画・デッサンがよりリアルに感じられるようになります。
次に、鉛筆画・デッサンで花を描く際の配置の明暗とバランスについて解説しました。明暗は、物体の立体感や深みを表現する重要な要素です。
特に花を描く際には、光の当たる部分と影の部分を明確に区別することで、リアルな質感を表現することができます。
花の配置によっても、その明暗や立体感が大きく変わるため、作品全体のバランスを考慮しながら描くことが重要です。
最後に、花を描く際のバランスについて触れました。鉛筆画・デッサンでは、花の大きさや配置だけでなく、空白の部分も効果的に活用することで、作品全体のバランスを美しく表現することができます。
総じて、鉛筆画・デッサンで花を描く際には、形状や質感の観察、明暗やバランスの理解が不可欠です。これらの要素を意識しながら練習を重ねることで、より魅力的な鉛筆画・デッサンを描くことができるでしょう。
尚、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。
それは、あなたの制作する画面全体を使って、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事を参照してください。
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ではまた!あなたの未来を応援しています。
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