初心者向け鉛筆画・デッサンの花の描き方:淡色・濃色の花と配置のポイントとは?

花の描き方

 どうも。鉛筆画家の中山眞治です。今朝窓を開けると、コオロギの美声が聞こえてきました。そろそろ秋ですね。元気でお過ごしでしょうか。^^

 ところで、鉛筆画・デッサンでの花の描き方は、美しい絵画作品を完成させるためのポイントともなります。特に初心者の人にとっては、どのように花を描けば、自然でリアルな仕上がりになるのか疑問に思うことも多いでしょう。

 この記事では、淡い色から濃い色の花まで、さまざまな種類の花を鉛筆画・デッサンでどのように描くべきかを解説します。明るさや暗さをうまく使って花の立体感を表現する方法や、複数の花を組み合わせる際の配置のコツなどもお伝えしていきます。

 実際の花の作品を参考にしながら、初心者でも簡単に花を鉛筆画・デッサンで美しく描く方法を学べます。あなたも、鉛筆画・デッサンで、心に残る花のアートワークを描くことができるようになりましょう。

 それでは、早速どうぞ!

初心者が知るべき鉛筆画・デッサンの基本技法

 鉛筆画・デッサンは、シンプルな画材を使用するだけで豊かな表現が可能な芸術手法です。初心者の人にとって、鉛筆画・デッサンの基本を把握することは、上達の鍵となります。ここでは、初めての人でも容易に理解できる基本技法とその活用方法を解説します。

鉛筆の種類と選び方

 鉛筆には、H(硬い)からB(柔らかい)の範囲で数多くの種類があります。例えば、HBは中間的な硬さですが、一般的なスケッチにはB~3Bが適しています。

 硬い鉛筆は細かい線を描く場合に、柔らかい鉛筆は濃淡を出すことに向いていますが、目的に応じて適切な鉛筆を選ぶことが重要です。

陰影画法(シェーディング)の基本

 陰影画法は、鉛筆を使って影をつける技術です。平らな面に立体感を出すためには、この技法が欠かせません。描きたい物の形や光の当たり方を考えながら、薄いタッチから濃いタッチまでの階調(グラデーション)を意識して描きましょう。

描き始めの姿勢(ポージング)

 本格的な制作に入る初めの段階の、ラフな描き出し段階に全体のバランスを取ることが成功の鍵です。椅子に座って足を組まずに深く腰掛けると、長時間描いていてもそれほど疲れることはありません。

 そして、鉛筆の持ち方では、軽く鉛筆を人指し指・中指・親指で持ち、大胆なストロークで物の大まかな形を捉えることを心がけると、全体のバランスが取りやすくなります。

 描く対象を一つの塊としてとらえることから始めて、全体のバランスを見ながら把握することが重要です。この段階では、全体の割合や比率に注意しながら大雑把なフォルムを完成させましょう。

 最初に取り組む際の注意点は、部分部分を描くのではなく、大まかに全体をとらえて、優しく筆圧をあげずに描くということが重要です。全体を大まかにとらえることができた次の段階では、再度全体の割合や比率が正しいか確認する必要があります。

 この最初の大まかな全体のとらえ方を見直すことは極めて重要です。なぜならば、描き進んでいった途中で、全体像の「つじつまが合わない」ことに直面してしまうことがあるからです。

 人物画の場合で説明すると、顔が大きすぎたり、足や腕が短かったり、本来は8頭身あるのに、6頭身で描いてしまうというようなことがあるからです。こうなると途中から修整することが難しくなってしまいます。それは、花の場合でも同じことが言えるのです。

細部の表現と仕上げ

 最初の大雑把なデッサンを終えて、再度全体の割合や比率も再確認できた次の作業では、練り消しゴムを練って、先端をマイナスドライバーのような形状にして、必要のない線を整理しましょう。尚、この時点から先の鉛筆の握り方は、文字を描く際の握り方へ変えましょう。

 そして、細部の表現は、絵にリアルさや繊細さをもたらします。特に、鉛筆画・デッサンでは細かい線の技術や質感の描写がポイントになりますので、全体のバランスを見ながら明るい部分や暗い部分の調整を行い、絵を完成させましょう。

 尚、描き初めについて悩む人がいますが、複雑に考えることはありません。あなたが描こうとしている、画面の中の一番濃い色のところから描き始めましょう。

 また、徐々に明るい部分へと描き進んで、最終的な仕上げ段階では、それまでの一番濃い色のところをもう一段濃い色にして、一番明るいところへは、練り消しゴムで丹念に拭き取っておきましょう。こうすることで、画面の中のモチーフ全体にメリハリが出てリアルな表現につながります。

適切な消しゴムの使い方

 間違いを修整するだけでなく、消しゴムは明るい部分を強調するツールとしても使用できます。練り消しゴム及び筆型の消しゴムや、場合によってはプラスチック消しゴムなど、種類に応じて使い分けることで、より洗練された表現が可能となります。

 鉛筆画・デッサンの魅力は、限られた色彩の中での深い表現力にあります。これらの基本技術を磨きながら、自分だけの作品を楽しんでください。

 そのためにも、光と影の劇的な対比は大きな要因となりますし、消しゴムは画面の中に「光を描く」とイメージする必要もあるのです。

淡色の花を鉛筆画・デッサンで立体的に描くポイント

 淡色の花は、その繊細な色合いと形状が鉛筆画・デッサンにおいて大変魅力的に描けます。しかし、その繊細さを正確に、そして立体的に再現するには技術的なコツが必要です。以下に、淡色の花を鉛筆画・デッサンでより立体的に、そして美しく描くためのポイントを解説します。

基本の陰影画法をマスターする

     出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高橋新三郎 氏

 淡色の花を描く際、影の部分や色の濃淡をしっかりと捉えることが重要です。陰影画法を用いて、花の内部や外部の輪郭に微妙な濃淡をつけることで、花の形や質感を強調できます。

花の質感を捉える

 淡色の花の特徴は、しっかりとした質感にあります。花びらの湾曲や淡い陰影などの細かな質感や、花びらの重なっている部分の詳細な陰影のつけ方など、表面の微細な質感を表現することで、花の独特な雰囲気を引き出すことができます。

光の反射を意識する

  出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高橋新三郎 氏

 淡色の花は、光を反射しやすく、その反射が花の立体感を強調します。花の表面に当たる光の方向や、その光がどのように反射しているかを注意深く観察し、その効果を画面に取り入れることが重要です。

背景とのコントラストを活用する

 花の背後の背景とのコントラストをうまく活用することで、淡色の花をより一層引き立てることができます。明るい花の背後に暗い色を入れることで、明るい花は一層明るく見えて、手前に出てくるような印象さえ与えることができます。

作品全体のバランスを見る

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高橋新三郎 氏

 淡色の花の鉛筆画・デッサンは、その美しさと繊細さを最大限に引き出すための技術が求められます。上記のポイントを活用し、あなたも淡色の花を美しく、立体的に描くことができるようになりましょう。

濃色の花をリアルに表現する陰影画法の技術

   出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高橋新三郎 氏

 花の位置や大きさ、そして他の要素との関係を考慮して、作品全体のバランスを整えることが大切です。淡色の花が主役である場合、その周りの要素は花をサポートするように配置すると良いでしょう。この点は、下の画像の右側を参考にしてください。

 濃色の花は、その鮮やかさと深い色合いが鉛筆画・デッサンの世界で強烈な印象を与えることができます。しかし、これらの色合いを鉛筆の濃淡だけで表現することは一筋縄ではいきません。ここでは、濃色の花を鉛筆でリアルに描写するための陰影画法の技術を紹介します。

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高橋新三郎 氏

深い色の基盤を作る

 濃色の花を描く際の最初のステップは、しっかりとした色の基盤を築くことです。柔らかいBシリーズの鉛筆を使い、軽くなじませるように全体に色を乗せます。

層を重ねることで深みを出す

 花の色の深みを出すためには、一回の塗り重ねだけでは不充分です。何層にもわたって陰影を重ねることで、濃淡の差を細かく表現し、花のリアルな質感を引き出します。

ハイライトの位置を確認する

 濃色の花でも、光が当たっている部分や花びらの湾曲している部分では、明るくなる部分が存在します。このハイライトを正確に捉え、練り消しゴムや硬めの鉛筆を使用して明るくすることで、花の立体感を強調することができます。

 淡い陰影を細密に入れる場合には、2H・H程度の鉛筆で、一気に陰影をつけるのではなく、少しづつ全体のようすを見ながら入れていきましょう。また、この場合に、一方向からの描線では鉛筆のノリが悪いと感じた場合には、優しいクロスハッチングも用いましょう。

※クロスハッチングとは、縦横斜めの4種類の描線によって面を埋めていく作業です。描きにくい場合には、スケッチブックや紙の方を動かせば、何ら問題なく線が引けます。

細部の質感を強調する

 花の中心や花びらの端など、細かい部分の質感は濃色の花の特徴を強調する要素となります。細密な陰影画法を駆使して、これらの部分の質感を細かく表現しましょう。

全体のコントラストを考慮する

 制作対象の全体のバランスを考える際、濃色の花の周囲の背景や他の要素とのコントラストも重要です。背景を明るくすることで、濃色の花を一層引き立てる効果が期待できます。

 濃色の花を鉛筆画・デッサンでリアルに表現するためには、細かな陰影技術が求められます。上記のテクニックを取り入れながら、あなたの絵に深みとリアルさをもたらすことができるでしょう。

複数の花を組み合わせて描く際の配置とバランスのコツ

 花々を組み合わせる場合の鉛筆画・デッサンは、視覚的な魅力を増大させる方法の一つです。しかしその魅力を最大限に引き出すためには、配置やバランスが鍵となります。

 以下では、複数の花を組み合わせて描く際の配置とバランスを取るためのコツを紹介します。

主役と準主役を明確にする

 複数の花を描く際、全ての花を主役として扱うのは避けるべきです。一つか二つの花を主役に据え、他の花をサポート役として配置することで、画面にメリハリと焦点を生み出せます。

色と形のコントラストを利用する

 異なる種類の花を組み合わせる場合、色や形のコントラストを意識することで、視覚的な深みを出すことができます。例えば、丸みを帯びた花と細長い花を組み合わせることで、バランスを取ることができます。

 あるいは、花びらの数が少ない花を主役に持ってくる場合には、その背景に細かな花びらが多くついている花を背景に持ってきて、その背景の花は手を抜き、あえて「大雑把」に、それとなくわかる程度での描き込みにすることで、「花びらの数が少ない花」を強調できます。

配置に動きを持たせる

 花々の配置に、ある程度の動きや流れを取り入れることは、作品全体に活き活きとした印象を与えることができます。この流れは、風の方向や花の傾きを利用して表現することもできます。

 例えば、主役の花は真正面に向けて描き、それ以外の花は別個の方向の例えば、上、左、右、下に向けて描くことで、多様性を表現できる一方で、正面を向いている花は視線さえ感じられるようになります。下の画像を参照してください。

 それ以外にも、仮に3本の花を描く場合には、Aの花がBの花の方を向いている、Bの花はCの花の方を向いている、Cの花は正面を向いているような描き方をすると、順を追って、それぞれの花の視線を感じることもできますし、正面を向いている花の視線を感じられるように制作できます。 

      第1回個展出品作品 トルコ桔梗 1996 F10 中山眞治

空間のバランスを保つ

 作品全体を見たとき、ある部分が過度に密集していたり、逆にあまりにも空いていると、バランスが悪くなります。空間の利用を意識して、適度な間隔を保ちながら花を配置することが重要です。

 仮にバランスがうまく保てないような場合には、花の茎や葉の部分も作品に加えることでバランスを取ることもできます。

背景との関係を考える

 花々の配置だけでなく、背景との関係もバランスを考える際の鍵となります。背景が明るければ暗い花、背景が暗ければ明るい花を選ぶなど、背景と花とのコントラストを意識することで、花々の魅力を引き立てます。

 また、背景を鉛筆画・デッサンで作る場合には、花の明暗の度合いにもよりますが、揺れ動いているような背景を作って、画面に動きを出すこともできます。参考例では、下の風景画の空の部分を参照してください。

 複数の花を組み合わせて描く鉛筆画・デッサンは、配置とバランスが作品全体の成功を左右します。上記のコツを活用し、複雑さの中にも調和と美しさを見つけることができるでしょう。

            第1回個展出品作品 夜の屋根 1996 F10 中山眞治

鉛筆画・デッサンでの明暗表現:花の立体感を引き出す方法

出典画像:アートラボゼロプラスより引用

 鉛筆画・デッサンの魅力は、僅かな画材だけで豊かな立体感や質感を表現できることにあります。

 特に花を描く際には、明暗の表現をマスターすることで、花が持つ繊細な美しさや生命感を強調することができます。以下では、花の立体感を引き出すための鉛筆画・デッサンでの明暗表現について解説します。

 基本としては、画像のような石膏モチーフを描く練習から始めることで、光と影の関係を学習できます。円柱以外にも、球体・円錐などさまざまなモチーフが、絵画教室にはあるはずです。そこから練習を始めましょう。

          出典画像:アートラボゼロプラスより引用

光の方向を決める

 立体的な花を描く第一歩は、光の方向を決定することです。光の当たり方によって、影の位置や形状、深さが変わります。最初に光の方向を定めることで、作品全体の明暗の基準点を設定できます。

 そのためにも、自宅で描く際などには、日中の太陽の光線は動きますので、そのことを考慮に入れて描く必要があります。

 具体的には、太陽の動きを見ながら描くのはなかなか難しいので、カーテンを閉めて、あなたの部屋の明かりを頼りに描くか、部屋の明かりを消して、あなたのデスクの上の蛍光灯の光を当てて描くなどの方法もありますし、夜を待って具体的な影を入れるという方法もあります。

階調(グラデーション)の技法を磨く

 花の各部分には、色の濃淡が存在します。鉛筆の筆圧を変えながら、滑らかなグラデーションを作成することで、花びらのカーブや膨らみをリアルに表現することができます。

 尚、この場合、線の入れ方には次の画像のようなタッチの入れ方を活用することで、形状をリアルに表現できることも覚えておきましょう。丸い物体には丸いタッチを入れていくことが必要なのです。

      出典:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 大寺 聡 氏 

影の位置を正確に配置する

 光の方向から逆の位置に影を配置することで、花の形状や立体感が際立ちます。特に、花びらの裏側や花の中心部に深い影を加えることで、奥行き感を強調できます。

ハイライトを活用する

 光が直接当たる部分、すなわちハイライトは、花の立体感を際立たせる大きな要素です。練り消しゴムや硬い鉛筆を使い、光の反射を強調することで、花に生命感を与えることができます。

背景とのコントラストを活用する

 花の立体感をより強調するためには、背景との関係も考慮することが必要です。鉛筆画・デッサンでの明暗の表現を通じて、花の持つ豊かな立体感や魅力を引き出すことは、描く人の技術やセンスが問われる重要な部分です。

まとめ

 鉛筆画・デッサンは、最も基本的な画材の一つでありながら、深い表現力を持つ芸術の形式です。特に花の描写において、鉛筆の細やかな筆致が持つ可能性は無限大です。花の持つ繊細さ、豊かさ、そして命の輝きを捉えるには、鉛筆で描く明暗表現が鍵となります。

 光の方向を最初に確定することは、全体のトーンやバランスを調整できます。そして、この光の方向に従い、花びらや茎、葉にかかる影の位置や形状も正確に描き取ることで、作品に奥行きや立体感が生まれます。

 同時に、階調(グラデーション)の技法を駆使して、花の色の濃淡や質感をしっかりと捉えることが重要です。滑らかなグラデーションを作り上げることで、花の質感や立体性が際立ち、まるでその花が手を伸ばせば触れられるかのようなリアリティを実現できます。

 しかし、花だけの描写では完結しないのが鉛筆画・デッサンの奥深さです。背景との関係性も非常に重要で、花の明暗や色調と対照的な背景を選ぶことで、花の魅力を一層引き立てることができます。

 ハイライトの活用も欠かせないポイントです。光が反射する部分を適切に配置することで、花が持つ生命感や立体感が一段と際立てられます。

 このように、鉛筆画・デッサンで花を描く際のテクニックやコツは多岐にわたりますが、それらを総合的に駆使することで、感動的な作品を生み出すことができるのです。

 さらに、あなたが初めて花を描く場合には、造花で2~枚描いてから成果へチャレンジすべきでしょう。なぜならば、花は「すぐにしぼんだり枯れたり」します。始めて取り組む場合は、どうしても思いのほか時間がかかってしまいがちだからです。

 尚、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。それは、あなたの制作する画面全体を使って、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事を参照してください。

関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは?

 ではまた!あなたの未来を応援しています。

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