鉛筆画・デッサンの基本から応用まで:植物や花のデッサンテクニック!

花の描き方

 どうも。鉛筆画家の中山眞治です。さて、クリスマスを過ぎて、いよいよ2023年が終わりに近づいていますが、元気でお過ごしですか?^^

 ところで、鉛筆画・デッサンは、植物や花の繊細な美しさを捉える最適な方法の一つです。この記事では、初心者から上級者までが学べる鉛筆画・デッサンの基本技法から応用テクニックまでを解説します。

 線の引き方から陰影の付け方、リアルな質感の表現方法まで、あなたが植物や花を活き活きと描けるようになるための、知識とスキルを身につけましょう。

 それでは、早速どうぞ!

  1. 鉛筆画・デッサンの基本: 植物と花を描くためのスタートポイント
    1. 制作環境の整備
    2. 制作時の姿勢と目線
    3. 鉛筆の選び方と準備
    4. 基本的な線の引き方
    5. 形と構造を捉える
    6. 陰影の描き方
    7. 詳細な質感の描写
    8. 最終的な仕上げ
  2. 線の引き方: 植物の細部を捉える
    1. 適切な鉛筆の持ち方
    2. 軽い線での下描き
    3. 線の太さと強さを変える
    4. 影と陰影の追加
    5. 細部の詳細に注意
    6. 仕上げと評価
  3. 陰影と質感: 写実を追求するテクニック
    1. 陰影の基本
    2. 質感の再現
    3. グラデーション(階調)の使用
    4. ハイライトとコントラスト
    5. 繊細な影の描き方
    6. 最終チェックと修整
  4. 色彩の理解: モノクロで表現する色の深さ
    1. 色相とモノクロ表現
    2. 明度とコントラスト(明暗差)
    3. 彩度と線の密度
    4. 色の温度と影響
    5. 複数の色のバランス
    6. 総合的なモノクロ表現
  5. 構図とバランス: 効果的なデッサンの配置
    1. 構図の基本原則
    2. バランスの重要性
    3. 空間の利用
    4. フォーカルポイントの設定
    5. 動きと流れの表現
    6. 最終的な調整
  6. 応用テクニック: 上級者向けのデッサンスキル
    1. 複雑な光と影の表現
    2. 緻密な質感の再現
    3. パースペクティブと深度
    4. 動的な構図の探求
    5. 総合的なコンポジション(構成)の見直し
  7. デッサンの実践: 植物と花のステップバイステップ描画
    1. 準備と素材の選定
    2. 下描きと基本形状
    3. 細部の描画
    4. 陰影の追加
    5. 感触と質感
    6. 最終的な仕上げと評価
  8. 鉛筆画・デッサン制作のための構想と計画: 画家の視点から
    1. 画作りの初歩: 構成前のイメージづくりの技術
    2. 競争に勝てる個性の発揮方法
    3. ブランディングの構築の重要性
  9. 制作の狙いを鑑賞者に明確にする方法
    1. 絵画の主役・準主役を引き立てる方法
    2. 画面全体の構成を引き締める方法
  10. まとめ

鉛筆画・デッサンの基本: 植物と花を描くためのスタートポイント

     第1回個展出品作品 トルコ桔梗 1996 F6 鉛筆画 中山眞治 

 鉛筆画・デッサンは芸術の基本であり、特に植物や花のデッサンは、その繊細さと美しさで多くのアーティストに愛されています。

 本章では、鉛筆画・デッサンの基本を学び、植物と花を描くためのスタートポイントを提案します。

制作環境の整備

 あなたが自宅で制作を始める際には、まず適度な温度と湿度で、ゆったりとした気持ちでスケッチブックに向き合える環境を造りましょう。また、そのためには、あなたの落ち着ける音楽も必要です。

 そして、イーゼルやイスは、最初から専用のものを用意するとなると、出費になりますので、できるだけあなたの自宅にある素材を活用して制作を始めましょう。

 イスはあなたの机で使っているものでも良いでしょうし、イーゼルの代わりに机の上に、手ごろな段ボール箱を用意して、スケッチブックや画板を立てかければ制作できます。

 なぜならば、専用のイスやイーゼルを揃えるとなれば、2~3万円はかかってしまうからです。大きなサイズの制作に対応したイーゼルともなれば、それだけでも大きな出費になってしまいます。

 下の画像のようなイーゼルでも1万円近くはします。また、下の画像のイス替わりに使えるものは、ホームセンターなどで販売している「踏み台」ですが、2,000~3,000円で買えます。

 鉛筆画・デッサンを続けていく気持ちが固まりましたらば、少しづつ揃えるということでよいでしょう。

 尚、一番最初に取り組む際は、絵画教室に行くことがおすすめです。そこには当然、専用のイーゼル・イス・各種制作対象(モチーフ)があるからです。また、本当の基本的な制作方法についても手ほどきを受けることができます。

制作時の姿勢と目線

 制作時の姿勢は、足を組まずに、イスに深く腰掛けて描くことにより、長時間の制作でも疲れにくい状態を作れます。

 また、スケッチブックに向かって、あなたが描こうとしている対象物がスケッチブック越しに、左側でも右側でも良いのですが、頭を動かさずに、目線の移動だけで、スケッチブックと対象物を移動できる状態で描き進むことがベストです。

 頭をいちいち動かしているようでは、スケッチブック上に捉えにくく、また、首や肩の疲労にもつながるからです。

鉛筆の選び方と準備

 デッサンを始める前には、適切な鉛筆を選ぶことが重要です。HBから2Bの硬度の鉛筆は、植物や花の柔らかい線を描くのに適しています。また、シャープな線を維持するために、鉛筆削りも準備しましょう。

 尚、鉛筆が長い時には、各種鉛筆削りで削ればよいのですが、鉛筆削りで削れないほど短くなった場合でも、まだまだ使えます。

 それには、下の画像のような鉛筆ホルダーも2~3本準備しておくと、100円ショップなどで販売している「果物ナイフ」や「カッターナイフ」で削れば、2~3cmまで使い切ることができます。

関連記事:初心者必見!鉛筆画・デッサンで最適な鉛筆の選び方とその特性ガイド

基本的な線の引き方

 線はデッサンの基本です。植物や花を描く際は、軽く優しいタッチで線を引き始めます。また、線の太さや筆圧の強さを変えることで、植物の形や質感を表現できます。

関連記事:鉛筆画・デッサン初心者~中級者必見!最適なスケッチブックと紙の選び方

形と構造を捉える

    第2回個展出品作品 グロリオーサ 1999 F10 鉛筆画 中山眞治

 植物や花を描く際は、まず全体の形と構造を捉えることが大切です。全体の形を軽い優しいタッチで描き、その後に細部へ進みます。植物の葉や花びらの方向や曲線を注意深く観察してください。

 最初に輪郭を捉える優しいタッチの線は、鉛筆を親指・人差し指・中指でつまむように持って、全体の輪郭をバランスを見ながら描いていきましょう。

 出来上がった全体の輪郭をよく観察して、これでよいと納得できましたら、鉛筆の持ち方を「文字を書く握り方」に変えて、練り消しゴムも使いながら、輪郭線を整理しましょう。

陰影の描き方

 陰影を適切に入れることで、植物や花の立体感を出すことができます。光が当たる部分と影になる部分を識別し、線の強さを調整して陰影を表現します。自然な光の流れを意識することが重要です。

 この場合の陰影の入れ方では、下の画像にもありますように、丸い部分の陰影を入れる際には、曲線に沿った陰影を入れることが必要です。

 また、下の画像のように、たまねぎの下側が床面からの反射を受けて、鈍く光っている部分を見逃さないことが重要です。

 あるいは、丸い物体を描く際には、光が回り込んでいることも考慮に入れることが必要です。タマネギの下の右側に、回り込んでいる僅かな光を確認してください。それが、回り込んでいる光です。

詳細な質感の描写

     第1回個展出品作品 一輪挿しと花 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 植物や花の質感を表現するためには、細かい質感の描写が必要です。葉脈の細かい線や花びらの質感など、細部に注目しましょう。

 花瓶も、あなたの気に入ったものを是非選んでください。画像のように光っている陶器の花瓶を描くことで、趣のある作品に仕上げることもできます。

 尚、A4サイズやB4サイズの「黒い下敷き」を1枚買っておくと、その上にこの画像のようなきれいな「映り込み」を描くこともできます。

 また、静物全般を描く際には、次の画像のように下敷きの上に乗せて描くことで、楽しい作品に仕上げることもできます。

第1回個展出品作品 野菜 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

最終的な仕上げ

 全体のバランスを見ながら、必要な部分にさらなる細部を加えます。植物や花の活き活きとした姿を捉えるためには、全体の印象を常に意識することが大切です。

線の引き方: 植物の細部を捉える

     第2回個展出品作品 薔薇 1995 F10 鉛筆画 中山眞治

 植物のデッサンにおいて、線の引き方は非常に重要です。鉛筆で描かれる繊細な線は、植物の細部をリアルに再現する鍵となります。本章では、植物の細部を捉えるための効果的な線の引き方について解説します。

適切な鉛筆の持ち方

 線を描く前に、まず鉛筆の適切な持ち方をマスターしましょう。鉛筆をしっかりと握り過ぎず、リラックスした状態で持つことが重要です。これにより、より自然で流れるような線を引くことができます。

 最初に取りかかる際には、全体の大雑把な形をリラックスして、描き進めていきましょう。

軽い線での下描き

 最初から決定的な線を引くことは、のちの修整を困難にしてしまうので、植物や花を描く際は、まず軽い線で全体の形を下描きしますが、この段階では細部にこだわらず、植物や花の全体的なシルエットを捉えることに集中しましょう。

線の太さと強さを変える

           境内にて 2021 F4 鉛筆画 中山眞治 

 植物や花の細部を表現するには、線の太さや強さを変えることが必要です。例えば、葉脈や茎は細くて強い線で表現し、花びらはやや太くて柔らかい線で描きます。線の変化を使って質感を表現しましょう。

影と陰影の追加

 影と陰影を加えることで、植物や花に立体感を与えられます。光の当たり方を考えながら、影を落とす箇所にはより濃い線を使用して、立体感を出します。影の部分では、線を密にすることで暗さを増すことができます。

 この影の作り方では、基本的に縦横左右からの斜めの4種類の線を使うことで、鉛筆の乗りが良くなります。絶えず4種類使う必要はありませんが、「状況によって」使い分けましょう。

 描きにくい場合には、スケッチブックの方を、あなたが描きやすいように動かして描き進めましょう。

 尚、曲線に陰影を入れる際には、既述の「タマネギの画像」のように、必用な線種を選んで使い分けましょう。

細部の詳細に注意

 最後に、植物や花の細部に注意を払いましょう。葉脈の細かい線や花びらの縁など、細部の詳細な描写が写実を高めますので、緻密な観察と繊細な線の描写が必要になります。下の画像では、スズランの葉と花の形状を詳細にとらえています。

 また、本来スズランの花は下を向いて咲いていますが、あえて花の中を見られるようにして、普段見られない花の中を描くことで、観てくださる人の興味を引く工夫も施しています。

     第2回個展出品作品 君の名は? 1999 F30 鉛筆画 中山眞治

仕上げと評価

 全体を通して、作品を入念に確認し、必要に応じて修整を加えます。バランスや全体の印象をチェックして、対象となる植物の特徴を最もよく表現できているかを評価します。

 本章を通じて、あなたが、鉛筆画・デッサンにおける線の引き方の基本から、植物の細部を捉えるための、高度なテクニックまでを学べることを願っています。練習を重ねることで、あなたのデッサンスキルは確実に向上します。

陰影と質感: 写実を追求するテクニック

国画会展入選作品 誕生2000 F80 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画・デッサンにおいて、陰影と質感は写実を追求する上で欠かせない要素です。本章では、これらを効果的に表現するためのテクニックを解説し、あなたの作品に深みと現実性をもたらす方法を紹介します。

陰影の基本

 陰影を描くには、まず光の方向を理解することが重要です。光が当たる部分は明るく、影の部分は暗く描きますが、影の縁を柔らかく描くことで、自然な陰影の表現が可能になります。

 つまり、影の縁は、部分によっては、決定的な濃さで描くだけではなく、上の画像の主役の植物の芽の右側の枯葉のところにできている影のように、軟らかく薄いトーンも併せて使うことで、現実性を描写できます。

質感の再現

 質感をリアルに再現するためには、対象物の表面の特性を理解し、それを線の質で表現することが重要です。例えば、滑らかな表面は細かく滑らかな線で、粗い表面は太く不規則な線で描きます。

 また、カーブに沿ったトーンの入れ方は、カーブに沿った柔らかなタッチで薄い鉛筆を重ねていくという具合です。

 極端な話では、球体に影を入れる際のトーンの入れ方は、その丸みに沿ってトーンを入れていくということです。

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 大寺聡 氏

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高沢哲明 氏

グラデーション(階調)の使用

 陰影の中でのグラデーションの使用は、写実を高める鍵です。光から影への緩やかな遷移を描くことで、立体感と深みを出すことができます。これには、線の密度を調整することが効果的です。

ハイライトとコントラスト

         スズラン 2021 F1 鉛筆画 中山眞治

 ハイライトの位置と強さを適切に設定することで、作品に生命感を与えることができます。また、明暗差を意識して、強調する部分とそうでない部分を決めることが、作品の焦点を明確にします。 

繊細な影の描き方

 繊細な影を描くためには、鉛筆の筆圧を弱めて細かい線を加えます。影の中でも微妙な明暗を描くことで、よりリアルな質感が表現できます。

最終チェックと修整

 全体を見渡して、陰影と質感が自然に見えるかどうかをチェックします。必要に応じて、細部の修整を行い、全体の調和を整えましょう。

 本章を通じて、鉛筆画・デッサンにおける陰影と質感の表現方法を学び、より写実的な作品を創出するためのテクニックを身につけることができます。また、練習を重ねることで、これらのスキルはさらに洗練されていきます。

色彩の理解: モノクロで表現する色の深さ

第1回個展出品作品 静物Ⅲ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 色彩をモノクロで表現することは、鉛筆画・デッサンの魅力の一つです。本章では、色の深さをモノクロでどのように表現するか、そのテクニックを解説します。

色相とモノクロ表現

 色相をモノクロで表現する際には、その色が持つ明るさや暗さを理解することが重要です。例えば、赤は暗めの灰色、黄色は明るめの灰色として表現します。

明度とコントラスト(明暗差)

 モノクロで色を表現する際には、明度と明暗差が鍵となります。異なる明度の灰色を使って、色の明るさや暗さを示し、明暗差を利用して色の強さを表現します。

彩度と線の密度

 彩度(※)の高い色は、線の密度を濃くして表現します。彩度が低い色は、より薄い灰色や線の密度を少なくすることで表現します。これにより、モノクロの中でも色の鮮やかさを表現できます。

※ 彩度とは、色の三属性(色相・明度・彩度)の一つで、色みの強さや、あざやかさの度合いをいいます。 色みが明瞭な色は彩度が高く、くすんだ色は彩度が低くなります。 同じ色相・明度であっても、彩度が高ければより鮮明に見える、ということになります。

色の温度と影響

 色の温度感も、モノクロ表現に影響します。暖色は暖かみのある灰色、寒色は冷たい印象の灰色で表現することで、色温度の違いを示すことができます。

複数の色のバランス

 複数の色をモノクロで表現する際には、それぞれの色が持つバランスを考慮する必要があります。色の相互関係を理解し、それを灰色のバリエーションで表現します。

総合的なモノクロ表現

    第2回個展出品作品 洋ナシのある静物 1999 F1 鉛筆画 中山眞治

 最終的には、これらの要素を組み合わせて、総合的なモノクロ表現を行います。色の深みと表現の豊かさを、灰色のさまざまなトーンで表現しましょう。

 本章を通じて、モノクロで色彩の深みを表現するための理解とテクニックを深めることができます。モノクロの世界で色の豊かな表現を追求し、あなたのデッサンに新たな次元を加えましょう。

 尚、鉛筆画・デッサンでの表現では、上の画像にあるように、強調したいモチーフの背景に濃いトーンを入れることによって、そのモチーフが引き立ちます。

 背景に入れるトーンの工夫次第で、画面全体に活力が出てきます。上の画像の中の「洋ナシ」の光を受けている部分の左側・下部・右下などの背景に濃いトーンを入れると同時に、洋ナシの右下に卵の反射を入れることで写実を強調しています。

構図とバランス: 効果的なデッサンの配置

第1回個展出品作品 夜の屋根 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 デッサンにおいて、構図とバランスは作品全体の印象を決定づける重要な要素です。本章では、効果的なデッサンの配置とそのための構図とバランスの設定方法を解説します。

構図の基本原則

 構図(※)を決定する際には、基本的な原則を理解することが重要です。これらの原則を用いて、視覚的に魅力的な構図を作り出せます。

※ 構図については、本記事最後部に関連記事「鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは?」を参照してください。

バランスの重要性

 バランスは、作品内の要素が互いに調和し、全体として安定した印象を与えられることを指します。重心や色の配分、形の対比を考慮して、バランスの良い構図を目指します。

 複数のモチーフを用いて制作する場合には、丸いものばかりや、四角いものばかり、水平と垂直ばかりのような構成は考え物です。それらの色々な要素を混ぜて、全体の調和を図りましょう。

空間の利用

 効果的な構図作りには、空間の利用も欠かせません。対象物と背景の間に適切な空間を残すことで、作品に深みと息吹を与えることができます。

 画面の中の構図分割線の一部を使って、作品の向こう側の空間なども表現できると、作品を観てくださる人の「息苦しさ」を解消できます。

 これを「抜け」と呼んでいますが、これらのことも、本記事最後部に関連記事「鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは?」を参照してください。

フォーカルポイントの設定

 フォーカルポイント(※)、つまり焦点となるポイントを設定することで、視覚的な興味を引きつけます。このポイントが作品の主要な部分となり、観てくださる人の目を引くことになります。

※「フォーカル」とは「フォーカス」の形容詞で「焦点の」と言う意味です。 単語の通り「焦点となる(=focal)場所(=point)」という意味で、ある空間に入ったときに一番はじめに目がいく場所のことです。

 つまり、「フォーカルポイント」とは「焦点のある場所」、意訳すれば「最も大切な場所」と言うことです。

動きと流れの表現

 構図内で動きや流れを表現することで、よりダイナミックな作品を創出できます。線の方向性や形の配置を通じて、視覚的な流れを作り出せます。

 つまり、構図導入による分割線に則った構成と配置や、画面上の斜線なども含めた「導線暗示」を加えることや、「地平線をわずかに傾ける」ことで動きが出ます。

 また、球体が鑑賞者に向かって転がってくるような緊張感であったり、道路が鑑賞者に向かって、画面手前方向に延びていることで緊張感を出すこともできます。下の作品が参考例です。

坂のある風景Ⅰ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治

最終的な調整

 全体のバランスを見直し、必要に応じて調整を行います。できうる範囲内での構図の修整や、要素の追加・削除を通じて、最も効果的な表現を目指します。

 根本的な構図の変更は、仕上げに近づいてからでは難しくなります。構図は根本的な骨組みともいえますので、構想を練る段階でしっかりと全体のバランスを取ることが重要です。

 この記事を通じて、構図とバランスの重要性と、効果的なデッサンの配置方法を理解し、あなたの作品に応用してください。構図とバランスを意識することは、鉛筆画・デッサンの質を格段に向上させてくれます。

応用テクニック: 上級者向けのデッサンスキル

    第2回個展出品作品 ランプのある静物 2000 F50 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画・デッサンの基本をマスターできましたら、次は応用テクニックに挑戦しましょう。本章では、上級者向けのデッサンスキルを紹介し、作品に深みと独創性を加える方法を探ります。

複雑な光と影の表現

 光と影をより複雑に表現することで、作品に写実と深みをもたらせます。異なる光源の影響や、微妙な光の反射を描くことで、視覚的に魅力的な作品を創出できます。

緻密な質感の再現

 上級者としての技術を発揮するためには、さまざまな質感を緻密に再現することが重要です。布のしわや木の皮の質感など、細部の詳細に注意を払い、リアルな表現を目指しましょう。

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出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高沢哲明 氏

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高橋新三郎 氏

パースペクティブと深度

 パースペクティブ(遠近法)を用いて、作品に深度を加えることができます。遠近法を正確に取り入れることで、空間の奥行きを表現できて、より立体的な作品を創り出せます。

坂のある風景Ⅱ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治

動的な構図の探求

 静的な構図から一歩進んで、動的な構図を探求することで、動きのあるシーンや、非対称的なバランスを取り入れて、作品にエネルギーと興味を与えられます。

 この件は、既述しています「動きと流れの表現」のところとダブリますので割愛します。

総合的なコンポジション(構成)の見直し

 全体の構成を見直し、必要に応じて調整を行います。明暗差、形、空間の配分を再考し、作品全体の調和と統一感を高めることが重要です。

 本章を通じて、上級者向けのデッサンスキルを習得し、あなたの芸術作品に新たな次元を加えることができます。応用テクニックを駆使して、独自のスタイルと表現を追求しましょう。

デッサンの実践: 植物と花のステップバイステップ描画

路傍の花 2021 F4 鉛筆画 中山眞治

 植物や花のデッサンは、自然の美しさを捉える素晴らしい方法です。本章では、植物と花をデッサンするためのステップバイステップのプロセスを紹介します。

準備と素材の選定

 デッサンを始める前に、適切な鉛筆、紙、消しゴムを選び、描きたい植物や花を選定します。

 そして、リアルなデッサンのためには、実物の花をモデルにすることが理想的ですが、描き始めでは時間がかかることが多いので、切り花を描く場合などでは「しおれてしまう」ことがあります。

 このような場合には、造花で練習をすることを考えましょう。何枚か造花で制作してから、生花にチャレンジすれば、スムーズな制作ができるようになれます。

下描きと基本形状

 植物や花の基本的な形を軽く下描きします。全体のシルエットを捉え、大まかな形と大きさを決定します。制作当初は、全体のバランスを見ることが重要です。

細部の描画

 下描きができましたら、細部に注目します。葉脈、花びらの形、茎の曲がり具合など、詳細を丁寧に描き加えます。植物の特徴を捉えることが、写実を高める鍵となります。

陰影の追加

 植物や花に陰影を加えることで、立体感を出します。光の方向を意識し、影にもたくさんの種類があることに注意しましょう。影の中に、さらに濃い影があることも意識して制作を進めましょう。

感触と質感

 植物や花の感触と質感を表現するためには、異なる線の種類を使用します。葉の質感や花びらの柔らかさなど、線の太さや強さを変えることで質感を描き出します。

最終的な仕上げと評価

 全体を見直して、必要に応じて修整を行います。バランスや陰影、細部の精度をチェックし、作品全体の調和を確認します。

 さらに最終的な仕上げの段階では、描きあがった作品の一番濃いトーンのところをもう一段濃くし、一番明るいハイライトの部分を練り消しゴムで入念に拭き取りましょう。つまり明暗のメリハリをつけるということです。

 本章を通じて、植物と花のデッサンをステップバイステップで学び、自然の美しさをスケッチブックや紙上に表現する喜びを体験することができます。デッサンの技術を磨き、あなたの芸術活動を次のレベルへと導きましょう。

鉛筆画・デッサン制作のための構想と計画: 画家の視点から

誕生2021-Ⅲ F4 鉛筆画 中山眞治

 ここまで、制作当初の描き方などを中心に書いてきましたが、初歩的な制作についてはそのままで良いのですが、あなたが一歩進んだレベルアップを目指すのであれば、やがて構図の導入が避けられなくなります。

 また、ただ何となく描くのではなくて、あなたの制作以前の「構想を練る」ことが重要になってきます。つまり、あなたの制作する画面全体を使って、構図に則った構成を、あなたのイメージする魅力ある画面にする必要があるということです。

 そうすることを心がけて進んでいくことができれば、あなたは、「ただ何となく描いている」ことから脱して、公募展などで入選を目指すことができるようになれるでしょう。その内容については次に続きます。

画作りの初歩: 構成前のイメージづくりの技術

 仮に、花瓶に花が活けてあり、主役の花は鑑賞者の方を向いていて、残りの花はそれぞれ別方向を向いているように描き、まるで花の「視線」を感じられるような作品にしたいとイメージするならば、下のような作品も制作できるわけです。

 そして、この場合には、花瓶も細密に描くことで画面全体が引き締まります。

競争に勝てる個性の発揮方法

 そして、あなたが、絵画の制作を趣味で終わらせるのであれば、これ以上のことは申し上げません。しかし、「展覧会・公募展などへも出品したい」ということであれば、競争に勝てなくては入選及び入賞はできません。

 そこで、あなたは、展覧会・公募展などでの入選及び入賞を目指すものとして、主役・準主役及びレイアウトはどうするかを決めていく際には、できるものであれば、あなた独自のテーマを考えてみましょう。

 例えば、寛ぎのひと時をシリーズ化、季節を象徴する花・果物・野菜で季節を表現、夜の街をシリーズ化、夕暮れ時を専門的に描くなど、あなた独自の視点での制作が必要になってきます。

 それは、あなたが描きたいと思える「テーマを発見」することであり、静物、人物、動物、風景すべてに言えることです。

 その専門的なテーマが、あなたのオリジナリティーとなり、他の画家たちとの差別化を図れるからです。ここは、いきなり大きな情報になりますが、あなたがこれから制作を進める際に、一番に考えるべき重要な点です。

ブランディングの構築の重要性

 それが、あなた独自のブランディングの構築になるということです。「この作風の絵はあの人の作品だな」と思われるようになりましょう。やみくもに描くことは、意味が少なく、効果的な展開には結びつきません。

 どの上級者であっても、この部分は常に考え続けている点なので、早い段階から、あなたがこの点に気づいて検討を進めることは、重大な意味を持ちます。この点は、画家にとって一生考え続けていく部分だからです。

 このことをわかりやすく説明するならば、モネの「睡蓮シリーズ」などはまさにこのことの実践なのです。尚、着想を得るためのヒントでは、次の記事も参照してください。

関連記事:鉛筆画・デッサンで初心者から中級者必見!複合した構図で心象風景を描く方法Ⅱ

制作の狙いを鑑賞者に明確にする方法

キッチンにて 2021 F3 鉛筆画 中山眞治

 何となく描いている作品には、人を引き付ける魅力が少ないものです。なぜならば、スケッチブックや紙上で、観てくださる人を惹きつけられるだけの、構図及び構成や緊張感・導線暗示などがないからです。

 過去からの巨匠たちの名作には、必ず鑑賞者を魅了する工夫が画面全体にしっかりと構成されています。

 全体の構図・構成・各制作対象に対する制作技術の探求・光と影の劇的な対比・緊張感・導線暗示・動きなど、数え上げればきりがないほどの濃密な内容になっているのです。

 そこで、具体的なそれぞれの内容は、やがてあなたがどんどん情報を吸収していかれるものとして、本章では、あなたがすぐに始められる、主役・準主役の引き立て方を提供します。是非試してみてください。

絵画の主役・準主役を引き立てる方法

 絵画の制作では、例えばあなたが風景を描くとした場合に、あなたの目に映ったすべての対象を、克明に描くことが必ずしも良いわけではありません。

 それは、あなたが描こうとしている切り取った画面の中の、どれを主役や準主役にするのか・どのような配置に据えるのかを決めなくてはなりません。

 あなたが強調したい部分を主役や準主役として捉えたならば、それ以外のところには、「意図的に手を抜く」ことも必要です。

 つまり、主役や準主役以外には「克明な描写を抑えて描く」あるいは、主役・準主役には光と影の効果を最大にする一方で、他の脇役には、光を抑えて描くことで、主役・準主役が際立つという具合です。

 よく、「何を言いたいのか分からない絵だ」という会話を聞くことがありませんか?このことなのです。

画面全体の構成を引き締める方法

 あなたの強調したい主役・準主役をクローズアップして、画面の構図上の中心点へ据えることで、あなたが感動したモチーフやレイアウトを強調できます。

 植物や花でも同じことです。あなたが画面に収めようとしている植物や花のどの部分を主役や準主役にするのかを決めて、細密描写を施し、それ以外のモチーフには、最低限度分かるように描くとか、光を抑えるとかの手法が画面を際立てます。

 わかりやすく言えば、観てくださる人に、「この絵は、主役や準主役が画面全体の構成の中で活き活きと輝いている、構図並びに配置及び面積比や光と影の対比が一番素晴らしい状態を描いたんです」と、明確にするということです。

 あなた自身の作品制作上の感動を、鑑賞者に伝えると言い換えることもできます。このハッキリした意思表示が、画面を引き締めると言っても過言ではありません。

まとめ

キッチンにて 2019  F1 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画・デッサンは、植物や花の繊細な美しさを表現する絶妙な方法です。この究極ガイドでは、初心者から上級者までのアーティストが、植物と花をリアルに描くための技術とコツを学べます。

 初めに、鉛筆の選び方や基本的な線の引き方をマスターしましょう。植物や花の形と構造を正確に捉え、軽いタッチで下描きをします。陰影を加えることで、立体感と写実を生み出し、植物や花の質感を繊細に表現できます。

 次に、色彩の理解が重要です。モノクロデッサンでは、色相や明度、彩度を灰色のバリエーションで表現します。これにより、色彩豊かな植物や花をモノクロでも深みを持って描くことが可能です。

 構図とバランスにも注意が必要です。各種構図を導入して、視覚的に魅力的な配置を心がけましょう。動きや流れを意識した構図は、作品にエネルギーを与えます。

 さらに上級者向けの技術として、複雑な光と影の表現、緻密な質感の再現、遠近法の使用などが挙げられます。これらの応用テクニックにより、作品に深みと独創性をもたらします。

 最後に、植物と花のステップバイステップ描画のプロセスを実践しましょう。下描きから細部の描画、陰影の追加、最終的な仕上げまで、一連の流れを通じて、鉛筆画・デッサンの技術を磨けます。

 このガイドを通じて、鉛筆画・デッサンの基本から応用までを網羅し、植物や花の美しさをスケッチブックや紙上に再現する喜びを深めましょう。あなたのデッサンスキルが一段と向上し、作品に新たな息吹を吹き込むことでしょう。

 尚、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。

 それは、あなたの制作する画面全体を使って、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事も参照してください。

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 ではまた!あなたの未来を応援しています。

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