どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
さて、鉛筆画やデッサンを始めたばかりの皆さん、またはすでに基本をおさえ、次のステップへ進みたい中級者の皆さん、適切なツールを選ぶことはアートの質を大きく左右します。
スケッチブックや紙の種類は驚くほど多く、選び方ひとつで描き心地や表現が大きく変わることもあります。では、どのように選べばよいのでしょうか?
この記事では、鉛筆画・デッサンのための適切なスケッチブックと紙の選び方を徹底解説して、質感・厚さ・サイズやブランドに至るまで、プロが実際に使用するおすすめのツールとその特性を紹介します。
初めての人も、すでに経験がある人も、より深くアートに没頭するためのさまざまな情報が、この記事には詰まっています。
それでは、早速見ていきましょう!
鉛筆画・デッサンの基礎:なぜスケッチブックや紙の選び方が重要なのか?
鉛筆画やデッサンは、単に技法や技術だけでなく、使う画材の選択によってもその質が大きく左右されます。特にスケッチブックや紙の選び方は、描き手の意図を正確に描写するための基盤となる要素です。
それでは、スケッチブックや紙の選び方が鉛筆画やデッサンにおいて、どれほど重要なのか、その理由と共に詳しく探っていきましょう。
スケッチブックや紙の質感が作品の表現を支える
スケッチブックや紙の表面の質感は、鉛筆の筆圧や種類によって異なる描写を生み出します。
例えば、滑らかなスケッチブックや紙は、モチーフの細密な部分を描きやすい一方、ざらざらとした紙は筆圧による濃淡の表現が魅力的です。
そして、適切なスケッチブックや紙の質感を選ぶことで、意図した表現を効果的に伝えることが可能になります。
厚みと耐久性で作品の寿命が延びる
スケッチブックや紙の厚みは、作品の寿命や保存性に直結します。薄いスケッチブックや紙は破れやすく、強い筆圧での描写には向きません。
一方、厚めのスケッチブックや紙は頑丈で、何度も修整を加えたり色をのせる際にも適しています。また、長期間の保存を考えた場合、耐久性の高いスケッチブックや紙の選択は必要不可欠です。
サイズや型で描き手の自由度を広げる
スケッチブックや紙のサイズや型は、作品の大きさや構図の選択に影響を与えます。小さなスケッチブックは持ち運びに便利で、外でのスケッチに適しています。
大きなスケッチブックや紙は、細部まで丁寧に描写するのに適している一方で、展示や表現を強調する際にも迫力が加わり有利です。
総じて、スケッチブックや紙の選び方は、作品の完成度やその後の発表時などでの展開を大きく左右します。鉛筆画やデッサンを追求する上で、適切なスケッチブックや紙の選択は欠かせないステップと言えるでしょう。
スケッチブックの種類とそれぞれの特徴を理解する
第1回個展出品作品 休日 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
アーティストやデザイナー、趣味のスケッチ愛好者にとって、スケッチブックはアイデアや感じたことを瞬時に捉えるための重要なツールです。
しかし、多種多様なスケッチブックが市場には出回っているため、適切なものを選ぶことは簡単ではありません。ここでは、主要なスケッチブックの種類とそれぞれの特徴について解説します。
ハードカバー型スケッチブック
堅固な表紙を持つハードカバー型は、持ち運ぶ際のページの保護や、長期間の保存に向いています。しっかりとした表紙は、外部のダメージから中身の画面を守り、スケッチの品質を長く維持できます。
リングバインダー型スケッチブック
ページを自由に追加・取り外し可能なリングバインダー型は、カスタマイズの自由度が高いのが特徴です。アイデアの整理や、特定のテーマごとに分ける際に、このタイプは非常に便利です。
アコーディオン型スケッチブック
連続した景色やストーリーを描く際に便利なのはアコーディオン型です。ページを広げることで、一連のイラストやスケッチを一つの流れとして表示することができます。
水彩用スケッチブック
水彩画などの、液体の素材を使用する場合に最適なのが、水彩用スケッチブックです。厚くて吸水性の高い紙質は、色のにじみやページの歪みを防ぎます。
ポケットサイズスケッチブック
持ち運びやすさを重視する人には、ポケットサイズがおすすめです。手軽にどこでもスケッチが楽しめるので、旅行や日常の中での瞬間描写に最適です。
スケッチブックの選び方は、使用する場面や目的に応じて変わります。それぞれの特徴を理解し、自身のニーズに合わせた最適なものを選ぶことで、スケッチの楽しさや効果をさらに向上させることができます。
描き心地を左右する!デッサン用紙の質感と厚さ
鉛筆画やデッサンにおいて、筆圧や技法だけでなく、用紙の質感や厚さが描き心地や作品の出来ばえに大きく影響します。
用紙の選択はアーティストにとっての重要な決断の一つです。ここでは、デッサン用紙の質感と厚さの違い、そしてそれがどのように描き心地に影響するのかを詳しく探っていきます。
デッサン用紙の質感とは?
滑らかな質感 (Smooth)
モチーフの細密描写を重視する、繊細な作品や細かい陰影画法に適しています。細やかな表現が可能で、鉛筆やチャコール(木炭)で細部までをしっかりと捉えられます。
中程度の質感 (Medium)
多くのアーティストに好まれるこの質感は、多様な技法や材料に対応可能です。バランスの良い描き心地が特徴です。
ざらざらした質感 (Rough)
筆圧の変化や、立体的な陰影画法を楽しむのに最適。特にチャコール(木炭)やソフト鉛筆(B系の濃い鉛筆)と相性が良く、深みのある表現が可能です。
用紙の厚さとその影響
薄い用紙 (Lightweight)
軽くて扱いやすいですが、繰り返しの修正や濃い筆圧には向きません。速写や一時的なスケッチに適しています。
中程度の厚さ (Medium weight)
最も一般的で、多目的に使用可能で、破れにくく、多少の修正も容易です。
厚い用紙 (Heavyweight)
強い筆圧や、水彩、混合の液体画材(メディア)にも対応できます。破れにくく、長期保存にも向いています。
まとめ:最適なデッサン用紙の選び方
用紙の質感や厚さは、描くテーマや使用する道具、さらにはアーティストの好みによって選び分ける必要があります。
適切な用紙を選ぶことで、作品の質を向上させ、描く過程そのものをより楽しむことができるのです。自身のスタイルやニーズに合わせて、最適なデッサン用紙を見つけ出しましょう。
参考:世界堂オンラインショップ
画材・額縁・文房具通販の世界堂オンラインショップ (sekaido.co.jp)
プロがおすすめするスケッチブックのブランド6選
アーティストの間で評価されているスケッチブックや紙のブランドは数多く存在しますが、その中でも特に評価が高い、プロからのおすすめブランドをピックアップしました。
以下、その特徴とともに6つのブランドをご紹介します。
モレスキン (Moleskine)
イタリア発のこのブランドは、優雅なデザインと耐久性で知られています。ポケットサイズから大きめのサイズまで幅広く展開しており、旅行先でのスケッチや日常のメモ取りにも最適。
ストラスモア (Strathmore)
アメリカの老舗ブランドで、質の高いデッサン用紙や水彩紙で知られています。多様な技法に適応した紙のラインナップが魅力で、特に中級者~プロのアーティストに支持されています。
クレッシー (Canson)
フランスの歴史あるブランドで、上質な水彩紙やスケッチペーパーが人気です。特に色の乗りや筆の滑りが良く、色鉛筆や水彩画に使用するアーティストからの評価が高いです。
ファーバーカステル (Faber-Castell)
主に、鉛筆などの筆記具で知られるドイツのブランドですが、スケッチブックも展開しています。耐久性と描き心地の良さを兼ね備えており、デザイナーやアーティストにおすすめです。
レムタ (Rhodia)
フランス生まれのこのブランドは、滑らかな紙の質感とシンプルなデザインで知られています。インクや鉛筆との相性が良く、きれいなラインが引けるのが特徴です。
大雑把な価格比較
プロがおすすめする、スケッチブックのブランドに関する価格比較一覧表は大雑把に次の通りです。価格は平均的なものを示し、実際の店舗やサイトにより多少の変動が生じる可能性があります。
※ 各メーカー商品をネットで探す場合には、上記一覧表のブランド名の( )の中の名称で探してください。例えば、クレッシーのスケッチブックを探す場合には、Cansonで探すということです。
ホワイトワトソン (メーカー名:ミューズ 東京都所在)
スケッチブック選びはアーティストにとっての重要な一歩です。歴史を振り返れば、1960年のデビューから多くのアーティストに愛されてきた「ワトソン」。その信頼性を受け継ぐ形で誕生したのが「ホワイトワトソン」です。
その美しい白色は、夏から冬にかけてのシーズン毎の明度差を活かした奥深い表現が可能です。特に白色度添加剤を使用せず、自然水のみでの製法は、純粋な白色を追求するアーティストには特におすすめです。
さらに、このスケッチブックの真骨頂は紙の質感にあり、ほどよくザラついた中目の紙肌は、鉛筆及びチャコール(木炭)やパステルの乗りと相性が抜群です。
因みに価格は、大雑把に上記の価格一覧表の中の$一つ表示と同程度で、低価格帯です。筆者も最近は、このスケッチブックを使用しています。
尚、紙が白いことは、画面上のハイライトを利かせる部分に、そっくりその際立つ白さを輝く部位に充てることができるという利点もあります。
プロがすすめるコストパフォーマンスの良いスケッチブックのブランド5選
安価なスケッチブックも多くのアーティストや学生にとって大変重要です。以下は、コスパが良く、初心者から上級者まで幅広く活用されているスケッチブックを5点紹介します。
ストラスモア スケッチブック
特徴
ストラスモアは、100年以上の歴史を持つ信頼されているブランドです。スケッチブックは、酸性フリーで中程度の紙の厚さを持ち、鉛筆、チャコール(木炭)、スケッチ用インクなど、さまざまな画材に対応しています。
価格
中価格帯ながら高品質。
Canson XL シリーズ
特徴
CansonのXLシリーズは、価格が手頃で大量のページであることが特徴です。特に学生や初心者におすすめです。酸性フリーで、複数の異なるサーフェス(スムース、ミディアム、ルーフ)が選べるのも魅力となっています。
価格
低価格帯。
Pentalic スケッチブック
特徴
ポケットサイズのバリエーションが多く、外出時のスケッチに便利。酸性フリーの紙を使用しており、ページ数も多いので長期間の使用に適しています。
価格
低〜中価格帯。
Moleskine クラシックスケッチブック
特徴
Moleskineは世界的に知られたブランドで、そのクラシックなデザインと堅牢性で人気です。190g/m²の紙は、鉛筆やペンだけでなく、水彩にも対応しています。バンドで締められるデザインが、紙をきれいに保持してくれます。
価格
低〜中価格帯。
Art Alternatives スケッチブック
特徴
高品質ながら手頃な価格帯のスケッチブック。ブライトホワイトの酸性フリーの紙が、鉛筆、チャコール(木炭)、インクに適しています。また、多様なサイズの選択肢があるので、携帯に便利なサイズから大型のサイズまで選択可能です。
価格
低価格帯。
あなたの進む方向性でスケッチブックの大きさを考えてみよう
上記のスケッチブックは、コストパフォーマンスが良く、初心者から上級者までのアーティストにおすすめできる品質を持っています。
特定の予算や使用目的に応じて、最適なものを選んでください。おすすめは、Canson XL シリーズです。
お求めの際には、F4~F10のサイズで探してください。Fサイズとは正方形に近い長方形のことで、筆者もこのFサイズのスケッチブックを使っています。あなたが最初に取り組む場合には、F6~F10がおすすめです。
しかし、あなたの進む方向性が、公募展などへの展開を考えるのであれば、やがてF30~F130くらいまで大きな画面にする必要もあるので、徐々に大きくすることに慣れるためにも、F10くらいから始めてみるのが良いでしょう。
また、それ以外の形や大きさについては、次の一覧表を参照してください。現在の全国公募展を見た場合に、一番大きい部類に入るのはF130号であり、小さいものではF30号で出品できる公募展もあります。
鉛筆画・デッサンで長時間描いても疲れない!正しい姿勢やツールの使い方と保管方法
灯の点る窓辺の静物 2022 F10 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画・デッサンは、繊細な技法と持続力が求められるアートの一つです。長時間にわたる作業での疲れを最小限にするためには、正しい姿勢及びツールの使い方や保管方法が不可欠です。
以下では、プロのアーティストも実践する制作時の姿勢や、効果的なツールの取り扱い方法と、それらを長持ちさせるための保管のポイントを解説します。
描画の角度
画板やスケッチブックはデスクやテーブルの上に水平に置くのではなくて、手前に少し傾けることで目と紙の距離が近くなり、疲れにくい姿勢を保てます。
尚、取り組みの最初は絵画教室へ行きましょう。そこには、イーゼルがあるので、取り組みの最初にはちょうど良いのです。
制作時の姿勢と鉛筆の持ち方
制作時の姿勢は、足を組まずにイスに深く腰掛けましょう。この姿勢が、長時間描いてもあまり疲れないための大きな秘訣です。
そして、鉛筆の持ち方は、描き心地や筆圧に大きく影響します。描画に取りかかる最初の持ち方は、全体を大きく捉えてモチーフ全体の輪郭を描き込んでいきます。
その際には、親指・人差し指・中指で優しくつまむように持ち、腕と肩を使って、大きな動作で描き込んでいきましょう。その中に、「これだ」と思える輪郭線が見つかるはずです。
次の段階では、全体の輪郭線の中で、あなたが確信を持てた線以外は、「練り消しゴム」で整理しましょう。
そして、徐々に細部への描き進める段階での鉛筆の持ち方は、文字を書くときのような持ち方にすることで、均等な筆圧を保ちやすくなります。
また、場合によっては、筆圧を高めたり、描線の種類を変えるために、鉛筆の先端近くをもって、鉛筆を寝かせて線を引くこともあります。
鉛筆を削る
鉛筆は定期的に削り、常に適切な太さと鋭さを維持します。尚、鉛筆が短くなった場合には、鉛筆削りでは削れなくなりますので、鉛筆ホルダーを使って、ナイフやカッターなどで削れば、2cmくらいの長さまで使えます。
関連記事:初心者必見!」鉛筆画・デッサンで最適な鉛筆の選び方とその特性ガイド
消しゴムと画面上の掃除
練り消しゴムを使う場合には、消しゴムの「消しカス」は出ませんが、プラスチック消しゴムなどを使う際には、「消しカス」は画面に残ったままにせず、「羽根ぼうき」や「ティッシュ」を使用して、そっと表面を撫でて定期的に払い落とします。
正しいツールの使い方と保管方法を実践することで、ツールの持ち味を最大限に活かすことができます。これにより、より高品質な作品を生み出すことができるでしょう。
休憩の取り方
1時間に一度、数分間の休憩を取り入れることで、手や目の疲れを解消できます。尚、自宅での制作では、制作につかれるたびに、家事をこなせば一石二鳥です。
スケッチブックの保管
湿度や直射日光は紙の劣化を招きます。スケッチブックは乾燥した場所に、平らに保管することで紙の品質を維持できます。
尚、あなたが愛煙家の場合には、作品が空気に触れるような状態にしておくと、気づかぬうちに作品に「ヤニ」が付着してしまうので、注意が必要です。
これには、やがてあなたが展覧会などを意識して、大きな作品を製作するようになった場合には、「パネルに水張り」して出品するようになるはずです。
しかし、展覧会から作品が戻ってきたとして、ガラスやアクリルのカバーがかかっていたとしても、タバコの煙はカバーの隙間から入り込んでいきます。タバコを吸わない部屋で保管していたとしても、やがては必ず影響を受けてしまいます。
そのような場合には、タバコの煙が絶対に入って来ない別の場所で保管するか、作品を額ごと「ラップ」をかけるなどの工夫も必要です。これは、他の技法の制作でも全く同じことが言えます。尚、ホームセンターでは、幅広の梱包用ラップを販売しています。
基礎を学んだあとのあなたの目指すべきプロへの道筋
第1回個展出品作品 静物Ⅱ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
あなたが、鉛筆画・デッサンに取り組む最初は「絵画教室」で学ぶことが、一番取り組みやすいと思われますが、その知識の吸収には、半年もあれば十分です。それ以上は教室に通うべきではありません。
それは、絵画教室の講師が、実績のあるすばらしい作品を描いていることをあなたが知っているのであればともかく、「大した実績もなく、素晴らしい絵を描く人でもない」場合には、習うことも少ないはずです。
まして、鉛筆画・デッサンによる、全国公募展での複数の入選や入賞などの、大きな実績を持っている人は、そう多くはないからです。しかし、あなたが絵画制作の初期の頃であれば、描き始めの鉛筆デッサン程度は教えてもらえるでしょう。
尚、絵画教室へ通って、講師をあまり頼り過ぎて、常に「手」を加えてもらうことが多くなってしまうと、モチーフを変えるたびに講師を頼ってしまい、あなたは独立して自由な制作ができなくなってしまいます。
それが、絵画教室をやめられない主な原因です。基礎さえ教えてもらえれば、あとはあなた自身が「構図の本」を1冊購入して独学で学習して、市や県及び公募展や個展を目指して展開していきましょう。
関連記事:初心者からプロへ!鉛筆画・デッサンで画家になるステップバイステップガイド
まとめ
デッサンや鉛筆画は、緻密さや持続力が必要となるアートの分野の一つです。この美しい芸術形式を追求する過程で、道具の選び方や使い方は、作品の質に大きく影響します。
世界中の多くのアーティストが信頼するブランド、モレスキンやストラスモア、クレッシー、ファーバーカステル、レムタ、やホワイトワトソンなどは、それぞれの特色を持ち合わせています。
それは、アーティストがニーズに応じて選べる豊富さが魅力であり、そればかりではなく、さらにコストパフォーマンスの良いスケッチブックもたくさんあります。
そして、描画の際の疲れにくい姿勢を保持しながら、鉛筆の持ち方や描画の角度、そして定期的な休憩は、長時間のデッサン作業でも手や目の疲れを最小限に抑え、ツールの正しい使い方も、作品の出来ばえや、作業の効率に影響を与える要因です。
アートの世界において、技術やセンスだけではなく、使う道具や画材の質も重要です。自身のスタイルやニーズに合わせて、適切なツールとその正しい使い方・保管方法を習得し、鉛筆画やデッサンの技術を更に磨き上げましょう。
ではまた!あなたの未来を応援しています。
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