鉛筆画・デッサンの魅力を引き出す!陰影技法の基本を徹底解説

鉛筆画

 どうも。鉛筆画家の中山眞治です。さて、真夏から、いきなり冬の入り口に立たされている気分の今日この頃ですが、元気でお過ごしですか?^^

 ところで、鉛筆だけで、感動的な美しい作品を描くことは可能です。その鍵となるのが、陰影技法です。この技法を駆使することで、平面的なスケッチに深みや立体感を持たせ、リアルな質感や光の表現ができるようになります。

 しかし、陰影技法は、ただ影をつけるだけではありません。正しい方法で適切に行うことで、作品の魅力は飛躍的に向上します。この記事では、鉛筆画・デッサンの基本から応用までの陰影技法を徹底的に解説していきます。

 初心者の人でも安心して学べる内容から、中級者の人向けの応用テクニックまで幅広く紹介します。美しい鉛筆画・デッサンの世界へ、一緒に足を踏み入れてみませんか?

 それでは、早速見ていきましょう!

陰影技法(シェーディング)の基礎:光と影の基本原理を理解する

 鉛筆画やデッサンでの陰影技法は、作品に深みや立体感を持たせる重要な技法です。

 陰影技法の成功の鍵は、光と影の原理をしっかり理解することから始まります。それでは、この基本的な原理を詳しく探ることで、よりリアルな作品制作への一歩を踏み出しましょう。

光の方向と影の形成

 光が物体に当たると、その反対側に影ができます。この影の形や濃淡は、光の方向や強さ、物体の形によって変わります。

 たとえば、スポットライトのような直接的な光のもとでは、影は鮮明でハッキリとしますが、散乱した光の場合、影は柔らかくぼやけたものになります。

三つの基本的な影のタイプ

投影影(キャストシャドウ)

 これは物体が光源から遮られた部分にできる影です。たとえば、立っている人物の足元にできる影などがこれに当たります。

形成影(フォームシャドウ)

 物体の表面に沿って光が減少する部分の影です。球体の場合、光が当たらない側がこれに該当します。

反射影(リフレクテッドライト)

 物体の影の部分に隣接する、物体から反射した光によって生じる明るい部分です。

光と影のバランスの重要性

 美しい陰影技法を取り込むためには、光と影のバランスをとることが不可欠です。強すぎる光や濃すぎる影は、作品に不自然さをもたらす可能性があります。

 一方、柔らかすぎる光や薄すぎる影は、立体感が不足してしまうでしょう。適切なバランスを見つけることで、作品全体の調和と写実性が増します。

 陰影技法は、光と影の原理を理解し、それを鉛筆やチャコール(炭)などで表現する技術です。これらの基礎を身につけることで、作品の質は大きく向上することでしょう。

ステップバイステップ:鉛筆画初心者向け陰影技法実践ガイド

 鉛筆画の陰影技法は、作品に深みや写実を追加する魔法のような技術です。

 しかし、初心者には少し難しく感じるかもしれません。このガイドは、初心者のために陰影技法をステップバイステップの手順で提供します。心配せずに、一緒に学びましょう!

必要な道具の準備

 始める前に、適切な鉛筆、消しゴム、そしてスケッチブックを用意しましょう。鉛筆の硬さは、陰影技法の効果や質感に影響しますので、複数の種類を持っておくと便利です。

 初めの段階では、2H・H・HB・B・2B・3B・4Bの7種類あれば当面の制作ができるでしょう。あなたが、鉛筆画を描くことに慣れて、これからも続けていく自信がついてきましたら、少しづつ種類を増やしていきましょう。

 その場合には、明るさに対する意識を持った場合には、10Hまでありますし、より濃い色を求めるのであれば、10Bまではすぐに購入することもできますし、メーカーによっては、12Bまでの品揃えをしているところもあります。

 関連記事:初心者必見!鉛筆画・デッサンで最適な鉛筆の選び方とその特性ガイド

基本の陰影技法

 平行線の練習: スケッチブックのページに、平行な線を何本か引いてみましょう。線の間隔を狭めることで、より濃い影を作り出すことができます。

 円形の練習: ゆっくりと円を描きながら、中心から外側へと陰影技法を実行してみましょう。中心が最も濃く、外側に向かって薄くなるようにします。

      出典画像:アートラボゼロプラスより引用

影の位置の理解

 物体の形と光の方向によって、影の位置や形が決まります。簡単な形、例えば球や立方体を描き、異なる光の方向からの影の変化を観察してみましょう。

      出典画像:アートラボゼロプラスより引用

実践!簡単なモチーフの陰影技法

リンゴの陰影技法

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 大寺聡 氏

 リンゴをスケッチブックに描き、前述の技術を活用して陰影技法を適用します。リンゴの曲線に沿って陰影技法を行い、立体感を出すことがポイントです。

 丸いものは、丸いものなりの曲線によって、陰影をつけていくことを忘れないようにしましょう。

カップの陰影技法

     第2回個展出品作品 胡桃のある静物 2000 F1 鉛筆画 中山眞治

 カップの内部と外部、そしてカップの下の影をしっかりと陰影技法を適用して、三次元の形状を強調します。場合によっては、上記作品のように、ソーサー(受け皿)の反射光がカップに映り込んでいる描写などもあるとリアルです。

 この作品には、スプーンを描き込んでいませんが、ソーサーの上にスプーンが乗っていて、そのスプーンの反射がカップに映り込んでいるのを描き込んでも、楽しい仕上がりになります。

 これで、鉛筆画の陰影技法の基礎を学ぶプロセスが完了しました。繰り返し練習を続けることで、技術は確実に向上します。次は、さらに複雑な形状や質感への挑戦をおすすめします!

選べる鉛筆の硬さ:陰影技法に最適な鉛筆の選び方

 鉛筆は、デッサンやイラストレーションの最も基本的な道具の一つです。しかし、鉛筆にもさまざまな硬さがあり、それぞれが異なる特性や用途を持っています。

 陰影技法を習得する際、適切な鉛筆を選ぶことは非常に重要です。本章では、各鉛筆の特性と、それが陰影技法にどのように影響するかを解説します。

鉛筆の硬さの基本

 鉛筆の硬さは、主にHからBの範囲で示されます。Hは硬め、Bは柔らかめを指します。数字が大きいほど、その特性が強まります。

 Hシリーズ: 硬く、細かい線を描くのに適しています。細密描写に最適です。

 Bシリーズ:柔らかく、濃い線や陰影技法に利用されます。影の深みや濃淡表現に役立ちます。

陰影技法に適した鉛筆の選び方

 H~2H: 細密部分や質感を描く際に役立ちます。硬いため、シャープな線を持続的に描くこともできます。さらに明るい部分の描写が必要な場合には、3H~4Hを揃えるこができても、まずは2Hで筆圧を高めずに使用しましょう。

 HB: 陰影技法の基本となる鉛筆です。HシリーズとBシリーズの中間の硬さで、濃い影の部分に「試しに影を入れる」際にはちょうど良いでしょう。トーンの当たりを付けた後には、制作に必要となるトーンを後から加えていきましょう。

 B ~4B: 影の部分や背景の陰影技法に適しています。柔らかいため、濃い影や質感のある部分を描くのに便利であり、画面上に最初に描くデッサンには、後から消しやすいBや2Bでの取り組みがおすすめです。

 あなたが、鉛筆画・デッサンにこれからも長く取り組む意思が固まりましたら、種類を増やしていけばよいのです。

鉛筆の保管とメンテナンス

 鉛筆の寿命を延ばし、最高の表現力を維持するためには保管方法も重要です。乾燥した場所に保管し、鉛筆削りで適切に削って、描きやすさを保ちましょう。

 鉛筆の選び方は、陰影技法や作成する作品のスタイルによって変わるかもしれません。しかし、その基本的な理解は、あなたの芸術表現能力を向上させる大きな一歩となります。

 適切な鉛筆を選ぶことで、陰影技法もさらに洗練され、あなたの作品に深みと写実性をもたらします。

質感とニュアンス:細密な質感の陰影技法をマスターする

     第2回個展出品作品 洋ナシのある静物 F1 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画の魅力は、リアルな質感と微妙なニュアンス(要素)を表現することができる点にあります。木の皮や髪の毛、布の織り目など、細密な質感を正確に表現することで、作品は一段と写実的に、感動的になります。

 本章では、細かい質感の陰影技法を探求し、それを習得するためのヒントを提供します。

基本的な質感の描写技術

点描法

 小さな点を連続して打つことで、粗い質感や影の階調(グラデーション)を表現します。

ハッチング

 平行な線を連続して描くことで、影や質感を再現します。

クロスハッチング

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 大寺聡 氏

 線を交差させることで、深い影や濃い質感を作り出します。

質感別の陰影技法のコツ

木の皮

 縦の長い線と、それを横切る短い線を組み合わせることで、木の年輪や皮の質感を表現します。

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 三澤寛志 氏

髪の毛

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 三澤寛志 氏

 細い線を流れるように描き、毛先や影に注意を払うことで、髪の流れやボリュームを再現します。

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高沢哲明 氏

 クロスハッチングを使って折り目やしわを強調し、布の柔らかさや質感を描写します。

質感(テクスチャ)の深度と写実性

 質感の陰影技法では、深みを持たせることが重要です。物体の形や光の角度によって、質感の濃淡を変えることで、より写実な表現を目指します。

 例えば、球状の物体に木の皮の質感を描く場合、光が当たる部分は薄く、影の部分は濃く描くことで、球の形状を強調します。

 質感の陰影技法は、練習と観察によって習得することができます。身の回りのものを観察し、その質感を紙に再現することで、感覚を磨き上げましょう。

 そして、これらのテクニックを組み合わせることで、作品に深みと要素を加え、観る人を魅了することができるでしょう。

陰影技法の発展:中級者向けの応用技術とコツ

 陰影技法の基礎を習得した後、アーティストとしての次のステップは、その技術をさらに洗練し、作品に深みと独自性を持たせることです。

 中級者向けの陰影技法は、基本的な技術を基本にしながら、更なる表現力と細やかな描写を追求するものです。本章では、中級者向けの陰影技法の応用技術とそのコツを解説します。

レイヤリング技法の活用

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高沢哲明 氏

 レイヤリングは、複数の陰影技法の層を重ねることで、濃淡や質感を細かく調節する技法です。透明感や複雑な質感を表現する際に非常に有効です。

ステップ1: 軽く基本的な陰影技法を施します。

ステップ2: 更に細かな陰影技法を加え、深みや質感を強調します。

ステップ3: 最終的に、細部の微調整や明るい部分の強調を行います。

※レイヤリングとは、「層」を積み重ねるという意味合いの英単語です。因みに、登山などでも同じような使い方をしていますが、この場合には「重ね着」を指します。

トーンの階調(グラデーション)を細かく表現

 均一な陰影技法から段階的なグラデーションへの移行は、作品に写実性をもたらします。例えば、夕焼けの空のように、色の変化が滑らかで自然な場合、細かいグラデーション技法を使用します。

 テクニック: 軽く描き始め、徐々に圧を強めていくことで、自然なグラデーションを描写できます。

環境の影響を取り入れる

国画会展受賞作品 会友賞 誕生2013-Ⅱ F130 鉛筆画 中山眞治

 物体だけでなく、その周囲の環境も陰影技法の重要な要素です。反射光や投影、透明物体の後ろの光など、環境の影響を受ける部分の陰影技法は、作品全体のリアルさを大きく向上させます。

 中級者のアーティストにとって、陰影技法は単なる技術以上のものです。それは、感情、環境、物語を表現するための強力なツールとなります。

 これらの応用技術を習得することで、あなたの陰影技法スキルは次のレベルに進化し、作品は更に魅力的になるでしょう。

まとめ

第1回個展出品作品 1996 人物Ⅳ F10 鉛筆画 中山眞治

 陰影技法は、鉛筆画・デッサンの中でも特に表現力が豊かな技法として知られています。この技法の基本を習得した後、中級者のアーティストとして追求したいのは、作品にさらなる深みと独自性を持たせることです。

 ここでは、中級者向けの陰影技法とその応用について解説しています。まず考えるべきは、レイヤリング技法の活用です。

 これは複数の陰影技法層を重ねることで、濃淡や質感を細かく調節する手法です。例えば、透明なガラスのように、微細な質感や色の変化が必要な場合、この技法は非常に効果的です。

 基本的な陰影技法をまず施した後、さらに細やかな層を追加していくことで、深みや写実性を強調することができます。

 次に、トーンのグラデーションを細かく表現する技術が挙げられます。均一な陰影技法よりも、段階的なグラデーションが現実的な表現には必要です。

 夕焼けの空や、柔らかい肌の質感など、色の変化が滑らかで自然な場面での陰影技法は、細かいグラデーション技法を駆使して描写すると効果的です。

 この時、軽く描き始めてから徐々に圧を強めることで、自然な色の移り変わりを表現することが可能となります。

 そして、物体や人物を描く際には、その存在する環境の影響も考慮することが欠かせません。例えば、物体の周りの反射光や、窓から差し込む光の影響などをどう陰影技法で表現するかは、作品全体の写実性にを大きく影響します。

 陰影技法は、表現の幅を広げるための強力なツールです。中級者にとって、これらの応用技術を深く探求することで、作品に生命を吹き込み、観てくださる人の心を捉えることができるでしょう。

 継続的な練習とこれらの技術の活用を通じて、あなたの鉛筆画は新たな次元へと進化していくことでしょう。

 尚、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。

 それは、あなたの制作する画面全体を使って、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事を参照してください。

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 ではまた!あなたの未来を応援しています。

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