どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
さて、この鉛筆画・デッサン完全ガイドでは、静物画を描くための基本から応用まで、一貫したプロセスをご紹介します。
モチーフの選定から始まり、構成の考え方、構図基本線の引き方、黄金分割や√2分割などの高度なテクニックを含む詳細なステップまで、鉛筆画やデッサンを一段上のレベルへと引き上げるための知識と技術を網羅しました。
初心者が基本を固め、上級者がさらなる洗練を求める過程で直面する課題と解決策にも焦点を当てて、すべてのアーティストが自身の作品に新たな深みを加えられるようにご案内します。
それでは、早速見ていきましょう!
初心者ガイド: 鉛筆画・デッサンでのモチーフ選びの基本
鉛筆画・デッサンの静物描画がもたらすメリット
静物画といえば、歴史上の海外の有名な画家は、セザンヌ、ゴッホ、マネ、ルノアール、シスレー、ピサロ、ゴーギャンなど、まだまだたくさんの有名な画家がいらっしゃいます。
ところで、身近なモチーフで構図などを工夫して描くことができるとすれば、野外へスケッチに行く必要もないので天候にも左右されないことや、日照時間などの時間的な制約も受けないことが大きいのではないでしょうか。
静物を使って、構図にそれぞれのモチーフをいかに構成していくかをじっくりと考えることは、室内で落ち着いて、時間を気にせずに取り組めるので、絵画の制作に没頭できる至福の時間を満喫できます。
鉛筆画・デッサンに最適なモチーフの選び方
とかく静物画の制作では、色々なモチーフを使い、レイアウトなどさまざまに使うことができても、一定の限られた構成になりがちです。
そこで、今回の制作では、手近にあるモチーフの内、缶やビンとユニークなモアイ像を組み合わせることにしました。
鉛筆画・デッサンプロジェクト: 効果的な構想の立て方
鉛筆画・デッサンの前段階: 効果的なイメージ構築方法
今回の制作にあたっては、制作の対象となるモチーフに、その他のモチーフがまぶしく映り込んでいる状況を試みています。
それは、主役を構図分割基本線に置き、その主役に左右のモチーフの映り込みの光と影を最大限に強調させるということです。今回の筆者の制作例は、テーマの主体である構図に、①黄金分割②√2分割③反射、を意識して進みます。
それは、構図分割基本線上に、それぞれのモチーフを落とし込んで制作するということであり、各種構図基本線に対して、何をどのように関連付けて描いていくかということを考えることでもあります。
鉛筆画・デッサンの構成: 主役と脇役のバランスの取り方
そして、あなたが今回の記事を参考にして制作する場合でも、主役及び準主役と脇役や全体のレイアウトはどうするかを決めていきましょう。
今回は、凝ったレイアウトなどはあえて使っていませんが、元来は作品の中に観てくださる人の視線を外界へ導いて「解放感」をイメージできる、窓などの「抜け」を作ることがあります。
今回の作品では、あえて観てくださる人の視線を外部へ導かず、一点に集中させるように工夫します。
全体の構成では、観てくださる人の視線を、モチーフの主役の「缶の映り込み(反射)」へ集中してもらえるように、且つ、劇的な光と影を構成して、感動を与えられるようにイメージして進みます。
尚、あなたが、私の制作例に使っていないモチーフで、同じような構図で制作しても何ら問題ありませんが、私の制作例をそのまま使うことは、著作権がありますのでできません。あしからずご承知おきください。
鉛筆画・デッサンでの構成効果を最大化するテクニック
今回は、「缶への映り込み(反射)」が一番観てもらいたい主役部分になりますが、当たり前のモチーフが反射しているのでは面白みが少ないので、あえて、乱反射する種類の違うビン類を使うことにしました。
ビンとは、光を受けてまぶしく反射する部分と、逆に、黒い緊張感のある濃い色の部分があって、一種独特な雰囲気を作れるからです。
鉛筆画・デッサン制作プロセス: 必須のステップ解説
鉛筆画・デッサン制作前の準備: 成功への鍵
最初に、あなたが手始めにすることは、次のようの順序です。また、できれば、あなたの部屋で制作する場合には、リラックスできる落ち着いた音楽の用意と、部屋の中は心地よい温度と湿度に設定しましょう。
鉛筆画・デッサンの構想: 効果的なメモ描きの活用法
あなたが最初にすべきこととして、A4サイズの紙を用意しましょう。そのA4サイズの紙を正確に半分に切り、その紙にこれから描く作品のレイアウトをしましょう。
この時のコツは、あなたが初心者の場合には、描きたいと思えるモチーフを選ぶことが重要です。その理由は、描きたいモチーフであれば、多少複雑な形状であっても、挫折しにくいからです。
自由な気持ちで、画面上のどの位置に置くか、どのような大きさと向きにするか、一緒に描くモチーフは何にするかなどを考えて進みましょう。
鉛筆画・デッサンの構想: 効果的なメモ描きの活用法
エスキース(下絵)が、実際の制作画面よりも小さい時には、拡大していくことになりますので、そのことを頭に入れて画面に向き合いましょう。多少の違いは本制作画面で修整するくらいの気持で取り組めば問題は少ないはずです。
鉛筆画・デッサンにおける構想|何をどのように描くか考える
この構図とモチーフの配置を決める段階では、構図基本分割線上に、それぞれのモチーフを落とし込んで制作するということであり、各種構図基本線の配置に対して、何をどのように描いていくかということを考えることでもあります。
あなたが初心者で、趣味で終わらせるならば、ここまででよいでしょう。しかし、描くからには各種展覧会や公募展で入選まで狙いたいとお考になるのであれば、制作の当初に充分な構想を練ることが必要になります。
あなたが、主役・準主役及び脇役や全体のレイアウトはどうするかを決める際には、それ以前に、構想を練ることが重要であり、その大きなヒントは次の関連記事の中で見つかるはずです。
関連記事:鉛筆画・デッサンで差をつける:初心者から上級者までの制作構想の重要性とは?
下絵(エスキース)に構想を落とし込む技法
鉛筆画・デッサンの制作入門: 制作プロセスの始め方
メモ描き程度の構想を練ることが終了しましたら、次はあなたが取り組む本制作に入る画面の縮尺をかけたエスキースの画面に、構図基本線を描き込みましょう。
まず最初に、エスキースのサイズを実際に測り、構図分割線を入れるとすれば、その線はボールペンで入れておくと、そこへ鉛筆で描き込んでいくならば何度でも試行錯誤できます。
最終的に、あなたの気に入ったモチーフをあなたの気に入ったレイアウトに据えて、あるいは構図上の不足する部分を他のモチーフも加えて補うことにより、エスキースを完成することができます。
鉛筆画・デッサンの下絵(エスキース)の戦略
あなたが、本制作画面をF10のスケッチブックで取り組むとした場合、筆者のF10のスケッチブックのサイズの長辺は528mm・短辺が454mmです。
あなたが手元に用意した紙がA4の紙を2つに切ったものならば、短辺の縮尺は148mm÷454mmなので、0.3259という数値が出ます。
F10の長辺は528mmなので、この長さに上記の縮尺(0.3259)をかければ、172.07となります。
つまり、あなたの手元に用意した紙がA4の紙を2つに切ったものの長辺を172mmにすれば、あなたが本制作に入るF10を正確に縮尺したエスキースの土台ができます。
これをわかりやすく説明するならば、F10の短辺をエスキースの短辺にあわせて縮尺値を求め、実際のF10の長辺を縮尺してエスキースの長辺の寸法を求めるということです。
この作業のメリットは、正確な縮尺をかけたエスキースで制作した下絵の寸法は、本制作するF10の画面上で、縮尺値の0.3259で割れば、主要なモチーフの正確な位置を特定できるということです。
鉛筆画・デッサンの下絵における構図基本線の重要性
黄色線:構図基本線(対角線・画面縦横の2分割線)
黄金分割: 鉛筆画・デッサンにおける美の法則
水色線:黄金分割構図基本線
詳細はこの後で詳述します。
√2分割法: 鉛筆画・デッサンでの構図の革新
桃色線:√2分割構図基本線
詳細はこの後で詳述します。
鉛筆画・デッサンにおける全体のレイアウト設計法
- 黄色線:構図基本線(対角線・画面縦横の2分割線)
- 水色線:黄金分割構図基本線(1本)
- 桃色線:√2分割構図基本線(1本)
そして、構図分割基本線の位置にモチーフを描き込んでいきますが、この点につきましても順を追ってご説明します。また、この時に、モチーフと各導線との交わり方や、導線の導き方も同時に考えます。
今回の制作例では、モチーフの主役の立ち位置は、黄金分割構図基本線⑥上にあり、上下の位置が√2分割構図基本線ということになります。
鉛筆画・デッサンの「抜け」効果: 作品への応用法
尚、作品によっては、画面上に窓や外界へ抜けていく部分を作ると、別の効果を期待できますので、今後の制作では検討していきましょう(以降これを「抜け」と呼びます)。
この「抜け」があることによる効果とは、観てくださる人の息苦しさを解消できます。それは、意識がその「抜け」の先にある外界のひらけた空間に向けられて、解放感を与えられるからです。
この「抜け」に関する部分も、本記事最終部分に掲載している「関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは?」を参照してください。
そして、その効果は静物以外のどのジャンル(花・人物・動物・風景・心象風景)にも応用できます。さらに、画面の寸法上の中心点には、各種モチーフの中心点が重ならないように配置します。
その理由は、画面の寸法上の中心点に、特に主役や準主役のモチーフの中心を重ねてしまうと、画面の動きを止めてしまうからです。
尚、絵画制作上の中心とは、画面寸法上の中心点ではなくて、その制作にあたっての中心点であり、今回の制作例の場合であれば、黄金分割点(線)が中心ということになります。
鉛筆画・デッサンにおける基本線と下絵の整合性をチェック
今回の完成時のイメージは、色々凝った構図はあえて取り込まず、単純に「缶の映り込み(反射)」を主体とします。ユニークな「モアイ」は、目立つモチーフではあっても、実は「脇役」という位置づけになっています。
あなたの制作時にも、各構図基本線を使ってモチーフの位置や高さ、あるいは中心点になるように画面構成を考えましょう。
尚、本制作画面へ実際に描き進む場合は、それぞれの基本線にかかるようにそれぞれのモチーフをデフォルメして配置していきましょう。
つまり、導線にかかるように描きたくても高さの足りないモチーフは、意識的に導線にかかる高さにするということです。逆に、縮めて使うこともできます。幅についても同じことです。
視線を引き付ける: 鑑賞者を引き込む鉛筆画・デッサンの制作
黄金分割構図基本線⑥上にある主役の「缶の映り込み(反射)」をより目立たせることができるように、それ以外の特に背景などには濃いトーンを使うことで、より「缶の映り込み(反射)」を引き立てることを意識します。
この濃い色を使うことで、映り込みの細密な描写がくっきりと引き立ち、作品全体のリアリティーを高められることも覚えておきましょう。
鉛筆画やデッサンでは、他の技法と違って色彩はありませんが、光と影の劇的な対比による構成は、観てくださる人へ強烈なインパクトとなって印象づけられます。
鉛筆画・デッサンにおける画面構成の考慮点
「缶の映り込み(反射)」が充分に目立つためには、背後のトーンを思い切って濃くすることや、トーンの入れ方にも注意が必要です。中途半端なトーンでは、「缶の映り込み(反射)」が充分に際立たないと言うことです。
これらのことを、エスキースに「描いては消し描いては消し」を繰り返して、いかにして基本線を有効に使ったレイアウトや充分な強調ができるかを考えて完成させます。
一方、今回の制作例のような画面以外では、すべてのモチーフの中で主役以外のモチーフを細密に描き込み過ぎてしまうと、観てくださる人の注意をその部分に集中させてしまいますので注意が必要です。
実際に脇役のモチーフに細かい柄や模様が入っていても、それをありのままには描かないということなのです。密描写は主役だけと覚えておきましょう。
あなたの見ている視野の画面に入れるモチーフには、必ずしも全部を細密描写する必要はありません。それは写真に任せておけば良いのです。そうではなくて、あなたが見てくださる人へ、何を強烈に伝えたいのかをハッキリさせるということです。
ハッキリ言えば、主役や準主役以外のモチーフには、「意図的に手を抜く」「ハイライトを抑えて描く」などによって、主役や準主役役を際立たせ、あなたの感動を観てくださる人と共有できるようにしましょう。
鉛筆画・デッサン本制作前の画面サイズ測定法
スケッチブックのメーカーによっては、若干寸法が異なることがありますので、実際に鉛筆画を制作する画面のサイズを確認して、正確な構図基本線を引きましょう。
このことは、スケッチブック以外にも、例えばパネルに水張りをした画面で制作する場合のF100やそれ以上の大きさの画面にも共通して言えることです。
あなたも制作を進める時には、実際に描き進む画面のサイズに合わせて構図基本線を引きましょう。これは最も重要な点です。
鉛筆画・デッサンに構図分割基本線を効果的に引く方法
鉛筆画・デッサンの構図分割基本線作成時の注意点
各種基本線は、2Bや3Bなどの柔らかい鉛筆の軽いタッチで、親指・人差し指・中指でつまむように持ち描き込みます。
この時筆圧を強く描き込んでしまうと、のちの工程で練り消しゴムでは消しきれなかったり、跡が残ってしまうので、そのためには筆圧をかけ過ぎず優しく描くことが必要です。
黄金分割、構図分割基本線を用いた鉛筆画・デッサンの美学
水色線:黄金分割構図基本線
今回の制作例の黄金比率は実際の作例の大きさがF4なので、長辺が333mmで短辺は242mmであり、例えば長辺の黄金比率を求めるならば、333mm÷1.618=205.8となり、206mmの位置が黄金比率の分割点になります。
今回は、⑥の黄金分割線しか使いませんが、この黄金分割は逆側から図った分割線も描くことができます(⑤)。あなたの制作に、他のモチーフやレイアウトで強調させるために、このもう一つの黄金分割線も効果的に使うことができます。
尚、短辺にも黄金分割線も描くことはできますが、同じく今回は使いません。短辺にも黄金分割を入れるとすれば、242mm÷1.628=149.5mmになるので、149.5mmの位置が黄金比率の分割点になります。この分割点は、上下どちらからでも設定することができます。
√2分割、構図分割基本線: 構図に革命をもたらす方法
桃色線:√2分割構図基本線
今回の制作例の√2の比率は実際の制作例の大きさはF4ですから、長辺が333mmで短辺は242mmです。上記画像の短辺の√2分割点は242mm÷1.414=171.1なので、Aから図って、171mmの位置が√2分割点になります。
この部分でも、今回は使っていませんが、短辺の√2分割点はCから測って171mmの位置にもう一つの√2分割点を設定することもできます。
鉛筆画・デッサン制作: モチーフと構成の調和
- 黄色線:構図基本線(対角線・画面縦横の2分割線)
- 水色線:黄金分割構図基本線(1本)
- 桃色線:√2分割構図基本線(1本)
鉛筆画・デッサン進行中のポイント: 効果的なテクニック
構図基本線上に、先ほど制作したエスキースの内容を落とし込んでレイアウトします。実際に描き始める際には、まず全体を大づかみでとらえて描き進んでいきます。
そして、この段階では、今後あなたの制作作品によっては、必要ならば長め・短めの定規やコンパスもどんどん使いましょう。フリーハンドで直線や曲線を描くことは、制作を続けいく中でゆっくりと慣れていけばよいのです。
尚、F4の画面に対する正確な縮尺をかけた、A4を半分に切ったサイズのエスキースの制作は、148mm(エスキースの短辺サイズ)÷242mm=0.6115となります。
その縮尺をF4の長辺サイズ333mmに掛ければ、333mm×0.6115=203.62mmとなりますので、エスキースの長辺を204mmにすれば正確な縮尺を求められます。
この作業のメリットは、正確な縮尺をかけたエスキースで制作した下絵の寸法は、本制作するF4の画面上で、縮尺値の0.6115で割れば、主要なモチーフの正確な位置を特定できるということです。
エスキースからの配置: 鉛筆画・デッサンにおける応用
エスキースを元にして、モチーフを実際にレイアウトしますが、今回の「静物」では、黄金分割基本線と√2分割構図基本線の構図を意識しながら、上の画像のような状態をイメージします。
鉛筆画・デッサン制作のための画面制作ノウハウ
制作にあたっては、構図基本線を意識してレイアウトしますが、作品によって画面に納まりきれない部分は画面の外にハミ出てよいのです。あなたの描く画面には、あなたの必要とする部分だけを切り取って描きましょう。
それは、モチーフ全体を無理に画面に収めようとすれば、窮屈になってしまうからです。逆に、画面からハミ出ることによって、画面の外への広がりが表現できることになります。
このことは、どの作品を描いてゆくうえでも言えることで重要なことなので記憶しておいてください。
尚、画面最下部の底線(CD)上にモチーフを「乗っけた」ようにレイアウトすることは、重大な禁じ手なのでこれも覚えておきましょう。
画面構成における斜線の導線暗示の活用
今回の制作例では、斜線の導線暗示は全く配慮していませんが、制作例によっては斜線が通っていることを画面上のレイアウトや、モチーフの凹凸なども含めて表現するということです。
尚、作品によっては「水滴」や「枯葉の虫食い」なども上手に使いこなせられれば、導線に充分活用できることも記憶しておきましょう。
次の作品では、画面右上方角から出発した斜線を左下角への導線とするために、画面の右上に壁掛け時計を据えて、その中心を斜線の暗示に使っています。見えにくいかもしれませんね。^^
国画会展 入選作品 誕生2014-Ⅱ F130 鉛筆画 中山眞治
理想を形に: 鉛筆画・デッサンで夢を描く
絵画の制作では、実際のモチーフの形状を画面の構成上修整することがあります。これは、どの画家もほとんど行っていることでデフォルメと呼ばれており、鉛筆画・水彩画・油彩画・アクリル画等すべての制作技法について言えることです。
デフォルメは、風景画の場合であれば、実際の景色には電柱や電線があっても、作者の意図する一番見映えのする画面にするために、省略してしまうこともあります。
それは、現存する状態に修整を加える事であり、「省略」「削除」「変形」「強調」「つけたし」「拡大」「縮小」など何でもアリです。
尚、これらの構図基本線との重ね合わせは、構図の成り立ちを示すためでもあり、その暗示も含めて画面全体のバランスをとっているのです。
鉛筆画・デッサン開始時の構図とレイアウトの整理法
鉛筆画・デッサンにおける輪郭線の整理技術
最初に描き込んだ、全体の輪郭を取った際の、不要な線を練り消しゴムで整理しますが、こののちトーンを入れていくところにある線はそのままにしておきましょう。
なぜならば、そこへはこれからトーンを入れていくので消す必要がないからです。そして、モチーフにかかっている線や抜けの中にある線は消しておきましょう。
仕上げに向かって、明るい部分にするところにある無駄な線は目立ってしまうので、必ず消しておく必要があります。
また、練り消しゴムで消したところは、その後トーンを入れていくと、消していないところと比較すると鉛筆の乗り具合が少しだけ違ってくることがあります。このため、できるだけ練り消しゴムで消す部分は少なくすることを心がけましょう。
鉛筆画の仕上げ: 明暗を効果的に使う
最終仕上げにおけるメリハリの重要性
練り消しゴムでたくさんの線を整理した後は、いよいよ各モチーフのレイアウト後の制作工程に入りますが、その際は一番暗いところからトーンを入れていきましょう。
制作例の描き始めでは、画面一番右側のビンの右背後の壁面には4B→5B→6B、モアイ像の左側背後の壁面を2B→3B、モアイ像の背後右側はHB→B、と全体の様子を見ながら徐々に濃くしていきます。
光と影のドラマ: 鉛筆画・デッサンに映り込みを加える
テーブル上の各モチーフの反射の様子を見ながら、2B→3Bと入れていきますが、テーブル上の各モチーフの映り込みは、あくまでも主体ではないので、目立たないように配慮してトーンを入れていきます。
尚、影の中といえども、光っている部分があることと、より濃い影になっている部分があることを忘れてはいけません。
そして、今回の制作では、黒いA4サイズの下敷きにモチーフを載せて描いているので、各モチーフの影が、キレイに映り込んでいるのを描き込むことで、独特の描写を可能にしています。
また、各モチーフの接地面には4B~5B以上のトーンを使って「接地感」を必ず出しましょう。これが中途半端の場合には、「地に足がついていないような」不安定な見映えになってしまいます。
デッサンの悩みを解決: 鉛筆画のコツ
これは、あまり大きな声では言いたくない話ですが、筆者の場合には、例えば「缶」の左側のビンの輪郭線の、曲線部分の左右が同じように描けない場合どうしたらよいのか。
あるいは、「缶」の右側のビンの左右の輪郭線がうまく描けない場合などはどうすればいいのかというような問題では、まず定規を用意して、モチーフに中心線を薄く描き込みましょう。
そして、うまく描けている側の線を中心線から測って、反対側の位置に鉛筆で点を打ちましょう。その方法で2~3cm間隔で同じように下へ点を打っていき、最後はその並んだ点を結べば描けます。
尚、この場合、その点は強く描いてしまうと後から消すのに苦労しますので、2Bや3Bの軟らかい鉛筆で、優しく描き込みましょう。しかしこれは、絵画教室でやってはいけません。^^
鉛筆画・デッサンでのコンパスや定規の賢い使い方
絵画教室の先生方は、あくまでもフリーハンドでの制作にこだわる人が多いので、こんな話を絵画教室の先生方が聞いたら、「激怒もの」ですが、そんなことはどうでもよいのです。あなたが楽しく鉛筆画を描くことができることが最優先事項です。
今回の制作例の「缶」の右側のビンの輪郭線には定規を使って描いています。筆者は作品によっては、「洗面器」を使って曲線を描いたこともあります。
あなたも直線や円及び曲線を描くのに不安があったならば、躊躇なくこれらの道具を何でも使いましょう。ただし、「激怒する先生」がそばにいる時にはやらないようにしましょう。振り向いたら「大魔神」がいたらいやでしょ。^^
そして、制作を繰り返していくうちにこれらの直線や円あるいは曲線などについても慣れます。制作経験が増えていけば、どなたでも描けるようになれます。
大魔神
鉛筆画・デッサンにおける光の部分の強調方法
完成が近くなってきましたら、全体を観察してみて、本来ハイライトであるべきところがもう一つ明るくなくて、光っているように見えない場合には、その光っているべきところと隣接している部分や背景の黒さの度合いが足りていない場合があります。
「光」を、より「光」らしく見えるようにするには、隣接する部分や背景をより濃い黒にすることで、光るべき部分がより一層まぶしく輝き出します。次の画像の寸法上の中心点の右側の主役は、輝いて見えませんか?こんな感じです。
国画会展 入選作品 誕生2001-Ⅱ F80 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画・デッサンにおける中心点の扱い方
制作例の画面の中心点は、「缶」の左側のビンの中心点から右に少し寄ったところであり、中心点をわずかに避けています。
意識的に、画面の寸法上の中心点にモチーフを配置する場合は別として、複数のモチーフで構成する画面には、できるだけ画面の寸法上の中心点に主役や準主役の中心点を重ねないように避けて制作しましょう。
それは、画面の寸法上の中心点に主役や準主役のモチーフの中心点を重ねてしまうと「動きが止まってしまう」ので注意が必要なのです。
しかし人物画や動物画など、画面上で大きく面積を使うモチーフの場合などでは中心点を避けることはできませんし、する必要もありませんのでご安心ください。^^
インスピレーションを得る: 絵画鑑賞のススメ
ところで、たまには絵を見に行きませんか。私の個人的な印象では、日展は「きれいなだけで個性的で野心的な作品は少ない」記憶しかありません。
おすすめは第一に国画会の展覧会である「国展(4月末~5月中旬)」、次いで独立美術協会の展覧会である「独立展(10月)」や、新制作協会の展覧会である「新制作展(9月下旬~10月上旬)」です。
展覧会(全国公募展)へ行きましたら、細かな技法ばかりを見るのではなくて、作品から受けるあなたの印象が重要です。
最初の内はよくわからなくても、あなたが強く惹かれた・感性に響いた作品の印象をあなたの作品にどう反映できるかを考えるのです。やがてそれが、緊張感の出し方や画面構成のバランスなどに発展させることができるでしょう。
私は恥ずかしながら、抽象画がいまだによくわかりませんが、印象に残る具象画を見て帰ってくると、その印象を自身の作品に、どのように取り込むことができるかを考えるようにしています。
しかし、そっくりまねることは、意味もありませんのでやめましょう。細かいところまでを全部取りこもうとするのではありません。
構図などの大きな成り立ち及び、配置や濃淡のつけ方、画面の持っている「新たな着想」などを取りこむようにするということなのです。
もっと具体的に言えば、構図やデッサンは当然一番重要ではありますが、4隅(4つの角の周辺処理)をどのように充実させているかということはとても重要です。
つまり、絵画は大きな景色の中の一部分にすぎないので、その絵画の4隅の各外側への視線の誘導なり、意識が向かうような仕掛けをどのように施しているかを観察するということなのです。
それは、それぞれの角に視線が及ぶような仕掛けをしていることに気づくことです。その意識をもって、展覧会などで鑑賞してみてください。あなたの制作に対する新たな視点を開拓できます。
参考情報
国展:第98回国展(2024年) 出品要項 出品票請求フォーム | 国展 (kokuten.com)
まとめ
この完全ガイドを通じて、鉛筆画やデッサンの芸術を学び、モチーフの選定から、静物画の構成、構図基本線の引き方、さらには仕上げに至るまで、各段階を解説しました。
黄金分割や√2分割といった高度な構図技法も紹介し、あなたの作品に深みと洗練を加える方法を探求できます。初心者は基本をしっかりと学び、中級者や上級者はさらなる技術の向上を図ることができるでしょう。
また、デッサンがうまくいかないときの対処法や、インスピレーションを得るための絵画鑑賞の重要性も強調しています。このガイドを手に、あなたの鉛筆画やデッサンのスキルを新たな高みへと導きましょう。
自宅での練習から、上級者の作品制作まで、鉛筆画やデッサンに関するあらゆる情報がここに集約されています。あなたの芸術旅行が、このガイドを通じて、より豊かで深いものになることを願っています。
これらの一連の、「没頭できる充実した時間」によって生み出される作品は、あなた自身の自己達成感につながります。描くから上達する、上達するからさらに「嬉々として没頭できる」へと「連続的な成功体験」へとつながります。
また、各種展覧会や公募展への出品や、大きな自分自身の区切りとなる「個展の開催」へと続いていけば、自然とプロ画家になることもできます。
そこまで到達できれば、鉛筆画やデッサンは趣味を超えて、あなたの生活の「大きな核(生き甲斐)」となり、展覧会や公募展で知り合った仲間も増え、老後に何をしたらよいか「まごつく人々」をよそ目に、あなたに充実した日々を約束してくれます。
尚、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。
それは、あなたの制作する画面全体を使い切って、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事も参照してください。
関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは?
ではまた!あなたの未来を応援しています。
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