どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
さて、本記事では、初心者から上級者までの鉛筆画・デッサン愛好者へ、静物描画の全てを紹介する包括的ガイドです。
モチーフの選択から構想の練り方、脇役の活用、下絵の作成、本制作への進み方、画面構成の配慮、そして最終的な仕上げの技術まで、一歩ずつ丁寧に解説します。効果的な構図作りや画面のバランスの取り方も学べます。
それでは、早速見ていきましょう!
鉛筆画・デッサンの基本: モチーフ選びから始めよう
鉛筆画・デッサンと静物: 描画のメリットを探る
静物画といえば、歴史上の海外の有名な画家には、セザンヌ、ゴッホ、マネ、モネ、ルノアール、シスレー、ピサロ、ゴーギャンなど、まだまだたくさんの有名な画家がいらっしゃいます。
やはり、身近なモチーフで構図などを工夫して描くことができるとすれば、屋外へスケッチに行く必要もないので、天候にも左右されず、日照時間などの時間的な制約も受けないことが大きいのではないでしょうか。
何よりも、自分自身の好きなモチーフやレイアウトでたくさん描けるのは魅力ですし、身近なものを何でも使えるので、モチーフに困りません。
静物を使って、構図にそれぞれのモチーフをいかに構成していくかをじっくりと考えることは、室内で落ち着いて、時間を気にせずに取り組めるので、絵画の制作に没頭できる至福の時間を満喫できます。
理想の鉛筆画・デッサンのモチーフの選び方
今回の筆者の制作例は、テーマの主体である構図に、①「灯(あかり)」を中心とする②黄金分割③逆三角形を意識して進みます。
それは、構図基本分割線上に、それぞれのモチーフを落とし込んで制作するということであり、各種構図基本線に対して、何をどのように関連付けて描いていくかということを考えることでもあります。
あなたが今回の記事を参考にして制作する場合でも、主役・準主役及び全体のレイアウトはどうするかを決めていきましょう。
尚、あなたが、筆者の制作例に使っていないモチーフで、同じような構図で制作しても何ら問題ありませんが、筆者の制作例をそのまま使うことは、著作権がありますのでできません。あしからずご承知おきください。
鉛筆画・デッサンの構想を練る:競争に勝てるオリジナリティーの必要性
国画会展入選作品 誕生2001-Ⅱ F80 鉛筆画 中山眞治
競争に勝てる個性の発揮方法
あなたは、主役・準主役及びレイアウトはどうするかを決めていく際には、できるものであれば、あなた独自のテーマを考えてみましょう。
それは、例えば、寛ぎのひと時をシリーズ化、季節を象徴する花・果物・野菜で季節を表現、夜の街をシリーズ化、夕暮れ時を専門的に描くなど、あなたが描きたいと思えるテーマを見つけることであり、静物、人物、動物、風景すべてに言えることです。
その専門的なテーマが、あなたのオリジナリティーとなり、他の画家たちとの差別化を図れからです。ここは、いきなり大きな情報になりますが、あなたがこれから制作を進める際に、一番に考えるべき重要な点です。
ブランディングの構築方法
それが、あなた独自のブランディングの構築になるということです。「この作風の絵はあの人の作品だな」と思われるようになりましょう。やみくもに描くことは、意味が少なく、効果的な展開には結びつきません。
どの上級者であっても、この部分は常に考え続けている点なので、早い段階から、あなたがこの点に気づいて検討を進めることは、重大な意味を持ちます。この点は、画家にとって一生考え続けていく部分だからです。
このことをわかりやすく説明するならば、モネの「睡蓮シリーズ」などはまさにこのことの実践なのです。尚、着想を得るためのヒントでは、次の記事も参照してください。
関連記事:鉛筆画・デッサンで初心者から中級者必見!複合した構図で心象風景を描く方法Ⅱ
鉛筆画・デッサンのための構想とプランニングガイド
鉛筆画・デッサンの前に: 構成イメージの作り方
暗闇に点(とも)る、ランプやロウソクの「灯(あかり)」というものは、ゆったり眺められて心が癒されるものです。
暗闇で「灯」を見ていると、「真実」や「本心」、または「本当の願い」などを、語りたくなってしまうような不思議な力を感じます。時には、すがりたくなるような「ぬくもり」さえ感じるものです。
このように、「灯」には落ち着ける要素をたくさん含んでいますので、その要素をさらに引き出せるように、それぞれのモチーフの配列も考えます。
そこで、求心力ともいえる力のある「灯」を構図上の中心点(黄金分割点)に据えると同時に、逆三角形の強固な構図を導入することで、画面に力強さを出すことにします。
鉛筆画・デッサンの構成: 明確な目的の設定
実際に灯りを点してレイアウトする重要性
画面構成上、「灯」を「灯」として充分引き立てるためには、隣り合わせに濃い影が必要になります。
そして、「灯」を構図上の中心点(黄金分割上)に配置して制作すると、それぞれのモチーフが光を受けて輝いている部分と、影になっている部分を詳細に描き込むことによって全体がまとまってきます。
そこで、今回の制作例では、具体的に何をおこなったかといえば、撮影のためのカメラを用意して、実際にアルコールランプに「点火」して室内の照明を消し、さまざまにテーブル上のモチーフの構成を考えました。
光と影の劇的な対比の実践
尚、構図の本を見ると、中空の三角の構図などでは、頂点に灯(あかり)や炎を設定している作品が多かったので、それをまねることはせず、画面上の黄金分割の位置にランプの炎を据えて逆三角形の構成にします。
また、実際に室内で「灯」を点(とも)して配列を考えていくと、テーブル上のランプ以外のモチーフ全体がランプの「灯」を受けてそれぞれに輝いて素晴らしい光景だったので、ランプ以外のテーブル上のモチーフ全部を「準主役」と位置付けます。
「脇役」は、ランプの「灯」を受けてできる、背景の人型のビンとカーテンの影です。尚、実際にランプを点して配列が決まりましたら、写真に収めましょう。万一の危険を回避するためです。
鉛筆画・デッサンにおける脇役の重要性とその効果
全体の構成では、観てくださる人の視線を、室内の「灯の点る静物」を見ることによって「妙に落ち着く」ような感覚の静物画を目指しますので、画面全体で表現するからには脇役の役割も重要です。
今回の、制作例の脇役である人型のビンの影は、ランプの「灯」によってできている影なので、空間表現に役立つことや、その影の一部にも導線の役割を担わせます。また、背後のカーテンの影によって、「在室感」も高めます。
鉛筆画・デッサン本制作への道: 準備とプロセス
まず最初にあなたが手始めにすることは、次のようの順序です。
鉛筆画・デッサンの構想: メモ描きからのアイデア発展
まずは、あなたの身の回りにあるA4サイズの紙を用意して、それを正確に半分に切り、今回のあなたの作品のまずはメモ描き程度で自由に構想を練りましょう。
鉛筆画・デッサンの下絵(エスキース)への構図落とし込み
エスキースのサイズを実際に測って、構図分割線を入れていきます。そして、構図基本線を入れるならば、その線はボールペンで入れておくと、そこへ鉛筆で描き込んでいけば何度でも試行錯誤できます。
最終的に、あなたの気に入ったモチーフをあなたの気に入ったレイアウトに据えて、あるいは構図上の不足する部分を他のモチーフも加えて補うことにより、下絵(エスキース)を完成させることができます。
鉛筆画・デッサンの本制作
エスキースが実際の制作画面よりも小さい時には、拡大していくことになりますので、そのことを頭に入れて画面に向き合いましょう。多少の違いは本制作画面で修整するくらいの気持で取り組めば問題は少ないはずです。
尚、エスキースには次のような構図基本線を描き込みます。
鉛筆画・デッサン制作の開始: 実践ステップガイド
メモ描き程度の構想を練ることが終了しましたら、次はあなたが取り組む本制作に入る画面の縮尺をかけたエスキースの画面に、構図基本線を描き込みましょう。
あなたが、本制作画面をF10のスケッチブックで取り組むとした場合、筆者のF10のスケッチブックのサイズの短辺は454mm・長辺が528mmです。
あなたが、手元に用意した紙がA4の紙を2つに切ったものならば、短辺のサイズは148mmなので、148mm÷454mmとなり、0.3259という数値が出ます。
F10の長辺は528mmなので、この長さに上記の縮尺(0.3259)をかければ、172.07となりますので、あなたの手元に用意した紙がA4の紙を2つに切ったものの長辺を172mmにすれば、あなたが本制作に入るF10を正確に縮尺したエスキースの土台ができます。
このエスキースの土台画面に、黄金分割の基本線を引く場合には、縦横共にそれぞれの長さ÷1.618で値を求めます(具体的な説明はこの先で行います)。
この値を、画面の横であれば、上記画像のように左右からそれぞれ2つの分割点(線)⑤⑥を設定できます。縦の場合でも、上記画像のように上下からそれぞれ2つの分割点(線)⑦⑧を求められます。
そして、上の画像のように、画面の縦横の2分割線(③④)と画面上の対角線(①②)を引くことによって、この黄金分割構図基本線は完成します。
鉛筆画・デッサンの下絵: 構図基本線の描き方
そして、描き込んだ基本線の黄金分割の位置にモチーフを描き込んでいきますが、この点につきましても順を追ってご説明します。また、この時に、モチーフと各導線との交わり方や、導線の導き方も同時に考えます。
今回の制作例では、モチーフの主役は、中心点右側の黄金分割線⑥上にあるランプです。尚、このランプの明かりの位置は、縦横の黄金分割線の交点に据えていますので、強力な構図の位置関係にあるともいえます。
そして、ご覧のように、人型のビンも中心点左側にあるもう一つの黄金分割線⑤上、ミルは中心線上、コーヒーカップもランプと同じ黄金分割⑥上、に配置していきます。また、画面の寸法上の中心点を微妙に避けている点も確認してください。
尚、人型のビンの影も導線に使う以外に、右上角Bからの斜線①の導線に、テーブル上にクルミを置いて導線を暗示します。尚、テーブルの奥の高さは黄金分割線をそのまま使うことにします。
鉛筆画・デッサンでの全体レイアウトの考え方
尚、作品によっては、画面上に窓や外界へ抜けていく部分を作ると、別の効果を期待できますので、今後の制作では検討していきましょう(以降これを「抜け」と呼びます)。
この「抜け」があることによる効果とは、観てくださる人の息苦しさを解消できます。それは、意識がその「抜け」の先にある外界のひらけた空間に向けられて、解放感を与えられるからです。
そして、その効果は静物以外のどのジャンル(花・人物・動物・風景・心象風景)にも応用できます。
尚、この場合の「抜け」を作る際には、画面右上の角BからAB上の⑥を降りて、交点FをBDとの接点の範囲を「抜け」に使うことで、あからさまな強調ができることも記憶しておきましょう。この方法は、画面左上の部分でも使えます。
さらに、画面の中心点には、それぞれのモチーフがかからないように配置します。その理由は、画面の寸法上の中心点に、主役・準主役の中心点を重ねてしまうと、画面の動きを止めてしまうからです。
鉛筆画・デッサンの基本線と下絵: 整合性の確保
- 黄色線:構図基本線(対角線・画面縦横の2分割線)
- 青色線:黄金分割線(上下左右の各2本)
- 桃色線:逆三角形の構図を表す線
- 赤色線:テーブルの位置を示す線
今回の完成時のイメージは、各構図基本線を使ってモチーフの位置や高さ、あるいは中心点になるように画面構成を考えます。
そして、主役のモチーフを黄金分割構図基本線⑥上の交点 J に「灯」の中心がくるように、また、それ以外のモチーフも描き込みます。
尚、各モチーフの配置は、逆三角形になるようにすると同時に、ランプの「灯」でそれぞれのモチーフが輝いて一番見映えのするアングルを探して配置します。全体の配置に納得を得られましたら、写真に収めましょう。
次に、実際に描き進む場合は、それぞれの基本線にかかるようにそれぞれのモチーフをデフォルメして配置していきましょう。
つまり、導線にかかるように描きたくても高さの足りないモチーフは、意識的に導線にかかる高さにするということです。逆に縮めて使うこともできます。幅についても同じことが言えます。
視線を捉える鉛筆画制作テクニック
黄金分割構図基本線⑥上にある主役の「灯」をより目立たせることができるように、それ以外のモチーフには濃いトーンを使うことで、より「灯」を引き立てることを意識します。
明るさを強調するためには、その背後や隣接する部分には、濃いトーンが必要なのです。
今回の制作例では、特に、コーヒーミルの注ぎ口や本体が「灯」に包まれているところや、コーヒーカップの受け皿に投影している「灯」、コーヒーミルの側面や回り込んでいる「灯」、人型のビンの複雑な輝きの部分などです。
また、ランプの「灯」を受けて輝くモチーフ群の存在感を高めることが、ひいてはランプの「灯」を強調することにつながることも忘れないようにしましょう。そのためにも、各モチーフの光を強調する上で効果的な影が必要になるのです。
鉛筆画・デッサンの画面構成: 注意すべき要素
ここで肝心なのは、「灯」を中心とした制作例の場合には、「灯」と影の対比による効果で、主役の「灯」以外のモチーフを細密に描き込んでも、見ていただく人々の視線は「灯」に集中しますので、この場合には問題になりません。
ただし、「灯」が「灯」らしく見えるためには、「灯」を放っているモチーフ以外へのトーンの入れ方には注意が必要です。中途半端なトーンでは、「灯」が「灯」らしく見えないということです。
これらのことを、エスキースに「描いては消し描いては消し」を繰り返して、いかにして基本線を有効に使ったレイアウトや、充分な強調ができるかを考えてエスキースを完成させます。
一方、今回の制作例のような「灯」を中心とした制作画面以外では、すべてのモチーフの中で主役以外のモチーフを細密に描き込み過ぎてしまうと、見てくださる人々の注意をその細密描写部分に集中させてしまいますので注意が必要です。
細密描写は主役・準主役だけと覚えておきましょう。
鉛筆画・デッサン制作時の画面サイズの測定法
スケッチブックのメーカーによっては、若干寸法が異なることがありますので、実際に鉛筆画・デッサンを制作する画面のサイズを確認して、正確な構図基本線を引きましょう。
このことは、スケッチブック以外にも、例えばパネルに水張りをした画面で制作する場合のF100やそれ以上の大きさの画面にも共通して言えることです。
あなたも制作を進める時には、実際に描き込む画面のサイズに合わせて構図基本線を引きましょう。これは最も重要な点です。
鉛筆画・デッサン本制作: 構図基本線の引き方
鉛筆画・デッサンの構図基本線: 優しい描画の必要性
この各種基本線は、2Bや3Bなどの柔らかい鉛筆の軽いタッチで描き込みます。
この時筆圧を強く描き込んでしまうと、のちの工程で練り消しゴムでは消しきれなかったり、跡が残ってしまうので、そのためには筆圧をかけ過ぎず優しく描くことが必要です。
鉛筆画・デッサンの構図分割基本線: 描画のポイント
黄金分割構図基本線を引いた後で、既成のF10で制作を進める場合には、筆者の使っているF10のスケッチブックの大きさは短辺が454mmで長辺は528mmです。
今回の制作例での短辺の長さは454mmなので、454mm÷1.618=280.59=280.5mmの位置が黄金分割点(線)になります。これは左右どちらからでも設定できます(⑦⑧)
また、長辺の黄金比率を求めるならば、528mm÷1.618=326.32となり、326mmの位置が黄金分割点(線)になります。この分割点(線)は、左右どちらからでも設定することができます(⑤⑥)。
尚、あなたの使うスケッチブックの大きさに合わせて、正確な分割点(線)を描き込みます。実際に測って描線することを忘れないようにしましょう。
本制作画面における、鉛筆画・デッサンでのモチーフと構成の整合性
鉛筆画・デッサンの本制作における、当初のツールの使用方法
構図基本線上に、先ほど制作したエスキースを落とし込んでレイアウトします。実際に描き始める際には、まず全体を大づかみでとらえて描き進んでいきます。
細かいことはさておいて、2Bなどの柔らかい鉛筆を親指・人差し指・中指でつまむように軽く持ち、全体を優しいタッチで描いていきましょう。
そして、この段階では、今後あなたの制作作品によっては、必要ならば長め・短めの定規やコンパスもどんどん使いましょう。フリーハンドで直線や曲線を描くことは、制作を続けていく中でゆっくりと慣れていけばよいのです。
鉛筆画・デッサン制作の進行: 実践的なアプローチ
- 黄色線:構図基本線(対角線・画面縦横の2分割線)
- 青色線:黄金分割線(上下左右の各2本)
- 桃色線:逆三角形の構図を表す線
- 赤色線:テーブルの位置を示す線
モチーフを実際にレイアウトしますが、今回の「静物」では、黄金分割構図基本線を意識しながら、上の画像のような状態をイメージします。
鉛筆画・デッサンの画面制作ノウハウ
制作にあたっては、構図基本線を意識してレイアウトしますが、作品によって画面に納まりきれない部分は画面の外にハミ出てよいのです。あなたの描く画面には、あなたの必要とする部分だけを切り取って描きましょう。
それは、モチーフ全体を無理に画面に収めようとすれば、窮屈になってしまうからです。逆に、画面からハミ出ることによって、画面の外への広がりが表現できることになります。
このことは、どの作品を描いていくうえでも言えることで重要なことなので記憶しておいてください。
尚、画面最下部の底線(CD)上にモチーフを「乗っけた」ようにレイアウトすることは、重大な禁じ手なのでこれも覚えておきましょう。私はこれをやって叱られたことがあります。^^
鉛筆画・デッサンの画面構成: 斜線の導線暗示
制作例では、画面左上の角Aからの斜線②は、人型のビンの影の上の角を通って、人形ビンの乳房のラインを抜けて、コーヒーポットの注ぎ口から本体の底の角を通り、画面右下の角Dへ到達しています。
また、画面右上の角Bからの斜線①は、中心点を抜けて、テーブル上のクルミのすぐ脇を通って、画面左下の角Cに到達しています。
つまり、斜線が通っていることを画面上のレイアウトや、モチーフの凹凸なども含めて暗示するということです。尚、作品によっては「水滴」や「枯葉の虫食い」なども上手に使いこなせられれば、導線に充分活用できることも記憶しておきましょう。
理想を映し出す鉛筆画・デッサンの制作
絵画の制作では、実際のモチーフの形状を構図の構成上修整することがあります。これは、どの画家もほとんど行っていることでデフォルメと呼ばれており、鉛筆画・水彩画・油彩画・アクリル画等すべての制作技法について言えることです。
デフォルメは、風景画の場合であれば、実際の景色には電柱や電線があっても、作者の意図する一番見映えのする画面にするために省略してしまうこともあります。
それは、現存する状態に修整を加える事であり、「省略」「削除」「変形」「強調」「つけたし」「拡大」「縮小」など何でもアリです。
尚、これらの構図基本線との重ね合わせは、構図の成り立ちを示すためでもあり、その暗示も含めて画面全体のバランスをとっているのです。
鉛筆画・デッサン初期の構図とレイアウトの整理法
- 黄色線:構図基本線(対角線・画面縦横の2分割線)
- 青色線:黄金分割線(上下左右の各2本)
- 桃色線:逆三角形の構図を表す線
- 赤色線:テーブルの位置を表す線
鉛筆画・デッサン完成への道: モチーフの輪郭線整理
最初に描き込んだ、全体の輪郭を取った際のたくさんの線を練り消しゴムで整理しますが、こののちトーンを入れていくところにある線はそのままにしておきましょう。なぜならば、そこへはこれからトーンを入れていくので消す必要がないからです。
そして、モチーフにかかっている線や抜けの中にある線は消しておきましょう。仕上げに向かって、明るい部分にするところにある無駄な線は目立ってしまうので、必ず消しておく必要があります。
また、練り消しゴムで消したところは、その後トーンを入れていくと、消していないところと比較すると鉛筆の乗り具合が少しだけ違ってくることがあります。このため、できるだけ練り消しゴムで消す部分は少なくすることを心がけましょう。
鉛筆画仕上げ: 明暗のバランス
第2回個展出品作品 灯(あかり)の点る(ともる)静物 2001 F30 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画の最終仕上げ: メリハリの重要性
全体の輪郭を改めて整え、最初に取り組むべきトーンの順序
練り消しゴムでたくさんの線を整理した後は、鉛筆を「文字を書くときの握り方」に変えて、全部のモチーフの輪郭を、当初のデッサンで使った鉛筆よりも一段薄い鉛筆で形を整えて、トレースしましょう。
そして、いよいよ各モチーフのレイアウト後の制作工程に入りますが、その際には一番暗いところからトーンを入れていきましょう。
制作例の描き始めでは、テーブル左側面の影の部分と左上の人型のビンの影の左側や、コーヒーミルの影の部分とコーヒーカップの影の部分及びコーヒーポットの影の部分などの濃い色のところを先に描き込んでいきます。
全体のバランスを見ながらトーンの明暗差を強調
しかし、コーヒーポットの陰には光が差し込んでいるところに注意しましょう。また、コーヒーポットの右後ろのボトルのラベルも黒いので、先に描き込んでいきますが、同時に全体へも少しづつトーンを入れていきましょう。
テーブルの上には、当初HBで描き込んでいき、制作の過程において色合いが弱く感じるようでしたら、Bを使っていきましょう。
制作上の一番濃い黒は当初5Bから進めていき、全体の完成が近づいてきましたら、全体の画面の色合い配分の加減を見ながら、徐々にもっと濃いトーンを使いましょう。
作品例の最終的な完成時には、仕上げとして最も濃い影が必要になるところへ9Bを使っています。
デッサンの困難を乗り越える方法
デッサンの難点を克服する方法
これは、あまり大きな声では言いたくない話ですが、筆者の場合には、例えば構図基本線⑥上にあるランプについてですが、ランプの「ホヤ」の曲線部分の左右が同じように描けない場合どうしたらよいのか。
あるいは、画面上のコーヒーポットの斜め後ろの、ボトルの左右の輪郭線がうまく描けない場合などには、まず定規を用意して、モチーフに縦の中心線を2Bや3Bなどで薄く優しく描き込みましょう。
そして、うまく描けている側の線を中心線から測って、反対側の位置に鉛筆で点を打ちましょう。
その方法で2~3cm間隔で同じように下へ点を打っていき、最後はその並んだ点を結べば描けます。尚、この場合、その点は強く描いてしまうと後から消すのに苦労しますので、あくまでも優しく描き込む必要があります。
コンパスや定規の使用には注意が必要
こんな話を絵画教室の先生型が聞いたら、「激怒もの」ですが、そんなことはどうでもよいのです。あなたが楽しく鉛筆画を描けることが最優先事項です。
尚、今回の制作例の背景にある「テーブル」は、定規を使っています。また、丸いものはコンパスを使いましょう。
私は作品によっては、「洗面器」を使って円を描いたこともあります。あなたも直線や円を描くのに不安があったならば、躊躇なくこれらの道具を使いましょう。
ただし、「激怒する先生」がそばにいる時にはやらないようにしましょう。^^そして、制作を繰り返していくうちにこれらの直線や円あるいは曲線などについても慣れます。経験が増えていけば、どなたでもできるようになれます。
鉛筆画における光の強調技法
完成が近くなってきましたら、全体を観察してみて本来ハイライトであるべきところが、もう一つ明るくなくて、光っているように見えない場合には、その光っているべきところと隣接している部分や背景の黒さの度合いが足りていない場合があります。
「灯」をより「灯」らしく見えるようにする場合には、隣接する部分や背景をより濃い黒にすることで、光るべき部分がより一層輝き出します。
尚、制作例で一番明るいところは、当然ですがランプの「灯」です。つまり、ランプの「灯」は下地の紙の色ということです。
鉛筆画・デッサンにおける中心点の扱いとその重要性
ところで、画面寸法上の中心と、構図上の中心点は違います。絵画上の中心点とは、構図分割点になります。つまり、本記事の中の制作例の中心点はどこかと尋ねられれば、黄金分割点(線)上にある「ランプの灯」ということです。
それを言うのであれば、人型のビンも黄金分割点(線)上にあるではないかということになるかもしれませんが、そこは3角形の構図の中心であり、灯が何よりも中心なのは一目瞭然なので、観てくださる人を混乱させません。
尚、制作例の寸法上の中心点は、コーヒーミルの最上部のすぐ上で、中心点をわずかに避けています。意識的に中央にモチーフを配置する場合は別として、複数のモチーフで構成する画面では、できるだけ画面の中心点を避けて制作しましょう。
それは、画面の寸法上の中心点に、主役・準主役のモチーフの中心を重ねてしまうと「動きが止まってしまう」ので注意が必要なのです。
しかし人物画や動物画など、画面上で大きく面積を使うモチーフの場合などでは中心点を避けることはできませんし、する必要もありませんのでご安心ください。^^
まとめ
午後の寛ぎ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治
本ブログでは、鉛筆画とデッサンの世界を深く掘り下げます。静物描画におけるモチーフ選定の重要性から始め、鉛筆画制作の構想、構成前のイメージ作り、構成の狙いの明確化、そして脇役の効果的な使用について詳述します。
本制作に向けた各段階では、準備、メモ描きによる構想の試行錯誤、そして構図分割基本線のある下絵(エスキース)へのアプローチを説明。
実際の制作過程では、下絵に構図基本線を加える方法、全体のレイアウト、基本線と下絵との整合性、視線を意識した制作などについてアドバイスします。
画面構成上の配慮点、鉛筆画本制作におけるさまざまな技術的側面にも触れ、構図分割基本線の引き方、エスキースに基づいた配置、画面制作上のノウハウ、画面構成の斜線導線暗示などを紹介。
最終的な仕上げでは、鉛筆画の輪郭線以外の整理、暗い部分の強調、明るい部分の明るさの調整、そしてデッサンの技術的課題への対応方法に言及します。
コンパスや定規の使用、光っている部分の強調方法、中心点の扱いにも注意を向け、読者が自身のデッサン技術を向上させるための実践的なアドバイスを提供します。
このブログは、鉛筆画とデッサンの技術を磨きたいすべての人にとって、価値あるリソースとなるでしょう。
尚、この構図記事の他にも、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。
それは、あなたの制作する画面全体を使って、さまざまな構図や発想を駆使することにより、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事も参照してください。
関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは
ではまた!あなたの未来を応援しています。
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