どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
さて、鉛筆画やデッサンは、その繊細な表現力で多くのアーティストたちを魅了してきました。この記事では、初心者から上級者までが楽しめる、鉛筆画やデッサンで傘を擬人化する独特の方法を紹介します。
基本的な鉛筆の持ち方から、陰影のつけ方、細かいディテールの描き方まで、段階ごとに丁寧に解説していきます。
この記事を読むことで、あなたも鉛筆画やデッサンで独自のアート作品を創り出すことができるようになれるでしょう。
それでは、早速どうぞ!
初心者向け鉛筆画・デッサン入門:擬人化傘の描き方ステップバイステップ
第1回個展出品作品 男と女 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画・デッサンで傘を人間のように描く:ユニークなアプローチ
今回の制作例では、ただ単に傘を描くのでは面白みがないので、男性用の傘と女性用の「日傘」を組み合わせて、「男と女」をイメージできるようにしました。
実際の制作時では、足の着いたパイプハンガーに透明な釣り糸(テグス)で2本の傘とも吊って、スポットライトをあてて部屋の明かりを消し、傘によってできる影の形状も面白い状態だったので描き込みました。
制作例のように、傘をテグスで吊って、あなたの好みのシチュエーションを考えて、尚且、あなたのデスクの上の照明でも良いので、光を当ててみましょう。寄り添う男と女、あるいはミュージカルのカルメンの一幕のような作品もできるはずです。
鉛筆画・デッサンで描く異なるスタイルの傘:インスピレーションとアイデア
上の画像のような壊れたビニール傘で、(失恋の)「傷心」を表現することもできるのではないでしょうか。
そして、男性用の傘と女性用の傘に子供用の傘を加えて、家族を表現することもできますし、風で飛び去ってゆく複数の傘で、画面上に動きもつけられます。下の作品の、飛んでいる帽子を傘に変えて考えるのも方法の一つです。
予期せぬ訪問者 2019 F3 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画・デッサンのアイデア生成:発想を形にする方法
日美展 大賞(文部科学大臣賞、デッサンの部大賞) 誕生2023-Ⅱ F30 鉛筆画 中山眞治
まずは、今回のあなたの作品のメモ描き程度で自由に構想を練りましょう。あなたが初心者の場合には、構想や構図などについては何も考えないで、気に入った物を自由に楽しんで描くことが重要です。最初の内は、楽しく5~10作品ほど描きましょう。
しかし、中級者から上級者で、展覧会や公募展へ出品を考えているのであれば、作品制作以前に事前の充分な構想を練る必要がありますし、その際には構図や構成なども考えなければ入選できません。
その理由は、構図や構成をしっかりと考えていない作品は、観てくださる人に感動を与えられませんし、各種展覧会や公募展へ出品しても審査員の心を掴むことはできないからです。
モチーフを上手に描けたとしても、それでは足りません。あなたが制作する画面全体を使い切って、より魅力的な作品にする必要があるのです。
構想を練ることの重要性は、次の関連記事を参照してください。また、構図について関心のある人は、この記事最終部分に掲載の「鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは」を参照してください。
関連記事:鉛筆画・デッサンで差をつける:初心者から上級者までの制作構想の重要性とは?
鉛筆画・デッサンアート:理想の傘のイメージの選び方
鉛筆画・デッサンで傘を描くメリット:芸術的な視点から
静物画といえば、歴史上の海外の有名な画家は、セザンヌ、ゴッホ、マネ、ルノアール、シスレー、ピサロ、ゴーギャンなど、まだまだたくさんの有名な画家がいらっしゃいます。とりわけ、傘に関する絵では上の画像のモネが有名な作家です。
そして、身近なモチーフで構図などを工夫して、今回のテーマのように描くことができるとすれば、野外へスケッチに行く必要もないので天候に左右されず、日照時間などの時間的な制約も受けないことが大きいのではないでしょうか。
静物を使って、構図にそれぞれのモチーフをいかに構成していくかをじっくりと考えることは、室内で落ち着いて、時間を気にせずに取り組めるので、絵画の制作に没頭できる至福の時間を満喫できます。
心を動かす傘のイメージの選び方:鉛筆画・デッサンアーティストガイド
今回は、傘に関するモチーフを対象として進んでいきますが、あなたの描きたい画像を手元に用意してください。それは、図書館から借りてきた写真集でも、あるいは、ネットからダウンロードやスクリーンショットしたものでもよいのです。
ただし、著作権のある画像は注意して取り扱いましょう。その画像を元にして制作するので問題はないはずですが、記事にアップするようなことがある際に、元にした画像を掲載するようなときには注意が必要なので、無料の画像がベターです。
尚、画像通りの描き方を考えなくてもよいのです。あなたの気に入った背景にするとか、余分な映り込みを省略(デフォルメ)するなどして、観てくださる人が混乱しないように整理しましょう。
それによって、作品がストレスなく観てもらえるようになります。
鉛筆画・デッサンにおける傘の描き始め方:基本ステップ
最初に、一番気をつける必要があることはモチーフ全体の大きさと位置です。それは、制作が進んだ途中の段階から間違いに気づいても、大きさと位置はほとんどの場合に変えられないからです。
そして、モチーフ全体の大きさと位置の輪郭が決まりましたら、大きいところから、小さいところの順に描いていきます。細かなところは後で修整しますので、描き始めは、全体のバランスを取ることだけを考えて描いていきましょう。
また、今回の制作では、構図は考えませんので、あなたの描きたいように自由に描き進んでいきましょう。
尚、一番最初に取り掛かるのは当然、全体の輪郭からになるはずですが、その場合には、人指し指・中指・親指でつまむように鉛筆を持ち、大きく腕を動かすイメージで、リラックスして優しいタッチで描いていきましょう。
やがて、たくさんの線を引いた中で、「この線だ」と思える線に出会えますので、全体をそのような状態で描いた後では、練り消しゴムを使って、不要な線を整理しましょう。
その後は、鉛筆を「文字を書くときの握り方」に変えて描き進みます。鉛筆の材料についての詳細は、次の関連記事を参照してください。
関連記事:初心者必見!鉛筆画・デッサンで最適な鉛筆の選び方とその特性ガイド
初心者向け陰影テクニック:鉛筆画・デッサンにおける傘の描き方
画面上に対象となるモチーフの輪郭が描けましたら、陰影をつけていきます。重要なのは、描き始めの最初では細かいところは気にしないことです。
この段階では、作品全体の明暗を徐々に描き進めます。まず初めは、一番濃い色のところから陰影をつけていきましょう。
鉛筆画・デッサンにおける作品全体の進行方法:効率的なテクニック
対象となる傘の背景も同じように描き進めていきます。あくまでも傘と背景は同時進行です。この段階でも大切なのは、作品全体のバランスを考えることです。
鉛筆画・デッサンにおけるタッチの方向:傘の描き方のコツ
タッチ(※)の向き(鉛筆を動かす方向)は、そのモチーフに合った方向でつけます。ここまでの制作で大まかな陰影はついているはずですから、少し細かい所にも目を向けて、描き込んでいきます。
※タッチとは、画材による点や線及び光と影によってできる明暗の変化や、鉛筆で描いたグレーの濃淡、明暗など、グラデーションの状態・ようすなどのことです。
鉛筆画・デッサンで表現する形態:傘のタッチテクニックについて
出典作品:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 大寺聡氏
本来、モチーフにタッチがあるわけではありませんが、鉛筆画やデッサンではタッチを用いて面の方向や形態も表現できます。
尚、タッチとは、「モチーフの形状の成り立ちを印象として判別できる手法」という解釈がありますし、「画面上に残された筆や絵具の跡が作家の個性を表わす要素」という見方もできます。
そして、モチーフが前光(真上からの光)の状態で、調子(※)がわずかしかないときや、白いモチーフをあまり黒くせずに表現したい場合には、タッチを上記画像のように使い分けると効果的です。
※ 調子とは、鉛筆で描いたグレーの濃淡、明暗など、階調の状態・様子のことです。
鉛筆画・デッサンで細部を描く:傘のディテール加工法
描き始めに、細かいところを見て描写していくと、どんどん濃淡の色数が増えてしまいますので、まずは、一番濃い色のところを確定させて、その色に合わせて徐々に明るい部分を描くようにしていった方が描きやすいです。
そのようにして、全体の陰影のバランスをとっていくと割とスムーズに描き進められます。逆に、明るい色から描き進んでいくと、濃い色がどんどん濃くなっていく傾向になってしまいますので、注意が必要です。
それでも、調整しにくい場合には、最終的に今まで一番濃い色であったところを、後から、もう一段濃くして折り合いをつけてもよいのです。あくまでも制作しやすくするための手順と考えて、あなたが描きやすい方法で進めていきましょう。
鉛筆画・デッサンでの仕上げテクニック:練り消しゴムでトーンを調整
鉛筆画・デッサンの参考に!傘の画像の観察テクニック
今回の制作例では、傘はもともと白黒のモチーフが多いので割と簡単に描くことができました。あまり考え過ぎないようにして、描き進めていきましょう。
確定的な筆圧の強い描き方を避けて描くことで、あとからいくらでも修整をきかせることができるからです。
尚、練り消しゴムは、プラスチック消しゴムなどよりも紙を痛めずに優しく消せますし、「消す」というよりは「描く」イメージで、白抜きしたいところにも使えます。
今回の制作例であれば、ハイライト部分には、練り消しゴムを練って、先端部分をマイナスドライバーのような形状にして念入りに拭き取ります。
この制作例では、擬人化した傘を描いていますので、顔とも言える柄の部分が目立つように背景には濃いトーンを使います。
描き始めは床面をHBで、奥の壁面はBで描き始めて、男性用の傘と女性用の日傘の背後には4B→5B→6Bと様子を見ながらトーンを加えていきます(黄色枠内部分)。
また、床に接している傘の先端部分も強調する必要がありますので、周辺部にトーンを入れつつ、影についても入念に描写します(桃色枠内部分)。
細密描写のコツ:傘を主役として引き立てる方法
仕上げに向って、あなたがどのような傘で作品を制作するかはわかりませんが、あなたが主役と決めたモチーフ以外を細密描写してしまうと主役が目立たなくなりますので、主役を目立たせるように常に意識しましょう。
主役や準主役以外のモチーフで、細かい模様や形状のものを事細かに描いてしまうと、観てくださる人の注意をその部分に惹きつけてしまいますので、細密描写は主役や準主役だけと記憶しておきましょう。
尚、準主役のモチーフであっても、主役に対しては、当然細密描写やハイライトの加減は抑えるということです。そうすることによって、あなたが作品を通して「感動や興奮」を鑑賞者へ伝えることができます。
目についた全部のモチーフを事細かに描くとすれば、「何が言いたい作品なのかわからない」ということにもなりかねません。
鉛筆画・デッサン制作時における材料と道具の選び方
絵画教室の先生方には、実物を見て描くことに強いこだわりを持っている人が多いものです。
今回の記事のように、写真及びネットからのダウンロードやスクリーンショットを使うことを、どこかの絵画教室の先生が聞いたら「顔を真っ赤にして怒る」人もいるかもしれませんが、そんなことはどうでもよいのです。^^
最初から、モチーフは立体のものを描きなさいとか、定規を使ってはいけない、コンパスなどはもってのほかというようなことは無視してかまいません。とにかく自由に、あなたが楽しんで描けることが一番重要です。
ただし、あなたが絵画教室へ通う場合には、「激怒する人」がそばにいる時に、平然とそれらのものを使うのは止めましょう。あくまでも、自宅での制作時には何でもありと理解してください。ふと、振り返ったら大魔神のような人がいたらいやでしょ?^^
基本的なデッサンのポイントの細かいことは、あなたが描くことに慣れるにしたがって、継続して考えていけばよいのです。
大魔神
アート鑑賞のススメ:鉛筆画・デッサンアーティストのためのガイド
鉛筆画・デッサンアーティスト必見!公募展での絵画鑑賞のコツ
また、たまには絵を観に行きましょう。筆者の印象では、日展は「きれいなだけで個性的で野心的な作品は少ない」印象しかありません。
おすすめは第1に国画会の展覧会である「国展(4月末~5月中旬)」、次いで独立美術協会の展覧会である「独立展(10月)」や、新制作協会の展覧会である「新制作展(9月下旬~10月上旬)」です。
そして、展覧会(全国公募展)へ行きましたら、細かな技法ばかりを見るのではなくて、作品から受けるあなたの印象が重要です。
最初の内は、よくわからなくても、あなたがどのように感じたかが一番肝心なのです。やがてそれが、緊張感の出し方や画面構成のバランスなどに活用することができるでしょう。
絵画鑑賞で学ぶ:鉛筆画・デッサンアートの要点の捉え方
私は、恥ずかしながら、抽象画がいまだによくわかりませんが、気に入った具象画を見て帰ってくると、大掴みな印象を自身の作品に、どのように取り入れることができるかを考えるようにしています。しかし、そっくりまねることはやめましょう。
著作権がありますし、意味もありません。細かいところまでを全部取りこもうとするのではなく、構図などの大きな成り立ち及び配置や濃淡のつけ方、画面の持っている「新たな着想」などを取り込むようにするということなのです。
参考情報
国展:第98回国展(2024年) 出品要項 出品票請求フォーム | 国展 (kokuten.com)
絵画鑑賞時の要点とポイントの掴み方
もっと具体的に言えば、構図やデッサンは当然一番重要であり充分観察が必要ですが、4隅(4つの角の周辺処理)をどのように充実させているかということもとても重要です。
つまり、制作画面は、外部につながる景色の一部なので、観てくださる人がその四隅から外への広がりをイメージできるように、工夫を凝らす必要があるということです。この点では、次の関連記事も参照してください。
関連記事:鉛筆画・デッサンの初心者から中級者必見!√2と光を中心とした中空の3角のテクニックで構図力をアップする方法
まとめ
この記事を通じて、初心者から上級者までが、鉛筆画やデッサンの世界で新たな表現方法を発見する手助けになり、あなたが各種展覧会や公募展で入選できることが筆者の願いです。
この鉛筆画やデッサンに没頭できることによって、あなたの生活の充実した核が形成され、何物にも代えがたい心の支えや、未来に向かっての目標にもなり、プロ画家へのゴールさえ視野に入ってきます。
今回、筆者が紹介した擬人化された傘の描き方は、ただの描写技術を超えて、あなたの創造力とアートへの理解を深められるでしょう。構想を練ることが、あなた独自のオリジナリティーの形成に役立つことも理解していただけたと思います。
そして、鉛筆だけで始めることができて、紙に描かれた傘が徐々に人格を持ったキャラクターへと変わっていく様子は、見る人の心を捉えます。
陰影のつけ方、線の強弱、細部の処理に至るまで、筆者はあなたが鉛筆画のテクニックをマスターするための詳細なガイドを提供しました。
傘を題材に選んだのは、その形状や質感が鉛筆画の練習に最適であり、さまざまな表現方法を試すことができるからです。この記事で紹介したテクニックを実践することで、あなたも独自のアート作品を創り出すことができるようになるでしょう。
また、他のアーティストの作品を見ることで、インスピレーションを得ることも重要であり、新しい発見や技術の向上につながります。最後に、鉛筆画・デッサンの世界では、試行錯誤が創造的なプロセスの一部であることを忘れないでください。
自身のスタイルを見つけ、それを磨くことが、アーティストとしての成長に繋がります。この記事が、あなたの鉛筆画・デッサンの旅において、有益な一歩となることを願っています。
尚、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。
それは、あなたの制作する画面全体を使って、さまざまな構図や発想を駆使することにより、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事も参照してください。
関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは
ではまた!あなたの未来を応援しています。
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