人物画制作の魅力:鉛筆画やデッサンで描くリアリズム!

人物画の描き方

 どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

 さて、鉛筆画やデッサンは、美術の基本であり、奥深い表現の世界です。この記事では、初心者でも挑戦しやすい基本的な描き方から、上級者が極める緻密な表現技術まで、幅広く紹介します。

 人物画制作の魅力を深掘りし、リアルな描写が可能になるテクニックやコツを、実例と共にご紹介します。鉛筆だけで創り出される芸術の世界に触れて、あなたも鉛筆画やデッサンの魅力にハマってみませんか?

 それでは、早速見ていきましょう!

表情とポーズの捉え方:リアリズムを追求する

 鉛筆画・デッサンで最も重要なのは、人物の表情とポーズをリアルに捉えることです。これに成功すれば、作品に生命を吹き込むことができます。

人物の表情を読み解く

 人の表情には、感情の微妙な変化が表れます。ほほ笑み、喜び、悲しみ、驚き、怒りなど、さまざまな感情を表情から読み取り、それを鉛筆で描き出すことが重要です。

 表情の特徴を捉えるためには、目、口、眉の動きに注目しましょう。これらのパーツの微妙な変化が、感情を表現する鍵となります。

関連記事:鉛筆画・デッサンで初心者から上級者必見!人物の顔のデッサン:目・鼻・口の描き方ガイド

ポーズのダイナミズムを表現する

第1回個展出品作品 人物Ⅵ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 ポーズには、人物の動きや性格が現れます。静的なポーズでも、手の位置や体の傾き一つで全く異なる印象をあらわすことができます。

 ポーズのリアリズム(写実)を追求するには、重力の影響や筋肉の張りを理解することが必要です。

 人物がどのようにバランスを取っているのか、どの筋肉が張っているのかを観察し、それを細かく描き分けましょう。

表情とポーズの統合

 表情とポーズは切り離せない関係にあります。表情だけではなく、ポーズ全体を通して感情を表現することが、リアリズム(写実)を追求する上での鍵です。

 例えば、喜びの表情は、リラックスした姿勢と相まって、より活き活きとした印象を与えます。このように、表情とポーズを統合して描くことで、作品に深みとリアリティ(現実性)をもたらすことができます。

光と影の扱い:鉛筆画・デッサンに深みを加える

 光と影は鉛筆画やデッサンの中で重要な役割を果たします。適切に扱うことで、作品に深みとリアリティ(現実性)をもたらすことができます。

光の捉え方と影の描写

 光の捉え方を理解することは、鉛筆画やデッサンにおける影の描写に不可欠です。光がどこから来ているのかを把握し、それに応じて影をどのように落とすかを考えます。

 光が当たっている部分は明るく、反対側は暗くなることを意識しましょう。また、影の濃さは光源の強さや距離によって変わるため、これらの要素を考慮して影を描くことが重要です。

 また、影の中にはさらに濃い影があることを理解しておくことも必要です。逆に、軟らかい影なども存在しているので、その優しい移行の状態も良く観察する必要があります。影は、数えきれないほどの段階で存在しています。

影の種類とその使い方

 影には「直接光が当たらない部分にできる影(コアシャドウ)」と「物体が別の物体に投影する影(キャストシャドウ)」の二種類があります。

 コアシャドウは物体の形状を表現するのに役立ち、キャストシャドウは物体とその周囲の関係を示すのに有効です。両者を適切に使い分けることで、作品に立体感と繋がりを与えることができます。

出典画像:イラスト・マンガ描き方ナビhttps://www.clipstudio.net/oekaki/archives/164537

ハイライトの活用

第1回個展出品作品 人物Ⅴ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 影だけでなく、光が強く当たっている部分のハイライトの表現は特に重要です。ハイライトをうまく配置することで、物体の質感や光源の位置を表現することができます。

 特に、光沢のある物体を描く際には、ハイライトがキーとなります。ただし、過度なハイライトは逆効果になることもあるため、バランスを考えて使用しましょう。

 上の画像では、太陽光線を受けてハイライトができていますが、人体のハイライトを表現するためにも、その隣接している部分や背景に効果的なトーンが必要になります。

 そして、砂浜の微妙な照り返しが人物に反射していることよく観察して、身体全体への「柔らかな陰影」によって、モデルの身体の柔らかさの表現にも取り組みましょう。

上級テクニック:細部の描写と完成度を高める方法

 鉛筆画やデッサンにおいて、細部の描写と作品の完成度を高めることは、上級者にとっての重要な課題です。本章では、そのための具体的なテクニックを紹介します。

細部に注目:ディテール(詳細)の重要性

 細部の描写は、鉛筆画のリアリズム(写実)と質感を高める鍵です。特に、人物の髪の毛や皮膚の質感、布のしわなどのディテールに注意を払います。

 これらの細かい部分にこだわることで、作品全体のリアリティ(現実性)が増し、観る人を引き込む力が強まります。細部を描く際は、鉛筆の先を鋭く削り、正確な線を引くことが大切です。

 特に身体の明るい陰影には、慎重に2H~8Hで「優しく縦横斜めの方向」からのクロスハッチングを含めて、重ね塗りが必要です。この場合、3H~8Hなどの鉛筆がない際には、Hや2Hを軽く持って優しくタッチを重ねていきましょう。

レイヤリング(重ね塗り)とグラデーション(階調)

      第2回個展出品作品 洋ナシのある静物 2000 F1 鉛筆画 中山眞治

 細部の描写において、トーンのレイヤリングとグラデーションの技術は非常に重要です。異なる硬さの鉛筆を使って複数の層を重ねることで、より深みのある色合いを表現できます。

 また、グラデーションを駆使して滑らかな色の移行を作り出すことで、自然な立体感を出すことが可能になります。

 上の静物の画像では、洋ナシ及び卵やピーマンの曲面に、この滑らかなグラデーションを施していますが、人体でも同じことが言えます。薄い鉛筆の効果的な使い方が、リアルな描写へつながります。

 尚、卵の反射を受けて洋ナシの側面が光っているような部分の描写は、実際のモチーフを観察して、適切に表現することが必要です。

全体のバランスと統合

 細部に注力することは極めて重要ですが、全体のバランスとの統合も忘れてはなりません。作品の一部分だけに焦点を当て過ぎると、全体の調和が崩れる恐れがありますし、観てくださる人の視線をその部分に集めてしまいます。

 絵画では、画面上に主役や準主役を際立たせて、画面構成をすることが重要であり、主役や準主役が目立つように、それ以外の脇役には「細密描写」を控えたり、意図的に脇役のモチーフのハイライトに淡いトーンを入れることも必要です。

 そして、細部のディテール(詳細)を描きながらも、定期的に全体を見渡し、作品全体のバランスを考慮することが大切です。作品全体の調和を保つことで、主役や準主役の細部の美しさが際立ちます。

 この点は、制作の当初から、あなたのスケッチブックや紙の中に収めるモチーフを、最初のデッサンで輪郭を取った際に、画面の中のバランスを充分に確認してから進んでいきましょう。

 大きな構成部分を途中から変更することは、とても難しいのです。仮になんとかできたとしても、大きく変更した場合には、変更した部分がうまく修整できない場合があるからです。

デッサン作品の分析:プロの作品から学ぶ

第1回個展出品作品 人物 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 デッサンを学ぶ過程で、プロの作品を分析することは非常に有益です。本章では、プロの鉛筆画やデッサン作品を分析し、その技術や表現方法を学ぶ方法を紹介します。

プロの技法の理解

       第1回個展出品作品 人物Ⅴ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 プロの鉛筆画やデッサン作品を見ることで、その技法や使っている素材について学ぶことができます。例えば、線の太さ、濃淡、影のつけ方など、具体的な技術の適用を理解することが重要です。

 また、プロがどのように構図(※)を決定し、焦点をどこに置いているかを観察しましょう。

※ 構図については、この記事の最後部に掲載の「鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは?」を参照してください。

表現スタイルの分析

       第1回個展出品作品 人物Ⅰ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 各アーティストには独自のスタイルがあります。そのスタイルを分析することで、表現の多様性を理解し、自身のスタイルを発見するヒントを得ることができます。

 トーンの使い方、形の誇張、感情表現など、さまざまな表現方法に注目してみましょう。上の作品では、ありきたりなポーズよりも、画面の中に全身が入るようなものを探しているところで、たまたまこのような画像を入手することができました。

 あなたも、写真集及びネットのダウンロードやスクリーンショット、または、野外に出てデジカメなどを持って、「こういうポーズの人物もいいね」と思える題材を収めて来ましょう。

 ただし、遠くからのショットを心がけましょう。こんなご時世ですから「とんだトラブル」になることもあり得ますので注意して臨みましょう。^^

テーマとメッセージの解釈

      第1回個展出品作品 人物Ⅱ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 プロの作品にはしばしば、深いテーマやメッセージが込められています。作品の背後にあるストーリーや意図を理解することで、鉛筆画やデッサンの持つ力をより深く理解することができます。

 作品が伝えるメッセージを解釈し、それを自身の作品にどのように応用できるかを考えましょう。

 この部分では、筆者が心象風景を制作した時の、着想から作品の仕上げに至った際の考え方などが参考になるはずです。興味のある人は、次の関連記事を参照してください。

関連記事:鉛筆画・デッサンで初心者から中級者まで必見!複合した構図で心象風景を描く方法Ⅱ

練習方法と進歩の追跡:効果的なスキルアップのコツ

 デッサンスキルを向上させるためには、効果的な練習方法と自身の進歩を追跡する方法が重要です。本章では、スキルアップを促進するための具体的なテクニックを紹介します。

日々の練習ルーティン(日課)の確立

        第1回個展出品作品 少年 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 デッサンスキルを高めるためには、毎日練習することが欠かせません。一日に少なくとも、30分間デッサンの練習に費やすことを目指しましょう。

 このルーティンは、スキル向上だけでなく、長期的な創作活動に対する姿勢を養うのにも役立ちます。練習内容を多様化させ、異なるテクニックや題材に挑戦してみるのが良いでしょう。

 広い意味では、人物・静物・動物・風景・心象風景を順番に取り組むことがおすすめですが、今回の記事は人物画なので、人物画の中でも、少年・少女・年頃の男性・年頃の女性・大人の男性・大人の女性を順番に描いてみてはいかがでしょうか。

進歩の記録と分析

     第1回個展出品作品 マリリン・モンロー 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 自身の進歩を追跡することは、モチベーション維持と自己評価に不可欠です。週ごとや月ごとに作品を振り返り、進歩の度合いを評価しましょう。どの技術が向上しているか、またはさらなる練習が必要な分野は何かを把握することが重要です。

 また、目標設定とその達成度合いを記録することで、より具体的な進捗を見ることができます。

フィードバックの活用

 他者からのフィードバックは、自身の作品を客観的に評価するのに役立ちます。アートクラスやオンラインコミュニティで作品を共有し、構成や技法に関する意見を求めましょう。

 他者の視点からのアドバイスは、新たな改善点を発見する機会にもなりますし、モチベーションを保つためにも、同じ趣味の老若男女の友人を持つこともできます。

インスピレーションを得る:デッサンの世界への招待

 鉛筆画やデッサンは単なる描画技術以上のものです。インスピレーション(ひらめき)を受け、新たな創造の道を拓くための手段です。本章では、デッサンを通じてインスピレーションを得る方法を探ります。

自然との対話:外界からのインスピレーション

路傍の花 2021 F4 鉛筆画 中山眞治

 自然は、デッサンの素晴らしい題材であり、無限のインスピレーションを提供してくれます。外に出て、樹々、花、風景を観察し、スケッチしましょう。

 自然の形態、光と影、トーンの変化を捉えることで、デッサン技術だけでなく、新たな表現のアイデアが生まれます。

歴史的アートワーク(芸術作品)からの学び

 アートの歴史を探求することは、デッサンのインスピレーションを得る素晴らしい方法です。過去の名作を研究し、そこに用いられた技術や表現の手法を自身の作品に取り入れてみましょう。

 美術館やアートギャラリーを訪れ、名作の前でスケッチすることも、深い理解とインスピレーションを得るのに役立ちます。

 あるいは、画像に収めて、自宅でじっくりと観察しながら模写する方法もあります。筆者は、どちらかというと画像に収めてくることが多いです。

 外の風景と、モチーフの画像の合成で作品化することもよくあります。これは、心象風景を製作する際に用いる手法です。次のような作品を制作することもできます。

日美展 大賞(文部科学大臣賞・デッサンの部大賞) 誕生2023-Ⅱ F30 鉛筆画 中山眞治 

日常生活からの創造性

 日常生活の中にも、インスピレーションの源は数多く存在します。身の回りの物、人、出来事からインスピレーションを得て、それをデッサンに反映させましょう。

 例えば、カフェで見かけた一風変わったシーンや、家族のポートレートなど、日常の中に隠された美を描くことで、作品に独自性と生命を吹き込むことができます。

 あるいは、外を歩いていても、枯葉が風で舞い上がる状況と、雲の流れや小鳥の飛び去る動きなどに人物を加えて作品化することもできます。

 つまり、どんな状況であっても、あなたの感受性が豊かで心が遊んでいられれば、いろいろな組み合わせを用いて、あなたの世界が創造できるということです。

 もっと言えば、あなたが戸外を歩いていて、道端に落ちている一枚の鳥の羽をみて、大空を悠然と飛んでいる鳥をイメージしたり、虫食いの枯葉を手に取って、四季の移ろいに想いを馳せたり、ドングリを拾ってリスを思い浮かべたりするような感じです。

 そのイメージを育てていきながら、それ以外のモチーフは何がいいのかを考えて、構成(※)はどのようにしたらよいのかのイメージも膨らませていくことで、やがて構想がまとまってくるということです。

※ 構成の部分では、この記事の最後部に掲載している関連記事「鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは?」を参照してください。

まとめと次のステップ:鉛筆デッサンの旅を続けて

 鉛筆画やデッサンは、技術の習得だけでなく、個人の表現と成長の旅でもあります。本章では、今まで学んだことを振り返り、次に進むためのステップを提案します。

学んだことの再確認

 デッサンの基本から応用技術まで、これまでに学んだことを振り返りましょう。

 基本的な線の引き方、形の捉え方、陰影の描き方など、基礎からしっかりと身につけたことを再確認します。これらの基礎が、より複雑な作品を作る上での土台となります。

新たな挑戦を設定

 成長するためには、常に新たな挑戦が必要です。次のステップとして、新しい題材やスタイルに挑戦してみましょう。

 例えば、人物ポートレート(肖像画)、風景画、抽象的なデッサンなど、これまでとは異なるジャンルに挑むことで、新しい技術や表現方法も学べます。

コミュニティとの繋がり

 鉛筆画やデッサンの旅は、一人で進むものでもありません。アートコミュニティやグループに参加し、他のアーティストとの交流を深めることも大切ですし、あなたが市展・県展・全国公募展などへ出品するようになれれば、仲間もできます。

 作品の共有、フィードバックの交換、共同プロジェクトなどを通じて、インスピレーションを得るとともに、自己の作品を広げていくことができます。

構図の研究の必要性

 尚、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。

 それは、あなたの制作する画面全体を使って、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事も参照してください。

関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは?

 ではまた!あなたの未来を応援しています。

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