自画像を鉛筆で描く魅力とその描き方ガイド!

鉛筆画

 どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

 さて、鉛筆画や鉛筆デッサンで自画像を描くことは、自分自身の表現を追求する素晴らしい方法になります。

 この記事では、初心者の人でも簡単に取り組める基本ステップから、プロのようにリアルな自画像を仕上げるための、高度なテクニックまでを解説します。

 鉛筆というシンプルなツールを使いながら、自分自身の顔をどのように描き起こしていくか、そのプロセスを楽しく学べます。

 顔のパーツごとの描き方、影の付け方、細部の仕上げ方など、実践的なアドバイスを豊富に盛り込んでいますので、ぜひ参考にしてみてください。

 それでは、早速見ていきましょう!

  1. 自画像を描くための基本的な顔の構造の理解
    1. 顔の基本プロポーション
    2. 目の位置と間隔
    3. 鼻と口の位置
    4. 耳の位置と大きさ
    5. 髪の生え際と顎のライン
    6. 自画像を描く際のポイント
      1. 正確な観察
      2. 練習と反復
      3. 忍耐と細部へのこだわり
  2. 鉛筆での自画像描写における光と影の使い方
    1. 光源の位置を確認する
    2. 光と影のグラデーション
    3. 影の描き方
    4. ハイライトの表現
      1. ハイライトの位置
      2. コントラストの重要性
    5. 実践テクニック
      1. 練り消しゴムの活用
      2. 重ね描きとぼかし
  3. 自画像をリアルに仕上げるための表情の捉え方
    1. 表情の観察と分析
    2. 表情筋の理解
    3. 主な表情の描き方
      1. 目の描写
      2. 口の描写
    4. 練習方法と実践テクニック
      1. 繰り返し描く
      2. 写真を参考にする
      3. 細部の描写にこだわる
      4. 陰影の使い方
  4. 自画像に個性を出すための細部の描き方
    1. 髪の描写
    2. 皮膚の質感
    3. 顔の各パーツの描き方
      1. 目の描写
      2. 唇の描写
    4. 実践テクニック
      1. ディテールの強調
      2. 反復練習
      3. 陰影の使い方
  5. 鉛筆画や鉛筆デッサンの自画像の仕上げと保存方法
    1. 仕上げのテクニック
      1. 線の調整と清書
      2. グラデーションの調整
    2. 保存方法
      1. フィキサチーフの使用
      2. 適切な保存環境
      3. アーカイバルマットとフレーミング
    3. 実践的なアドバイス
      1. 定期的なチェック
      2. デジタルアーカイブ
  6. まとめ
    1. 基本ステップとプロポーションの理解
    2. 光と影の使い方
    3. 表情の捉え方
    4. 個性を出すための細部の描き方
    5. 仕上げと保存方法
    6. 実践的なアドバイス

自画像を描くための基本的な顔の構造の理解

フィンセント・ファン・ゴッホ  自画像 1889年作 収蔵場所 オルセー美術館(フランス・パリ)

 自画像を描く際に最も重要なのは、顔の構造を正しく理解することです。顔の基本的な構造を把握することで、リアルな自画像を描く基盤が整います。本章では、顔の各部分の配置とプロポーション(比率)について解説します。

顔の基本プロポーション

 顔を描く際の基本的なプロポーション(比率)は、まず顔全体を縦に三等分することから始めます。

 髪の生え際から眉毛まで、眉毛から鼻の下まで、鼻の下から顎の先までの三等分です。この分割方法を知ることで、顔のバランスを正確に描き出すことができます。

目の位置と間隔

 目は顔の中心線に配置されます。顔の幅を五等分し、そのうちの二つ分が目の間の距離になります。

 左右の目の間には、もう一つの目が収まるスペースがあると考えると分かりやすいです。また、目の外側の端と耳の上部が同じ高さにあることも覚えておきましょう。

鼻と口の位置

 鼻の位置は、眉毛から顎までの中間にあります。鼻の幅は両目の内側の端と端の距離とほぼ一致します。口の位置は、鼻の下から顎までの中間に配置され、口の端は瞳の中心線と一致することが多いです。

耳の位置と大きさ

 耳の上部は目の高さにあり、耳の下部は鼻の下部と一致します。耳の大きさや形状は個人差がありますが、基本的にはこの範囲内に収まります。

髪の生え際と顎のライン

 髪の生え際は、顔の三等分の上部に位置し、顎のラインは顔の輪郭を形成する重要な要素です。顎のラインは、顔の幅とバランスをとりながら描きます。

自画像を描く際のポイント

正確な観察

 自画像を描く際には、自身の顔を鏡で正確に観察することが重要です。自身の顔の特徴を把握し、上記のプロポーションを基にして描くことで、よりリアルな自画像が完成します。

練習と反復

 顔の構造を理解するためには、何度も描いて練習することが必要です。初めはプロポーション(比率)を守りながら描き、その後に細部のディテール(詳細)を追加していきます。練習を重ねることで、自画像の描写スキルは確実に向上します。

忍耐と細部へのこだわり

 自画像を描くプロセスは、忍耐が必要です。特に細部にこだわりながら描くことで、より完成度の高い自画像が出来上がります。光と影の使い方も重要なポイントです。

 顔の基本的な構造を理解することで、自画像を描く際の基盤がしっかりと整います。正確な観察と練習を重ねることで、あなたもリアルな自画像を、鉛筆で描くスキルを身につけることができるでしょう。

鉛筆での自画像描写における光と影の使い方

     第2回個展出品作品 自画像 2000 F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆で自画像を描く際に、光と影の使い方は、作品にリアリズム(写実)と深みを決定づける重要な要素です。

 特に、モノトーンの鉛筆画や鉛筆デッサンに興味のある読者にとって、光と影の描写は、作品の質を大きく向上させるための鍵となります。本章では、鉛筆画や鉛筆デッサンにおける、光と影の基本的なテクニックとその活用法について解説します。

光源の位置を確認する

 光と影を正確に描くためには、まず光源の位置を確認することが不可欠です。光源がどこにあるかを把握することで、影の方向と強さを改めて決定することができます。

 例えば、光源が右上にある場合、影は左下に向かって伸びます。この基本的な原則を押さえることで、絵に一貫性を持たせることができます。

光と影のグラデーション

 影を描く際には、グラデーションを用いて、滑らかな遷移を表現することが重要です。ハッチング(※1)やクロスハッチング(※2)などのテクニックを駆使して、暗い部分から明るい部分へと段階的に色を変化させることで、立体感を出すことができます。

 影が完全に黒くなることは少なく、多くの場合はグレーの濃淡を用いることでリアルな表現が可能になります。

※1 ハッチングとは線を重ね合わせる技法です。

※2 クロスハッチングとは、縦横斜めの4方向からの線を重ね合わせる技法です。この場合、描きにくい方向の線は、スケッチブックや紙を動かすことによって、無理なく描き込めます。また、違う方向からの線を重ね合わせることで、鉛筆の乗りが効率的になります。

影の描き方

 影を描く際には、鉛筆の芯の硬さや角度を調整して描くことが求められます。柔らかい鉛筆(例えば、Bや2B)を用いて影の濃い部分を描き、硬い鉛筆(Hや2H)を用いて影の薄い部分や微細な部分を描くと効果的です。

 また、影のエッジ(縁)がどれだけ鋭いかを考慮し、柔らかい影にはぼかしを使うと、より自然な仕上がりになります。この場合、専用の擦筆(さっぴつ)や綿棒、あるいは、ティッシュペーパーや指で擦って代用することもできます。

ハイライトの表現

ハイライトの位置

 ハイライトは、光が直接当たっている部分に現れます。自画像の場合、額や鼻、頬、唇などが主なハイライトの位置です。

 ハイライトを描く際には、白い紙の色をそのまま活かすか、練り消しゴムを使って、ハイライトの描写部分を拭き取ることで表現できます。

コントラストの重要性

 ハイライトと、影のコントラスト(明暗差)を強調することで、絵に深みとリアリズム(写実)を加えることができます。特にモノトーンの鉛筆画や鉛筆デッサンでは、濃い影と明るいハイライトの対比が作品の魅力を引き立てます。

 ハイライトの部分を過度に描かず、自然な光の反射を意識することで、よりリアルな表現も可能になります。

 しかし、ハイライトを強調するためには、背景や隣接部に濃いトーンを持ってくることで、ハイライトを強調できることも覚えておきましょう。

実践テクニック

練り消しゴムの活用

 練り消しゴムは、ハイライトを描くための重要なツールです。練り消しゴムは、その名の通り、練って形状を変更することができますので、細かなハイライトを描き込む際には、細いドライバーの先端のような形状にして使います。

 あるいは、幅広い面の修整時には小さな扇状の形にして、一度に幅広い面のトーンを修整したり、「小さなしゃもじ」のような形状にして、部分的に優しく押し当ててトーンを調整する際等にも便利です。

 練り消しゴムを用いて、描線の修整ばかりではなく、光の当たっている部分を拭き取ることで、自然なハイライトを表現できます。

 それ以外にも、「光を描く」「人物や動物の毛並を描く」「特殊なあたりをつける」際などにも使用できる優れものです。詳細は、次の関連記事を参照してください。

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重ね描きとぼかし

 影を重ね描きすることで、濃淡の調整ができます。また、ぼかしツールの擦筆(さっぴつ)や綿棒、あるいは、ティッシュペーパーや指で擦ることによって影をぼかし、滑らかなグラデーション(階調)を作り出すこともできます。

 鉛筆で自画像を描く際には、光と影の使い方が作品の完成度を左右します。基本的なテクニックをマスターし、光源の位置や影のグラデーション、ハイライトの表現に注意を払いながら描くことで、あなたの鉛筆画は一層リアルで魅力的なものになるでしょう。

自画像をリアルに仕上げるための表情の捉え方

 自画像を描く際に、表情をリアルに捉えることは、作品の深みと感情を伝える上で非常に重要です。

 特に、モノトーンの鉛筆画や鉛筆デッサンに興味のある読者にとって、表情の描写は作品に命を吹き込む重要な要素です。本章では、自画像をリアルに仕上げるための表情の捉え方について解説します。

表情の観察と分析

 表情をリアルに描くためには、まず自身の表情をよく観察し、その特徴を分析することが必要です。

 鏡を使って、自身の顔をさまざまな角度から見て、微妙な筋肉の動きやシワの入り方を観察しましょう。また、感情によってどのように表情が変化するかを理解することも重要です。

表情筋の理解

             AIで制作した画像です

             AIで制作した画像です

 顔の表情は、主に表情筋によって形成されます。例えば、笑顔では頬の筋肉が上がり、目尻にシワができることが多いです。

 怒りの表情では、眉間にシワが寄り、口元が引き締まります。これらの筋肉の動きを理解し、描写することで、よりリアルな表情を再現することができます。

主な表情の描き方

目の描写

 目は、表情の中でも最も感情を伝えられる部分です。瞳の輝きや瞼の動き、瞳孔の大きさなどを細かく描写することで、目に生気を与えることができます。また、目の周りの細かいシワや影もリアルな表情を作り出す重要な要素です。

口の描写

 口元も表情を表す重要な部分です。笑顔では口角が上がり、悲しみや怒りの表情では口角が下がります。

 また、唇の質感や形状を丁寧に描くことで、リアルな口元を表現できます。唇の細かいシワや、陰影も描き込むことがポイントです。詳細は、次の関連記事も参照してください。

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練習方法と実践テクニック

繰り返し描く

 表情をリアルに描くためには、繰り返し描くことが不可欠です。自身の顔をさまざまな表情で描き続けることで、表情筋の動きや特徴を体得することができます。最初は基本的な表情から始め、徐々に複雑な感情を表現する練習をすると良いでしょう。

 因みに、ゴッホの代表作と言える自画像は、37点すべてが1886年の春から89年9月までのたった3年半(33歳から36歳まで)のあいだで制作されています。

写真を参考にする

   第1回個展出品作品 マリリン・モンロー 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 自身の表情を捉えるのが難しい場合は、写真を参考にするのも効果的です。自身の顔の写真を撮り、そこから表情の特徴を学ぶことで、リアルな描写がしやすくなります。

 また、他人の顔の写真を参考にすることで、さまざまな表情のバリエーションを学ぶこともできます。

細部の描写にこだわる

第1回個展出品作品 人物Ⅳ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 表情をリアルに描くためには、細部の描写にこだわることが重要です。目や口元だけでなく、頬や額のシワ、耳の細かい形状など、顔全体の細部を丁寧に描き込むことで、表情に深みを持たせることができます。

陰影の使い方

      第1回個展出品作品 少年 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 表情を際立たせるためには、陰影の使い方が重要です。光と影を効果的に使うことで、顔の立体感を強調し、表情にリアリズム(写実)を加えることができます。

 特に、モノトーンの鉛筆画や鉛筆デッサンでは、影の濃淡を巧みに使うことで、表情のニュアンスを豊かに表現することができます。

 つまり、自画像をリアルに仕上げるための表情の捉え方を理解し、実践することで、鉛筆画や鉛筆デッサンにおける自画像の表現力を、大幅に向上させることができるでしょう。

 細部へのこだわりと陰影の使い方を工夫しながら、感情豊かな自画像を描いてみてください。

自画像に個性を出すための細部の描き方

フィンセント・ファン・ゴッホ  包帯をしてパイプをくわえた自画像 1889年作 展示場所 チューリヒ美術館(2016年現在)

 自画像を描く際には、細部にこだわることで、その作品に独自の個性を与えることができます。モノトーンの鉛筆画や鉛筆デッサンに興味のある読者にとって、細部の描写は作品の完成度を大きく左右する重要な要素です。

 本章では、自画像に個性を出すための具体的な細部の描き方について解説します。尚、上のゴッホの自画像は、「耳切り事件」直後の作品と言われています。

髪の描写

第1回個展出品作品 人物Ⅵ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 髪の毛は個性を表現する重要な部分です。髪の質感や動きを表現するためには、一本一本の髪を描くのではなく、髪の束や流れを意識して描くことがポイントです。

 髪の陰影をつける際には、光源を意識しながら、濃淡を使って立体感を出します。細い線を重ねることで、リアルな髪の質感を表現できます。

皮膚の質感

 皮膚の質感を表現するためには、細かいディテール(詳細)を描き込むことが重要です。シワや毛穴、ホクロなどの細部を丁寧に描くことで、よりリアルな表現が可能になります。

 特にモノトーンの鉛筆画や鉛筆デッサンでは、陰影を巧みに使うことで皮膚の立体感を表現できます。肌の柔らかさや質感を出すためには、柔らかい鉛筆を使って滑らかなグラデーション(階調)を創り出すと効果的です。

顔の各パーツの描き方

目の描写

 目は、感情を表現する重要な部分であり、その描き方が自画像の印象を大きく左右します。瞳の中に光の反射を描き込むことで、目に生気を与えられます。筆者の上の作品(人物Ⅵ)を参照してください。

 また、まつ毛や眉毛の細部を丁寧に描くことで、よりリアルな目を表現することができます。目の周りの微細なシワや影も忘れずに描き込みましょう。

唇の描写

 唇の質感や形状を細かく描くことで、自画像に個性を与えることができます。唇の輪郭を明確にし、細かいシワや陰影を描き込むことで、立体感を出します。

 特に、モノトーンの鉛筆画や鉛筆デッサンでは、唇の陰影を細かく描くことで、リアルな質感を表現することができます。

実践テクニック

ディテールの強調

 自画像に個性を出すためには、特定のディテール(詳細)を強調することが効果的です。例えば、特徴的なホクロやシワ、独特の髪型などを強調して描くことで、その人らしさを表現できます。

 また、目元や口元のディテールを細かく描くことで、表情の深みを増すことができます。

反復練習

 細部の描写をマスターするためには、反復練習が欠かせません。自身の顔の細部を鏡で観察しながら、繰り返し描くことで、ディテールの描写力が向上します。

 また、他人の顔を描くことで、さまざまな表情や特徴を捉える練習をすることも有益です。

陰影の使い方

 細部をリアルに描くためには、陰影の使い方が最も重要です。陰影を使って立体感を出すことで、細部のディテールが際立ちます。特にモノトーンの鉛筆画や鉛筆デッサンでは、光と影のコントラスト(明暗差)を強調することで、細部の描写が一層リアルになります。

 自画像に個性を出すための細部の描き方を理解し、実践することで、あなたの鉛筆画は一層魅力的なものになるでしょう。ディテール(詳細)へのこだわりと陰影の使い方を工夫しながら、独自の自画像を描き上げてください。

鉛筆画や鉛筆デッサンの自画像の仕上げと保存方法

 鉛筆で描いた自画像を美しく仕上げ、長く保存するための方法は、作品の価値を保つために非常に重要です。

 特に、モノトーンの鉛筆画や鉛筆デッサンに興味のある読者にとって、仕上げと保存のプロセスは、作品を一層引き立てるための重要なステップです。本章では、鉛筆デッサンや鉛筆画の自画像の仕上げと保存方法について解説します。

仕上げのテクニック

 鉛筆画や鉛筆デッサンの自画像を完成させるためには、仕上げの段階でいくつかのポイントに注意を払う必要があります。

線の調整と清書

 まず、描いた線を丁寧に調整し、必要に応じて清書します。余分な線や軽い下書きの線は、練り消しゴムを使ってきれいに取り除きます。清書することで、作品の輪郭がはっきりとし、よりプロフェッショナルな仕上がりになります。

 この場合には、あなたが大きな輪郭を捉えるために使っていた鉛筆が、仮に2Bであった場合には、2段階明るいHBで行いましょう。その理由は、輪郭を濃い鉛筆でしっかり描き込んでしまうと、不自然な仕上がりになってしまうからです。

グラデーションの調整

 次に、陰影のグラデーション(階調)を滑らかに調整します。鉛筆の芯の硬さを使い分けて、柔らかいグラデーションを創り出し、立体感を強調します。

 また、ぼかしツール及びティッシュペーパーや指を使って影をぼかすことで、自然な陰影を表現することもできます。

保存方法

 完成した、鉛筆による自画像を長く保存するためには、適切な方法で保管することが重要です。

フィキサチーフの使用

 鉛筆画や鉛筆デッサンは、時間とともに劣化しやすいため、フィキサチーフを使用して作品を保護します。フィキサチーフは、鉛筆の線を定着させ、擦れや汚れから作品を守るためのスプレーです。

 作品全体に均一にスプレーし、乾燥させますが、冬場などに使用する際には、洗面器やバケツに湯を張り、「温めてよく振ってから使う」ことで、使いやすさが増します。また、吹き付ける際には、20~30cm画面から離して均一に吹きかけましょう。

 吹きかけすぎると、「液だれ」や、若干の「黄ばみ」の原因にもなり得ますので、適量の吹きかけを施しましょう。筆者の場合には、作品の4辺→作品の上から横へと下まで→作品の縦を左から右まで、素早くかけて終わりにしています。

適切な保存環境

 鉛筆画や鉛筆デッサンの自画像を保存する際には、適切な環境を整えることが重要です。直射日光や湿気の多い場所は避け、風通しの良い涼しい場所に保管します。また、額縁に入れることで、ホコリや汚れから守ることができます。

アーカイバルマットとフレーミング

     第2回個展出品作品 グロリオーサ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 長期保存を考える場合、アーカイバルマットを使用して作品をフレームに入れることをオススメします。上の作品の、額と作品の中間部分のマットのことです。

 アーカイバルマットは、酸を含まない素材で作られており、作品の劣化を防げます。フレーミングする際には、UVカットアクリルを使用することで、紫外線による色あせを防ぐこともできます。

 尚、東日本大震災以降、額に入っている作品前面の透明な板は、ほとんどの製品において、UVカットアクリルになっています。それ以前では、ガラスの板が主流でした。

実践的なアドバイス

定期的なチェック

 保存した、鉛筆画や鉛筆デッサンの状態を定期的にチェックし、劣化や変色が見られた場合には、適切な対処を行います。特に湿度が高い季節には注意が必要です。

 筆者の作品で、ガラスを使った額では、寒暖差の大きな場所に置いていた作品に、ハイライト部分にカビが生えてしまった作品もありました。そうなってしまうと、そのカビを取り除くことはできませんので注意が必要なのです。

デジタルアーカイブ

 万が一の劣化や紛失に備えて、完成した作品をデジタル化して、保存することも有効です。高解像度のスキャンや写真を撮り、デジタルファイルとして保存することで、作品の記録を残すこともできます。

 鉛筆による、自画像の仕上げと保存方法を正しく理解し、実践することで、作品の美しさを長く保つことができます。適切な仕上げと保存環境を整えることで、あなたの鉛筆画や鉛筆デッサンは時間とともにその価値を増していくでしょう。

まとめ

 以下では、鉛筆画や鉛筆デッサンで自画像を描く際のステップと重要なポイントをまとめました。初心者の人から上級者の人まで、モノトーンの鉛筆画や鉛筆デッサンに興味がある人にとって、最適なガイドです。

基本ステップとプロポーションの理解

顔の三等分: 髪の生え際から眉毛、鼻の下、顎の先まで三等分する。

  • 目の位置と間隔: 顔の幅を五等分し、目の間隔を確保。
  • 鼻と口の位置: 鼻は顔の中央、口は鼻から顎の中間に配置。
  • 耳の位置と大きさ: 目と鼻の高さに合わせて描く。

光と影の使い方

  • 光源の位置: 光源の位置を理解し、影の方向と強さを決定。
  • グラデーション: ハッチングやクロスハッチングを用いて滑らかな遷移を施す。
  • 影の描写: 鉛筆の硬さや角度を調整し、影の濃淡を表現。

表情の捉え方

  • 表情筋の理解: 笑顔や怒りなど、感情による筋肉の動きを理解して描写。
  • 目の描写: 瞳の輝きやまつ毛、眉毛のディテールを丁寧に描く。
  • 口の描写: 唇の輪郭と陰影を描き込み、リアルな表情を表現。

個性を出すための細部の描き方

  • 髪の描写: 髪の束や流れを意識し、陰影で質感を表現。
  • 皮膚の質感: シワや毛穴、ホクロなどの細部を描き込む。
  • ディテールの強調: 特徴的なホクロやシワ、独特の髪型を強調。

仕上げと保存方法

  • 線の調整と清書: 余分な線を消し、当初全体の輪郭を描く際に使用したトーンよりも、2段階明るい鉛筆で、輪郭をはっきりとさせる。
  • フィキサチーフの使用: 鉛筆の線を定着させ、擦れや汚れから保護。
  • 適切な保存環境: 直射日光や湿気を避け、額縁に入れて保管。寒暖差の大きい場所への飾りつけにも注意を払う。
  • アーカイバルマットとフレーミング: 酸を含まない素材で長期保存を実現。

実践的なアドバイス

  • 定期的なチェック: 保存状態を確認し、劣化や変色に対処。
  • デジタルアーカイブ: 作品をデジタル化して保存し、記録を残す。

 鉛筆による自画像の描き方を正しく理解し、細部にもこだわることで、リアルで個性的な作品を創り上げることができます。適切な仕上げと保存方法を実践し、美しい鉛筆画や鉛筆デッサンを長く楽しんでください。

 ではまた!あなたの未来を応援しています。

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