鉛筆画・デッサンにおける「練り消しゴムの秘密」:プロが教える光の描き方とは?

鉛筆画の道具

 どうも。鉛筆画家の中山眞治です。東京では、桜がそろそろ開花しそうですね。元気でお過ごしですか?^^

 さて、デッサンにおいて、練り消しゴムは単なる修整ツールではありません。この柔軟な練り消しゴムを使いこなすことで、作品に光と影を強調し、立体感や深みも与えることができます。

 そこで、練り消しゴムを使って、光を「描く」技術に焦点を当て、鉛筆画やデッサン愛好家がそのポテンシャルを最大限に引き出す方法を探求し、初心者から上級者まで、すべてのレベルのクリエイターに役立つヒントをご紹介します。

 それでは、早速見ていきましょう!

練り消しゴムの基本:デッサンにおける使い方

練り消しゴム画像

 練り消しゴムはデッサンの世界において、ただの消しゴム以上の役割を持ちます。この柔らかく形を変えられる消しゴムは、細かい部分の修整や光の加減を表現する際に不可欠なアイテムです。

 しかし、その可能性を最大限に引き出すには、適切な知識とテクニックが求められます。

練り消しゴムを使う前に知っておくべきこと

 練り消しゴムは、使い方によってその効果が大きく変わります。まず、練り消しゴムは柔らかいため、軽く押し当てるだけでも、紙についた鉛筆のトーンを吸収して弱めることができます。

 強く押し付けても、スケッチブックや紙を痛めることはありません。筆者は、練り消しゴムを3個使っていますが、一番古い練り消しゴムは、筆者が鉛筆画を始めた30年も前から現在に至るまで使い続けています。

 一番古い練り消しゴムは、主に、画面に描き始めた輪郭を修整したり、大きな面積についた鉛筆を消したりするときに使い、新しい練り消しゴムは、仕上がり時の「ハイライト」部分を拭き取る際などに使っています。

 もう一つの練り消しゴムは、どちらにでも対応しています。 

光を「描く」ための練り消しゴムの使い方

 そもそもデッサンとは、3Dのモチーフを見て、2Dの平面な画面へ写し取る一連の動作のことを指しますので、鉛筆画やデッサンにおいて、光と影は作品に立体感を与えるための最も重要な要素なのです。

 しかし、通常の場合、スケッチブックや紙上にモチーフを描き込んでいく際には、「光っている部分」にはトーンを乗せないで描いていくことになりますので、描きにくい場合が多いものです。

 しかし、考え方を変えて、例えばモチーフがガラス製のビンであった場合には、全体をトーンで埋めて、光っている部分を「練り消しゴム」で拭き取れば、光を描くことができます。

 筆者が独自に始めた方法ですが、この方が「描きやすい」ので、こんな描き方をしていますが、この描き方は、「光」を描く以外にも、花の中央のオシベやメシベを描く際や、動物の毛並などにも応用できます。詳しくは記事の中でお伝えします。

練り消しゴムの保管とお手入れ

 練り消しゴムは、部屋の中にそのまま置いておくと汚れやすいので、使用後は、ホコリなどが付着しない環境が必要です。

 筆者の場合には、100円ショップで購入した書類入れに布(バンダナ)を敷いて、練り消しゴムや鉛筆及び制作道具一式を保管しています。

 練り消しゴムを長く使うコツは、夏場などで練り消しゴムが柔らかい時に、よく練っておくことです。筆者の場合には、引き延ばして二つに折り、全体をねじって、形を整えているだけです。

光と影をマスターする:練り消しゴムの高度な技術

第1回個展出品作品 夜の屋根 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画やデッサンにおいて、光と影は、作品に写実と深みをもたらす最も重要な要素なので、この複雑なバランスを練り消しゴムを用いてマスターすることは、アート作品を次のレベルへと引き上げる鍵となります。

 練り消しゴムは、修整するためだけではなく、意図的に光を「描き」加えるためにも使用されます。

光の加え方:練り消しゴムで実現する技術

 練り消しゴムを用いて「光を描く」には、光る部分にしたいところの明るさを微妙にコントロールする必要があります。

 特に、光が強く当たっている部分や、反射光を表現する際に有効です。また、直接光が当たっていない場所であっても、鈍く光を帯びている部分の調整にも、練り消しゴムはその威力を発揮します。

影の描き方:練り消しゴムで深みを出す

国画会展 入選作品 誕生2006-Ⅱ F100 鉛筆画 中山眞治

 影の部分にも練り消しゴムは重要な役割を果たします。光と同様に、影をよりリアルに表現するためには、練り消しゴムを使って細かい調整を行います。

 影の部分の濃度を調整するには、練り消しゴムを練って、しゃもじのような形状にして、一旦乗せた鉛筆を優しくなぞることで、濃度を薄めることができます。

 具体例として、陽光は、部屋の中に入り奥に向かっていくに従ってだんだん弱くなっていきますので、影のエッジを、「しゃもじ」のような形状にして、優しくなぞって調整することで、作品全体に深みと複雑さが加わり、視覚的な魅力も増します。

 練り消しゴムを用いるこの高度な技術は、光と影を自在に操ることで、あらゆる鉛筆画やデッサン作品をより表現力豊かに、そして感動的に変える力を持っています。上の画像の影のエッジ部分では、その手法で調整しています。

デッサン愛好家必見!練り消しゴムで違いを生むコツ

       国画会展 会友賞 誕生2013-Ⅱ F130 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画やデッサンを描く際には、アート作品に深みを加え、細部にわたるニュアンスを表現するための強力なツールになります。

 本章では、練り消しゴムを使って、鉛筆画やデッサン作品を際立たせるための重要なコツを探ります。

練り消しゴムで細かい光の効果を作り出す

 練り消しゴムを使って、鉛筆画やデッサンに微妙な光の効果を加える方法は、細部にこだわることから始まります。最も重要なのは、練り消しゴムを使って光が直接当たる部分や反射する部分を明るくする技術です。

 このテクニックにより、作品にリアリティと生命を吹き込むことができます。柔らかく優しいタッチで光の層を慎重に拭き取ることが、自然な光の表現に不可欠です。

 上の作品画像では、黄金分割した構図上の中心点に植物の芽を描き込み、輪郭部分にあたっている陽光が一番のハイライト部分です。その部分には、仕上げの際に入念に練り消しゴムで拭き取っています。

 この植物の芽の輪郭が輝いて見えるのは、背景に濃いトーン(6B~10B)を置いていることもあって、輝いて見えるのです。また、主役を引き立てるためにも、画面左上の外へ続く景色の空間にも、5Hの縦横斜めの線でトーンを優しく入れています。

影を活用して立体感を生み出す

 練り消しゴムは、作品に立体感を与えるためにも使用できます。練り消しゴムを使って、特に暗い部分の周辺を軽く消し、影の境界をぼかすことで、モチーフに深みとボリュームを加えることができます。

 この技法は、視覚的な対比を強調し、モチーフが空間内でどのように存在するかを強く印象付ける助けとなります。

 デッサン愛好家が、練り消しゴムを用いて、作品に味を出すためのこれらのコツは、技術的なスキルだけでなく、創造的な視点も加味できるのです。

プロが伝授する練り消しゴムを使用した光の描き方

        蕨市教育委員会教育長賞 灯の点る静物 2000 F30 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画やデッサンで練り消しゴムを使用する際には、光の表現が作品にリアリティをもたらし、視覚的なインパクトを強化する重要な要素です。

 本章では、プロのアーティストが使用する、練り消しゴムを用いた光の描き方について掘り下げます。

光の質感を生み出す練り消しゴムのテクニック

 練り消しゴムを使って光の質感を描くには、まず、描きたい光の種類を理解することが重要です。柔らかい日差しから鋭い反射光まで、光にはさまざまな特性があります。

 練り消しゴムを用いることで、これらの光の質感を細かく再現することが可能になります。

 スケッチブックや紙の上で、練り消しゴムの拭き取る形状を工夫したり、拭き取る圧力を調整することで、自然な光の流れや反射を表現し、作品に深みと写実を加えることができます。

影とのバランスで光を際立たせる

 光を描く際には、影の表現も同時に考える必要があります。練り消しゴムを使用して光を強調することで、影の部分とのコントラストが生まれ、立体感が増します。

 このプロセスでは、練り消しゴムを使って細かく光の強さや方向を調整し、モチーフが空間内でどのように存在するかを示すことが重要です。プロのアーティストは、練り消しゴムを使って光と影のバランスを巧みに操り、視覚的な魅力を最大化します。

 プロが実践するこれらの練り消しゴムを使用した光の描き方は、デッサンの技術を向上させる上で非常に価値があります。

 一方、光っている部分を強調するためには、ただ練り消しゴムで拭き取るだけでは足りません。光っている部分を強調させるには、その光っている部分と隣り合わせや周囲に、濃いトーンの部分が必要になります。

 上の作品画像でも確認できますが、光は濃いトーンとのセットで、初めて光ることができることを忘れてはなりません。 

ビンなどのガラス素材へ練り消しゴムで光を描く方法

第2回個展出品作品 モアイのある静物 2000 F50 鉛筆画 中山眞治

 練り消しゴムを使用して「光を描く」場合には、例えばガラスのビンを描くとすると、そのビン全体をHBやBの鉛筆で、縦横斜めの4通りの線で本体全体に優しいタッチで薄くトーンを乗せます。

 そして、練り消しゴムを練って、細く鋭いマイナスドライバーのような形状にして、スケッチブックや紙上の、ガラス瓶の「光っている部分」を練り消しゴムで拭き取ります。

 この作業をするために、拭き取った部分は光っているように描いていくので、そのためにも、拭き取りやすくする必要があるので、優しい軽いタッチで鉛筆を乗せなければなりません。

 光っている部分を拭き取った後は、拭き取っていない部分にトーンを乗せていくことで、光っている部分を強調できるようになります。

 特にビンなどには、濃い色の「ビシッ」と走っている線がありますので、その線をしっかりと捉えましょう。これにより、練り消しゴムで拭き取った部分を強調することにもなります。尚、上の画像の2つのビンは、この手法で描き始めています。

花の中央部のオシベやメシベを練り消しゴムを用いて描く方法

 ここでも、あなたが花の中央部のたくさんあるオシベやメシベを描く際には、その部分を上記と同じように、HBやBの優しいタッチで、縦横斜めの線を使って、オシベやメシベのある部分の面を鉛筆で優しく埋めていきます。

 そして、オシベやメシベの部分を練り消しゴムを練って先端を鋭く細いプラスドライバーのような形状にして、オシベやメシベの部分に点を打っていきましょう。

 その後は、オシベやメシベの部分を鉛筆で形作って整えながら、他の部分も描き込んでいきます。上の画像の花の中心部分などへの描き込みの際にも、有効活用できます。

動物の毛並を練り消しゴムを用いて描く方法

     第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅠ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 この場合でも、毛の密集している部分をHBやBの縦横斜めの線を使って、優しいトーンで毛の密集している部分の面を埋めます。

 具体的には、練り消しゴムを練って先端を鋭く細いマイナスドライバーのような形状にして、毛並みを拭き取りましょう。そして、その後は、全体にトーンを整えれば完成できます。

 上の作品画像の狼は、全体的にこの手法で描いていますが、分かりやすい部分では、あごの下などで確認できます。そして、その毛を描いた後に、改めて影を入れているのです。

まとめ

第1回個展出品作品 野菜 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 デッサンにおける練り消しゴムの使用は、単に誤りを修整する以上の価値を持ちます。この柔軟なアートツールを駆使することで、アーティストは作品に写実と深みをもたらし、光と影を巧みに操ることができます。

 練り消しゴムを使用したテクニックは、初心者から上級者まで、全ての鉛筆画やデッサン愛好家にとって学ぶ価値があります。

 初心者は、練り消しゴムの基本的な使い方から始めて、光の質感を生み出す方法や影を活用して立体感を出すコツを習得します。

 この基礎をマスターすることで、初めての鉛筆画やデッサンに深みを加えることが可能になります。一方、中級者は光と影のニュアンスを捉え、より複雑な表現に挑戦することで、作品の写実を高めることができます。

 練り消しゴムを使った微細な調整は、中級レベルのスキルを次の段階へと引き上げる鍵となります。

 上級者にとっては、練り消しゴムはさらに高度なアート制作のツールとなります。それぞれの拭き取る場所の形状に合わせて、練り消しゴムの形状も工夫することで、作品に独特の質感や光の効果を加えることが可能になります。

 これらの高度な技法を駆使することで、アーティストは独自のスタイルを確立し、作品に深い個性を吹き込むことができます。

 総じて、練り消しゴムは、鉛筆画やデッサンにおいて多目的に使える重要なアートツールです。基本から高度な技術まで段階的に学ぶことで、アーティストはその表現力を大きく広げることができます。

 尚、練り消しゴムで拭き取った「光」を強調するためには、隣り合わせや周囲に濃いトーンがあって初めて光が強調できることを忘れてはなりません。

 このガイドが、練り消しゴムを用いたデッサンテクニックを探求する上で有益なリソースとなり、あなたのアート作品を新たなレベルへと導くことを願っています。

 ではまた!あなたの未来を応援しています。

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