人物画の書き方を学ぶ:鉛筆画・デッサンで初心者から上級者まで必見!

人物画の描き方

 どうも。鉛筆画家の中山眞治です。桜の時期が終わると、いよいよ夏に向かって躍動の季節ですね。元気でお過ごしですか?^^

 さて、人物の鉛筆画・デッサンは、美術の基本中の基本です。初心者が最初に学ぶべきスキルから、上級者がさらに磨きをかけるテクニックまで、この記事では幅広くカバーします。

 素材の選び方から、陰影の付け方、比例感の掴み方まで、あなたの作品が活き活きとして見えるようにするための秘訣もご紹介して、人物画の魅力に深く迫り、あなたの技術を次のレベルへと引き上げるためのガイドをご提供します。

 それでは、早速見ていきましょう!

人物画の基本:鉛筆画・デッサンでの最初の一歩

第1回個展出品作品 人物Ⅳ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 人物画の世界へようこそ。本章では、鉛筆画やデッサンを始めるために必要な、基礎知識とテクニックを学びます。美術の基本を身につけ、創造的な作品の制作をスタートさせましょう。

必要な材料を揃えよう

 鉛筆画やデッサンを始める前に、適切な材料を選ぶことは重要です。質の良い鉛筆、消しゴム、そしてスケッチブックや紙は、あなたの制作活動の質を大きく左右します。

 そして、鉛筆は10Hから10B(メーカーによっては12B)までさまざまな硬さがあります。H系統の硬い鉛筆は細かい線に、B系統の柔らかい鉛筆は濃い影を描くのに適しています。

 また、スケッチブックは、練習用に多くのページを含むものを選びましょう。また、大きさもさまざまにありますが、最初に取り組む大きさとしては、F6号程度の大きさがが良いでしょう。

 尚、あなたが描くことに慣れて来ましたら、徐々に大きいスケッチブックや紙へ変更していきましょう。特に、各種展覧会や公募展へ出品する場合には、その出品規定上限の大きさで、2~3枚描くことで入選の確率を高められます。

基本的な描画テクニックをマスターする

 人物を描く際には、体の比率を正しく捉えることが基本です。頭の大きさを基準にして、体の各部分のサイズを決定します。

 一般的に、大人の体は頭の高さの約7.5倍から8倍で構成されます。この比例を念頭に置きながら、練習を重ねていくことが重要です。

線の質を意識する

 鉛筆を使った描画では、線の質が作品の雰囲気を大きく左右します。

 力強い線は、確信を持って描かれた印象を与え、軽いタッチの線は繊細さを表現できます。異なる線の質を使い分けることで、作品に深みとリアリズム(写実)をもたらすことができます。

陰影で形を表す

 陰影を上手く利用することで、平面のスケッチに立体感を与えることができます。

 光が当たる部分と影になる部分を意識して、鉛筆の濃淡を変えながら描き進めましょう。陰影を付けることで、人物の顔や服の質感がリアルに表現できます。

 尚、輪郭が整ったところで、一番最初に描き進んでいくところは、「一番濃いトーン」を使っているところからになります。そのトーンを基準にして、徐々に明るいトーンの部分へ描き進んでいきましょう。こうすることで、描きやすさが生まれます。

 一方、逆に、明るいところから描き始めてしまうと、あなたの手元にある濃いトーン以上の濃さのトーンが必要になってきてしまう場合がありますので、注意が必要です。

練習を繰り返すことの重要性

 鉛筆画やデッサンの技術は、練習を重ねることでのみ向上します。初めは思うように描けなくても、諦めずに描き続けることが大切です。毎日少しずつでも描くことで、徐々に自分のスタイルが見えてきます。

 材料選びから基本テクニック、そして練習の重要性まで、これらのポイントを抑えることで、あなたも鉛筆画・デッサンの世界で成長し続けることができるでしょう。

必要な材料とその選び方

 人物の鉛筆画やデッサンを始めるにあたり、適切な材料の選び方は制作活動の質に大きな影響を与えます。本章では、鉛筆画と鉛筆デッサンに必要な基本的な材料と、それらを選ぶ際のポイントを解説します。

鉛筆の選び方

 鉛筆は、人物画を描く際の最も基本的な道具です。鉛筆にはさまざまな硬さがあり、H(硬い)からB(柔らかい)までの範囲があります。

 一般的に、H系統の鉛筆は細かい線や詳細な描写に適しており、B系統の鉛筆は影や暗部を表現するのに向いています。人物画には、B・2B・3B・4Bが特におすすめです。

 これらの硬さを持つ鉛筆を揃えることで、さまざまな質感や明暗を表現できます。一番最初に揃える場合には、2H・H・HB・B・2B・3B・4Bの合計7本あれば充分でしょう。尚、この場合、同じメーカーの商品で揃えましょう。

 その理由は、メーカーによって色合いの濃さや、描き味が違うからです。具体的には、どこででも購入できる、ステッドラー・ファーバーカステル・三菱ユニがおすすめです。

 制作当初の輪郭全体のデッサンには、Bや2Bの柔らかい鉛筆で取り掛かりましょう。全体的な輪郭を描く際には、人差し指・中指・親指で「つまむように持ち」大きく腕を振って、優しく描くようなイメージで描き進みます。

 その理由は、描きやすくて消しやすいからです。また、当初の鉛筆デッサンの中では、やがて「この線だ」と思える線に出会えますので、その後、全体の複数の線を「練り消しゴム」で整理します。

 そして次には、鉛筆の持ち方を「文字を書く際の持ち方」に変えて、描き進んでいきましょう。詳細は、次の関連記事も参照してください。

 尚、因みに、筆者は、9H~8Bまでをステッドラーやファーバーカステル、10Hと10Bは三菱ユニ、9BにはREXEL CUMBERLANDを使っています。

関連記事:初心者必見!鉛筆画・デッサンで最適な鉛筆の選び方とその特性ガイド

スケッチブックや紙の種類と選び方

 鉛筆画やデッサンに適したスケッチブックや紙は、作品の印象を大きく変えることができます。スケッチブックや紙には、滑らかな表面のものから粗い表面のものまで、さまざまな種類があります。

 滑らかな紙は、細かい詳細(ディテール)の描写に適しており、粗い紙は陰影や質感や感触(テクスチャー)を豊かに表現できます。初心者の人は、中程度の粗さの紙から始めると、さまざまな描写に対応しやすいでしょう。

 尚、スケッチブックや紙は、つるつるした紙では鉛筆が乗りにくいこともあり、また、鉛筆で描く場合には、その目の粗さによってラフなタッチで描くことができて、奥行きのある作品を描く際にも効果的です。

 それは、鉛筆の黒鉛はスケッチブックや紙の凸部分に乗り、凹部分の白地は残りますので、そのコントラストで鮮やかな印象を生みます。

 擦筆やティッシュで擦ると凹部分にも黒鉛で埋まり、ぼやけた印象を得ることもできて、このように使い分けることで作品の制作にバリエーションが生まれます。

 これらのことから、鉛筆画やデッサンでは、「中目」の粗さのスケッチブックや紙がおすすめです。尚、スケッチブックや紙の画面上の凹凸をシボと呼びます。詳細は、次の関連記事も参照してください。

関連記事:鉛筆画・デッサン初心者~中級者必見!最適なスケッチブックと紙の選び方

消しゴムと線の修正

 人物画では、線を修整することがよくあります。そのためには、質の良い消しゴムの使用が必要になります。

 消しゴムには、ゴムタイプとプラスチックタイプがあり、ゴムタイプは細かな修整及びハイライトを入れる際や、広い範囲の消去に適しており、「練り消しゴム」という名称で販売されています。

 そして、練り消しゴムは、光を描いたり、光のエッジをぼかしたりと、重要な場面で活躍してくれる必須アイテムです。詳細は、次の関連記事も参照してください。

 尚、プラスチックタイプは、あなたの手元にある日常的に使っているタイプでよいです。練り消しゴムで消えない部分に使えます。

関連記事:鉛筆画・デッサンにおける「練り消しゴムの秘密」:プロが教える光の描き方とは?

補助道具の活用

 鉛筆画やデッサンをする際には、定規・コンパス・分度器などを使用することもあります。

 これらの道具は、特にシャープな線を引いたり、正確な円形を確保したり、他のモチーフと同じ角度を得るためなどに使用し、正確な比例や細かいディテールを再現する際に役立ちます。

 ただし、絵画教室に通っている人は、教室でこれらの道具を平然と使うのは止めましょう。絵画教室の先生方は、フリーハンドでこれらの作業をすることに強いこだわりのある人が多いからです。使用の際は自宅でどうぞ。^^

保管とメンテナンス

 最後に、材料を長持ちさせるためには、適切な保管とメンテナンスが重要です。鉛筆は乾燥した場所に保管し、紙は平らな面に重しを置いて曲がらないようにします。消しゴムは汚れを定期的に取り除き、補助道具も清潔に保つことが大切です。

 筆者の場合には、上の画像のように100円ショップで販売している「書類入れ」にバンダナを敷いて、その上にさまざまな画材を置いています。

基本的な人物の比率と構造

      第1回個展出品作品 少年 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 人物をリアルに描写するためには、正確な比率と構造の理解が欠かせません。本章では、人物画における基本的な比率と構造をマスターするための重要なポイントを解説します。

人体比率の基本ルール

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 三澤寛志 氏

 人体を描く際、最も基本的な比率のルールは、成人の体が頭の高さの約7.5から8倍であるということです。

 ただし、これは一般的なガイドラインであり、個人差やポーズによって変化します。子供や青少年を描く場合は、この比率が小さくなります。この比例を基に、体の各部位(頭、胴体、腕、脚)を正確に描くことが大切です。

顔の比率と配置

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 三澤寛志 氏

人物画を描く際の手順は次の通りです。

輪郭線と補助線を描く

 輪郭線や補助線を描いて、顔全体のバランスを取ります。人の顔は、十人十色ですが、大まかに「卵」のような楕円形の形から出発すると描きやすいです。

 その次には、卵形の輪郭線の中に「補助線」を入れます。卵形の輪郭線の中に、縦の中心線には鼻の中心としての線を入れます。

 また卵形の輪郭線の中に、目の位置を入れるべく横線と、口の位置を決めるための横線も入れましょう。

目・鼻・口の位置を決める

 これらの位置が正しく決められないと、仕上り時に後悔することになりますので、正確に位置決め、全体の比率をしっかり確認しながら進めていきましょう。

 尚、卵形の輪郭線の中に、それぞれの補助線を引いた後には、まず、目の位置と大きさを決めていくことから始めると、描き進みやすいです。

 場合によっては、目の大きさと位置を決めた上で、改めて輪郭線の修正を行うこともできます。このことは、動物の顔を描く際にも共通して言えることです。さらに、全体の比率については、次の比率を参考にしてください。

  • 顔の横の比率は、1:1:1:1:1=耳から目じりまでの距離:目の幅:鼻:目の幅:目尻から耳までの距離
  • 顔の縦の比率、1:1:1=髪の毛の生え際:眉の位置から鼻下:鼻下からあごの下端

 目の描き方は、全体の形を描き、次に黒目を描いて、その次に白目の部分を描き込みましょう。黒目の中心から描くことで、濃淡のメリハリがつけられます。尚、瞳の黒い部分を思い切って濃いトーンで描くことで、活き活きとした印象を得られます。

髪の毛を描く

 髪の毛を描く手順は、まず全体の輪郭を描き、髪の流れをよく観察して描き込み、明るいところと暗い部分を見落とさずに描き込みましょう。

 この明暗の配置をしっかり構成することで、バランスが取れたリアルな描写が可能になります。

手足の比率と動き

 手足の比率も、人物を自然に見せるためには重要です。一般的に、成人の腕は、肩から指先までが体の高さと同じくらいの長さです。

 脚は内股の付け根から地面までが体の半分の長さになります。手足の関節を理解し、それぞれのポーズに応じて自然な動きを表現できるようにしましょう。

体の動きとポーズの描写

 人物画をさらにリアルに見せるためには、体の動きやポーズの理解が必要です。人体は直線的な構造ではなく、曲線で構成されています。体を動かすときの自然な曲線を捉えることで、より活き活きとした表現が可能になります。

 実際に自身でもポーズを取ってみることや、モデルの写真を参考にすることで、動きのあるポーズを正確に描けるようになれます。

練習による理解の深化

 理論だけでなく、実際に多くの練習を積むことが、人物の比率と構造を理解する上で最も効果的です。異なる年齢、性別、体型の人物を描くことで、多様な体の比率と構造に慣れ、自身の技術を向上させることができます。

 本章では、人物画を描く上での基本的な比率と構造について解説しました。これらの基本をしっかりと理解し、練習を重ねることで、あなたの人物画は、よりリアルで表現豊かなものになるでしょう。

陰影を使ってリアリズムを高める方法

    第1回個展出品作品 マリリン・モンロー 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 陰影を適切に配置することは、鉛筆画やデッサンにリアリズム(写実)をもたらす上で欠かせない技法です。本章では、人物画に深みと立体感を加えるための陰影の使い方を紹介します。

光の方向を決定する

 陰影を描く前に、まず光がどこから来ているかを決定することが重要です。

 光の方向が決まることで、自然な影の位置と形が定まります。実際の状況を観察するか、シミュレーション上の光源を設定して、光と影の関係を理解しましょう。

影の強さと範囲を把握する

      第1回個展出品作品 男と女 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 光の方向が決まりましたら、次に影の強さと範囲を考えます。強く光の当たっている部分の影は、特に濃いものです。また、影は光の角度と物体の形状によって変化します。

 この原則を理解することで、よりリアルな陰影を描くことができるようになりますし、想像では得られないユニークな影の形もありますので、実際の影のでき方をよく観察して変化に富んだ表現方法につなげましょう。

 上の作品の、傘の取っ手の影のような形も面白いものです。尚、この作品を制作した際には、パイプハンガーに実際の傘を釣り糸(テグス)で吊り、部屋の明かりを消し、スポットライトを当てて制作しました。

濃淡で立体感を表現する

      第1回個展出品作品 人物 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 陰影を使って立体感を表現するには、濃淡のコントラストを上手く活用する必要があります。光が当たっている部分は薄く、影になっている部分は濃く描きます。

 さまざまな濃淡を使い分けることで、人物の顔や服、体の曲線に立体感を与えることができます。

質感や感触に陰影を利用する

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高沢哲明 氏

 人物の皮膚や服の質感を表現する際にも、陰影は非常に役立ちます。異なる質感や感触(テクスチャー)には、それぞれ特有の光の反射の仕方があります。

 例えば、光沢のある素材は鋭いハイライトとクリアな影を持ち、柔らかい素材はぼんやりとした影が特徴です。この違いを捉えることで、よりリアルな質感を描写できます。

陰影による表情の深み

 人物の表情には陰影を加えることで、感情の深みや表情の微妙な変化を表現することが可能になります。

 特に目の周りや口元の影は、表情を豊かにする上で重要な役割を果たします。陰影を利用して感情を伝えることで、作品に生命を吹き込めます。

 陰影を適切に使用することで、人物画に写実と深みを加えることができますので、光と影の関係を理解し、濃淡を上手く使い分けることで、あなたの作品は見る人に強い印象を与えられるでしょう。

表情とポーズの描き方

第1回個展出品作品 人物Ⅵ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 表情とポーズは、人物画においてキャラクターの感情や動きを伝える上で欠かせない要素です。本章では、表情とポーズをリアルに描くためのテクニックを紹介します。

表情の微細な変化を捉える

 人の表情は非常に豊かで、小さな眉の動きや口角の上がり方一つで大きく変わります。リアルな表情を描くためには、これら微細な変化を観察し、捉える必要があります。

 鏡を使って自身の表情を観察したり、感情を表現する顔の写真を参考にして、さまざまな表情を練習しましょう。

目と口の描写に注意を払う

 表情を表現する上で、目と口は特に重要な役割を果たします。目は「魂の窓」とも言われ、感情の深さを表現する鍵となります。目の形、瞳の大きさ、視線の方向を正確に描くことで、キャラクターの感情や性格を表現できます。

 口元も同様に、喜び、悲しみ、驚きなどの感情を伝える重要な要素です。口の開き具合や唇の形状を変えるなど、さまざまな表情を描き分けましょう。

ポーズで動きを表現する

 人物のポーズは、その人物の行動や心理状態を伝える重要な手段です。自然で活き活きとしたポーズを描くには、重心と体のバランスを意識することが大切です。

 動きのあるポーズを描く際には、動作の流れを理解し、それに合わせて衣服や髪の流れを加えると、よりリアルな表現が可能になります。

     第1回個展出品作品 人物Ⅱ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

全身のバランスを取る

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 三澤寛志 氏

 ポーズを描く際には、全身のバランスを考慮することが重要です。人物が立っている場合、重心は両足に均等に分配されるべきですし、片足に体重がかかっている場合はその足が体のバランスを支えるように描きます。

 行動が含まれるポーズでは、動きの方向と重心のシフトを考慮して、自然な動作を表現しましょう。

練習を通じて感覚を磨く

 表情やポーズをリアルに描くためには、多くの練習が必要です。さまざまな感情を持つ人物の写真や、実際の人物をモデルにして練習することで、より正確な表現が可能になります。

 また、アニメーションや映画のキャラクターを参考にすることも、表現の幅を広げることに役立ちます。

 表情とポーズの描き方をマスターすることで、人物画に命を吹き込むことができます。微細な表情の変化を捉え、リアルなポーズでキャラクターを描くことで、観てくださる人に強い印象を与えられる作品を創り出しましょう。

上級者向け:細部への注意と応用テクニック

      第1回個展出品作品 人物Ⅰ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画やデッサンにおいて、細部への注意と応用テクニックの習得は、作品を際立たせるための重要なステップです。本章では、上級者がさらに技術を磨くためのポイントを探ります。

細部の観察と描写

 第1回個展出品作品 人物Ⅴ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 高度な写実(リアリズム)を達成するためには、被写体の細部に深く注意を払って観察することが必要です。

 人物の皮膚の質感、髪の一本一本、衣服のしわに至るまで、細かい部分を見逃さず描写します。このような細部へのこだわりが、作品に深みと現実性をもたらします。

光と影の微妙なニュアンス

 上級者にとって、光と影を使った表現はさらに複雑になります。

 光の微妙な変化や、影の中に見られる色の深さを捉えることで、作品に立体感と空気感を加えることができます。光源の種類や強さ、影の落ち方を細かく分析し、それを作品に反映させましょう。

表情とポーズの高度な描写

 人物の表情やポーズにおいても、より細かなニュアンスを捉えることが重要です。微細な表情の変化や、体のひずみ、筋肉の動きなど、リアルな人間の動きを捉えることが求められます。

 これらを表現するためには、解剖学的な知識や、人間観察の経験が役立ちます。つまり、骨格の上に筋肉があり、表面を皮膚が覆っているという認識が必要なのです。これらの理解のもとに、人体の輪郭を構成するということです。

応用テクニックの活用

 上級者になると、さまざまな応用テクニックを駆使することで、作品に独自のタッチやスタイルを加えることができます。

 たとえば、濃淡を利用した階調(グラデーション)、線の強弱をつけることで生まれるリズム感など、細かな技術を駆使して、作品に表情を加えることが可能になります。

創造的な発想と実験

 上級者では、技術的な習得だけでなく、創造的な発想も重要になってきます。

 従来の方法に捉われず、新しい材料や技法を試してみる、また、異なる芸術分野からの「ひらめき」を取り入れることで、自分だけの独特な表現を見つけ出すことができます。

 本章では、鉛筆画やデッサンの上級者がさらに技術を磨くために注目すべき細部への注意と応用テクニックを探りました。

 細部にこだわり、光と影の微妙なニュアンスを捉え、表情やポーズをより深く描き出すことで、作品はよりリアルで感動的なものになるでしょう。

練習方法と作品の仕上げ方

      第1回個展出品作品 人物Ⅲ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画やデッサンのスキルを磨き、作品を完成させるためには、効果的な練習方法と仕上げ技術が不可欠です。

 本章では、技術を向上させる練習方法と、作品を美しく仕上げるためのテクニックを紹介します。

効率的な練習方法

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 三澤寛志 氏

 技術向上のための練習では、質と量のバランスが重要です。毎日一定時間を設け、さまざまな被写体を描くことで、観察力と描写力を高めましょう。

 具体的には、「あらゆることから解き放たれた自由な時間」を得られるとしたら、集中して練習できるはずですので、毎日1時間くらいあれば充分でしょう。しかし、できれば、毎日2時間くらい練習できるとすれば、上達は早くなるはずです。

 また、特定の技術やテーマを定めた集中練習も効果的です。例えば、一週間は手の描写に集中し、次の週は表情の練習に専念するなど、計画的な練習が効果的です。

描写力向上のためのスケッチ

 外出先でのスケッチは、即時性と多様性を求められ、観察力と描写力の向上に非常に有効です。人々のさまざまなポーズや表情、光の変化を捉えることで、よりリアルな表現力を身につけることができます。

 しかし、場所と状況をわきまえないと、大きなトラブルにつながることになりますので、充分な注意が必要です。^^

 尚、自然の風景を描くことを実行できれば、人物画の背景に使う技術も向上します。さまざまな背景を試みるのも魅力的です。

作品の仕上げ方

 作品を仕上げる際には、全体のバランスのチェックと細部の確認が重要です。まず、全体の比率が適切に再現できているかを充分に確認しましょう。次に、細部の描写が意図した通りに表現されているかを点検し、必要に応じて修整します。

 最終的に、光と影のバランスを再確認し、リアリズムと深みを増すための最終調整として、それまで描いてきた、画面上で一番暗かった部分をもう一段濃くしたり、ハイライト部分には練り消しゴムで入念に拭き取りましょう。

 尚、この時点で、ハイライト部分が光って見えない場合には、そのハイライト部分の背景や隣接部及び周辺に、効果的な濃いトーンが入っていないということがあります。

 モノトーンの作品の制作では、光っている部分を際立たせるためには、暗いトーンとのセットの描写が欠かせません。

作品集の作成と評価

 完成した作品は作品集(ポートフォリオ)にまとめ、自己評価や他者からのフィードバックを得ることは重要です。作品を通じて自身の成長を振り返り、強みと改善点を把握することで、次のステップへの指針を得ることができます。

 また、展覧会及び公募展への出品やオンラインフォーラムへの参加は、他者からの客観的な評価を得る良い機会にもなります。

持続可能な創作活動のために

 練習と作品の制作を持続可能なものにするためには、自分自身の健康と創作意欲を維持することが大切です。

 定期的な休息、ひらめき(インスピレーション)を得るための活動、そして創作活動と日常生活とのバランスを考えることが、長期的な成長と創作活動の持続につながります。

 尚、この記事では、人物画の描き方について述べてきましたが、静物・動物・風景・心象風景を含めて、順番に制作を行うことで、最初は苦手なジャンルがあるものですが、やがてすべてのジャンルの作品を制作することができるようになれます。

 本章では、鉛筆画やデッサンの技術を磨き、作品を美しく仕上げるための練習方法とテクニックを紹介しました。効率的な練習と、作品の丁寧な仕上げを通じて、あなたの制作活動はさらに洗練されたものになるでしょう。

まとめ

 この記事では、鉛筆画やデッサンにおける、人物画の描き方をマスターするための包括的ガイドを提供しました。内容について箇条書きでまとめました。 

  • 基本材料の選択:質の良い鉛筆、適切なスケッチブックや紙、信頼できる消しゴムを選ぶことが、作品の品質に大きく影響します。
  • 人物の比例と構造:人体の平均的な比例を理解し、顔、手足、全身のバランスを正確に描くことが重要です。
  • 陰影の技法:光の方向を決定し、影の強さと範囲を把握することで、作品に立体感とリアリズムを加えます。
  • 表情とポーズ:微細な表情の変化と自然なポーズを捉えることで、キャラクターに命を吹き込みます。
  • 上級者向けの応用技術:細部に注意を払い、光と影、表情の細かなニュアンスを捉えることで、作品の質を向上させます。
  • 練習方法:毎日の練習、スケッチ、特定のテーマへの集中、そして多様な被写体への挑戦が上達の鍵です。
  • 作品の仕上げ方:細部の確認、全体のバランスの調整、そして最終的な陰影の加工を通じて、作品を完成させます。
  • ポートフォリオの作成:完成した作品をポートフォリオにまとめ、自己評価や他者からのフィードバックを受けることも成長につながります。

 これらのポイントを実践することで、鉛筆画やデッサンのスキルを確実に向上させることができます。継続的な練習と探求心を持ち、創作活動に情熱を注ぐことが、美術の道における成功への鍵となるでしょう。

 最後になりますが、あなたが「制作するからには、各種展覧会や公募展にも出品したい」と希望するのであれば、ただ単に人物の絵を上手に描けたとしても、それだけでは入選できません。

 それは、あなたの制作する画面全体の、構図及び構成や配置に対しての「事前に構想をしっかりと練る」ことや「モチーフに合った構図の導入」なども検討したうえで、あなたの制作する画面全体を使い切ることが必要なのです。

 この点について興味のある人は、次の2つの関連記事も参照してください。

鉛筆画・デッサンで差をつける:初心者から上級者までの制作構想の重要性とは?

関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは?

 ではまた!あなたの未来を応援しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました