鉛筆画の魅力を最大限に引き出す!練習方法とコツを紹介

鉛筆画

 どうも。鉛筆画家の中山眞治です。桜の次はツツジや藤でしょうか。いよいよ暖かくなってきましたね。元気でお過ごしですか?^^

 さて、鉛筆だけで始めるアートのこの記事では、鉛筆画の基本的な描き方から、立体感を出す技術、細部を細かく描く方法まで幅広くご紹介します。

 初心者の人には基礎から応用まで、上級者の人には新しい技術や発見があるかもしれません。あなたの鉛筆画のスキルアップに役立つ内容を、わかりやすく解説していきます。

 それでは、早速見ていきましょう!

  1. 鉛筆画練習の始め方:基本の第一歩
    1. 鉛筆の種類を知ろう
    2. 適切な持ち方をマスターする
    3. 基本的な線の引き方
    4. 簡単な形から始める
    5. 光と影の基礎
  2. 初心者向け:基本のストローク
    1. 基本のストローク:線の表現を豊かに
    2. 筆運びの練習:形と陰影を描く
    3. 練習のコツ:リラックスして楽しむ
  3. 立体感の出し方:陰影の描き方の基礎
    1. 全体の輪郭線を描き終えた後
    2. 光源を意識する
    3. 影の種類を理解する
    4. 階調(グラデーション)で柔らかさを表現
    5. 反射光を忘れずに
    6. 実際に観察する
  4. 細部を活き活きと描くディテール(詳細)表現法
    1. 細かな質感や感触(テクスチャ)の観察から始める
    2. 細い線で表現する技術
    3. 陰影を使って立体感を加える
    4. 層を意識した描き方
    5. リアリズム(写実)と様式化のバランス
  5. 上級者向け:リアルな質感や感触(テクスチャ)の描き方
    1. 複合的なテクスチャの理解
    2. 光と影を利用した質感の表現
    3. 繊細なグラデーションの作成
    4. 比較と階調(コントラスト)の使用
    5. 実践と観察の重要性
  6. 鉛筆デッサンにおける構図の考え方
    1. バランスを意識した配置
    2. 焦点となるポイントの設定
    3. 動きの導入
    4. 空間の利用
    5. 視点と遠近法(パースペクティブ)
    6. 5感に響く制作も試みる
  7. よくある質問とその答え:鉛筆画練習のコツ
    1. Q1. 鉛筆画の練習を始めるにはどんな材料が必要ですか?
    2. Q2. 鉛筆の硬度はどのように選ぶべきですか?
    3. Q3. 線をまっすぐに引くコツはありますか?
    4. Q4. 陰影を自然に見せるにはどうすればいいですか?
    5. Q5. 練習のモチベーションを維持するには?
  8. まとめ

鉛筆画練習の始め方:基本の第一歩

     第1回個展出品作品 一輪挿しと花 2001 F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画を始める上で最も大切なのは、基本をしっかりと理解することです。ここでは、鉛筆画の基本を学ぶ第一歩を解説します。

鉛筆の種類を知ろう

 鉛筆には10H~10B(メーカーによっては12Bまで)などの種類があります。細かい線を描くにはH系統、濃く柔らかい線を描くにはB系統の鉛筆が適しています。取り組みの最初では、2H・H・HB・B・2B・3B・4Bの7本あれば充分です。

 このバリエーションで描いてみて、あなたがこの先も続けていけそうと思えたならば、少しづつ幅を増やしていきましょう。

 尚、最初に揃える鉛筆は、同じメーカーの製品で揃えましょう。その理由は、メーカーによって「色の濃さと描き味が若干異なる」点があるからです。詳細は、次の関連記事を参照してください。 

関連記事:初心者必見!鉛筆画・デッサンで最適な鉛筆の選び方とその特性ガイド

適切な持ち方をマスターする

出典画像:リアル絵の基本 リアル絵・デッサンの鉛筆の持ちかたhttps://realdrawing.jp/pensilart-basic/howtohold-pencil

 鉛筆の持ち方は、人それぞれたくさんの持ち方があると思いますが、文字を書く場合と違って、画面上に大きく輪郭線を描くとした場合には、その動作にふさわしい持ち方があります。

 特に、真っ白なスケッチブックや紙の上に、いきなり筆圧を強めて描く人はいないと思います。つまり、大きな輪郭線は、画面全体の中に納まるようにバランスを見ながら描いていきますので、それに適した持ち方と描き方があります。

 結論として、Bや2Bの鉛筆を人指し指・中指・親指で「つまむように優しく」持ち、大まかな輪郭線を腕と肩を大きく使うようなイメージで描いていきましょう。勿論、最初から筆圧の強い描き方はいけません。

 優しく複数の幾通りもの線を描く中で、やがて「これだ」と思える線に出会えますので、そうした複数の線であなたの描くモチーフの全体を捉えて、全体のイメージを画面の中に収めていきます。

基本的な線の引き方

 鉛筆画の基本は、直線、曲線、そしてそれらを組み合わせた形です。まずは直線を練習し、次に自然な曲線が描けるようにしましょう。しかし、最初からきれいな直線や曲線が描けなくても心配はいりません。

 誰でも、最初からうまく描ける人などいません。長い経験の中でゆっくりと習得するつもりで取り組みましょう。必要であれば、定規及びコンパスや分度器なども自由に使いましょう。

 ただし、あなたが絵画教室に通っている場合には、絵画教室の先生方は「フリーハンドでの制作」にこだわりのある人が多いので、ツールを使う際には自宅で行うことにしましょう。^^ 

簡単な形から始める

 基本の線が描けるようになれましたら、円や四角形などの簡単な形から描き始めます。これらの形を組み合わせることで、より複雑な物体も描くことができるようになれます。

 最初から複雑な形のモチーフや、複雑な模様のあるモチーフを選んでしまうと、挫折の原因になってしまいますので注意が必要です。

光と影の基礎

 鉛筆画において光と影は、あなたの制作する画面上の物体に、立体感を与えるために不可欠です。

 光が当たる部分を明るく、影になる部分を適切に暗くすることで、形の奥行きを表現できます。影の部分には、B系の鉛筆を用いることで効果を得られます。

 尚、あなたが現実に見ている立体(3D)のモチーフを、平面(2D)のスケッチブックや紙に描画することを「デッサン」と呼びますが、正確な形状のとらえ方の次に、重要な要素が「陰影のとらえ方」です。

 そこで、あなたが絵画教室へ行く場合には、絵画教室には基本的な形の「石膏モチーフ(立方体・直方体・円筒形・球体等)」や「イーゼル」があります。

 あるいは、あなたが自宅で取り組む場合には、白い卵・白無地のマグカップ・白無地のカップ&ソーサーなどで取り組んでみましょう。その理由は、光と影の状態をつぶさに観察できるからです。

 これらの基本をマスターすることが、鉛筆画の上達への近道です。練習を重ねることで、自然と手が動くようになり、より複雑で美しい作品を生み出すことができるようになれます。

 まずは基本の第一歩から始めて、徐々にスキルアップしていきましょう。以上のポイントをおさえることで、鉛筆画の基本を固め、技術を磨く土台を作ることができます。

初心者向け:基本のストローク

 鉛筆画の世界へようこそ!初心者の人が最初にマスターすべきは、適切な鉛筆の持ち方の次には、基本のストロークを学びましょう。この基本をおさえることで、鉛筆を使った表現の幅が広がります。

基本のストローク:線の表現を豊かに

 鉛筆画では、線の太さや濃さで多様な表現をします。まずは、軽いタッチで直線を引く練習から始めましょう。

 次に、筆圧を変えてみることで、線の濃淡を表現できるようになれます。鉛筆を傾けることで広い範囲を柔らかく塗りつぶすことも、基本のストロークの一つです。前掲の4つの鉛筆の持ち方の最後の画像を参照してください。

筆運びの練習:形と陰影を描く

 基本的な直線、曲線が描けましたら、次は簡単な形を描いてみましょう。円や長方形を描き、それらに陰影を加えることで、立体感を出す練習をします。鉛筆の角度と圧力を変えることで、光と影を自然に表現できるようになれます。

練習のコツ:リラックスして楽しむ

 鉛筆の持ち方や描き方は、最初は意識しながら行う必要がありますが、何よりも大切なのはリラックスして楽しむことです。

 あなたが自宅で取り組む際には、「気がかりなことから完全に離れられた時間」を作りましょう。それは、たとえ1時間でもよいのです。重要なのは「短時間でもしっかり集中できること」です。

 そして、理想としては、毎日1時間でも取り組むことで、驚くほどのスピードで上達していけます。

 また、あなたのくつろげる温度や湿度の環境と、心を落ち着けられる「音楽」の用意も必要です。制作画面の中に、あなたの意識が完全に入り込んで「楽しく遊べる」ことが必要なのです。

 さらに、制作にあたっては、力を入れすぎず、優しく鉛筆と紙が持つ可能性を探りながら、自分なりの表現を見つけていきましょう。

 この段階をマスターすることで、鉛筆画の基礎が固まり、より複雑な技法に挑戦する準備が整います。初心者の人も、ぜひ鉛筆を手に取り、創造の旅を始めてみてください。鉛筆だけでも無限の世界の広がりを満喫できます。

立体感の出し方:陰影の描き方の基礎

第1回個展出品作品 野菜 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

全体の輪郭線を描き終えた後

 前述の段階では、画面上の不必要な線を「練り消しゴム」で整理(消去)しましょう。そして、その次の手順は、鉛筆の持ち方を「文字を書くときの持ち方」に変えて描き進みます。

 そして、次の行動としては、前述のデッサンした際の鉛筆よりも、2段階薄い鉛筆で輪郭を整えましょう。あなたが2Bで全体の輪郭を描いたとすれば、HBで整えるということですが、ここでも筆圧は控えめな線で描き進めます。

 この作業をする理由は、濃い鉛筆のまま輪郭線をハッキリと強い色でかたどってしまうと、その後の背景を入れる手順において、場所によっては、背景よりも輪郭線の目立つ作品になってしまうからです。

 尚、立体感を出すための陰影の描き方は、鉛筆画の魅力を一層引き立てます。以下では、立体感を生み出すための陰影の基本的な技術を解説します。

光源を意識する

 立体感を描く上で最も重要なのは、光源の位置を意識することです。光がどこから来て、モチーフに当たっているのかを決めることで、影の落ちる方向が自然に決まります。

 光源を一つに絞り、その光の当たり方によって、物体の形状を表現することが基本です。必要とあらば、部屋の明かりを消して、あなたのデスクの上にある自在に動く「蛍光灯」で、モチーフに光を当てて描くのも良いでしょう。

影の種類を理解する

出典画像:イラスト・マンガ描き方ナビhttps://www.clipstudio.net/oekaki/archives/164537

 陰影には「直接光」「反射光」「コアシャドウ(本影)」「投影影」など、複数の種類があります。直接光は、光源からモチーフに直接当たる光のことであり、反射光は他の物体から反射した光を指します。

 コアシャドウは、物体自体が作る影の最も暗い部分であり、投影影は物体が別の面に落とす影のことです。これらを理解し、使い分けることで、立体感のある描写が可能になります。

第1回個展出品作品 夜の屋根 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

階調(グラデーション)で柔らかさを表現

 影は一様に濃くするのではなく、グラデーションを使って影の濃淡を表現することで、よりリアルな立体感を出すことができます。前掲の作品を参照してください。

 尚、強い光の当たっている部分の影には濃いトーンが必要です。真夏の炎天下の街路樹などにできている影はとても濃いですよね。それと同じです。一方、晴天時の窓から入ってくる光は、部屋の奥に向かって徐々に弱まっていきます。

 これを鉛筆画で表現するならば、部屋の奥に行くにしたがって、影のエッジは弱まっていくような描き方がリアルな描写につながります。

 下の作品を参考にしてください。この場合には、「練り消しゴム」をよく練って、形状をしゃもじのような形にして、影のエッジを優しく拭き取り、さらに徐々に明るいトーンの鉛筆も載せていくことで実現できました。

国画会展 入選作品 誕生2006-Ⅱ F100 鉛筆画 中山眞治

反射光を忘れずに

蕨市教育委員会教育長賞 灯(あかり)の点(とも)る静物 2000 F30 鉛筆画 中山眞治

 物体が非常に暗い背景にある場合でも、周囲の光が反射して物体の暗い部分にわずかな明るさをもたらすことがあります。この微妙な反射光を加えることで、形状がより立体的に見え、描写に深みが増します。

 前掲の作品に反射している、他のモチーフの光を参照してください。ランプの明かりを受けたコーヒーカップの反射を、コーヒーミルが受けてわずかに光っていたり、コーヒーポットに、ランプの明かりがしっかりと反射していたりしています。

実際に観察する

 理論だけではなく、実際の物体を観察して、光と影がどのように作用しているかを学ぶことは大切です。日常の中で、さまざまな光の条件下で物体がどのように見えるかを観察し、それをあなたの作品に活かしましょう。

 立体感を出す陰影の技術は、鉛筆画において非常に重要な要素です。基本をしっかりと理解し、練習を重ねることで、よりリアルで魅力的な作品を生み出すことができるようになれます。

 初心者の人でも、これらのポイントを意識するだけで、大きく改善できるはずです。また、影の中にもさまざまにトーンが存在していることも認識しておきましょう。

 例えば、夜の風景の場合には、闇の中にできる影もあるのです。それはまさに、漆黒の闇ということです。

細部を活き活きと描くディテール(詳細)表現法

      第1回個展出品作品 ペンギン 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画において、細部の詳細を巧みに描き出すことは、作品に深みとリアリティを与える重要な要素です。

 細かい質感や感触(テクスチャ)や微細な表現をマスターすることで、観てくださる人を魅了する作品を生み出すことができます。以下に、細部のディテールを活き活きと描くための基本的な表現法を紹介します。

細かな質感や感触(テクスチャ)の観察から始める

    第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅠ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 詳細(ディテール)表現の第一歩は、対象となる物体のテクスチャを細かく観察することから始まります。

 自然の物体であれば、葉の脈の流れや木の皮のパターン、生き物の毛並みなど、細部にわたる特徴を捉えます。作品に反映させるには、これらの特徴を理解し、再現する能力が求められます。

細い線で表現する技術

 ディテールを描写するには、鉛筆を尖らせて細い線を用いる技術が必要です。線の太さを調節しながら、細部の特徴を丁寧に描き出しましょう。テクスチャに応じて、線の密度や方向を変えることで、よりリアルな質感を表現できます。

陰影を使って立体感を加える

 ディテールの描写において、陰影は立体感を出すために欠かせない要素です。

 細かな部分にも、光と影を意識して加えることで、物体が実際に存在するかのようなリアリティを生み出すことができます。特に、細部の影を描くことで、細かなテクスチャが際立ちます。

層を意識した描き方

      国画会展 会友賞 誕生2013-Ⅱ F130 鉛筆画 中山眞治

 複雑なディテールを表現する際には、異なる層に分けて考えることが有効です。前景、中景、背景の各層に対して、それぞれ異なるディテールの密度を適用することで、深みのある表現が可能になります。

 この方法は、特に風景画や複数の要素が絡み合う場面で効果的です。上の作品では、画面左上の「抜け」の遠景に樹木を3本描いて、遠近法を取り入れて、遠近感とリズムも強調しています。

リアリズム(写実)と様式化のバランス

 細部を描く際には、リアリズムを追求することと、芸術的な表現をバランス良く取り入れることが大切です。

 全てを細部まで忠実に描写するのではなく、視点やメッセージに合わせて表現の程度を調整します。作品によっては、特定のディテールを強調し、他はあえて省略することで、観てくださる人の注意を引きつけることができます。

 具体的には、あなたの制作画面上には、あなたの主役と考えるモチーフが一番引き立つ位置や、全体の構成や構図を事前に、充分構想を練ることが必要であり、あなたが主役に据えるモチーフが引き立つように描いていく必要があります。

 つまり、構図上の中心点(寸法上の中心点のことではありません)上に、主役や準主役のモチーフを据えて、詳細な部分までをも描写し、それ以外のモチーフには、複雑な形や柄があった場合でも、簡略化した描き込みをすることも必要なのです。

 あるいは、詳細な描き込みをした場合であっても、主役や準主役にはしっかりと「ハイライト」を入れても、それ以外のモチーフには、意図的にはハイライトをぼかすなどで、主役や準主役を引き立てられます。

 主役や準主役に対する、細部を活き活きと描くディテール表現法は、鉛筆画の技術を深め、作品に独自の味わいを加えるために不可欠です。これらの基本をマスターし、あなたの創作活動に取り入れてみてください。

上級者向け:リアルな質感や感触(テクスチャ)の描き方

    第1回個展出品作品 金剛力士像「吽形」 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画の上級者が次のレベルへ進むためには、リアルなテクスチャを描く技術を磨くことは不可欠です。

 テクスチャは、物体の質感や素材感を伝える重要な要素であり、細部にわたるリアリズムを追求することで作品に深みをもたらします。ここでは、リアルなテクスチャの描き方に必要な高度なテクニックを解説します。

複合的なテクスチャの理解

     出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高橋新三郎 氏

 リアルなテクスチャを描くためには、対象物の表面の特徴を深く理解し、それをスケッチブックや紙上に再現する技術が求められます。

 例えば、樹皮のテクスチャを描く場合、単に線を重ねるだけではなく、樹皮の割れ目、苔のふんわりとした感触、乾燥した部分と湿った部分の違いなど、複数の特徴を同時に捉える必要があります。

光と影を利用した質感の表現

第2回個展出品作品 ランプの点(とも)る静物 2000 F30 鉛筆画 中山眞治

 テクスチャのリアリズムを高めるためには、光と影の効果を巧みに利用することが重要です。

 光が当たる角度や強さによって、テクスチャの見え方が変わることを理解し、影を入れることで質感を際立たせます。光の当たり方を変えることで、同じ素材でも全く異なる質感を表現できます。

繊細なグラデーションの作成

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高沢哲明 氏

 リアルなテクスチャの表現には、微妙な階調(グラデーション)が不可欠です。筆圧を細かく調節することで、柔らかな遷移を作り出し、物体の表面の微細な凹凸を表現できます。

 この技術は、布のしわや肌の質感など、細かなディテールを描く際に特に有効です。

比較と階調(コントラスト)の使用

 テクスチャをリアルに描くには、異なる質感を持つ要素を並置することで、比較とコントラストを生み出す方法も効果的です。

 例えば、滑らかなガラスと粗い石壁を同じ画面に描くことで、両者の質感の違いが強調され、よりリアルな印象を与えることができます。

実践と観察の重要性

 テクスチャの描き方を学ぶ上で、実際のモチーフを直接観察し、実践を通じて技術を磨くことが最も重要です。

 実物のモチーフに触れて質感を感じ取り、さまざまな角度からその特徴を捉えることで、よりリアルなテクスチャを描くことが可能になります。

 上級者にとって、リアルなテクスチャの描き方は、鉛筆画の表現力を格段に高める技術です。これらの高度なテクニックを駆使することで、作品に生命を吹き込み、観てくださる人をその世界に引き込むことができるでしょう。

鉛筆デッサンにおける構図の考え方

     青木繁記念大賞展 奨励賞 郷愁 2001 F100 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆デッサンでは、構図の選定が作品全体の印象を大きく左右します。優れた構図は、視覚的なバランスを生み出し、観てくださる人の目を引き、メッセージを強力に伝えることができます。

 以下では、鉛筆デッサンにおける効果的な構図を考えるための基本的なポイントを探求します。

バランスを意識した配置

 構図を考える際に最初に重視すべきは、画面内のバランスです。モチーフの配置は、画面全体が均衡を保ち、安定した印象を与えられるように心掛けましょう。

 対称的な配置だけでなく、非対称でもバランスを取ることで、動きやリズムを作品に与えることが可能になります。

 構図にはたくさんの種類がありますが、まずは基本的な構図を学びましょう。次の関連記事の中では、あなたが当面使える構図を5種類用意していますので、参照してください。

 同時に、何となく描いているような絵や、モチーフだけ上手に描けている絵では、あなたは各種展覧会や公募展では入選できません。それだけでは足りないのです。

 それは、各種モチーフの構成や構図を理解して、事前に充分な構想を練ったうえで、画面全体を使い切らなければ、観てくださる人は勿論のこと、「審査員」に評価してもらえないからです。関心のある人は、次の2つの関連記事を参照してください。

関連記事:鉛筆画・デッサンで差をつける:初心者から上級者までの制作構想の重要性とは?

関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは?

焦点となるポイントの設定

 鉛筆デッサンにおいて、視聴者の目を引く焦点(フォーカスポイント)を設定することは、効果的な構図作りの鍵です。

 焦点は、特に詳細に描かれた部分や、明るいトーン、強いコントラストによって自然に作り出すことができます。焦点を通じて、作品の主題や物語を伝えることができます。

 この部分では、既述していますように、強調すべき主役と準主役を細密描写して、ハイライトも強調できるように、そのハイライトの背景や隣接する部分に濃いトーンを持って来るべきです。

 それ以外の、脇役的モチーフには、現実がたとえ複雑な形や模様があっても簡略化して、何となくわかる程度の描き込みをするか、詳細を描き込んでもハイライト部分にトーンを淡く入れ込んで、主役と準主役が目立つようにしましょう。

動きの導入

 構図に動きを導入することで、デッサンに活気とエネルギーをもたらすことができます。

 例えば、線の流れや形の配置を意識的に調整することで、視聴者の目を絵の中で自然に動かすことができます。この技法は、観てくださる人を作品に引き込むきっかけを作り出せます。

 この、観てくださる人の導線を暗示する仕掛けでは、前述の2つの記事の中で詳述していますので、確認してみてください。

空間の利用

 デッサンにおいては、描かれるモチーフだけでなく、空白のスペース(ネガティブスペース)も重要な役割を果たします。

 空間の利用を意識することで、モチーフ間の関係性が強調され、深みと広がりを作品に加えることができます。空間を効果的に使うことで、構図全体の調和を高めることが可能になります。

 画面全体を「ぎっしり」と描き込むことは、必ずしも良いことではありません。画面の中がたくさんのモチーフなどで埋められてしまっては、息苦しい作品になってしまいます。

 そこで、室内風景の作品であれば、作品の中に窓を作って外の景色も描き込んだり、風景の作品であれば、意図的に遠景に続く空間を作って、観て下さる人の息苦しさを解消することもできるのです。前掲の「誕生2013-Ⅱ」を参照してください。

視点と遠近法(パースペクティブ)

 視点とパースペクティブは、デッサンにおける構図を考える上で重要な要素です。異なる視点から作品を描くことで、独特の印象やメッセージを表現できます。

 例えば、高い視点から描くことで優位性や俯瞰的な視野を、低い視点から描くことで包含感や迫力を演出できます。

 鉛筆デッサンにおける構図の考え方は、作品に深みを与え、視聴者とのコミュニケーションを促進するための重要な技術です。

 これらの基本的なポイントを押さえることで、より表現豊かで魅力的なデッサンを描くことができるようになれます。

5感に響く制作も試みる

水滴Ⅸ 2020 F4 鉛筆画 中山眞治

 ただ単に、作品を制作するのではなくて、観る(視覚)以外にも、聴覚(聴く)、味覚(味わう)、嗅覚(嗅ぐ)、触覚(皮膚で感じる)の5つの感覚を刺激する作品の制作を心がけると、見てくださる人の印象を深められます。

 上の作品のように、なんだか音さえも「チャポン」と聞こえそうな作品や、かぐわしい花を描き、香りさえもイメージできるような作品創りを心がけることは、観てくださる人の、観る以外の別の感覚にも訴えることができます。

 また、作品に「緊張感」を加えることも必要です。例えば、下の風景画では、奥から見てくださる人に向かって、道が広がってくるような状態などです。別の言い方をすれば、観てくださる人に「迫ってくるような感じ」ということです。

 また、その次の、「ノスリ」の作品では、モチーフのノスリの「視線」の「威圧感」も緊張感に通じています。

坂のある風景Ⅰ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治

よくある質問とその答え:鉛筆画練習のコツ

      第1回個展出品作品 ノスリ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画を学ぶ過程で、多くの初心者が抱える疑問や課題に対し、明確な解答を提供することで、練習の効率を上げ、技術の向上を図ることができます。以下では、鉛筆画練習におけるよくある質問とその答えを紹介します。

Q1. 鉛筆画の練習を始めるにはどんな材料が必要ですか?

 A1. 鉛筆画練習のためには、さまざまな硬度の鉛筆(2H・H・HB・B・2B・3B・4Bの7本程度)、スケッチブック、練り消しゴムが基本的な材料として必要です。

 これに加え、線の太さや陰影を調節するためにブレンディングスタンプやトルティーヨンがあると便利です。これは、画面上で鉛筆をこすってぼかしたりするときに使えますが、ティッシュペーパーでも代用できます。

Q2. 鉛筆の硬度はどのように選ぶべきですか?

 A2. 線の太さや濃さを変えたい場合は、B系統の鉛筆が適しています。細かい詳細(ディテール)や軽いタッチが必要な場合は、H系統の鉛筆を使用します。

 一般的に、多くのアーティストは、大きな輪郭を撮る際にBや2Bから始め、作品や好みの個所の描写に応じて他の硬度も選択します。

Q3. 線をまっすぐに引くコツはありますか?

 A3. 線をまっすぐに引くためには、鉛筆を持つ手を安定させ、肩や腕を使って線を引くことが重要です。まずは短い線を引く練習から始め、徐々に長い線を引く練習を重ねることがコツです。

Q4. 陰影を自然に見せるにはどうすればいいですか?

 A4. 陰影を自然に見せるためには、光源の位置を常に意識し、それに応じた影の落とし方を考えることが大切です。

 また、階調(グラデーション)を滑らかにすることで、立体感を出すことが可能になります。

 ブレンディングスタンプやトルティーヨンを使用したり、あるいは、ティッシュペーパーで擦ることで、より滑らかなグラデーションを作ることができます。

Q5. 練習のモチベーションを維持するには?

 A5. 練習のモチベーションを維持するためには、自分なりの目標を設定し、小さな成功を重ねていくことが重要です。

 手っ取り早いのは、あなたの住まいの市区町で開催されている「展覧会」出品することを最初の目標に据えることです。この場合には、出品規定を必ずよく読み、あなたが最初に手掛ける大きさが、出品規定の中に入れるかを確認しましょう。

 そして、仮に入選できましたらば、やがては、その出品規定の一番大きなサイズでの出品を検討してみましょう。しっかり構想を練って、充分な構図を導入して、画面を使い切ることをしっかり考えられれば、「入賞」も夢ではありません。

 さらにその先では、都道府県で開催している展覧会へ、そして、やがては全国公募展への出品へ、その向こうには個展の開催へと続けていければ、絶えずモチベーションを維持できるはずです。

 また、他のアーティストの作品を参考にするために、各種展覧会や公募展で作品を鑑賞して新たな「ひらめき」(インスピレーション)を得たり、練習の成果をSNSで共有することでフィードバックを得ることも効果的です。

 これらの質問と答えを通じて、鉛筆画練習に関する一般的な疑問を解消し、より効率的で楽しい学習過程を進めることができるでしょう。鉛筆画は練習と実践を重ねることで、確実に上達するアート形式です。

まとめ

第2回個展出品作品 灯(あかり)の点(とも)る窓辺の静物 2000 F100 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画の練習から上達までの道のりは、基本を理解し、応用技術を身につけることで開かれます。以下は、鉛筆画を学ぶ上で重要なポイントをまとめた箇条書きです。

 これらを踏まえ、継続的な練習と探求心を持って取り組むことで、あなたの鉛筆画は必ず次のレベルへと進化します。

  • 基本の第一歩を押さえる: 鉛筆の種類と持ち方から始め、基本的な線の引き方に慣れましょう。
  • 構図を考える: 画面全体のバランスと焦点を意識した構図が、作品に深みを与えます。
  • 陰影で立体感を出す: 光源を意識し、陰影を利用して物体に立体感を与える技術を学びましょう。
  • ディテールを細かく描く: 細部のテクスチャやディテールを丁寧に描くことで、リアリティを高められます。
  • リアルなテクスチャを追求する: 上級者は、異なる質感のテクスチャをリアルに表現する技術を磨きましょう。
  • 練習を重ねる: 定期的な練習と、さまざまなモチーフやテクスチャへの挑戦が上達の鍵です。
  • 質問を恐れない: 不明点や技術的な疑問は、積極的に調べるか、他のアーティストに尋ねましょう。

 補足として、練習の過程で感じる挫折や停滞期は、成長の一部です。小さな進歩を喜び、自身のペースで学び続けることが大切です。

 絵画教室に行っている場合には、モチーフが変わるたびに講師に手を入れてもらっていては、あなたは絵画教室をやめられなくなってしまいます。最初の1~2作品は良いとしても、それ以降は自身の力だけで制作していきましょう。

 絵画教室は、週に1回通うとして、半年~1年も通えば充分です。そのあとは、あなたが取り組みやすいと思える「構図の本」を1冊購入して、さまざまな構図にチャレンジしていくことで、成長していけます。

 また、他のアーティストの作品を参考にすることで、新たなインスピレーションを得ることが可能です。SNSなどで自分の作品を共有し、フィードバックを受けることも、モチベーションの維持に繋がります。

 これらのポイントを心掛けることで、鉛筆画の技術は確実に向上し、表現の幅も広がっていくでしょう。

 ではまた!あなたの未来を応援しています。

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