どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
さて、鉛筆画・デッサンは、美しいアートの基盤となる技術であり、特に静物デッサンは、形状や輝き、陰影の理解を深める絶好の機会となります。
この講座では、初心者から中級者までの人々に向けて、静物を複合した構図の鉛筆画・デッサンの描き方を学べる内容になっています。
そして、モチーフの選び方から、構図のコツ、実際の制作過程、そして仕上げに至るまでのステップバイステップのガイドラインを提供します。
この講座を通して、あなたの鉛筆画・デッサンの技術を新たなレベルへと引き上げる手助けとなるでしょう。
それでは、早速どうぞ!
鉛筆画・デッサンの静物画制作の際のモチーフの選び方
静物デッサンの効果とその魅力
静物画といえば、歴史上の海外の有名な画家は、セザンヌ、ゴッホ、マネ、ルノアール、シスレー、ピサロ、ゴーギャンなど、まだまだたくさんの有名な画家がいらっしゃいます。
静物画は、身近なモチーフで構図などを工夫して描くことができるので、屋外へスケッチに行く必要もなく、天候にも左右されず、日照時間などの時間的な制約も受けないことが大きいのではないでしょうか。
何よりも、自身の気に入ったモチーフやレイアウトで、たくさん描けるのは魅力です。そして、静物画のすばらしいところは、何と言っても、身の回りにある何でもないものでも作品に仕上げられることではないでしょうか。
また、静物を使って、それぞれのモチーフをいかに構成していくかをじっくりと考えることは、室内で落ち着いて時間を気にせずに取り組めるので、絵画の制作に没頭できる至福の時間を満喫できます。
適切なモチーフの選定方法
今回の私の制作例は、テーマの主体である構図に、①光を中心とする②黄金分割③3角形の構図を意識して配列する(及び外界の風景と同化)を入れる予定で進みます。
それは、構図基本分割線上に、それぞれのモチーフを落とし込んで制作するということであり、各種構図基本線の配置に対して、何をどのように描いていくかということを考えることでもあります。
あなたが今回の記事を参考にして制作する場合でも、主役・準主役及び全体のレイアウトはどうするかを決めていきましょう。
尚、あなたが、私の制作例に使っていないモチーフで、同じような構図で制作しても何ら問題ありませんが、私の制作例をそのまま使うことは、著作権がありますのでできません。あしからずご承知おきください。
デッサン制作の前段階:構想の練り方
クリエイティブな構成のコツ
筆者の今回の制作例にあたっては、以前からぼんやりと考えてきた構想です。それは、室内で灯(あかり)を中心としたテーブル上の静物を置き、背景に外の景色も描き加えて同化させることでした。
そこで、その後何をしたかといえば、実際に「アルコールランプ」と「燃料のアルコール」などを買い込んできて、さまざまに構成を考えることにしました。
そして、構図の本を見ると、中空の3角の頂点に灯(あかり)や炎を設定する作品が多かったので、あえてそれをまねることはせず、画面上に4点ある黄金分割点の、中心点から見て左下の分割点にアルコールランプの炎を据えることにします。
また、実際に室内で灯(あかり)を点(とも)して配列を考えていくと、テーブル上のアルコールランプ以外のモチーフ全体がランプの光を受けて一様に輝いているのを見て、ランプ以外のテーブル上のモチーフ全部を「準主役」と位置付けることにします。
脇役は、当然外界の風景です。月も、対角線の導線に登場していただくことにしました。また、左上角からの斜線には、建物の角の部分も導線に使います。
主題の選び方と配置
全体の構成では、観てくださる人の視線を、室内の「灯の点る窓辺の静物」と外界が調和している、一見すると不思議な感覚の静物画を目指します。
この場合、月が明るすぎてしまうと、一番目立たせたいランプの炎やその光を受けて存在感を示すモチーフ群が目立たなくなってしまうので、月にもほどよいトーンを入れることに注意を払います。
競争に勝てるオリジナリティーの必要性
あなたは、主役・準主役及びレイアウトはどうするかを決めていく際には、できるものであれば、あなた独自のテーマを考えてみましょう。
それは、例えば、寛ぎのひと時をシリーズ化、季節を象徴する果物や野菜で季節を表現、夜の街をシリーズ化、夕暮れ時を専門的に描くなど、あなたが描きたいと思えるテーマを見つけることであり、静物、人物、動物、風景すべてに言えることです。
その専門的なテーマが、あなたのオリジナリティーとなり、他の画家たちとの差別化を図れて、独自性を強調できるからです。ここは、いきなり大きな情報になりますが、あなたがこれから制作を進める際に、一番に考えるべき重要な点です。
これが、あなた独自のブランディングの構築になるということです。「この作風の絵はあの人の作品だな」と思われるようになりましょう。やみくもに描くことは、意味が少なく、効果的な展開には結びつきません。
どの上級者であっても、この部分は常に考え続けている点なので、早い段階から、あなたがこの点に気づいて検討を進めることは、重大な意味を持ちます。この点は、画家にとって一生考え続けていく部分だからです。
実践:鉛筆画・デッサン制作のステップ
効果的な準備方法
まず最初にあなたが手始めにすることは、次のようの順序です。
簡易構想の試行錯誤
まずは、あなたの身の回りにあるA4サイズの紙を用意して、それを正確に半分に切り、今回のあなたの作品のまずはメモ描き程度で自由に構想を練りましょう。
エスキースの活用法
エスキースのサイズを実際に測って、構図分割線を入れていきます。そして、構図基本線を入れるならば、その線はボールペンで入れておくと、そこへ鉛筆で描き込んでいけば何度でも試行錯誤できます。
最終的に、あなたの気に入ったモチーフをあなたの気に入ったレイアウトに据えて、あるいは構図上の不足する部分を他のモチーフも加えて補うことにより、いわゆる「下絵(エスキース)」を造ることができます。
制作のスタート方法
エスキースが実際の制作画面よりも小さい時には、拡大して使うことになりますので、そのことを頭に入れて画面に向き合いましょう。多少の違いは本制作画面で修正するくらいの気持で取り組めば問題は少ないはずです。
F10サイズで制作する場合の正確な縮尺のエスキースを作る方法
正確な縮尺のエスキースの利便性
あなたが、本制作画面をF10のスケッチブックで取り組むとした場合に、正確な縮尺のエスキースを作っておくと、本制作で便利です。なぜならば、主要なモチーフの位置や輪郭を本制作する画面で特定できるからです。
F10サイズのスケッチブックの寸法は、長辺は528mm・短辺が454mmなので、あなたが手元に用意したエスキースが、A4の紙を2つに切ったものならば、長辺が210mmで短辺は148mmであり、縮尺は次の通りです。
短辺の縮尺では、エスキースの短辺をF10のスケッチブックの短辺の数値で割ると、148mm÷454mmなので、0.3259という数値が出ます。
そして、エスキースにおける長辺の長さを求める場合には、F10の長辺の長さ528mmに、上記の縮尺(0.3259)をかければ、172.07となります。
つまり、あなたの手元に用意した紙が、A4の紙を1/2に切ったエスキースの長辺を172mmにすれば、あなたが本制作に入るF10を正確に縮尺したエスキースの土台ができます。
これは、正確に短辺同士の縮尺をおこなうことで、エスキースの長辺の長さが正確に調整できるということです。
正確な縮尺エスキースによる制作の効率化
これによって、F10を正確に縮尺したエスキースが完成しますので、エスキースの中の各モチーフの主要な位置や輪郭などは、エスキース上の各距離を0.3259で割れば、正確な位置をF10のスケッチブック上で再現できます。
尚、F10以外のスケッチブックで、本制作画面に臨む場合でも、前述と同じことが言えますので、各サイズの本制作画面によって、正確な縮尺のエスキースを毎回作ることをオススメします。
実際に制作するスケッチブックのサイズに基づいて、正確な縮尺のエスキースを作っておけば、本制作する画面で各モチーフの位置を再現することが簡単にできるということです。
エスキースでの基本線の描き方
メモ描き程度の構想を練ることが終了しましたら、次はあなたが取り組む本制作に入る画面の縮尺をかけたエスキースの画面に、構図基本線を描き込みましょう。
今回の制作例では、画面上のテーブルの最前面の高さは画面全体の高さの1/10の高さに設定(上記画像赤色線)し、テーブル奥の高さは、そのさらに1.5倍の高さとします(上記画像緑色線)。
このエスキースの土台画面に、黄金分割の基本線を引く場合には、縦横共にそれぞれの長さ÷1.618で値を求めます(具体的な説明はこの先で行います)。
この値を、画面横の場合であれば、上記画像のように左右からそれぞれ2つの分割点(線⑤⑥)を求めることができます。縦の場合でも、上記画像の⑦⑧のように、上下からそれぞれ2つの分割点(線⑦⑧)が求められます。
そして、上記画像のように、画面の縦横の2分割線(③④)と画面上の対角線(①②)を引くことによって、この黄金分割構図基本線は完成します。
効果的な画面レイアウトのポイント
そして、黄金分割基本線の黄金分割の位置にモチーフを描き込んでいきますが、この点につきましても順を追ってご説明していきます。また、この時に、モチーフと各導線との交わり方や、導線の導き方も同時に考えます。
今回の制作例では、モチーフの主役は、中心点左下の黄金分割点にあるアルコールランプの炎です。一方では、画面のテーブル上の静物の後ろ全体が外界へ抜けていく構成にします(以後「抜け」と呼びます)。
「抜け」の効果とその活用法
この「抜け」があることによる効果は、観てくださる人の息苦しさを解消できます。それは、意識がその「抜け」の先にある外界のひらけた空間に向けられて、解放感を与えられるからです。
そして、その効果は静物以外のどのジャンル(花・人物・動物・風景・心象風景)にも応用できます。また、今回の制作例では、テーブル上の静物が一番手前にあり、その後ろ全部は外界なので、室内と外界の調和を図っていく感覚で描き進みます。
さらに、画面の寸法上の中心点には、それぞれのモチーフがかからないように配置します。その理由は、中心点にモチーフを置いてしまうと、画面の動きを止めてしまうからです。
※ 絵画の世界では、絵画の中心点は、構図(黄金分割)上の主役の位置を中心と呼びます。今回の制作例であれば、主役のランプの炎の位置ということです。これは、鉛筆画・デッサン・油彩画・水彩画・アクリル画等において全て同じです。
エスキースと基本線の整合性
今回の完成時のイメージは、各構図基本線を使ってモチーフの高さや、あるいは中心点になるように画面構成を考えます。
そして、主役のモチーフを黄金分割構図基本線⑤上の交点Iに炎の中心が来るように描き込みます。
また、それ以外のモチーフも描き込みますが、その際に一番背の高いワインボトルを黄金分割線⑥上の交点Fにボトルの頭の部分がかかるように描き込みます。
尚、ランプの明かりでそれぞれのモチーフが輝いている部分の一番見映えのする角度を探して配置します。
全体の配置に納得ができましたら、デジカメなどで画像にしましょう。炎を使っていて危険なので、そのまま描き進むのではなく画像にしてしまうのです。
特に、リアルな状態を描きたいのであれば、モチーフの配列をそのままにして、画像で描き進んでいきながら、必要に応じて、再度点火してみるようにしてはいかがでしょうか。安全が第一です。
次に、実際に描き進む場合において、それぞれの基本線にかかるように後はそれぞれのモチーフをデフォルメして配置していきましょう。
つまり、導線にかかるように描きたいけれど、高さの足りないモチーフは、意図的に導線にかかる高さにするということです。逆に縮めて使うこともできます。勿論、幅を広げる・縮めることも自由におこなえばよいのです。
視線誘導と魅せ方のテクニック
黄金分割構図基本線⑤上にある主役の炎をより目立たせることができるように、それ以外のモチーフには濃いトーンを使うことで、より炎を引き立てることを意識します。
明るさを強調するためには、その背後や隣接する部分に濃いトーンが必要です。今回の場合であれば、テーブル最前列とランプの左側の外界の部分に濃いトーンを使うことで、炎の輝度を強調できます。
また、ランプの光を受けて輝くモチーフ群の存在感を高めることが、ひいてはランプの光を強調できることにつながることも忘れないようにしましょう。
画面構成の注意点
ここで肝心なのは、光を中心とした制作例の場合には、光と影の対比による効果で主役の光(炎)以外のモチーフを細密に描き込んでも、見ていただく人々の視線は光に集中しますので、この場合には問題になりません。
ただし、光が光らしく見えるためには、光を放っているモチーフ以外へのトーンの入れ方には注意が必要です。中途半端なトーンでは、光が光らしく見えないということです。
これらのことを、エスキースに「描いては消し描いては消し」を繰り返して、いかにして基本線を有効に使ったレイアウトや充分な強調ができるかを考えてエスキースを完成させます。
一方、今回の制作例のような光を中心とした制作画面以外では、すべてのモチーフの中で主役以外のモチーフを細密に描き込み過ぎてしまうと、見てくださる人々の注意をその部分に集中させてしまいますので注意が必要です。
主役や準主役を引き立てるために、主役や準主役以外のモチーフには意図的に「手を抜いて描く」ことも必要な場合もある点は記憶しておきましょう。
本制作画面での鉛筆画・デッサン画面の採寸の必要性
スケッチブックのメーカーによっては、若干寸法が異なることがありますので、制作前には実際に鉛筆画・デッサンを制作する画面の採寸をして、正確な構図基本線を引きましょう。
このことは、スケッチブック以外にも、例えばパネルに水張りをした画面で制作する場合のF100やそれ以上の大きさの画面にも共通して言えることです。
あなたも制作を進める時には、実際に描き込む画面のサイズに合わせて構図基本線を引きましょう。これは最も重要な点です。
本制作画面でのモチーフ配置の基本
鉛筆画・デッサン制作の進め方
この各種基本線は、2Bなどの柔らかい鉛筆の軽いタッチで描き込みます。
この時筆圧を強く描き込んでしまうと、のちの工程で練り消しゴムでは消しきれなかったり、跡が残ってしまうので、そのためには筆圧をかけ過ぎず優しく描くことが必要です。
エスキースを元にした配置法
黄金分割構図基本線を引いた後に、既成のF10で制作を進める場合には、筆者の使っているF10のスケッチブックの大きさは長辺が528mmで短辺は454mmです。
今回の制作例での短辺は、短辺の長さの1/10の高さにテーブルの最前面が来るように構成するので、454mm-45.4=408.60=409mmの位置がテーブルの最前面の高さになります。
そして、これにより黄金分割点を求めるならば、409mm÷1.618=252.78なので、253mmが縦の画面の黄金分割点(線⑦⑧)となります。この分割点は、上下どちらからでも設定することができます。
また、長辺の黄金比率を求めるならば、528mm÷1.618=326.32mmとなり、326mmの位置が黄金比率の分割点になります。この分割点は、左右どちらからでも設定することができます(⑤⑥)。
尚、あなたの使うスケッチブックの大きさに合わせて、正確な分割点(線)を描き込みます。実際に測って描線することを忘れないようにしましょう。
本制作画面へのモチーフ配置の基本
鉛筆画・デッサン制作の進め方
構図基本線上に、先ほど制作したエスキースを落とし込んでレイアウトします。実際に描き始める際には、まず全体を大づかみでとらえて描き進んでいきます。
細かいことはさておいて、Bや2Bなどの柔らかい鉛筆を親指・人差し指・中指で軽く持ち、全体を優しいタッチで描いていきましょう。
そして、この段階では、今後あなたの制作作品によっては、必要ならば長め・短めの定規やコンパスもどんどん使いましょう。フリーハンドで直線や曲線を描くことは、制作を続けいく中でゆっくりと慣れていけばよいのです。
本制作画面へのエスキースを元にした配置法
・黄色線:構図基本線(対角線・画面縦の2分割線・画面横の2分割線)
・青色線:黄金分割線(上下左右の各2本)
・赤色線:画面縦のサイズ(ACあるいはBD間)の1/10の高さをテーブルの最前面の高さとする
・緑色線:底線(CD)から上記赤色線は画面縦の高さの1/10でしたが、そのサイズの1.5倍の高さとする
モチーフを実際にレイアウトしますが、今回の「静物」では、上記の黄金分割構図基本線を意識しながら、上の画像のような状態をイメージします。
画面制作の秘訣
作品の制作では、構図基本線を意識してレイアウトしますが、作品によって画面に納まりきれない部分は画面の外にハミ出てよいのです。あなたの描く画面には、あなたの必要とする部分だけを切り取って描きましょう。
それは、モチーフ全体を無理に画面に収めようとすれば、窮屈な作品になってしまうからです。逆に、画面からハミ出ることによって、画面の外への広がりが表現できることになります。
このことは、どの作品を描いていくうえでも言えることで重要なことなので記憶しておいてください。
尚、画面最下部の底線(CD)上にモチーフを「乗っけた」ようにレイアウトすることは、重大な禁じ手なのでこれも覚えておきましょう。
斜線の重要性とその活用
制作例では、画面左上の角Aからの斜線②は、背景(風景)の建物の角や屋根の一部を利用して通過し、コーヒーポットの注ぎ口を抜けて、リンゴの中心点を通り、画面右下角のDへ到達させます。
また、画面右上の角Bからの斜線①は、画面上の月の中心点を通り、一番背の高いワインボトルの口の先端を斜めに通り抜けます。
さらに、その下のワインボトルの頭の部分も斜めに通過して、コーヒーポットのフタのつまみも斜めに通り抜けて、光の中心点を通って画面左下の角Cに到達させます。
つまり、斜線が通っていることを画面上のレイアウトや、モチーフの凹凸なども含めて表現するということです。
尚、作品によっては「水滴」や「枯葉の虫食い」なども上手に使いこなせられれば、導線に充分活用できることも記憶しておきましょう。
あなたの理想とする画面を実現する方法
絵画の制作では、実際のモチーフの形状を構図の構成上修整することがあります。これは、どの画家もほとんど行っていることでデフォルメと呼ばれており、鉛筆画・水彩画・油彩画・アクリル画すべての制作技法について言えることです。
デフォルメは、風景画の場合であれば、実際の景色には電柱や電線があっても、作者の意図する一番見映えのする画面にするために省略してしまうこともあります。
それは、現存する状態に修整を加える事であり、「省略」「変形」「強調」「つけたし」など何でもアリです。
尚、これらの構図基本線との重ね合わせは、構図の成り立ちを示すためでもあり、その暗示も含めて画面全体のバランスをとっているのです。要は、あなたが一番見せたい、見栄えのするレイアウトや表現を具現化して強調するということです。
鉛筆画・デッサン初期の構図とレイアウトテクニック
・黄色線:構図基本線(対角線・画面縦の2分割線・画面横の2分割線)
・青色線:黄金分割線(上下左右の各2本)
・赤色線:画面縦のサイズ(ACあるいはBD間)の1/10の高さをテーブルの最前面の高さとする
・緑色線:底線(CD)から上記赤色線は画面縦の高さの1/10でしたが、そのサイズの1.5倍の高さとする
モチーフの輪郭以外の整理方法
最初に描き込んだ、全体の輪郭を取った際の、必要のないたくさんの線は練り消しゴムで整理しますが、こののちトーンを入れていくところにある線はそのままにしておきましょう。
なぜならば、そこへはこれからトーンを入れていくので消す必要がないからです。そして、モチーフにかかっている線や抜けの中にある線は消しておきましょう。
仕上げに向かって、明るい部分にすべきところにある、無駄な線は目立ってしまうので、必ず消しておく必要があります。
また、練り消しゴムで消したところは、その後トーンを入れていくと、消していないところと比較して鉛筆の乗り具合が少しだけ違ってくることがあります。このため、できるだけ練り消しゴムで消す部分は少なくすることを心がけましょう。
鉛筆画・デッサンのメリハリを重視した仕上げ法
メリハリを生むテクニック
練り消しゴムでたくさんの線を整理した後は、いよいよ各モチーフのレイアウト後の制作工程に入りますが、その際には一番暗いところからトーンを入れていきましょう。
制作例の描き始めでは、テーブル最前面の影と外界のランプの光の放射線にかかっていない左側の建物の軒先から描き込んでいくことにします。ここの描き始めは3Bから始めていますが、最終的には5Bを使っています。
デッサン難航時の対処法
これは、あまり大きな声では言いたくない話ですが、筆者の場合には、例えば構図基本線⑤上にあるランプについて言えば、炎の下のガラス製のアルコール燃料の入っている部分の曲線部分の左右が同じように描けない場合どうしたらよいのか。
あるいは、構図基本線⑥上のワインボトルの形状の、左右のデッサンがどうしてもうまくいかない場合などには、まず定規を用意して、モチーフに縦の中心線を引きましょう。
そして、うまく描けている側の線を中心線から測って、反対側の位置に鉛筆で点を打ちましょう。その方法で2~3cm間隔で同じように下へ点を打っていき、最後はその並んだ点を結べば描けます。
尚、この場合、その点は強く描いてしまうと後から消すのに苦労しますので、2Bや3Bの軟らかい鉛筆で、優しく描き込みましょう。
こんな話を絵画教室の先生型が聞いたら、「激怒もの」ですが、そんなことはどうでもよいのです。あなたが楽しく鉛筆画を描くことができることが最優先事項です。
今回の制作例の背景にある「月」は、コンパスで描いています。また、テーブルや背景の建物についても定規を使っています。
あなたも直線や円を描くのに不安があったならば、躊躇なくこれらの道具を使いましょう。ただし、「激怒する先生」がそばにいる時にはやらないようにしましょう。ふと、振り返ったら「顔を真っ赤」にした先生が立っていたら怖いですよね。^^
尚、制作を繰り返して経験が増えていけば、どなたでも直線や円を描けるようになれます。
光の強調方法
完成が近くなってきましたら、全体を観察してみて本来ハイライトであるべきところが、もう一つ明るくなくて、光っているように見えない場合には、その光っているべきところと隣接している部分や背景の黒さの度合いが足りていない場合があります。
光をより光らしく見えるようにする場合には、隣接する部分や背景をより濃い黒にすることで、光るべき部分が輝き出します。尚、制作例で一番明るいところは、当然ですがアルコールランプの炎です。
中心点の扱い方のポイント
制作例の中心点は、コーヒーポットのフタのつまみのすぐ右上で、中心点をわずかに避けています。意識的に中央にモチーフを配置する場合は別として、複数のモチーフで構成する画面では、できるだけ画面の中心点を避けて制作しましょう。
特に、画面の寸法上の中心点と、主役や準主役の中心点が重なってしまうと「動きが止まってしまう」ので注意が必要です。
しかし人物画や動物画など、画面上で大きく面積を使うモチーフの場合などでは中心点を避けることはできませんし、する必要もありませんのでご安心ください。^^
まとめ
鉛筆画・デッサンは、絵画やイラストレーションの基礎となる技術です。特に初心者や中級者にとって、静物を中心とした構図の練習は、視覚表現の核心を捉える大切なステップとなります。
この記事では、静物を複合して描く鉛筆画・デッサンの基本から実践的なテクニックまでを、初心者から中級者の人々に分かりやすく解説しています。
まずは、デッサンを始める前の最も基本的なステップ、モチーフの選び方からスタートします。
鉛筆デッサンで静物に取り組むことのメリットや、どのようなモチーフが描きやすいのか、そして、それをどのように構図に落とし込むのかについて詳しく解説しています。
次に、実際のデッサン制作に向けた構想の練り方を紹介しています。公募展などでの競争に勝つための秘訣及び構成のコツや主題の配置、エスキースの活用法など、実際の制作前に知っておくべきポイントを詳しく解説しています。
特に、「抜け」の効果や視線誘導のテクニックは、作品の魅力を引き立てる要素となるため、ぜひ実践してみてください。
そして、鉛筆デッサンの制作過程では、画面サイズの測定方法やモチーフの配置、そして構図基本線の描き方など、実際に鉛筆を取る際のステップバイステップのガイドラインを提供しています。
また、作品の仕上げ方についても触れています。特に、明暗のメリハリを出すことは、立体感を出す上で欠かせない要素です。
最後に、デッサンが上手く進まないと感じたときの対処法や、光の強調方法などの実践的なテクニックも紹介しました。
これらのテクニックを取り入れることで、より一層リアルで魅力的な鉛筆画・デッサンを描くことができるでしょう。
デッサンは、絵画の基本とも言える技術です。この記事を通じて、その基本をしっかりと身につけ、自身の芸術作品を新たなレベルへと引き上げてください。
尚、この構図記事の他にも、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。
それは、あなたの制作する画面全体を使って、さまざまな構図や発想を駆使することにより、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事を参照してください。
関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは
ではまた!あなたの未来を応援しています。
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