どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
さて、あなたは鉛筆画・デッサンの技術を磨くことで、心の中に浮かぶ景色やイメージをスケッチブックや紙の上に映し出したいと思いませんか?
この記事では、初心者から中級者までの人を対象に、心象風景と現実の風景を複合して一つの作品にする方法を詳しく解説します。独自の視点や感性を最大限に活かし、他の画家とは一線を画す芸術品の制作を目指しましょう。
この記事では、具体的なステップバイステップの手法、使用する鉛筆の選び方、細かい陰影の入れ方など、秘訣も満載しています。
あなたも、心に浮かぶ風景を形にするための鉛筆画・デッサンのテクニックを身につけ、新たなアートの世界を体験してみませんか?
それでは、早速見ていきましょう!
鉛筆画の開始:モチーフの選び方とその重要性
これは写真です
モチーフ選びのステップとアドバイス
今回の筆者の心象風景の制作例は、テーマの主体である構図に、①黄金分割②4分割(縦の方向に対して)③リズム④囲い込んで抜ける(⑤生と死の対比と明暗の対比を強調)を入れる予定で進みます。
それは、構図基本分割線上に、それぞれのモチーフを落とし込んで制作するということであり、各種構図基本線の配置に対して、何をどのように描いていくかということを考えることでもあります。
あなたも、この記事を参考にして制作する場合でも、主役・準主役及びレイアウトはどうするかを決めていきましょう。できるものであれば、あなた独自のテーマも考えてみましょう。
それは、例えば、寛ぎのひと時をシリーズ化、季節を象徴する果物や野菜で季節を表現、夜の街をシリーズ化、夕暮れ時を専門的に描くなど、あなたが描きたいと思えるテーマを見つけることであり、静物、人物、動物、風景すべてに言えることです。
その専門的なテーマが、あなたのオリジナリティーとなり、他の画家たちとの差別化を図れて、独自性を強調できるからです。ここは、最初から大きな情報になりますが、あなたがこれから制作を進める際に一番に考えるべき重要な点です。
どの上級者であっても、この部分は常に考え続けている点なので、早い段階から、あなたがこの点に気づいて検討を進めることは、重大な意味を持ちます。この点は、画家にとって一生考え続けていく部分でしょう。
そして、あなたが、私の制作例に使っていないモチーフで、同じような構図で制作しても何ら問題ありませんが、私の制作例をそのまま使うことは、著作権がありますのでできません。あしからずご承知おきください。
鉛筆画構想の秘訣
構成の核心:何を伝えたいか
筆者の、今回の作品の制作にあたっては、以前からぼんやりと考えていた構想です。
それは、大地から植物の芽が力強く芽吹き、やがて双葉を広げ、日増しにたくましく成長していくさまでした。足元の、ほんの小さな世界にも生命誕生の神秘と無限の可能性があることを感じたのです。
そこで、その後何をしたかといえば、近所の図書館へ行き、幼児向けの絵本で「植物の発芽」という大きな画像付きの本を見つけました。
その本を広げてみると、まさに私の描きたかった植物の誕生の瞬間が載っていたのです(朝顔の発芽の様子でした)。
私の具体的なイメージは、まだ双葉となる部分の頭を地中に残したまま、これから抜け出ようとしているもの、ようやく地中から頭が抜け出たばかりのもの、頭をまっすぐに立ち上げて今まさに双葉を広げようとしているもの3つのモチーフで連続する展開です。
その後私が具体的に実行したことは、自宅で実際に「グリンピース」の種を10粒ほどプラスチック製の容器(バット)に蒔きました。
そして、発芽のタイミング近辺で毎日連続して写真に収め、たくさんの画像の中からこれだと思える画像を探して、連続して成長していくモチーフにしました。
モチーフの役割:主役から脇役までのバランス
さらに、その躍動を強める生命体の背景には、真逆の対象である死の象徴として「枯葉」を置き、「生と死の対比」をすることによって、より生命の躍動感を強調します。
全体の構成では、観てくださる人の左側に進もうとする視線をさえぎり、右上へ抜ける導線の展開を目指します。
そして、小さな植物の発芽となれば、作品を観てくださる人も身近な周辺の地表をイメージすることになりますが、枯葉を導入するのであれば、マッチ棒や吸い殻が近くに落ちていても不自然ではありません。
そこで、タバコには製造番号が記されていますが、描いている私の当時の年齢は当時41歳だったので、本来は別の製造番号が印刷されている部分に、41を書き加えるという遊びまで思いついたのです。
エスキースのマスター術
エスキース制作前の準備
まず最初に、あなたの身の回りにあるA4サイズくらいの紙を用意して、それを半分に切り今回のあなたの作品の、まずはメモ書き程度で自由に構想を練りましょう。
フリーハンドや実際に測ってでも良いのですが、分割線を入れていきます。もしも、きちんと測って構図基本線を入れるならば、その線はボールペンで入れておくと、そこへ鉛筆で描き込んでいけば何度でも試行錯誤できます。
最終的に、あなたの気に入ったモチーフをあなたの気に入ったレイアウトに据えて、あるいは構図上の不足する部分を他のモチーフも加えて補うことにより、いわゆる「下絵(エスキース)」を造ることができます。
具体的には次の画像のような基本線を引くことから始めます。
構図基本線の導入テクニック
まずはこのように、各種構図基本線を描きましょう。
尚、画面上の実際の描線がずれているのは、このエスキースをデジカメで撮ったものを加工しているためです(大き過ぎてコンビニでスキャンできませんでした)。
F10サイズで制作する場合の正確な縮尺のエスキースを作る方法
正確な縮尺のエスキースの利便性
あなたが、本制作画面をF10のスケッチブックで取り組むとした場合に、正確な縮尺のエスキースを作っておくと、本制作で便利です。なぜならば、主要なモチーフの位置や輪郭を本制作する画面で特定できるからです。
F10サイズのスケッチブックの寸法は、長辺は528mm・短辺が454mmなので、あなたが手元に用意したエスキースが、A4の紙を2つに切ったものならば、長辺が210mmで短辺は148mmであり、縮尺は次の通りです。
短辺の縮尺では、エスキースの短辺をF10のスケッチブックの短辺の数値で割ると、148mm÷454mmなので、0.3259という数値が出ます。
そして、エスキースにおける長辺の長さを求める場合には、F10の長辺の長さ528mmに、上記の縮尺(0.3259)をかければ、172.07となります。
つまり、あなたの手元に用意した紙が、A4の紙を1/2に切ったエスキースの長辺を172mmにすれば、あなたが本制作に入るF10を正確に縮尺したエスキースの土台ができます。
これは、正確に短辺同士の縮尺をおこなうことで、エスキースの長辺の長さが正確に調整できるということです。
正確な縮尺エスキースによる制作の効率化
これによって、F10を正確に縮尺したエスキースが完成しますので、エスキースの中の各モチーフの位置や輪郭などは、エスキース上の各距離を0.3259で割れば、正確な位置をF10のスケッチブック上で再現できます。
尚、F10以外のスケッチブックで、本制作画面に臨む場合でも、前述と同じことが言えますので、各サイズの本制作画面によって、正確な縮尺のエスキースを毎回作ることをオススメします。
実際に制作するスケッチブックのサイズに基づいて、正確な縮尺のエスキースを作っておけば、本制作する画面で各モチーフの位置を再現することが簡単にできるということです。
エスキース上の分割点の割り出し方
エスキースの長辺の黄金分割点
今回制作するエスキースは、上記のように、あなたが実際に制作するスケッチブックのサイズをF10とするならば、エスキースのサイズは、長辺が172mmですので、172mm÷1.618=106.30mmとなります。
つまり、正確に縮尺をかけたエスキースの長辺の黄金分割点は、106mmの位置ということになります。尚、この分割点は、左右どちらからでも設定することができます(⑤⑥)。
エスキースの短辺の黄金分割点
そして、エスキースの短辺では、148mm÷1.618=91.47mmとなりますので、91.5mmの位置が黄金分割点です。この分割点は、上下どちらからでも設定することができます(⑦⑧)。
この黄金分割線と、左右頂点からの斜線(①②)と縦横の2分割線(③④)全部を入れた基本線は下の画像「黄金分割構図基本線(横向き)」の通りです。
画面の4分割法
そして次に、上記の画像の黄金分割構図基本線(横向き)にはない、4分割線を入れていきます(⑦④⑧)。
この作品例の場合には、横の4分割を使いますので、横のサイズは148mmなので、148÷4=37mmの位置が4分割の際の分割点になります。その分割点で実際に下絵画面(エスキース)に分割線を入れましょう。(⑦④⑧)
この各種基本線は、2Bなどの柔らかい鉛筆の軽いタッチで描き込みます。この時筆圧を強く描き込んでしまうと、のちの工程で練り消しゴムでは消しきれなかったり、跡が残ってしまうので、そのためには筆圧をかけ過ぎず優しく描くことが必要です。
作品のレイアウトの極意
そして、描き込んだ基本線の黄金分割の位置にモチーフを置きますが、この点につきましては順を追ってご説明します。
また、この時に、作品によってはそれ以外のモチーフも検討して、モチーフと各導線との交わり方や、導線の導き方も同時に考えていきます。
今回の制作例では、モチーフの主役は3点の「グリンピースの芽」です、そして一番目立つ主役の背景に、そのモチーフを引き立てるべく死のイメージの「枯葉」を置き、主役を引き立てるべく濃いトーンを入れていきます。
また、観てくださる人の左側に向かう視線を「マッチ棒の軸と枯葉」でさえぎって右側に導き、右側面でも視線を右上に押し上げるように「吸い殻」を配置することにします。
一方では、画面右上の外界へ抜けてゆく部分も構成することにします(以後「抜け」と呼びます)。
「抜け」効果の活用方法
この「抜け」があることによる効果は、観てくださる人の息苦しさを解消できます。それは、意識がその「抜け」の先にある外界のひらけた空間に向けられて、解放感を与えられるからです。
そして、その効果は心象風景以外のどのジャンル(花・人物・静物・動物・風景)にでも応用できますし、今回の「抜け」では、枯葉の軸部分をその抜けの先へ向けて、見てくださる人々の視線を導きます。
また、今回の制作例では、3点のモチーフが徐々に育ってゆくリズムをあらわすとともに、地平線の位置は、4分割線最上段の位置にします。
尚、画面上のマッチ棒は視線を導く役目をする一方で、その位置は縦の2分割線を中心に配置して画面の安定を図ります。
さらに、画面の中心点には、それぞれのモチーフがかからないように配置します。その理由は、中心点にモチーフを置いてしまうと、画面の動きを止めてしまうからです。
エスキースと基本線の調和
黄色線:構図基本線(対角線・画面横の2分割線・画面縦の2分割線は4分割線と重複する)
青色線:黄金分割線(上下左右の各2本)
黄緑色線:4分割線(縦方向に対して3本)
ピンク色の線:画面の中で視線を囲み、鑑賞者の視線を導く方向を示す線
今回の完成時のイメージは、リズミカルに生命体の躍動を伝えるとともに、画面左下の角Cから右上方の角Bへ抜けていく視線を意識しています。各構図基本線を使ってモチーフの高さや幅、あるいは中心になるように画面構成を考えます。
そして、主役のモチーフを黄金分割構図基本線⑥上に配置します。また、準主役のモチーフも黄金分割構図基本線⑤上に配置します。さらに、画面に横たわる枯葉は、中心点を避けるためにわずかに上にめくっておきます。
視線を惹きつける画面構成
全体のレイアウトをおこないながら、最終的な主役の画面上の光加減も考慮して、右上の角Bの「抜け」といえどもわずかにトーンを入れることにします。
そうすることで、黄金分割構図基本線⑥上にある主役の輝きを画面全体のモチーフの中で一番大きくして、主役を引き立てられます。
そして、黄金分割構図基本線⑥上にある主役をより目立たせることができるように、その背後の「枯葉」には濃いトーンを使うことで、より主役を引き立てることも意識します。
明るさを強調するためには、その背後や隣接する部分に濃いトーンが必要なのです。
画面構成における配慮すべき点
ここで肝心なのは、すべてのモチーフの中で主役以外のモチーフを細密に描き込み過ぎてしまうと、観てくださる人の注意をその部分に集中させてしまいます。
そこで、主役以外のモチーフに注意が集中しすぎないように描き込むようにします。そして、「植物の芽」の3点の内、主役左下の準主役のモチーフには、トーンを入れて主役よりも目立たないようにします。
また、その準主役の更に左下の準主役のモチーフにも、さらにもう1段濃いトーンを入れます。
これらのことを、A4の半分のメモ程度の紙に、「描いては消し描いては消し」を繰り返して、いかにして基本線を有効に使ったレイアウトや充分な強調ができるかを考えて、下描き(エスキース)を完成させます。
F10本制作画面サイズの確認法
スケッチブックのメーカーによっては、若干寸法が異なることがありますので、制作当初に実際のサイズを確認して、正確な構図基本線を引きましょう。
このことは、スケッチブック以外にも、例えばパネルに水張りをした画面で制作する場合のF100やそれ以上の大きさの画面にも共通して言えることです。
あなたも制作を進める時には、実際に描き込む画面のサイズに合わせて構図基本線を引きましょう。これは最も重要な点です。
F10本制作画面での構図基本線の引き方
黄金分割の理解と活用法
次に、黄金分割構図基本線を引く際には、既成のF10で制作を進める場合、筆者の使っているF10のスケッチブックの大きさは長辺が528mmで短辺は454mmです。
なので、例えば長辺の黄金比率を求めるならば、528mm÷1.618=326.32mmとなり、326mmの位置が黄金比率の分割点になります。この分割点は、左右どちらからでも設定することができます(⑤⑥)。
短辺も同じく、既成のF10で制作を進める場合には、454mm÷1.628=280.59mmになるので、280.5mmの位置が黄金比率の分割点にます。この分割点も、上下どちらからでも設定することができます(⑦⑧)。
4分割の理解と活用法
そして次に、上記の画像の黄金分割構図基本線(横向き)にはない、4分割線を入れていきます(⑦④⑧)。
この作品例の場合には、横の4分割を使いますので、横のサイズは454mmなので、454÷4=113.5mmが4分割の際の分割点になります。その分割点で実際に分割線を入れましょう。
今回の制作例で使う4分割線は、地平線になりますが、4分割線と2分割線は当然重なり合いますので、中心で使っているマッチの軸の位置が重なることになります。そういう意味でも、マッチの軸が画面全体に与える安定感につながります。
一方、これは別の制作例にも使えることですが、画面全体を4分割線以外の、例えば今回のように黄金分割を使う際や、√2及び√3を使う場合に、主役の立ち位置をこの4分割線を使って配置することもできます。これは重要な情報です。
※ √2・√3及びそれ以外の構図については、この記事の一番下に掲載している記事を参照してください。
構図基本線の描き始めのテクニック
この実際に制作する画面に構図基本線(黄金分割構図基本線・4分割構図基本線の縦方向の4分割線のみ)を描き込みます。
黄色線:構図基本線(対角線①②、画面横の2分割線③、画面縦の2分割線④は4分割線と重なる)
青色線:黄金分割線(上下⑦⑧、左右⑤⑥、各2本)
黄緑色線:4分割線(縦方向に対して3本、下の図の⑦④⑧)
構図とモチーフの一体感の追求
描き進む際のアドバイス
構図基本線上に、先ほど制作したエスキースを落とし込んでレイアウトします。実際に描き始める際には、まず全体を大づかみでとらえて描き進んでいきます。
F10本制作画面上に描き進む場合には、主要なモチーフの位置や輪郭は前述していますが、エスキースに描いた距離を0.3259で割れば、正確な位置をF10のスケッチブック上に再現できます。
細かいことはさておいて、Bや2Bなどの柔らかい鉛筆を親指・人差し指・中指で軽く持ち、全体を優しいタッチで描いていきましょう。
そして、この段階では、今後あなたの制作作品によっては、必要ならば長め・短めの定規やコンパスもどんどん使いましょう。フリーハンドで直線や曲線を描くことは、制作を続けていく中でゆっくりと慣れていけばよいのです。
エスキースからのモチーフ配置
モチーフを実際にレイアウトしますが、題名にもある今回の「心象風景」では、上記の黄金分割構図基本線と縦の4分割線を意識しながら、上の画像のような状態をイメージします。
この制作例では、主役がいかに主役らしく見えるかが一番重要なので、背景のモチーフを主役が目立つようにトーンを入れていきます。
一方では、画面右上の角Bの「抜け」も、「抜け」として充分目立ちながらも、主役を目立たせるためのトーンを慎重に入れましょう。
また、枯葉を選ぶ際には、複雑な曲がり方をしている枯葉を選ぶのは止めましょう。この作品のエスキースにあるような、どこにでもある「癖の少ない枯葉」が良いでしょうし、イチョウの葉も面白いかもしれませんよ。^^
他作品制作の秘訣
作品の制作は、構図分割基本線を意識してレイアウトしますが、作品によては画面に納まりきれない部分を画面の外にハミ出してもよいのです。あなたの描く画面には、あなたの必要とする部分だけを切り取って描きましょう。
それは、モチーフ全体を無理に画面に収めようとすれば、窮屈な作品になってしまうからです。逆に、画面からハミ出ることによって、画面の外への広がりが表現できることになります。
このことは、どの作品を描いていくうえでも言えることで重要なことなので記憶しておいてください。
尚、画面最下部の底線CD上にモチーフを「乗っけた」ようにレイアウトすることは、重大な禁じ手なのでこれも覚えておきましょう。
斜線を使った鉛筆画の導線テクニック
制作例では、画面左上の角Aからの斜線②は、左上からの斜線を雑草の葉の先端部分から始まり、モチーフの枯葉の「虫食い」と主役のモチーフの地表近くの「水滴」そして、「吸い殻」の折れ曲がった角と画面右下の角Dのわずかな地表部分を抜けるように考えます。
また、画面右上の角Bからからの斜線①は、画面左下の角Cに向かって進みますが、その際に、「枯葉の軸」を通り、主役のモチーフの水滴2つも通って、左下の2点の準主役のモチーフの各水滴を経て左下の角Cに到達していることを暗示します。
つまり、斜線が通っていることを画面上のレイアウトや、モチーフの凹凸なども含めて表現するということです。「水滴」や「枯葉の虫食い」なども上手に使いこなせば充分役に立ちます。
理想の画面構成への変換方法
そして、実際のモチーフの形状は構図の構成上修整することもあります。これは、どの画家もほとんど行っていることで、デフォルメと呼ばれています。
これらの構図基本線との重ね合わせは、構図の成り立ちを示すためでもあり、その暗示も含めて画面全体のバランスをとっているのです。
尚、デフォルメは、風景画の場合であれば、実際の景色には電柱や電線があっても、作者の意図する一番見映えのする画面にするために省略してしまうこともあります。
それは、現存する状態に修整を加える事であり、「省略」「変形」「強調」「つけたし」など何でもアリです。
デッサンとレイアウトの結びつき
黄色線:構図基本線(対角線・画面横の2分割線・画面縦の2分割線は4分割線と重複する)
青色線:黄金分割線(上下左右の各2本)
黄緑色線:4分割線(縦方向に対して3本)
ピンク色の線:画面の中で視線を囲み、鑑賞者の視線を導く方向を示す線
モチーフの輪郭以外の整理テクニック
最初に描き込んだ、全体の輪郭を取った際のたくさんの線を練り消しゴムで整理しますが、こののちトーンを入れていくところにある線はそのままにしておきましょう。なぜならば、そこへはこれからトーンを入れていくので消す必要がないからです。
そして、モチーフにかかっている線や抜けの中にある線は消しておきましょう。仕上げに向かって、明るい部分にするところにある無駄な線は目立ってしまうので、必ず消しておく必要があります。
また、練り消しゴムで消したところは、その後トーンを入れていくと、消していないところと比較すると鉛筆の乗り具合が少しだけ違ってくることがありますので、できるだけ練り消しゴムで消す部分は少なくしましょう。
鉛筆画の仕上げのコツ:明暗のコントラスト
メリハリの重要性とその強調の仕方
練り消しゴムでたくさんの線を整理した後は、いよいよ各モチーフのレイアウト後の制作工程に入りますが、その際には一番暗いところからトーンを入れていきましょう。
制作例の描き始めでは、画面縦の4分割線構図基本線で区切ったモチーフ背後の地平線になりますが、制作の途中から、地表面を「丸く描く」ことにします。
尚、この地平線を「丸く描く」ことの意味は、地球が丸いこと、つまり、大地の果てしない広がりを示していますが、まずはこの部分から描き始めます。そして、ここの描き始めは2Bから始めていますが、最終的には4Bを使っています。
枯葉の横たわっている前面の地表部分は、当初HBで描き始めますが、地表面の一番手前付近はHBのままで描き、その後ろには、地平線に向かって徐々にようすを見ながらB→2B→3B→4Bと濃くしていきます。
強調部分の黒の活用法
完成が近くなってきましたら、全体を観察してみて本来ハイライトであるべきところが、もう一つ明るくなくて、光っているように見えないこともあるでしょう。
そうした場合には、その光っているべきところと隣接している部分や背景の黒さの度合いが足りていない場合があります。
光をより光らしくする場合には、隣接する部分や背景をより濃い黒にすることで、まぶしく光っているべき部分を強調することができます。
制作例で一番明るいところは、水滴と主役のモチーフのこれから広げるであろう葉の一部分です。
中心点の繊細な扱い方
制作例では、中心点部分は枯葉をめくりあげて、中心点をわずかに避けています。
それは、複数のモチーフなどで構成する画面においては、画面の寸法上の中心点に、主役や準主役のモチーフの中心点を重ねてしまうと「動きが止まってしまう」ので、注意が必要です。
しかし、意図的に画面中心部にモチーフを配置する人物画や画面上における一つのモチーフの面積が大きい場合などは除きますのでご安心ください。
まとめ
国画会展 会友賞 誕生2013-Ⅱ F130 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画は、一筆一筆が情熱と技術の結晶です。この美しいアートを追求する過程で、多くのアーティストは「どこから始めればいいのか」「どのように技術を磨けばいいのか」悩みます。
この記事では、鉛筆画の制作過程を効果的に進めるためのステップバイステップのガイドを提供しています。
最初に、モチーフの選び方を検討しました。モチーフは作品の核心となり、視線を引きつける要素です。適切なモチーフを選ぶことで、作品に深みと意味を持たせることができます。
また、モチーフの役割やバランスについても考察し、作品全体の調和を目指すポイントを紹介しました。
次に、エスキースの重要性に焦点を当てました。エスキースは、作品制作の基盤となるもので、黄金分割及び4分割や対角線の引き方など、効果的な構図を決定するための基本的な技術を学ぶことができます。
さらに、「抜け」効果をはじめとしたさまざまなテクニックを通じて、独自の作品を生み出す秘訣を共有しました。
制作過程においては、画面サイズの確認や構図基本線の引き方など、基本となるステップをしっかりと押さえることが必要です。そして、モチーフや全体の構成を整合させることで、一貫性のある作品に仕上げる方法も紹介しました。
さらに、斜線を使った導線テクニックや、デッサンとレイアウトの結びつきについても深く探求しました。
尚、鉛筆画の仕上げにおいては、明暗のコントラストの強調が極めて重要であり、この点についての具体的なアドバイスを提供しています。
まとめとして、鉛筆画制作の過程は単なる技術の応用ではなく、情熱と緻密な計画が求められます。
このガイドを通じて、あなたも鉛筆画の魅力を最大限に引き出し、独自の作品を生み出せる手助けができることを願っています。鉛筆だけで表現できる無限の可能性を、ぜひこの記事を参考にして探求してください。
尚、この構図記事の他にも、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。
それは、あなたの制作する画面全体を使って、さまざまな構図や発想を駆使することにより、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事を参照してください。
関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは
ではまた!あなたの未来を応援しています。
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