鉛筆画・デッサンで初心者から中級者必見!風景を複合した構図で描く方法Ⅰ

風景画の描き方

 どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

 さて、鉛筆画・デッサンの世界へようこそいらっしゃいました。このガイドでは、魅力的な風景のモチーフの選び方から、緻密な構図の基本線の引き方、さらには注目を集めるレイアウトの作り方までを紹介します。

 初心者の人も中級者の人も、このステップバイステップを通じて、画力を格段に向上させましょう。

 それでは、早速どうぞ! 

  1. 初心者も中級者も必見!鉛筆画のモチーフ選びのコツ
    1. 鉛筆画・デッサンで風景に取り組む際の隠れたメリット
    2. 鉛筆画・デッサンで画面構成する際のポイントとは?
  2. 効果的な鉛筆画・デッサン構成の狙いとは?初心者から中級者へのガイド
    1. 競争に勝てるオリジナリティーの必要性
    2.  描きたい風景が見つからない?鉛筆画・デッサン構成のための工夫とテクニック
    3. 鉛筆画・デッサンで画面構成の臨機応変な工夫のしかた
    4. 鉛筆画・デッサンでの脇役の効果的な使い方
  3. 鉛筆画・デッサン制作のステップバイステップガイド
    1. 鉛筆画・デッサン制作のための準備:メモから構想へ
      1. 充分な構想を練る
      2. エスキースで鉛筆画・デッサンの構図を作る:基本線の引き方
      3. 鉛筆画・デッサン本制作へステップアップの方法
      4. 本制作に入る
  4. 鉛筆画・デッサンのエスキース作成の極意:構図基本線の活用法
    1. 効果的なエスキース作成の重要性
    2. エスキースを使った鉛筆画・デッサンの正確な拡大法
  5. 鉛筆画・デッサンの全体レイアウトをマスターする方法
    1. 鉛筆画・デッサンの「抜け」効果とは?応用技法を紹介
    2. エスキースと基本線を整合させるコツ
    3. 視線を意識した鉛筆画・デッサン制作の秘訣
    4. 画面構成で注意すべきポイントとは?
  6. 鉛筆画・デッサン、本制作前の準備:画面サイズの正確な測り方
  7. 鉛筆画・デッサンのための構図基本線の引き方ガイド
    1. 構図基本線の引き方とその重要性
    2. 鉛筆画・デッサンにおける構図分割基本線の効果的な使い方
  8. 鉛筆画・デッサンの構図基本線を活かしたモチーフ配置のテクニック
    1. 鉛筆画・デッサン制作の進め方:エスキースから本制作画面へ
    2. 効果的な画面配置とは?鉛筆画・デッサンでのノウハウ
    3. 鉛筆画・デッサンで斜線の導線暗示を使う方法
    4. 鉛筆画・デッサンで斜線の導線暗示を行う方法
    5. 鉛筆画・デッサンにおける理想の画面構成への変換技術
  9. 鉛筆画・デッサン描き始めの構図整理:初心者向けのコツとレイアウトガイド
    1. 鉛筆画・デッサンの線の整理:輪郭線以外をどう扱う?
  10. 鉛筆画・デッサン仕上げの極意:明暗を強調して魅力を引き出す
    1. 鉛筆画・デッサンの仕上げにおけるメリハリのつけ方
    2. デッサンの難題を乗り越えるコツ
    3. 鉛筆画・デッサンで活用できる道具の選び方と使い方
    4. 鉛筆画・デッサンの輝き効果を高める隣接する暗部の強調方法
  11. 鉛筆画・デッサンにおける中心点の扱い方:上達のポイント
  12. まとめ

初心者も中級者も必見!鉛筆画のモチーフ選びのコツ

鉛筆画・デッサンで風景に取り組む際の隠れたメリット

 風景画といえば、歴史上の海外の有名な画家は、ゴッホ・モネ・ピサロ・セザンヌ・ベラスケス・フェルメール・ルーベンス・レンブラントなど、まだまだたくさんの有名な画家がいらっしゃいます。

 具体的な、風景画のモチーフの探し方や選び方についてはこの先で詳述しますが、室内で落ち着いて時間を気にせずに取り組めるとすれば、絵画の制作に没頭できる至福の時間を満喫できます。

鉛筆画・デッサンで画面構成する際のポイントとは?

 今回の制作例では、テーマの主体である構図として、①√3②迫り来るモチーフで緊張感を強調する予定で進みます。

 それは、√3の構図基本線上に、今回のモチーフを落とし込んで制作するということであり、構図基本線の配置に対して、どのように描いていくかということを考えることでもあります。

 あなたが今回の記事を参考にして制作する場合には、主役・準主役及び全体のレイアウトはどうするかを決めていきましょう。

 尚、あなたが、私の制作例に使っていないモチーフで、同じような構図で制作しても何ら問題ありませんが、私の制作例をそのまま使うことは、著作権がありますのでできません。あしからずご承知おきください。 

効果的な鉛筆画・デッサン構成の狙いとは?初心者から中級者へのガイド

競争に勝てるオリジナリティーの必要性

 あなたは、主役・準主役及びレイアウトはどうするかを決めていく際には、できるものであれば、あなた独自のテーマを考えてみましょう。

 それは、例えば、寛ぎのひと時をシリーズ化、季節を象徴する果物や野菜で季節を表現、夜の街をシリーズ化、夕暮れ時を専門的に描くなど、あなたが描きたいと思えるテーマを見つけることであり、静物、人物、動物、風景すべてに言えることです。

 その専門的なテーマが、あなたのオリジナリティーとなり、他の画家たちとの差別化を図れて、独自性を強調できるからです。ここは、いきなり大きな情報になりますが、あなたがこれから制作を進める際に、一番に考えるべき重要な点です。

 これが、あなた独自のブランディングの構築になるということです。「この作風の絵はあの人の作品だな」と思われるようになりましょう。やみくもに描くことは、意味が少なく、効果的な展開には結びつきません。

 どの上級者であっても、この部分は常に考え続けている点なので、早い段階から、あなたがこの点に気づいて検討を進めることは、重大な意味を持ちます。この点は、画家にとって一生考え続けていく部分だからです。

 描きたい風景が見つからない?鉛筆画・デッサン構成のための工夫とテクニック

 今回の作品の制作にあたっては、以前からイメージしていた構想です。それは、前方からSLが「モウモウ」と黒煙を噴き上げながらこちらに迫ってくる姿です。

 そして、その着想に対して何をしたかといえば、栃木県の真岡市へ実際に走っているSLを取材に行きました。その後私は、制作の間中コークスの排気煙の香りを思い出し、郷愁を誘う汽笛をきいていたような気がします。

 それほど、実際に取材に行くことは意味があるということなのでしょう。また、今回の作品のキャプションは郷愁ですが、郷愁とは、故郷を懐かしく思うことであり、過去の記憶や遠い昔などにひかれる気持ちのことでもあります。

 しかし、残念なことに、さまざまに写真を撮りためて帰ってきましたが、私のイメージする画像は見当たりませんでした。

 そこで、SLの写真集を片っ端から見ていき、今回の制作に使えそうな画像を探してみましたが、今一つどの画像も迫力が足りなかったのです。私の探しているイメージは上述の通り、たくさんの黒煙を噴き上げながら迫り来るSLの画像なのです。

鉛筆画・デッサンで画面構成の臨機応変な工夫のしかた

 その後、私の探し求めているイメージに近いものはあったのですが、今一つ迫力がありません。その理由をよく見て考えてみたところ、まっすぐに走ってくる状態のために迫力がないことに気づきました。

 そこで、まっすぐ走ってくる画像を若干傾けることで、スピードを上げて走ってくる被写体を表現できることに確信を得ました。

 それは、自転車やオートバイがカーブを走る時には遠心力の関係から、車体が斜めになりますが、その斜めに車体を傾けることで、よりスピード感を表現できると考えたのです。

 そして、ようやくイメージに近い画像を手に入れたものの、それは当時の「テレホンカードのSLの画像」でしたが、少し斜めに傾けて、F100のサイズをF10へ縮尺してエスキースを作ることにしました。

鉛筆画・デッサンでの脇役の効果的な使い方

 今回の主役は、当然排気煙を噴き上げ・蒸気を吐き出しながら疾走してくるSLですが、縦横√3の位置にSLの車体正面の円形部分の中心点が重なるようにしつつ、準主役は直立する信号機とします。

 この信号機が直立していることで、SLの車体が傾いている・スピードを上げて緩いカーブを曲がってこちらに向かって進んでくることを対比で強調する一方で、画面上のモチーフの動きを鎮められる効果にも着目しました。

 尚、画面左側には樹木を配置していますが、若干左へ傾けることで景色に同化させると同時に、SLの傾きとは逆に傾けることで、より一層SLのスピード感を高める効果を狙えます。

 そして、こちらに向かってくる描写は、観てくださる人へ「緊張感」を与えることができるということも記憶しておきましょう。静物画であれば、こちら側へ向かって転がって来るボールなどでも緊張感を出すことができます

鉛筆画・デッサン制作のステップバイステップガイド

鉛筆画・デッサン制作のための準備:メモから構想へ

 まず最初にあなたが手始めにすることは、次のようの順序です。

充分な構想を練る

第2回個展出品作品 潮騒 2000 F100 鉛筆画 中山眞治

 前述していますが、「何となく描く」ことは止めましょう。あなたの一番描きたいと思えるモチーフを探すことも必要ですが、何も思いつかずに片っ端から探しても時間の浪費です。

 まずは、今回のテーマは「風景」ですが、ネット上で探した風景及びスクリーンショットや図書館から借りてきた写真集の画像でも良いですし、あなたの自宅周辺の公園や近くの海・河・湖・池・沼・山など、お気に入りの風景を探しましょう。

 その風景に、現実にはない鳥などの動植物及び樹木や岩・田畑などいろいろ組み合わせて、あなたの理想とする風景に仕立てるという方法もありますし、逆に、あなたが見ている風景に余分な電柱や電線があれば、削除しても構わないのです。

 それは、どんな有名な画家でもやっていることであり、削除・修整・変形・移動・縮尺・拡大・加筆など自由に行いましょう。これをデフォルメと言います。実際の風景をあなた好みの「見映えのする画面へ加工」しましょう。

 前掲の作品は、千葉県の犬吠埼灯台へ取材に行き、飛んでいるカモメは、個別に撮影した画像を合成して仕上げました。また、波は複雑な形状を避けて、自分自身のイメージだけで描き込んでいます。

エスキースで鉛筆画・デッサンの構図を作る:基本線の引き方

 次に、あなたの身の回りにあるA4サイズの紙を用意して、それを正確に半分に切り、今回のあなたの作品のまずはメモ描き程度で自由に構想を練りましょう。

鉛筆画・デッサン本制作へステップアップの方法

 その次の作業は、下絵(エスキース)にする画面のサイズを実際に測って、構図分割線を入れていきます。そして、構図基本線を入れるならば、その線はボールペンで入れておくと、そこへ鉛筆で描き込んでいけば何度でも試行錯誤できます。

 最終的に、あなたの気に入ったモチーフをあなたの気に入ったレイアウトに据えて、あるいは構図上の不足する部分を他のモチーフも加えて補うことにより、エスキースを造ることができます。

本制作に入る

 エスキースが実際の制作画面よりも小さい時には、拡大していくことになりますので、そのことを頭に入れて画面に向き合いましょう。多少の違いは本制作画面で修正するくらいの気持で取り組めば問題は少ないはずです。

 尚、エスキースには次のような構図基本線を描き込みましょう。

鉛筆画・デッサンのエスキース作成の極意:構図基本線の活用法

効果的なエスキース作成の重要性

 メモ描き程度の構想を練ることが終了しましたら、次はあなたが取り組む本制作に入る画面の縮尺をかけたエスキースの画面に、構図基本線を描き込みましょう。

 あなたが、本制作に入る画面の大きさをF10のスケッチブックのサイズで取り組むとして、仮に、このエスキースをA4の紙を正確に2つに切ったもので制作するとした場合には、次のようになります。

 F10の長辺は528mm・短辺が454mmなので、あなたが手元に用意したエスキースにする画面は、その短辺のサイズは148mmなので、F10の短辺のサイズ454mmで割ると、0.3259という数値が出ます。

 そして、F10の長辺は528mmなので、この長さに上記の縮尺(0.3259)をかければ、172.07となりますので、あなたのエスキースの長辺を172mmにすれば、あなたが本制作に入るF10を正確に縮尺したエスキースの土台ができます。

エスキースを使った鉛筆画・デッサンの正確な拡大法

 このエスキースの土台画面に、√3分割構図基本線(縦向き)を引く場合には、縦横共にそれぞれの長さ÷1.732で値を求めます(具体的な説明はこの先で行います)。

 この値を、画面横の場合であれば、上記画像のように左右からそれぞれ2つの分割点(線⑤⑥)を求めることができます。縦の場合でも、上下からそれぞれ2つの分割点(線⑦⑧)を求められます。

 そして、画面の縦横の2分割線(③④)と画面上の対角線(①②)を引くことによって、この√3分割構図基本線は完成です。

鉛筆画・デッサンの全体レイアウトをマスターする方法

 描き込んだ基本線の√3分割点の位置に、モチーフを描き込んでいきますが、この点につきましても順を追って説明します。また、この時に、モチーフと各導線との交わり方や、導線の導き方も同時に考えます。

 一方では、画面上のSLの排気煙が後ろの外界へ抜けていく構成もおこなうことにします(以後「抜け」と呼びます)。

鉛筆画・デッサンの「抜け」効果とは?応用技法を紹介

 この「抜け」があることによる効果は、観てくださる人の息苦しさを解消できます。それは、意識がその「抜け」の先にある外界のひらけた空間に向けられて、解放感を与えられるからです。

 そして、その効果は風景以外のどのジャンル(花・静物・人物・動物・心象風景)にも応用できます。

エスキースと基本線を整合させるコツ

 今回の完成時のイメージは、各構図基本線を使ってモチーフの高さや、あるいは中心点になるように画面構成を考えます。

 そして、主役のSLを√3構図基本線⑤上の(交点I)にSLの車体正面の円形部分の中心点が重なるように描き込みます。また、それ以外のモチーフも描き込みますが、信号機の位置は、画面横サイズの1/6の位置に配置します。

視線を意識した鉛筆画・デッサン制作の秘訣

 √3構図基本線⑤上にある主役の濃いト-ンのSLをより目立たせることができるように、それ以外のモチーフには淡いトーンを使います。

 今回の場合であれば、上に噴き上げている排気煙と、下からは蒸気を噴き出していますので、その蒸気は白に近い色なので効果的な描写ができます。

 尚、信号機の支柱下の方は、蒸気の影響を受けて若干白くなっていることや、信号機のランプが点灯していることも意識してトーンを入れていきましょう。

 そして、同じように、画面左側に立っている樹木の色についても濃く描き過ぎないように配慮します。

画面構成で注意すべきポイントとは?

 制作していくうえでは、主役以外のモチーフを細密に描き込み過ぎてしまうと、観てくださる人の視線を、その部分に集中させてしまいますので注意が必要です。あくまでも細密に描写するのは主役や準主役だけと認識しておきましょう。

 これらのことを、エスキースに「描いては消し描いては消し」を繰り返して、いかにして基本線を有効に使ったレイアウトや充分な強調ができるかを考えて完成させます。

鉛筆画・デッサン、本制作前の準備:画面サイズの正確な測り方

 スケッチブックのメーカーによっては、若干寸法が異なることがありますので、制作前には実際に鉛筆画・デッサンの本制作画面のサイズを確認して、正確な構図基本線を引きましょう。

 このことは、スケッチブック以外にも、例えばパネルに水張りをした画面で制作する場合のF100やそれ以上の大きさの画面にも共通して言えることです。

 あなたも制作を始める際には、実際に描き込む画面のサイズに合わせて構図基本線を引きましょう。これは最も重要な点です。

鉛筆画・デッサンのための構図基本線の引き方ガイド

構図基本線の引き方とその重要性

 この各種基本線は、2Bなどの柔らかい鉛筆の軽いタッチで描き込みます。

 この時筆圧を強く描き込んでしまうと、のちの工程で練り消しゴムでは消しきれなかったり、跡が残ってしまうので、そのためには筆圧をかけ過ぎず優しく描くことが必要です。

鉛筆画・デッサンにおける構図分割基本線の効果的な使い方

 √3構図分割基本線を引いた後に、既成のF10で制作を進める場合には、私の使っているF10のスケッチブックの大きさは長辺が528mmで短辺は454mmです。

 これにより、528mm÷1.732=304.8なので、305mmが縦の画面の√3分割点となります。この分割点は、上下どちらからでも設定することができます(線⑦⑧)。

 また、短辺の√3比率を求めるならば、454mm÷1.732=262.1となり、262mmの位置が√3の分割点になります。この分割点は、左右どちらからでも設定することができます(⑤⑥)。

 尚、あなたの使うスケッチブックの大きさに合わせて、正確な分割点(線)を描き込みます。実際に測って描線することを忘れないようにしましょう。

鉛筆画・デッサンの構図基本線を活かしたモチーフ配置のテクニック

鉛筆画・デッサン制作の進め方:エスキースから本制作画面へ

 構図基本線上に、先ほど制作したエスキースを落とし込んでレイアウトします。実際に描き始める際には、まず全体を大づかみでとらえて描き進んでいきます。

 あなたが本制作する画面を意識して制作した、正確な縮尺のかかったエスキースがあれば、それに基づいてそれぞれの部分を拡大して制作することができます。

 細かいことはさておいて、Bや2Bなどの柔らかい鉛筆を親指・人差し指・中指で軽く持ち、全体を優しいタッチで描いていきましょう。

 そして、この段階では、今後あなたの作品によっては、必要ならば長め・短めの定規やコンパスもどんどん使いましょう。フリーハンドで直線や曲線を描くことは、制作を続けいく中でゆっくりと慣れていけばよいのです。

効果的な画面配置とは?鉛筆画・デッサンでのノウハウ

・黄色線:構図基本線(対角線・画面縦の2分割線・画面横の2分割線)

・青色線:√3分割線(上下左右の各2本)

・桃色線:信号機の支柱の位置を表す線

・赤色線:SLの傾きの基本線

 モチーフを実際にレイアウトしますが、今回の「風景」では、上記の√3構図基本線を意識しながら、上の画像のような状態をイメージします。

鉛筆画・デッサンで斜線の導線暗示を使う方法

 作品の制作にあたっては、構図基本線を意識してレイアウトしますが、画面に納まりきれない部分は画面の外にハミ出てよいのです。あなたの描く画面には、あなたの必要とする部分だけを切り取って描きましょう。

 それは、モチーフ全体を無理に画面に収めようとすれば、窮屈になってしまうからです。逆に、画面からハミ出ることによって、画面の外への広がりが表現できることになります。

 このことは、どの作品を描いていくうえでも言えることで、重要なことなので記憶しておいてください。

 尚、画面最下部の底線(CD)上にモチーフを「乗っけた」ようにレイアウトすることは、重大な禁じ手なのでこれも覚えておきましょう。

鉛筆画・デッサンで斜線の導線暗示を行う方法

 制作例では、画面左上の角 A からの斜線②は、樹木の枝の先端部分を通り、SLの煙突の角を通って、車体下からの蒸気のふくらみの頂点を抜けて、画面右下の D へ到達します。

 また、画面右上の角 B からの斜線①は、画面上のSLの排気煙の動きの中からSLの正面の顔の円形部分の中心点を通り、車体の下の角を抜けて、画面左下の角 C へ到達します。

 つまり、斜線が通っていることを画面上のレイアウトや、モチーフの凹凸なども含めて表現するということです。尚、作品によっては「水滴」や「枯葉の虫食い」なども上手に使いこなせられれば、導線に活用できることも記憶しておきましょう。

鉛筆画・デッサンにおける理想の画面構成への変換技術

 絵画の制作では、実際のモチーフの形状を画面の構成上修整することがあります。

 これは、どの画家もほとんど行っていることで、前述していますようにデフォルメと呼ばれており、鉛筆画・水彩画・油彩画・アクリル画すべての制作技法について言えることです。

 尚、デフォルメとこれらの構図基本線との重ね合わせは、構図の成り立ちを示すためでもあり、その暗示も含めて画面全体のバランスをとっているのです。

鉛筆画・デッサン描き始めの構図整理:初心者向けのコツとレイアウトガイド

鉛筆画・デッサンの線の整理:輪郭線以外をどう扱う?

 最初に描き込んだ、全体の輪郭を取った際のたくさんの線を「練り消しゴム」で整理しますが、こののちトーンを入れていくところにある線はそのままにしておきましょう。

 なぜならば、そこへはこれからトーンを入れていくので消す必要がないからです。そして、淡いトーンのモチーフにかかっている線や抜けの中にある線は消しておきましょう。

 仕上げに向かって、明るい部分にするところにある無駄な線は目立ってしまうので、必ず消しておく必要があります。

 また、練り消しゴムで消したところへ、その後トーンを入れていくと、消していないところと比較すると鉛筆の乗り具合が少しだけ違ってくることがあります。このため、できるだけ練り消しゴムで消す部分は少なくすることを心がけましょう。

鉛筆画・デッサン仕上げの極意:明暗を強調して魅力を引き出す


         青木繁記念大賞展 奨励賞 郷愁 2001 F100 中山眞治

鉛筆画・デッサンの仕上げにおけるメリハリのつけ方

 練り消しゴムでたくさんの線を整理した後は、いよいよ各モチーフのレイアウト後の制作工程に入りますが、その際には一番暗いところからトーンを入れていきましょう。

 制作例の描き始めでは、特に画面上で一番暗いトーンを使うのは、主役のSLのボディーであり、排気煙の黒煙です。

 この濃いトーンから先に描き込んでいきます。因みに、SLの顔というべき丸い部分は2B・その周囲には3B・下回りには4Bを使っています。

デッサンの難題を乗り越えるコツ

 これは、あまり大きな声では言いたくない話ですが、私の場合には、例えば構図基本線⑤上に主役のSLの正面の顔ですが、円形部分はコンパスで引くとして、その外側の形について、うまく描けないときにはどうしたらよいのか。

 そして、構図基本線⑥上の信号機のランプ部分はコンパスでなんとかなるけれど、その外側の黒い部分の形状で、中心線の左右のデッサンがどうしてもうまくいかない場合もあるでしょう。

 そうした場合には、まず定規を用意して、うまく描けている側の線を中心線から測って、反対側の位置に鉛筆で点を打ちましょう。

 その方法で2~3cm間隔で同じように下へ点を打っていき、最後はその並んだ点を結べば描けます。尚、この場合、その点は強く描いてしまうと後から消すのに苦労しますので、2Bや3Bの軟らかい鉛筆で、優しく描き込みましょう。

 こんな話を絵画教室の先生が聞いたら、「激怒もの」ですが、そんなことはどうでもよいのです。あなたが、楽しく鉛筆画・デッサンを描くことのできることが最優先事項です。

鉛筆画・デッサンで活用できる道具の選び方と使い方

 今回の制作例では、SLの正面の顔や煙突前のライト、信号機のランプの丸い部分はコンパスで描いています。また、信号機の支柱や列車の客車のボディー・樹木の幹の部分には定規を使っています。

 あなたも直線や円を描くのに不安があったならば、躊躇なくこれらの道具を使いましょう。ただし、「激怒する先生」がそばにいる時にはやらないようにしましょう。^^

 そして、制作を繰り返していくうちに、これらの直線や円あるいは曲線などについても経験が増えていけば、どなたでも描けるようになれます。

鉛筆画・デッサンの輝き効果を高める隣接する暗部の強調方法

 完成が近くなってきましたら、全体を観察してみて本来迫力のあるSLが今一つ迫力が出ない場合には、SL自体のトーンの濃さを思い切ってもう一段階黒くしましょう。

 また、明るい白に近いところでも、淡い8Hや9Hのトーンを入れておく必要があります。それは、今回の制作例の中で一番明るい部分は、SLの煙突の前のライトの光を引き立てるために必要なのです。つまり、一番明るいライトの光は、下地の紙の色ということになります。

 このハイライトであるべきところが、もう一つ明るくなくて、光っているように見えない場合には、その光っているべきところと隣接している煙突部分の黒さの度合いが足りていないことになります。

 線路の軌道部分の輝きは、それと隣接している黒が役立っているということです。光をより光らしく見えるようにする場合には、隣接する部分や背景をより濃い黒にすることで、まぶしく光るべき部分がより一層輝き出します。

鉛筆画・デッサンにおける中心点の扱い方:上達のポイント

 今回の制作例では、画面中心点にモチーフがかかっていますが、モチーフの中心が画面中心点と重なっているわけではないので問題はありません。

 しかし、意識的に中央にモチーフを配置する場合は別として、複数のモチーフで構成する画面では、できるだけ画面の中心点を避けて制作しましょう。

 それは、画面の中心点にモチーフの中心を置いてしまうと「動きが止まってしまう」ので注意が必要なのです。

 しかし人物画や動物画など、画面上でモチーフの面積を大きく取る場合などでは中心点を避けることはできませんし、する必要もありませんのでご安心ください。^^

まとめ

 鉛筆画における風景の構図は、ただ単に美しいシーンを捉えるだけでなく、視覚的物語を語るための重要なステップです。

 本ガイドでは、初心者から中級者を対象に、鉛筆画での風景デッサンのコツを分かりやすく解説しています。モチーフの選び方から始まり、構成を練り上げ、エスキースの下絵作成に至るまで、丁寧にステップを踏みながら進めていきます。

 構図分割基本線の重要性を理解し、偶然に頼らない緻密な下準備を行うことで、風景画に必要な「抜け」の感覚を養うこともできます。

 画面レイアウトの全体像を捉えながら、画面制作における基本線の描き方、エスキースでの正確な縮尺や拡大方法、そして斜線の導線暗示など、作品に深みを与えるテクニックを紹介します。

 また、鉛筆画での明暗の強調方法や、最終的な仕上げにおける中心点の扱い方など、絵画を際立たせるための細やかなポイントも押さえています。

 デッサンがうまくいかないときには、さまざまな描画ツールの活用法や、隣接する暗部を強調して光を表現する方法など、さまざまな解決策を提案しています。

 これらのコツを押さえることで、誰でも鉛筆画の技術を高め、よりリアルで感動的な作品を創造することが可能になります。

 最終的に、鉛筆画はただ線を引く技術以上のものです。それは感情や視点、物語を伝える手段であり、このガイドを通じて読者の皆さんがその全てを表現できるようになることを願っています。

 画面上で線が織り成す調和とコントラストを理解し、それぞれの作品に生命を吹き込む旅を始めましょう。このブログが、鉛筆画・デッサンという芸術形式の理解と技術の向上の旅路において、あなたの信頼できる案内人となることを約束します。

 尚、この構図記事の他にも、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。

 それは、あなたの制作する画面全体を使って、さまざまな構図や発想を駆使することにより、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事も参照してください。

関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは

 ではまた!あなたの未来を応援しています。

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