鉛筆画・デッサンで初心者が簡単に運河を描く方法!

風景画の描き方

 どうも。鉛筆画家の中山眞治です。さて、日中は少し動くと汗ばむ今日この頃ですが、元気でお過ごしでしょうか? ^^

 今回の記事では、「鉛筆画・デッサンで初心者が簡単に運河を描く方法!」というテーマで進みますが、鉛筆画・デッサンの制作にあたっては、最初のうちは構図を意識せず自由に10作品以上描いて、描くことにある程度慣れることが必要です。

 そして、鉛筆画制作の基本的なことを確認できた後は、作品をより魅力的に構成することのできる「構図」についても研究していきましょう。公募展や各種展覧会へ出品して、入選以上の「入賞」を目指すのであれば、なおさら必要になることです。

 尚、あなたが構図について興味のある場合には、私の「鉛筆画で初心者が簡単に構図を取り込む方法とは!」の5記事が、この記事の最下部にありますので、是非参考にしてみてください。

 私の作品に基づいた具体的な構図の取り込み方は、あなたが構図に取り組む初めの段階で、この5種類の構図を用いれば当面の展開ができるはずです。

 構図とは、絵画教室に通っても簡単には教えてもらえない「重要なノウハウ」です。このノウハウは、風景のほかにも、花・静物・人物・動物・心象風景など、すべてのジャンルで応用できますので一読の価値があります。

 また、風景を描く際の初歩的な部分につきましては、次の記事でご説明していますので、ご参照ください。それでは、早速見ていきましょう!

関連記事:鉛筆画で初心者が簡単に風景を描くポイントとは?

運河とは

 運河とは、船舶の移動のために人工的に造られた水路であり、河川・湖沼を利用しているものもあります。鉄道同様経路中に、橋梁や隧道(トンネル)なども見られます。

 産業革命以前は船舶をラバなどがけん引したため、経路に沿って曳舟道(船曳道・牽引路)が設けられていました。運河には河川湖沼を連絡する海路運河や半島を横断する運河としてスエズ運河やパナマ運河などがあります。

出典:ウィキペディア 運河 運河 – Wikipedia

先人による運河の作品例

              サンマルタン運河 ビュッフェ 1968 リトグラフ  

           サルーテ運河 モネ 1908 油彩

              サンマルタン運河 シスレー 1870  油彩

            ジュデッカ運河から見たヴェネチア ターナー 1870 油彩

鉛筆画・デッサンによる運河の作品

      サン・ドニ運河 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画における夜の風景では、白(スケッチブックの色)を光として表現するためには、濃い黒が必要になります。

 また、光をよりまぶしく表現したい場合には、より濃い黒を隣り合わせることによって実現することができます。

運河が画面の中で落ち着けるようにレイアウトしよう

 運河そのものを描くのも良いのですが、周辺の風景を同時に描き込むことができれば、見てくださる人にたくさんの要素を楽しんでいただくことができます。

 その場合には、画面の中で運河が窮屈にならず、他の要素も描き込めるだけの余白を意識してレイアウトしましょう。画面一杯に描き込み過ぎてしまうと、ゆとりを感じられない作品になってしまいます。

運河を描くためのアングルを工夫しよう

 あなたが、運河を描く際には、写真を手掛かりにして取り組むことになると思われますが、その場合には、余計なものの映り込みをデフォルメ(削除・省略)して、よりあなたが作品の中で強調したい要素を表現しましょう。

 むしろ、実際には存在しない、あなたのイメージを盛り込んだ作品にしても良いのです。その際には、次のようなことも考えてみましょう。あなたのイメージを膨らませて、ドラマチックな構成にすることもできるのです。

運河を描く際に複数の要素を網羅するヒント

  •  船(クルーザー)を入れる(川面に映り込んでいる船影も揺れている具合をリアルに入れる)
  •  街並みも併せて入れる
  •  川岸の遠景に人を入れる
  •  夜景の場合にはガス灯の明かりを描き込む(川面に揺れ動く映り込みも入れる)
  •  夕暮れ時の川岸で、見つめあう恋人たちの影を入れる
  •  室内の窓に付着している水滴に、外の景色の運河が反転して水滴の中に映り込んでいるのと同時に、現実に見えている外界の運河も併せて描き込む
  •  地表面に近い視点をイメージしてもらうために枯葉を一番手前に持ってきて全体を構成する(枯葉の向こう側に運河が見えているという感じ…小動物の視線という感じではどうでしょうか)
  •  川面に映り込んでいる夕日や朝日を入れてみる(鳥なども加えることを考えてみる)
  •  夕闇の迫る運河を見渡せるレストランの窓際で、遠景に夕やみに染まりつつある運河、店内のテーブル上のキャンドルの明かりが、ワイングラスを照らしているなんてどうですか

夜景を描くときの注意点

絵画はすべてを克明に描きすぎるとあなたの意図が表現できないこともあります

 夜景を描く際の注意点は、あなたが制作の対象としているのは「画像」を前提として、主役は当然運河でしょう。しかし、背景の遠いところなどは、あまり細かく描きすぎないで、「何となく建物・木・人とわかる」程度の描き込みでよいのです。

 主役以外を克明に描きすぎると、見てくださる人の視線をその個所に集めてしまうからです。あくまでも主役を目立たせるように、次いであなたが強調したい準主役が目立つように、それ以外は「意図的に手を抜いて」何となくわかればよいのです。

鉛筆画・デッサンで夜景を描くことは意外にもそれほど難しくありません

 上の私の作品では、画面右側からの光を受けて船の甲板が反射しているのと、水面にも船の反射の一部が映り込んでいます。このように、光の反射や映り込みはリアリティーの重要な要素になりますので、よく観察して描き込みましょう。

 夜を描くと言っても、明るいトーンの黒い部分もあれば、「闇の中の影」というような本当の漆黒の闇の部分もあります。

 仕上げの段階では、一番濃い黒の部分をさらにもう一段黒くして、白い部分を練り消しゴムでさらに拭き取ることで、白と黒の効果を最大限に引き出せます。

鉛筆画・デッサンでは光と影の効果を堪能できます

黄色線:濃いトーン(当初5B~7B)を入れる部分を示す枠線

桃色線:光源の部分を示す枠線

 尚、上の作品の具体的な描き方では、まず全体のデッサンをして、次に、一番暗いところにトーンを入れます。作品で言えば、船の影の部分に6B~7Bくらいのトーンを入れます。特に、船の左側で画面左隅周辺が一番濃い色なので、迷わず7Bのトーンを入れましょう。

 船の向こう側の明るい水面には、2H~H程度のトーンを鉛筆を人差し指・中指・親指で優しくつまむように持ち、クロスハッチング(※)でトーンを入れましょう。

 描き込んだ一番濃いトーンを基準として、それよりも明るいトーンを全体に入れていきながら仕上げに向かい、最終的には、一番濃いところをさらに一段暗いトーンを入れて仕上げます。濃いところはより濃く、明るいところはより明るくです。

※クロスハッチングとは、縦横左右の斜めからの線など、4方向の線を使って面を埋める手法のことです。

その他の用いるべき表現手段

               坂のある風景Ⅱ 2019 F1 中山眞治

鉛筆画・デッサンの道の表現方法

 道は、先へ進むに従って細くなっていきますし、電柱の間隔も遠くに行くほど徐々に狭まっていきます。また、連坦する民家の形状もそれに合わせて描き込んでいくと、自然と奥行きが出てきます。

 尚、この作品の場合には、スケッチブック(F4)の縦幅の√2の位置(縦幅は163mm÷1.414)を道路の一番奥の高さに設定しています。こんな風にも、構図は用いることができるのです。

鉛筆画・デッサンの樹木の表現方法

               坂のある風景Ⅰ 2019 F1 中山眞治

 鉛筆画での樹木の表現については、さまざまな描き方がありますが、細かく克明に描き込んでもあまり意味がありませんし、主役がかすんでしまいます。「ざっくりと」樹木だとわかればよい程度の描き込みをおすすめします。

 樹木などの「脇役」は、その程度の描き込み具合が、全体のバランスを取るのに都合が良いのです。上の作品で、必要以上に樹木を克明に描き込んである状態を想像してみてください。道の奥へ視線を導くこと遮ってしまうような印象を受けませんか?

 この作品の中の樹木は、何となく樹木とわかる程度にしか描き込んでいません。強調したい部分が樹木である場合には、細密描写をする必要がありますが、この作品のように強調したい部分が、道のカーブと坂を上り切った道路の場合には逆に省略します。

 主役や準主役を目立たせるためには、主役や準主役以外のモチーフは細密に描写しない方が良いです。すべてしっかりと描くことが絵画ではありません。あなたの強調したい部分をより魅力的に見せることが必要なのです。

鉛筆画・デッサンによる水滴の描き方

 水滴は、植物の葉の上で朝日を受けてきらめいていたり、しずくとなって滴ろうとしている瞬間であったり、窓ガラスに付着して外の景色が映り込んでいたりと、色々と描くことができます。

 下の4つの作品は、私の自宅のキッチンでとらえたものです。このように、水滴に関わる場面は、たくさんありますので、興味のある人は身近なもので作品にできないものか考えるのも面白いのではないでしょうか。

 今回の、運河をあなたが描く際の要素のヒントとして挙げましたように、あなたが室内にいて、ガラス窓に付着した水滴の画像の中に、上下反転している運河を描き込むことも楽しいと思いますよ。

 その場合には、次の一番下の画像の「水滴(キッチンにて)ⅳ」のような水滴を活用されてはいかがでしょうか。あなたの描く窓ガラスの画面の2/3くらいを見えている実像を描き込んで、窓ガラスについた1/3くらいの水滴を描いてその中に上下反転した運河にするというようなことです。

 尚、上下反転した運河をどう描けばよいのかという点につきましては、パソコン上で運河の画像を出して、スポイトなどで水滴を作り、実際にその画像を見るか撮影するかすれば、とらえることができるのではないでしょうか。

 あるいは、透明なガラスの板に実際に水滴をつけて、その向こう側にパソコンで出した画像を見ることもできますよね。あくまでも一つのアイディアです。実際にこのような作品は、過去に見たことがありませんので、新たな切り口にはなると思います。

                水滴(キッチンにて)Ⅰ 2019 F1 中山眞治

              水滴(キッチンにて)Ⅱ 2019 F1 中山眞治

               水滴(キッチンにて)Ⅲ 2019 F1 中山眞治

         水滴(キッチンにて)ⅳ 2021 F1 中山眞治

鉛筆画・デッサンによる風景画に他のモチーフも入れてみる

         フクロウのいる風景 F1 2020 中山眞治

                  誕生 2019 F3 中山眞治

                  秋 2020 F1 中山眞治

              お待たせ! 2019 F3 中山眞治

           久しぶりだね! 2019 F3 中山眞治

            招かざる客 2019 F3 中山眞治

 このように、風景は風景だけとかの既成概念は捨てて、風景の中にいる動物や人物及び小物なども同時に考え、発想を自由にして描き進めていきましょう。

 上の画像で、飛びす去っているのは帽子ですが、傘や枯葉などに変えても面白いですよね。一番手前に大きな枯葉を描いて、中景には中くらいの枯葉、遠景には小さな枯葉、風の強さを強調するために、強風にはためく旗を描き加えれば、一層強い風を表現できます。

 そして、太陽の光を受けてできる、モチーフの輝きと影については、よく観察して画面に入れることで、リアルさを表現できますのでしっかり取り組んでみましょう。また、接地面には、一番濃いトーンを入れましょう。

たまには絵画鑑賞に出かけよう

絵画を見に行く際のおすすめな公募展

 ところで、たまには絵画鑑賞に出かけませんか。私の印象では、日展は「きれいなだけで個性的で野心的な作品は少ない」記憶しかありません。

 おすすめは第一に、国画会の展覧会である「国展(4月末~5月中旬)」、次いで独立美術協会の展覧会である「独立展(10月)」や、新制作協会の展覧会である「新制作展(9月下旬~10月上旬)」です。

 展覧会(全国公募展等)へ行きましたら、細かな技法ばかりを見るのではなくて、作品から受けるあなたの印象が重要です。最初の内はよくわからなくても、あなたが強く惹かれた・感性に響いた作品の印象をあなたの作品にどう反映できるかを考えるのです。

絵画鑑賞では大掴みな印象を得ることが重要です

 私は恥ずかしながら、抽象画がいまだによくわかりませんが、印象に残る具象画を見て帰ってくると、その印象を自分の作品に、どのように取り込むことができるかを考えるようにしています。

 しかし、そっくりまねることはやめましょう。著作権がありますし、意味もありません。細かいところまでを全部取り込もうとするのではなく、構図などの大きな成り立ち及び配置や濃淡のつけ方、画面の持っている「新たな着想」などを取り込むようにするということです。

 とにかくいろいろな作品を見ることで、知らず知らずのうちに、あなたの作品に対するレイアウトや一緒に描く小物類や背景の取り方などの知識は増えていきます。

絵画は大きな視野の中から切り取った一部という認識が大切です

 もっと具体的に言えば、構図やデッサンは当然一番重要であり充分観察が必要ですが、あなたの感性に響いた作品の4隅(4つの角の周辺処理)は、どのように充実させているかということを研究することはとても重要です。

 言い換えれば、「自分だったらどう描くかを考える」ことが、生きた勉強になります。また、デッサンの仕方とともに、濃淡のつけ方や、4隅の充実などについても研究することは、あなたの制作に役立ってきます。

 4隅の充実とは、絵画の4隅がその外へ広がる表現をどのように行っているのかを研究することです。私たちの見ている絵画の画面は、全体の大きな視野から切り取った一部なので、外界へと繋がる広がりを見てくださる人へどのように伝えるかという認識を持つことが大切です。

参考情報

国展:第96回国展デジタル版 | 日本最大級の公募展。第96回国展web 版。 (kokuten.com)

独立展:独立展|第89回独立展 (dokuritsuten.com)

新制作展:2022年第85回新制作展 日程 | 新制作協会 (shinseisaku.net)

まとめ

 今回の、鉛筆画・デッサンで初心者が簡単に運河を描く方法!では、運河の風景を自由に描いてみましょうということをお伝えしてきました。

 あくまでも、冒頭の関連記事の「鉛筆画で風景を描くポイントとは?」で基本的なことも理解しながら、まずは描き始めることを優先させましょう。

 そして、たまに時間があるときなどに、繰り返し繰り返し、描いていく各段階で基本的なことを見直していくような状態がベストだと私は思いますし、私自身もそのようにしてきました。私の記事以外に、あなたも鉛筆画の基本書を1冊購入して繰り返し読むことをおすすめします。

 私が使っているのは、東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサンです。かれこれ29年も使っていますが、いまだにたびたび参考にしています。ネットで確認しましたが、今でも買えるようです。しかし、どの本でもよいです。あなたが気に入った基本書を1冊手元におきましょう。

 尚、鉛筆画は身近な文具から始めることができて、老若男女どなたでも、いつからでも気軽に楽しめるので、あなたが新たに鉛筆画に没頭できるとした場合、次のような効果が期待できます。

  • お金があまりかからない
  • 没頭できる趣味になれば、おのずと浪費が減り節約ができて投資に充てられる
  • 一人でも楽しめる
  • いつでも(何時でも)できる
  • 天候に左右されない
  • 老後に備えた節約になる
  • 全く別世界の友人が新たにできる(老若男女)
  • 異性との出逢いにも連動できる場合がある
  • 異性とのデートでも展覧会や美術館の常設展を有効に活用できる
  • 趣味からプロへの道も開ける可能性がある
  • 展覧会などで自分の作品の発表ができる
  • 画家になった場合作品を販売できる可能性がある
  • 画家になった場合作品の描き方をネットで販売できる可能性がある
  • 国内や海外旅行の目的に展覧会・美術館訪問を加えることができる
  • 年老いても続けられる

 あなたは、もしも画家になりたいのであれば、私のように高卒で過去に全く絵を描いたことがなくても、自分自身の中に埋もれている「可能性」を目覚めさせる努力さえできれば実現できます。

 やってみなければ解らないことはいくらでもあります。おじけづかないで、のびのびと楽しんで取り組んでいきましょう。そして、あなたがどのような絵を描いていくにしても、「絶えず研究してたくさん描くこと」で必ず上達できます。

 個展や県展・全国公募展へ出品するのは、はっきり言って最初は「ドキドキもの」ですが、大胆に行くことも人生必要です。振り返ってみると、意外に大きな壁ではありませんよ!

 ではまた!あなたの未来を応援しています。

<鉛筆画で初心者が簡単に構図を取り込む方法・構図関連5記事>

・第1記事 鉛筆画で初心者が簡単に構図を取り込む方法とは! (黄金分割と垂直・水平線)

・第2記事 鉛筆画で初心者が簡単に構図を取り込む方法とは! (√2と光を中心とした中空の三角)

・第3記事 鉛筆画で初心者が簡単に構図を取り込む方法とは! (√3と逆三角形)

・第4記事 鉛筆画で初心者が簡単に構図を取り込む方法とは! (3分割と√3)

・第5記事 鉛筆画で初心者が簡単に構図を取り込む方法とは! (4分割と3角形×2)

コメント

タイトルとURLをコピーしました