鉛筆画・デッサン初心者のための静物描写ガイド!石膏モチーフから風景との組み合わせまで

静物画の描き方

 どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

 さて、鉛筆だけで現実に存在するさまざまなモチーフは、どれほど美しく描けるでしょうか。鉛筆画やデッサンは、アートの世界への第一歩として多くの人々に親しまれています。

 しかし、「どこから手をつけて良いのか分からない」「描きたいものがあるけれど、上手く表現できない」と感じる初心者の人も多いのではないでしょうか。

 このガイドでは、静物描写の基本から風景との組み合わせまで、石膏モチーフや日常に溢れるアイテムを活用して、初心者でも分かりやすく、そして楽しんで学べる方法を提供します。

 配置や明暗のバランスの取り方、素材ごとの特性を活かした描写法など、確かな技術を身につけるためのヒントが満載です。

 今、新たな趣味や表現方法として鉛筆画・デッサンに挑戦したい人は、ぜひこのガイドでその第一歩を踏み出してください。

 それでは、早速見ていきましょう!

基礎から学ぶ:鉛筆画・デッサンの道具と準備方法

適切な道具選びで成果を引き出す

 鉛筆画やデッサンを始める際、最初に揃えるべきは適切な道具です。

 適切な道具を使うことで、描写の幅や深み、そして楽しさが格段にアップします。基本となるのは、HやBの表記がされた鉛筆、消しゴム、鉛筆削り、そしてスケッチブックや紙です。

鉛筆の種類とその特性

 鉛筆は、H系統とB系統の2つに大別されます。H系統は硬めで細い線が描けて、B系列は柔らかく太い線を描けるのが特徴です。

 例えば、4Hや2Hは細密な輪郭に、6Bや8Bは影の部分や立体感を出す際に活用されます。

消しゴムの役割と選び方

 消しゴムは、単にミスを消すためだけのものではありません。柔らかい「練り消しゴム」は、鉛筆の線を部分的に薄くすることもできますし、明るい部分やハイライトを描き出したり、仕上がり時に再度拭き取ることでさらに強調することができます。

 硬めの「プラスチック消しゴム」は、鮮明な線をしっかり消すのに適しています。それ以外にも、鉛筆状の消しゴムで画面に食い込んだ鉛筆跡までも消せるものも存在します(商品名:マルチリスイレーサー メーカー名:オーストリッチ)。

スケッチブックの選び方

 デッサンや鉛筆画に適したスケッチブックや紙は、質感や厚さが重要です。

 粗い紙は鉛筆の質感を活かして、リアルな表現が楽しめます(粗い画面上のタッチとなって独特の味わいを出します)。また、厚めの紙は鉛筆の圧力に耐え、長時間の作業にも適しています。

描画前の準備方法

 道具を揃えたら、次は準備です。まず、室内の温度や湿度を調整して、足を組まずにイスに深く腰掛けましょう。この姿勢が長時間描いても疲れないためのコツです。また、あなたのリラックスした状態で描ける場所を見つけましょう。

 次に、鉛筆を削り、スケッチブックや紙にあなたのイメージをゆったりと自由に注ぎ込めて、心地よいペースで描き始めることが大切です。尚、自宅で描く際には、あなたの落ち着ける音楽を用意しましょう。

 鉛筆画やデッサンの世界は奥が深く、多彩な表現が可能です。しかし、その第一歩として、適切な道具選びと準備が不可欠です。これらの基本を心がければ、より上質な作品を生み出すことができるでしょう。

石膏モチーフで学ぶ形と影の基礎

             石膏デッサン F6×3点 1996 小林里香氏

石膏モチーフとは?その魅力と活用方法

 石膏モチーフとは、主に彫刻や造形を学ぶ際に使用される、白い石膏で作られたモチーフのことを指します。

 その均一な白色は、形と影の関係を明確に捉えやすくなるので、鉛筆画・デッサンの初心者には最適な教材です。石膏モチーフを使用することで、複雑な質感や色の影響を受けずに、純粋にモチーフの形や光と影の関係を学べます。

形を捉える基本テクニック

 形を捉える際の最も基本的なテクニックは、大きな形から細かい部分へと進める「大雑把に単純化した全体の大きな形から捉え細部へ進む」というアプローチです。

 石膏モチーフを眺め、まずは全体のシルエットや大きな部分の形を素早く捉えましょう。人の顔で言えば、大雑把に卵型にとらえるというようなことです。

 このステップでは、細部は気にせず、モチーフの全体的な形状やバランスを捉えることを重視しましょう。

影のつけ方と明暗の認識

 影を描く際、最も重要なことは光の方向を確認することです。石膏モチーフのどの部分が光を受け、どの部分が影になっているかをしっかりと観察しましょう。

 明るい部分(明部)と暗い部分(暗部)、そして両者の間の過渡的な領域(半陰)を区別することで、立体感のある描写が可能となります。

実践編:石膏モチーフの描画ステップ

a モチーフの選択: シンプルな形状からスタートし、やがて複雑なモチーフにも挑戦します。

b 光源の確認: 描画する前に、光の方向や強さをチェック。

c 大まかな形状のスケッチ: 細部にこだわらず、ざっくりと全体の形を素早く描写します。

d 明暗の追加: 光の方向を基に、明部と暗部を明確にします。

 石膏モチーフは形と影の基礎を学ぶには絶好のツールです。正確な観察と基本技法を身につけることで、あなたの描画スキルは飛躍的に向上するでしょう。

日常のアイテムで挑戦!野菜や器物の描写テクニック

           第1回個展出品作品 野菜 1996 F10 中山眞治

野菜の特性を捉える基本

 野菜はその多様な形状、質感、色で初心者アーティストの好奇心を刺激します。トマトの滑らかな表面、大根の白いふくよかな曲線、またカボチャの硬質な皮など、各野菜には独特の特性があります。

 これらの特性をしっかりと観察し、それを表現することで、リアルな描写が可能となります。また、ジャガイモやニンジンなども独特の質感がありますし、色のあるニンジンであってもトーンの乗せ方によっては、ニンジンらしく見えます。

 根菜類は、ある程度の時間をかけて描写する際にもしなびたり、しおれたり、枯れたりしませんので、2~3日かけた制作でも充分耐えてくれますが、生花ではこうはいきません。

器物の光沢と形状を正確に表現

           第1回個展出品作品 暮らしⅠ 1997 F10 中山眞治

 日常の食器やカップなどの器物は、その光沢や複雑な形状が描写対象となります。特に陶器やガラス製のアイテムは、反射や透明感をうまく表現することが求められます。

 光の当たり方や、その反射する角度を正確に捉え、鉛筆の筆圧を変えることで、真実味のある描写を目指しましょう。

 そして、鉛筆画・デッサンにおける画面上にモチーフの光の当たっている「輝いている部分」は、背景に濃いトーンを持ってくることで、「輝いて見える」ようになります。

 また、上記の画像の「ヤカン」に映り込んでいる、ナイフ・フォーク・スプーン・カップ・フライパンを描くことで、リアルな表現ができます。

 同時に、フライパンの内部にも「油による光沢」を意識した描写によって、「さっきまで使っていた感」出すのも面白いものです。

 尚、細かいことですが、スプーンの光の反射がコーヒーカップに映り込んでいる点などのような細かいことも「楽しんで描写」してください。リアルさを強調できます。

質感と陰影の練習

 野菜や器物の表面には、さまざまな質感が存在します。例えば、キウイの毛に覆われた表面や編み籠の模様など、これらの細部を正確に描写することで、作品に深みとリアリティが出ます。

 また、物体の形状や質感を強調するためには、陰影の表現が不可欠です。光の方向を確認し、光っている部分と同時に、その影響を受けた暗さを捉えることで、立体感を強調できます。

日常のアイテムで練習を重ねる

            第1回個展出品作品 反射 1996 F10 中山眞治

 野菜や器物といった日常のアイテムは、その手軽さと多様性でデッサンの練習に最適です。

 自宅のキッチンやリビングに目を向け、身近なアイテムで描写の技術を磨いてみましょう。ご覧のように、「目玉クリップ」といえどもモチーフにすることができます。

 日常の中には、無限のアートの題材が無造作に置かれています。アーティストとしての視点を磨くことで、日常のささやかな美しさを再発見することができるでしょう。

 例えば、使い込んだ鍋やフライパンなどであっても、味のある作品に仕上げることができます。

 これを実現できるのは、あなたの視点なのです。きれいなものでなくても、ありきたりのものでっても、あなたの意欲と興味や愛着が芸術作品に仕上げることを可能にします。

風景の鉛筆画入門:遠近法と構図のポイント

            第2回個展出品作品 1999 F100 中山眞治

遠近法とは?基本の理解

     出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 大熊弘文 氏

 遠近法は、二次元の平面上で三次元の深さや空間を表現するための技法です。この技法を駆使することで、平面の画面上に立体的な風景を再現することが可能となります。これがデッサンの神髄です。

 一点透視や二点透視など、遠近法にはいくつかの基本的な方法が存在し、それぞれの状況に応じて適切な方法を選択することが重要です。

構図の基礎:「三分割法」を活用する

 良い風景画の第一歩は、効果的な構図を選ぶことから始まります。三分割法は、画面を縦横に三等分することで、主要な被写体や要素を配置するガイドラインとして役立ちます。

 この法則を使用することで、バランスの取れた、視覚的に魅力的な風景画を描くことができます。

光と影のバランス:風景の雰囲気を作る

 風景画では、自然の光や影をうまく捉えることで、作品に深みや雰囲気を持たせることができます。

 太陽の位置や天気、季節によって異なる光の具体的な影響を観察し、それを作品に反映させることで、よりリアルな風景を描写することができます。

実際に風景を描くステップ

a 観察: まずは風景をじっくりと観察し、全体的な配置や光の方向を決めます。

b スケッチ: 大まかな形や配置を決めるための簡易的なスケッチを描きます。

c 詳細の追加: スケッチに基づき、詳細な要素や質感を追加します。

d 明暗の調整: 光の方向や影の位置を考慮し、明暗を調整して立体感を出します。

 風景の鉛筆画は、自然の美しさを再現する魅力的なアート形態です。基本的な遠近法や画面上の全体のレイアウトのポイントを検討し、繰り返しの練習を通じて、あなた独自の風景画を創作する喜びを体験してみましょう。

実践編:静物と風景を組み合わせた作品の制作

       第2回個展展示作品 灯(あかり)の点(とも)る窓辺の静物 1999  F100 中山眞治

組み合わせる意味:静物と風景の相互作用

 静物と風景を一つの作品に組み合わせることで、独特の雰囲気やストーリー性が生まれます。

 風景が背景としての役割を果たす中、静物が主要な被写体としての役割を果たします。この相互関係を理解し、どのように配置するかが作品の魅力を高める鍵となります。

事前の計画:構図の重要性

 静物と風景を組み合わせる場合、どちらも目立たせ過ぎず、バランスよく配置することが重要です。

 事前に何を中心に配置するのか、どのアイテムを強調するのかを決定し、スケッチを行いましょう。これにより、最終的な作品が整然と見えるようになります。

 この場合のヒントとして、室内風景を描く傍ら、部屋の窓から外の景色が見えているというような状態も一つの制作のヒントであり、「抜けの効果(※)」を出すことができます。

 外の景色に、例えば奥へと続く木立なども描けば、自然な遠近法を展開できます。

※「抜けの効果」とは、見てくださる人の視線を外部へ抜ける窓や空間を設けることで、画面上の「息苦しさ」を取り除ける一方で、その抜けに対する「解放感」も強調できます。

色と質感の調和

 静物と風景が一緒になることで、異なる質感や色調が作品内に現れます。これらの要素が調和しているかを確認し、必要に応じて調整を行いましょう。

 特に、光の影響や反射、陰影などの要素を考慮することで、より立体的な作品を描くことができます。

細部の追加と完成

 主要な要素や配置が決まりましたら、細部の追加に移ります。ここでの細かな筆使いや描写のテクニックが、作品の質を大きく左右します。

 最後に、全体のバランスを確認し、調整を行うことで、作品は完成となります。静物と風景の組み合わせは、異なる要素が共存することで新たな魅力が生まれる技法です。

 基本的な構図や色の調和、細部の追加など、ステップごとに丁寧に制作を進めることで、独自の作品を創り上げることができるでしょう。

 尚、仕上げの際には、輝いているところや明るくすべきところには、再度「練り消しゴム」で拭き取り、一番暗いところへは再度丹念に、「濃いトーン」を入れましょう。

まとめ(静物と風景の鉛筆画:スケッチブック上での調和)

          蕨市教育委員会教育長賞 灯の点る静物 F30 2000 中山眞治

 鉛筆画・デッサンは、細やかな描写から大胆な線まで、アーティストの感じる世界を具現化する魅力的なアートです。

 特に、静物と風景を組み合わせた作品の制作は、その魅力をさらに引き立てる要素を持っています。しかし、その組み合わせには独特の技法や視点が求められるのです。

 静物と風景、これら二つの要素が同じ空間に存在する場合、それぞれの役割やバランスはどうあるべきか。風景は背景として、そして静物は前景として機能するのが一般的です。

 しかし、その配置や強調度合いによって、作品全体の印象は大きく変わるのです。例えば、窓際に置かれたカップから外の風景を垣間見るシーンなど、日常の一コマを切り取るような構図は、観る人にとって親しみやすいシーンとして描写されます。

 このようなシーンを描く際、遠近法や色の調和、そして細部の追加は非常に重要です。遠近法を利用して、室内のカップと外の樹々との距離感を表現することで、視覚的な深み(奥行)が作品に加わります。

 また、風景と静物の間での色の調和や光の影響も、そのシーンの時間や雰囲気を伝える大切な要素となります。

 さらに、細部の追加は作品のクオリティを高める要素です。カップの表面の反射や、木の葉の質感、窓ガラス越しの風景の歪みなど、細部にわたる描写は、作品のリアリティや深みを引き出します。

 このように、静物と風景を組み合わせることで、日常の一コマを豊かに、そして詳細に描写することができるのです。

 そして、その作品を観る人にとって、それはただの風景や物ではなく、物語を持ったシーンとして心に響くことでしょう。

 鉛筆だけで、日常の瞬間を美しく切り取る技法を学ぶことは、アーティストとしての表現力をさらに豊かにする手助けとなります。

尚、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。

 それは、あなたの制作する画面全体を使って、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事を参照してください。

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 ではまた!あなたの未来を応援しています。

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