どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
さて、鉛筆画やデッサンにおける構図の重要性はご存じのことと思いますが、実際のテクニックや方法にはどう取り組めばよいのか悩むこともあるでしょう。
特に、√2や光を中心とした中空の3角という独自の手法を知っていますか?この記事では、これらのテクニックを具体的に解説し、初心者から中級者の人でも簡単に実践できる方法をお伝えします。
アーティストとしての表現力を向上させたい人、次のレベルへのステップアップを目指す人には必見の内容です。一緒に、鉛筆画・デッサンの構図力を飛躍的に向上させる旅を始めましょう!
鉛筆画・デッサンの構図の基本
モチーフ選び: 作品の主役と準主役及びそれ以外のモチーフを決める
今回の筆者の制作例では、「灯(あかり)の点(とも)った燭台」を主役に使うことにしました。それはつまり、今回のテーマの主体である√2の位置に灯を頂点とする中空の3角形を描くということです。
そして、その頂点を起点として中空の3角形と、各種基本線の配置にもリンクさせながら、何をどのように描いていくかということを考えることになります。
あなたが、今回の記事を参考にして静物画を描く場合には、まず、主役・準主役及びその他のモチーフのレイアウトをどうするか決めましょう。
尚、あなたが制作を検討する際に、私の制作例をそのまま使うことは、著作権がありますのでできません。悪しからずご承知おきください。
鉛筆画・デッサン制作の前に構想を練る重要性
まず最初に、あなたの身の回りにあるA4サイズの紙を用意して、それを半分に切り、今回のあなたの作品の、まずはメモ描き程度で自由に構想を練りましょう。フリーハンドや実際に測ってでも良いのですが、分割線を入れていきます。
もしも、きちんと測って基本線を入れるならば、下の、<エスキースの作成: 制作の手順>に記載している分割方法を参考にして基本線を完成させておきましょう。
そして、その線はボールペンで入れておくと、そこへ鉛筆で描き込んでいけば、何度でもいろいろ描いては消して、試行錯誤が繰り返しおこなえます。
最終的には、あなたの気に入ったモチーフをあなたの気に入ったレイアウトに据えて、「下絵(エスキース)」を作ることができます。
そして、主役・準主役以外のモチーフも検討して、各導線の導き方や、導線との交わり方も同時に考えていく必要がありますが、詳細はこの先に続きます。
エスキースの作成: 制作の手順
まずは基本線を描き込みましょう。
F10サイズの本制作画面の正確な縮尺のエスキースとは
正確な縮尺のエスキースは便利に使えます
あなたが、本制作画面をF10のスケッチブックで取り組むとした場合、スケッチブックのサイズの長辺は528mm・短辺が454mmなので、あなたが手元に用意したエスキースの紙が、A4の紙を2つに切ったものならば、長辺が210mmで短辺が148mmであり、次のようになります。
短辺の縮尺は148mm÷454mmなので、0.3259という縮尺数値が出ます。そして、エスキースにおける長辺の長さを求める場合には、F10の長辺の長さ528mmに、上記の縮尺(0.3259)をかければ、172.07となります。
つまり、あなたの手元に用意した紙が、A4の紙を1/2に切ったエスキースの長辺を172mmにすれば、あなたが本制作に入るF10を正確に縮尺したエスキースの土台ができます。
これは、正確に短辺の縮尺をおこなうことで、エスキースの長辺の長さを調整できるということです。
本制作画面の正確な縮尺エスキースによって制作は楽に進められます
これによって、F10を正確に縮尺したエスキースが完成しますので、エスキースの中の各モチーフの配置点は、エスキース上の各サイズを0.3259で割れば、ほぼ正確な位置をF10のスケッチブック上で再現できます。
尚、F10以外のスケッチブックで、本制作画面に臨む場合にも、前述と同じことが言えます。各サイズの本制作画面によって、正確な縮尺を毎回作ることはおすすめです。
実際のスケッチブックのサイズを基にして、A4を1/2に切ったエスキースで正確な縮尺のエスキースを作って制作すれば、各モチーフの位置を実際に制作する画面に再現することが簡単にできるということです。
エスキース上の分割点の割り出し方
エスキースの長辺の√2分割点
今回制作するエスキースは、上記のように、あなたが実際に制作するスケッチブックのサイズをF10とするならば、エスキースのサイズは、長辺が172mmですので、172mm÷1.414=121.64mmとなります。
つまり、正確に縮尺をかけたエスキースの長辺の√2の分割点は、122mmの位置ということになります。尚、この分割点は、上下どちらからでも設定することができます(⑦⑧)。
エスキースの短辺の√2分割点
そして、エスキースの短辺では、148mm÷1.414=104.66mmとなりますので、105mmの位置が√2の分割点です。この分割点は、左右どちらからでも設定することができます(⑤⑥)。
ここで重要なのは、長辺と短辺には√2比率による分割点は2つあるということです。この√2比率による分割線と、左右頂点からの斜線(①②)と縦横の2分割線(③④)全部を入れた基本線は上の画像「√2分割構図基本線(縦向き)」の通りです。
構図基本線を引く際の注意点
尚、この各種基本線は、2Bなどの柔らかい鉛筆で軽いタッチで描き込みます。この時筆圧を強く描き込んでしまうと、のちの工程で「練り消しゴム」で消しきれなかったり、跡が残ってしまうので、そのためにも優しく描くことが必要です。
抜け効果の応用: 作品に深みを持たせる
一方では、画面上に外界へ抜けていく部分も構成することにしました(以後「抜け」と呼びます)。
「抜け」があることによる効果は、見てくださる人の息苦しさを解消できます。その「抜け」の先にある、外界へのひらけた空間のイメージが解放感を与えられるからです。
しかし、今回の作品の「抜け」では、外につながる窓から外部へのつながりは意識できますが、室内のほのかな灯を窓ガラスに反射させて、静かな室内の雰囲気をイメージできる作品にします。
合計すると、今回の制作する作品の構図の要素では、①√2比率の分割線を取り入れる②主役はロウソクの光とする③中空の3角を取り入れる④抜けを入れる、の合計4点で構成することになります。
エスキースを完成させる
今回は、「抜け」も併せて考え、基本線を導くレイアウトにしますが、画面右上の角では、画面上の右側面に広がっていく室内風景も連想できるように図形を配置します。具体的には、外へ続くことを連想できるように、モチーフをトリミングします。
また、左上の窓には、室内のロウソクの明かりが反射しているように工夫する一方で、画面上に緊張感を出すために、手前に球体を配置して転がり落ちるような不安定さを表現します。
同時に、ろうそくの右側に直立する細い棒も配置して不安定な緊張感を漂わせます。この場合、球体はコンパスで描き込んでいきますし、抜けも定規を使っています。あなたも制作に慣れるまでは、使えるものは何でも使いましょう。
A4の半分のエスキースに、「描いては消し描いては消し」を繰り返して、いかにして基本線を有効に使ったレイアウトや充分な強調ができるかを考えて、エスキースを完成させます。
本制作画面での構図分割線(√2)の取り入れ方
長辺への√2分割線の入れ方
尚、今回の作品の√2の比率は実際の作品の大きさはF10のスケッチブックで取り組むので、スケッチブックのサイズの長辺が528mm・短辺は454mmです。
例えば長辺の√2の比率を求めるならば、528mm÷1.414=373.40になるので、373mmの位置が√2比率の分割点になります。この分割点は、上下どちらからでも設定することができます(⑦⑧)。
また、あなたがF6やF10で制作する場合には、実際のスケッチブックを測って、それぞれの長辺短辺を1.414で割った数字が、それぞれの上下左右から図った√2比率の分割点にできます。
短辺への√2分割線の入れ方
短辺も同じく、454mm÷1.414=321.07mmになるので、321mmの位置が√2比率の分割点になります。この分割点は、左右どちらからでも設定することができます(⑤⑥)。
ここで重要なのは、長辺と短辺には√2比率による分割点は2つあるということです。この√2比率による分割線と、左右頂点からの斜線(①②)と縦横の2分割線(③④)全部を入れた基本線は上の画像「√2分割構図基本線(縦向き)」の通りです。
この基本線上に、先ほど制作したエスキースの内容を落とし込んでレイアウトします。実際に描き始める際には、まず全体を大づかみでとらえて描き進んでいきます。
描きやすくするためには、前述していますが、F10の本制作画面の正確なエスキースが、A4の半分サイズの紙に基づいてできている場合には、エスキース上の各モチーフの位置は、縮尺したエスキース÷縮尺値(0.3259)で割れば、F10上の位置に再現できます。
尚、細かいことはさておいて、Bや2Bなどの柔らかい鉛筆を親指・人差し指・中指で軽く持ち、全体を優しいタッチで描いていきましょう。ここでも、最初から各部分を強く描くことはやめましょう。
√2と中空の3角のテクニックの紹介
灯の点る窓辺の静物 2022-Ⅰ F10 鉛筆画 中山眞治
基本線の描き方: 初心者のステップバイステップ
中心点の重ね合わせ方とその注意点
今回の制作例の主役は、当然ロウソクに点った灯が主役ではありますが、その光を受けて反射する大きい安定感のあるボトルや、不安定要素をあえて入れた細長い直立する棒が準主役です。
この作品は、離れて鑑賞していただければ、部屋に点った灯をはっきりと確認することができます。また、窓に映っている灯が反射していることによって、静かな室内にいる雰囲気を感じることもできるはずです。
尚、人物や小さい作品の場合は別として、複数のモチーフで構成する画面には、できるだけ中心点を避けて制作することが望ましいです。
また、画面の中心点に、モチーフ(特に主役や準主役)の中心点を重ねてしまうと、全体の動きを止めてしまうからです。
実践!モチーフと構図の組み合わせ
基本線と全体構成の整合性を確保する方法
最初に描き込んだ、全体の輪郭を取った際のたくさんの線を練り消しゴムで整理しますが、これからトーンを入れていくところにある線はそのままにしておきましょう。
なぜならば、そこへはこれからトーンを入れていくので消す必要がないからです。しかし、モチーフにかかっている線や抜けの中にある線は消しておきましょう。
仕上げに向かって、明るい部分にすべきところにある無駄な線は、目立ってしまうので必ず消しておく必要があります。
尚、練り消しゴムで消したところは、その後トーンを入れていくと、練り消しゴムで消していないところと比較すると鉛筆の乗り具合が少しだけ違ってくるので、できるだけ練り消しゴムを使った消し込みは少なくするように心がけましょう。
鉛筆画の完成と仕上げ
線の整理後に意識すべき構図とレイアウト
まず、灯のともった燭台は、√2の分割線(⑥)上に置きます。尚、テーブルの位置については、中空の3角の中に、イメージしたそれぞれのモチーフが入るテーブルの高さにします。
そして、この中空の3角形の右辺は、ロウソクの炎の頂点から、「√2構図基本線(縦向き)」の画像の中の⑧の線と画面右端のBDが接する点まで引きます。
次に、ロウソクの炎を頂点とする3角形の左辺は、ロウソクの炎の頂点から⑧の線上の⑤との交点Iまでを結んだ線を描き込みます。また、中空の3角の底辺は、➇の線上の交点IからBDとの交点までを結びます。これで中空の3角形の線が引けました。
明暗のコントラスト: 効果的な活用法
メリハリを活かした最終的な仕上げのコツ
メインとなる線を残して描き進んで行きますが、その際には一番暗いところから描き始めてトーンを入れていきましょう。この制作例では、テーブル下の画面角のCとDに近いところの一番濃い色は、4Bを使っています。
このトーンの暗さを基準として全体を描いていきますが、全体的に一通り描き込んで制作が進み、仕上げの段階になったところでは、一番暗いところを更に一段暗く(5B)してみましょう。
尚、一番明るいところ(ハイライト)の部分についても、今一度練り消しゴムで拭き取ります。
全体を観察してみて、本来ハイライトであるべきところが、光っているように見えない場合には、その光になるべきところと隣接している部分のトーンの度合いが足りないのです。
光をより光らしくする場合には、隣接する黒をより濃い黒にすることで、まぶしく光っている部分を表現することができます。
成功する鉛筆画のレイアウトと構図のまとめ
制作例で一番明るいところは、燭台上のロウソクに点っている灯の部分です。尚、抜けの部分にも、Hのソフトなタッチでトーンを入れます。
その理由は、窓の外が目立たせたい灯の明かりとあまり変わらない場合には、見てくださる人の視線を「抜け」の外へも導いてしまうので、それを防ぐとともに、室内のハイライトが引き立つようにするためです。
また、室内の明かりがぼんやりと、窓にも反射しているようにすることで「在室感」を高めます。
そして、重要なのは基本線とモチーフのレイアウトにおいて、たとえば、「抜け」の左上角Aから窓の右下の角、テーブル上の球体の右側と、テーブルとテーブルクロスの折れ曲がった角部分に斜線が通っていることを暗示することです。
また、画面右上Bからの斜線も、ボトルの最上部を斜めに突き抜け、テーブルとテーブルクロスの折れ曲がった角部分に右上から通り、テーブルクロスに隠れた4角い図形の頂点を通って、画面左下の角Cに到達していることを暗示しています。
尚、抜けの窓の下の枠は√2の線をそのまま活用し、モチーフの細長い棒の頂点の一辺もその線を活用しています。
また、テーブル上の立方体の2辺も√2と中心線を活用して構成します。これらの線との重ね合わせは、構図の構成を示すためです。その暗示が画面全体を落ち着かせてくれます。
まとめ
鉛筆画・デッサンの世界は、表現の幅が広く、その奥深さは無限です。
初心者から中級者にかけて、構図力を高める方法として「√2」と「光を中心とした中空の3角」のテクニックを学び、実践することで、その表現の幅と深みをさらに広げることができます。
そのためにも、まず、鉛筆画・デッサンの構図の基本から始めることが大切です。モチーフの選び方や構想を練る重要性、そしてエスキースの活用方法を理解し、実際の作品制作に活かしていくことで、基本的な技術を身につけることができます。
これらの基本をしっかりと身につけることで、後のテクニックの吸収もスムーズに進めることができるでしょう。
次に、√2と中空の3角のテクニックについての深い理解が求められます。基本線の描き方や「抜け効果」の応用、さらに中心点の重ね合わせ方など、これらのテクニックを効果的に使用することで、作品に独自の深みや緊張感を持たせることができるのです。
また、実際のモチーフと構図の組み合わせの際には、分割線の取り込み方や基本線と全体の整合性についても考慮する必要があります。これにより、作品全体としてのバランスや一貫性を保つことができます。
最後に、鉛筆画の完成と仕上げの段階です。明暗のコントラストを活かすことで、作品に写実性や奥行きを持たせることができます。また、メリハリを活かした仕上げのコツを学ぶことで、作品が一段と引き立つようになります。
まとめると、鉛筆画・デッサンの構図力を高めるためには、基本から応用、実践、そして仕上げまでの一貫した流れを理解し、実際の作品制作に活かしていくことが大切です。
この流れを身につけることで、あなたの鉛筆画・デッサンは次のレベルへと進化することでしょう。
尚、この構図記事の他にも、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。
それは、あなたの制作する画面全体を使って、さまざまな構図や発想を駆使することによって、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事を参照してください。
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ではまた!あなたの未来を応援しています。
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