どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
この記事では、初心者から上級者まで鉛筆画やデッサンの技術を磨ける「鉛筆画・デッサン完全マスターガイド」を展開します。
心象風景の描画から基本テクニック、構図の工夫、光と影の表現方法まで、制作例とともに分かりやすく解説します。あなたの創造力を引き出し、鉛筆だけで描く無限の可能性を探求しましょう。
そして、初心者が押さえるべきポイントから、上級者が挑戦する複雑なテクニックまで、あらゆるレベルに対応した内容を提供します。
それでは、早速見ていきましょう!
心象風景の魅力と描き方:鉛筆画やデッサンによるアートの世界への招待
海外の心象風景の著名な画家の作品では、グレコ「聖マウリテレスの殉教」・ゴッホ「星月夜」・ピカソ「アビニョンの娘たち」等、それ以外にもたくさんの大御所の作品群があります。
心象風景とは、作者の心の中に思い描いた景色であり、体験及び感情や感覚によって生み出される想像上の風景です。つまり、あなたが描く自分自身の理想の風景であると言えますし、心の中で思い描くイメージやメッセージとも言い換えられます。
あなたも、あなた自身の思い描くイメージをさまざまな画像を組み合わせて、且、鉛筆画による白と黒の劇的な構成で表現することが可能です。
鉛筆画やデッサン制作の基本:初心者から上級者までのステップバイステップガイド
鉛筆画やデッサンの準備:成功のための必須アイテムとヒント
最初に、あなたが手始めにすることは、次のようの順序です。また、できれば、あなたのリラックスできる静かな音楽の用意と、部屋の中は心地よい温度や湿度に設定しましょう。
鉛筆画やデッサンのアイデア生成:メモ描きで発想を形にする方法
日美展 大賞(文部科学大臣賞、デッサンの部大賞) 誕生2023-Ⅱ F30 鉛筆画 中山眞治
まずは、あなたの身の回りにあるA4サイズの紙を用意して、それを正確に半分に切り、今回のあなたの作品のまずはメモ描き程度で自由に構想を練りましょう。
あなたが初心者の場合には、構想や構図などについては何も考えないで、自由に楽しんで描くことが重要です。最初の内は、楽しく5~10作品ほど描きましょう。
しかし、中級者から上級者では、作品制作以前に事前の充分な構想を練る必要がありますし、その際には構図や構成なども考えなければ、各種展覧会や公募展に入選できません。
それは、構図や構成をしっかりと考えていない作品は、観てくださる人に感動を与えられませんし、各種展覧会や公募展へ出品しても審査員の心を掴むことはできないでしょう。
モチーフを上手に描けたとしても、それでは足りません。あなたが制作する画面全体を使い切って、より魅力的な作品にする必要があるのです。
構想を練ることの重要性は、次の関連記事を参照してください。また、構図について関心のある人は、この記事最終部分に掲載の「鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは」を参照してください。
関連記事:鉛筆画・デッサンで差をつける:初心者から上級者までの制作構想の重要性とは?
鉛筆画やデッサンの下絵作成:構図分割基本線を使ったエスキースの技法
下絵(エスキース)のサイズを実際に測って、構図分割線を入れていきます。そして、構図基本線を入れるならば、その線はボールペンで入れておくと、そこへ鉛筆で描き込んでいけば何度でも試行錯誤できます。
そして、上記で用意したA4サイズの紙を正確に半分に切ったものを、エスキースとして使うことも充分可能です。最終的に、あなたの気に入ったモチーフをあなたの気に入ったレイアウトに据えて完成させましょう。
尚、あなたのイメージを補えるように自由に、構図上の不足する部分に他のモチーフを加えたり、「削除」「省略」「修整」「強調」「変形」「拡大」「縮小」して、エスキースを仕上げることができます。
鉛筆画やデッサンの本制作入門:アート作品への道のり
エスキースが実際の制作画面よりも小さい時には、拡大していくことになりますので、そのことを頭に入れて画面に向き合いましょう。多少の違いは本制作画面で修整するくらいの気持で取り組めば問題は少ないはずです。
鉛筆画やデッサン制作の構想:創造的アイデアの練り方
鉛筆画やデッサンの構成と狙い:クリアなビジョンでアートの完成度を高める
今回の制作例では、木立の明るい隙間に向かって、植物の芽が「大地の中から姿を現し始めた瞬間」「大地から双葉が抜け出ようとしている動き」「明るい外界に向かって展開し始めた状況」を植物の芽3つのモチーフによって構成します。
そして、画面左上の部分からは朝霧のような空気を漂わせると同時に、植物の芽の成長を目で追いかけて、画面左下から左上に向かう曲線で、観てくださる人の視線を誘導します。
今回の制作例では、朝霧を使うことによって幽玄な世界の制作も試みることにしました。幽玄とは、「神秘的な深み」であり、目にははっきりとは見えないものの、その奥に人間が感じることが可能な美を意味します。
鉛筆画やデッサンの画面構成:必要なツールとテクニック
そこで、その後何をしたかといえば、以前からコピーで手元にある、幼児向けの絵本で「植物の発芽」という本で手に入れた画像と、樹木の写真集の中の画像を使うことにしました。
鉛筆画やデッサンにおける主役と脇役:バランスの取り方
今回の制作では、できる限り「誕生から成長と未来への展開の予感」も表現できるように工夫することにして、そこで必要になることは鉛筆のトーンを効果的に使うことと同時に、朝霧の効果を高めることです。
そのためには、√3構図分割基本線上⑤に配置する主役のモチーフと朝霧を引き立てるためにも、地表面部分のトーンには、ようすを見ながら濃い目に描き進むことにします。
尚、主役と準主役は植物の芽ですが、準主役と同格で朝霧も取り扱うことにして描き進みます。脇役は、画面上部の樹々です。
鉛筆画やデッサンのモチーフ選び:インスピレーションを形にする
今回の筆者の心象風景の制作例は、テーマの主体である構図に、①√3(主役の位置)②黄金分割(画面縦の配置)③リズム(植物の芽3つを使用)④(4分割線…地平線の基本線)を入れる予定で進みます。
それは、構図基本分割線上に、それぞれのモチーフを落とし込んで制作するということであり、各種構図基本線の配置に対して、何をどのように描いていくかということを考えることでもあります。
あなたが今回の記事を参考にして制作する場合でも、主役・準主役及び脇役や全体のレイアウトはどうするかを決めていきましょう。
尚、あなたが私の制作例に使っていないモチーフで、同じような構図で制作しても何ら問題ありませんが、私の制作例をそのまま使うことは、著作権がありますのでできません。あしからずご承知おきください。
鉛筆画やデッサンの下絵(エスキース)の作り方:基本から学ぶ
まず最初に、あなたの身の回りにあるA4サイズの紙を用意して、それを半分に切り、今回のあなたの作品の、まずはメモ描き程度で自由に構想を練りましょう。
フリーハンドや実際に測ってでも良いのですが、構図分割線を入れます。もしも、きちんと測って構図基本線を入れるならば、その線はボールペンで引いておくと、そこへ鉛筆で描き込んでいけば何度でも試行錯誤できます。
最終的に、あなたの気に入ったモチーフをあなたの気に入ったレイアウトに据えて、あるいは作品によっては、構図上の不足する部分に他のモチーフも加えて補うことにより、エスキースを造ることができます。
鉛筆画やデッサンの基本:下絵に構図基本線を引くコツ
まずはこのように、各種構図基本線を引きますが、具体的な分割点の割り出し方は順を追って記載していきます。
鉛筆画やデッサンのエスキース作成法:アート作品の基礎
メモ描き程度の構想を練ることが終了しましたら、次はあなたが取り組む本制作に入る画面の縮尺をかけたエスキースの画面に、構図基本線を引きましょう。
あなたが、本制作に入る画面の大きさをF10のスケッチブックのサイズで取り組むとして、そのエスキースをA4の紙の正確に2つに切ったもので制作する場合には、次のようになります。
効果的な鉛筆画やデッサンのエスキース:構図分割基本線の活用
F10の長辺は528mm・短辺が454mmであり、あなたが手元に用意したエスキースは、その短辺のサイズは148mmなので、F10の短辺のサイズ454mmで割ると、0.3259という数値が出ます。
そして、F10の長辺は528mmなので、この長さに上記の縮尺(0.3259)をかければ、172.07となりますので、あなたのエスキースの長辺を172mmにすれば、あなたが本制作に入るF10を正確に縮尺したエスキースの土台ができるということです。
つまり、エスキースの短辺のサイズを本制作する画面の短辺に合わせ、本制作する画面の長辺を縮尺してエスキースを作るということです。
鉛筆画やデッサンのエスキースの技術:長辺短辺の分割線と対角線の引き方
次に、上記画像のように、長辺短辺の2等分割線(③④)及び各対角線(①②)を引きます。
鉛筆画やデッサンの「抜け」を考える:空間表現のコツ
桃色線:抜けの位置を表す線
絵画の制作では、外界へ抜ける部分を意図的に作ることがあります。今回の制作例では、上記画像の桃色線がその部分です。
画面の右上の方にはこの「抜け」を作らずに樹木で覆い、早朝の朝霧のようなトーンも使って、観てくださる人の視線を植物の芽の成長を追って左上の「抜け」に導きます。この各種基本線は、2Bや3Bなどの柔らかい鉛筆の軽いタッチで描き込みます。
この時筆圧を強く描き込んでしまうと、のちの工程で練り消しゴムでは消しきれなかったり、跡が残ってしまうので、そのためには筆圧をかけ過ぎず優しく引くことが必要です。
鉛筆画やデッサンの「抜け」効果:さまざまな作品への応用
画面上に「抜け」があることによる効果は、観てくださる人の息苦しさを解消できます。それは、意識がその「抜け」の先にある外界のひらけた空間に向けられて、解放感を与えられるからです。
この「抜け」とは、作品によっては窓などを作って外界への「抜け」を作ることもできますし、その効果は、心象風景以外のどのジャンル(花・人物・静物・動物・風景)にでも応用できます。
鉛筆画やデッサンのレイアウト:画面全体の考え方
- 黄色線:斜線2本と縦横の分割線(①②③④)
- 紫色線:√3分割線(⑤⑥)
- 青色線:黄金分割線(⑦⑧)
- 緑色線:4分割線による本来の分割線(⑨)
- 赤色線:斜線①との交点で、画面に動きを出すために意図的にわずかに傾けた新たな地平線
- 灰色線:観てくださる人の視線を誘導する方向を表す線
そして、描き込んだ基本線の√3の位置⑤にモチーフを置きますが、この点につきましては順を追って説明していきます。また、この時に、作品によってはそれ以外のモチーフも検討して、各導線との交わり方や導線の導き方も同時に考えていきます。
今回の制作例では、モチーフの主役は植物の芽であり、成長の過程をあらわす3つのモチーフで構成します。このモチーフ3つが何を意味するかといえば、3つ以上の同一のモチーフを用いることで、観てくださる人へ「リズム」を与えられるのです。
鉛筆画やデッサンにおける中心点の重要性:慎重な扱い方
今回の制作例では、「大地から双葉が抜け出ようとしている動き」の植物の3つの芽の真ん中のモチーフを√3の位置⑤に置いていますが、その芽の湾曲した内側部分を中心点とすることで、主役が画面の寸法上の中心点と重なることを避けます。
絵画の制作上においては、意識的に画面の中央にモチーフを配置する場合は別として、複数のモチーフで構成する画面には、できるだけ画面の寸法上の中心点に主役や準主役の中心点が重なることを避けて制作しましょう。
それは、画面の寸法上の中心点に主役や準主役のモチーフの中心点を重ねてしまうと「動きが止まってしまう」からです。
尚、意図的な制作例の人物画や動物画などで、画面の中にモチーフの面積を大きくとる必要があるときには、これらのことは該当しませんのでご安心ください。^^
鉛筆画やデッサンの基本線とエスキースの整合性
今回の完成時のイメージは、観てくださる人の視線を画面左下の角Cから左上方の角A方向へ導きます。
そして、右上方の角Bには樹木で覆われていて、その先の外界はさえぎられているので、朝霧のかかった明るい画面左上の角Aへと左へカーブする導線を使います。また、画面上の構図の中心点となる√3の位置⑤に、主役のモチーフを配置します。
さらに、地平線には画面縦の4分割線を使うと同時に、斜線①との交点でわずかに左へ傾けて動きを出して、できる限り画面上の構図基本線という大きな力を持った線を有効に使うことを心がけて制作していきます。
つまり、各構図基本線を使って、できるだけモチーフの位置・高さ・幅、あるいは中心点になるように考慮して画面構成を考えるということです。
鉛筆画やデッサン制作時の視線を意識する方法
全体のレイアウトをおこないながら、最終的な主役の画面上の輝き加減も考慮して、地平線上の画面上部右角周辺の樹木や空間部分にもトーンを入れます。
一方、画面左上角周辺の朝霧にも慎重に8H~9H程度のトーンを入れることで、√3構図基本線⑤上にある主役の輝きを画面全体のモチーフの中で一番大きくして、主役を引き立てます。
そして、主役(画面中央の植物の芽)の背後は、地面なので主役の輝きが充分感じられるように、濃いめのトーンを意識して描き進めることで、画面左上の角A方向からの朝霧を目立たせることにもつながります。
鉛筆画やデッサンの画面構成のポイント:配慮すべき要素
ここで肝心なのは、すべてのモチーフの中で主役や準主役以外のモチーフを克明に描き込みすぎてしまうと、観てくださる人の注意をその部分に集中させてしまいます。
そこで、主役や準主役以外のモチーフには、注意が集中しすぎないように描き込むようにします。
制作例であれば、一番奥の植物の芽や画面右上奥の樹木群は、細かく描き込みすぎないように注意しましょう。言ってみれば、意図的に手を抜くということになります。
これらのことを、A4の半分のメモ程度の紙に、「描いては消し描いては消し」を繰り返して、いかにして基本線を有効に使ったレイアウトや充分な強調ができるかを考えて、エスキースを完成させます。
尚、F10の本制作に向けて制作した、完成したエスキース上での主要なモチーフの位置のサイズは、縮尺時に活用した数値の、0.3259で割れば、F10の本制作画面上に再現できます。本制作がF10以外の場合には、改めて計算しましょう。
鉛筆画やデッサンの本制作:画面サイズの正確な測り方
スケッチブックのメーカーによっては、若干寸法が異なることがありますので、制作当初に実際のサイズを確認して正確な構図基本線を引きましょう。
このことは、スケッチブック以外にも、例えばパネルに水張りをした画面で制作する場合のF100や、それ以上の大きさの画面にも共通して言えることです。
あなたも制作を進める時には、実際に描き込む画面のサイズに合わせて構図基本線を引きましょう。これは最も重要な点です。
鉛筆画やデッサンの本制作での構図基本線の引き方
鉛筆画やデッサンの本制作:縦横の分割線を使った制作テクニック
実際に制作する画面に√3と黄金分割構図基本線を引きます。
- 黄色線:構図基本線(対角線①②、画面縦横の2分割線③④)
- 紫色線:√3分割線(⑤⑥)
- 青色線:黄金分割線(上下⑦⑧…下記に詳述します)
√3構図基本線を引く際には、既成のF10で制作を進める場合、筆者の使っているF10のスケッチブックの大きさは長辺が528mmで短辺は454mmです。
なので、例えば既成のF10で制作を進める場合には、短辺の454mm÷1.732=262.1mmになるので、262mmの位置が√3比率の分割点になります。この分割点は、左右どちらからでも設定することができます(⑤⑥)。
一方、長辺の黄金比率を求めるならば、528mm÷1.618=326.3mmとなり、326mmの位置が黄金分割点になります。この分割点は、上下どちらからでも設定することができます(⑦⑧)。
続いて、地平線部分については、画面縦を4分割した一番上の線だけを使いますので、528÷4=132mmとなりますので、画面上部から132mmの位置がその基本線の位置になります(⑨)。
そしてこの線に動きをつけるために、構図基本線⑨と斜線①との交点で、若干左への傾斜をつけて動きを出します。
赤色線:動きを出すために新たに引いた地平線
鉛筆画やデッサンの本制作:構図とモチーフの整合
- 黄色線:斜線2本と縦横の分割線(①②③④)
- 青色線:黄金分割線(⑦⑧)
- 紫色線:√3分割線(⑤⑥)
- 緑色線:4分割線による本来の分割線(⑨)
- 赤色線:斜線①との交点で、画面に動きを出すために意図的にわずかに傾けた新たな地平線
- 灰色線:観てくださる人の視線を誘導する方向を表す線
鉛筆画やデッサンの本制作への進め方:実践的アプローチ
構図基本線上に、先ほど制作したエスキースに基づいてレイアウトします。実際に描き始める際には、まず全体を大掴みでとらえて描き進んでいきます。
細かいことはさておいて、2Bや3Bなどの柔らかい鉛筆を親指・人差し指・中指でつまむように軽く持ち、全体を優しいタッチで描いていきましょう。
そして、この段階では、今後あなたの制作作品によっては、必要ならば長め・短めの定規やコンパスもどんどん使いましょう。フリーハンドで直線や曲線を描くことは、制作を続けていく中でゆっくりと慣れていけばよいのです。
エスキースから鉛筆画やデッサンの本制作へ:効果的な配置法
- 黄色線:斜線2本と縦横の分割線(①②③④)
- 青色線:黄金分割線(⑦⑧)
- 紫色線:√3分割線(⑤⑥)
- 緑色線:4分割線による本来の分割線(⑨)
- 赤色線:斜線①との交点で、画面に動きを出すために意図的にわずかに傾けた線
- 灰色線:観てくださる人の視線を誘導する方向を表す線
モチーフを実際にレイアウトしますが、題名にもある今回の「心象風景描画ガイドⅤ」では、上記の√3・黄金分割構図基本線及び4分割線による新たな地平線と3つのモチーフによるリズムを意識しながら、上の画像のような状態をイメージします。
この制作例では、主役がいかに主役らしく見えるかが一番重要なので、背景のモチーフに主役が目立つようにトーンを入れていきます。
また、見てくださる人の視線を左上に誘導するために、右上方角周辺へは樹木を密集させると同時に、左上方角A周辺からの朝霧の流れ込みを表現します。
鉛筆画やデッサン制作のノウハウ:他の作品への応用
作品の制作にあたっては、構図基本線を意識してレイアウトしますが、作品によって画面に納まりきれない部分は画面の外にハミ出てよいのです。あなたの描く画面には、あなたの必要とする部分だけを切り取って描きましょう。
それは、モチーフ全体を無理に画面に収めようとすれば、窮屈になってしまうからです。逆に、画面からハミ出ることによって、画面の外への広がりが表現できることになります。
そして、制作例の画面左下角Cの部分の水滴は何についているのかは、残りの2つのモチーフの連続性で表すといった具合です。これらのことは、どの作品を描いていくうえでも言えることで重要なことなので記憶しておいてください。
尚、画面最下部の底線CD上にモチーフを「乗っけた」ようにレイアウトすることは、重大な禁じ手なのでこれも覚えておきましょう。^^
鉛筆画やデッサン本制作の構成:斜線の導線暗示の重要性
今回の制作例では、観てくださる人が右上の角Bには樹々が密集していて視線を遮られるので、明るい左上の角A方向へ蛇行して視線を導かれることになります。
その朝靄のかかったような状態の向こうのA方向には、外界へ抜けていく部分を連想させられるので解放感を与えらます。
尚、画面左上の角Aからの斜線②では、その角にほど近い垂直に立っている物体の角を通り、地上に横たわるマッチの軸の角を通過しながら、画面中心を抜けて、芽によって掘り起こされた地面のくぼみの一部も抜けて、画面右下の角Dへ到達させます。
一方、画面右上の角Bからは、一番奥の芽の水滴の中心を通過して、画面中心を抜けて、画面左下の水滴の中心を通過しながら、画面左下の角Cへ到達しているのです。
さらに、各樹々は斜めになり動きを出していますが、画面上部左側の垂直に立っている物体と、地表面にある水平な「マッチの軸」が画面の動きを鎮めています。
鉛筆画やデッサンの導線暗示:簡単な工夫で魅力を増す
尚、あなたが作品を制作する際には、構図基本線や斜線が通っていることを画面上のレイアウトや、モチーフの凹凸なども含めて暗示しましょう。制作例では、「水滴」なども上手に使いこなせば充分役に立つことを示しています。
場合によっては、この画面上の構図基本線などの暗示として、水滴以外に「枯葉の虫食い」などであっても、活用することができます。さらに、この各種基本線は、2Bや3Bなどの柔らかい鉛筆の軽いタッチで描き込みます。
この時筆圧を強く描き込んでしまうと、のちの工程で練り消しゴムでは消しきれなかったり、跡が残ってしまうので、そのためには筆圧をかけ過ぎず優しく描くことが必要です。
鉛筆画やデッサンの本制作:理想の画面への変換方法
尚、実際のモチーフの形状は画面構成上修整することもあります。これは、どの画家もほとんど行っていることで、デフォルメと呼ばれています。
これらの構図基本線との重ね合わせは、構図の成り立ちを示すためでもあり、その暗示も含めて画面全体のバランスをとっているのです。
デフォルメは、風景画の場合であれば実際の景色には電柱や電線があっても、作者の意図する一番見映えのする画面にするために省略してしまうこともあります。
それは、現存する状態に修整を加える事であり、「省略」「削除」「修整」「変形」「強調」「つけたし」「拡大」「縮小」など何でもアリです。
鉛筆画やデッサンの本制作:構図とレイアウトの再考
- 黄色線:斜線2本と縦横の分割線(①②③④)
- 青色線:黄金分割線(⑦⑧)
- 紫色線:√3分割線(⑤⑥)
- 緑色線:4分割線による本来の分割線(⑨)
- 赤色線:斜線①との交点で、画面に動きを出すために意図的にわずかに傾けた新たな地平線
- 灰色線:観てくださる人の視線を誘導する方向を表す線
最初に描き込んだ、全体の輪郭を取った際のたくさんの線を練り消しゴムで整理しますが、こののちトーンを入れていくところにある線はそのままにしておきましょう。なぜならば、そこへはこれからトーンを入れていくので消す必要がないからです。
そして、モチーフにかかっている線や抜けの中にある線は消しておきましょう。仕上げに向かって、明るい部分にするところにある無駄な線は目立ってしまうので、必ず消しておく必要があります。
また、練り消しゴムで消したところは、その後トーンを入れていくと、消していないところと比較すると鉛筆の乗り具合が少しだけ違ってくることがあります。そこで、できるだけ練り消しゴムで消す部分を少なくすることが必要です。
鉛筆画やデッサンの仕上げ:メリハリの意識
国画会展 入選作品 誕生 2008-Ⅱ F130 中山眞治
練り消しゴムでたくさんの線を整理した後は、いよいよ各モチーフのレイアウト後の制作工程に入りますが、その際には暗いところからトーンを入れていきましょう。制作例の描き始めは、画面左下角Cのモチーフや地表部分です。
画面左下の角Cの位置にある一番手前のモチーフは2Bで、そこから地表面にはB→2B→3B→4B最終的に地平線部分には6Bまで使っています。
そして、朝霧を表現するには、少し濃く描くところと、思い切って薄く描くところを全体にバランスを見ながら描き込んでいきましょう。
一番面倒なのは、一番奥の芽のモチーフの右側当たりの地表部分に立ち込めている朝霧の表現ですが、明るいところは明るくしながらも、主役を目立たせるためには、ここにもトーンが必要です。
鉛筆画やデッサンの仕上げ:明暗の強調法
鉛筆画やデッサンの光の表現:隣接する黒の強調
完成が近くなってきましたら、全体を観察してみて本来ハイライトであるべきところが、もう一つ明るくなくて、光っているように見えない場合には、その光っているべきところと隣接している部分や背景の黒さの度合いが足りていない場合があります。
光をより光らしくする場合には、隣接する部分や背景をより濃い黒にすることで、光っているべき部分を強調することができます。
制作例で一番明るいところは、主役のモチーフの輪郭線部分と水滴です。つまり、一番明るいところは下地の紙の色ということです。
絵画鑑賞のススメ:新たなインスピレーションのために
公募展での絵画鑑賞:推奨されるアート体験
ところで、たまには絵を観に行きませんか。私の印象では、日展は「きれいなだけで個性的で野心的な作品は少ない」記憶しかありません。
おすすめは第一に国画会の展覧会である「国展(4月末~5月中旬)」、次いで独立美術協会の展覧会である「独立展(10月)」や、新制作協会の展覧会である「新制作展(9月下旬~10月上旬)」です。
展覧会(全国公募展等)へ行きましたら、細かな技法ばかりを見るのではなくて、作品から受けるあなたの印象が重要です。
最初の内はよくわからなくても、あなたが強く惹かれた・感性に響いた作品の印象をあなたの作品にどう反映できるかを考えるのです。
絵画鑑賞のコツ:大きな要素の捉え方
私は恥ずかしながら、抽象画がいまだによくわかりませんが、印象に残る具象画を見て帰ってくると、その印象を自分の作品に、どのように取り込むことができるかを考えるようにしています。
しかし、そっくりまねることはやめましょう。著作権がありますし、意味もありません。
細かいところまでを全部取りこもうとするのではなく、構図などの大きな成り立ち及び配置や濃淡のつけ方、画面の持っている「新たな着想」などを取りこむようにするということなのです。
国展:第98回国展(2024年) 出品要項 出品票請求フォーム | 国展 (kokuten.com)
絵画鑑賞時の要点とポイントの掴み方
もっと具体的に言えば、構図やデッサンは当然一番重要ではあり充分観察が必要ですが、4隅(4つの角の周辺処理)をどのように充実させているかということもとても重要です。
つまり、制作画面は、外部につながる景色の一部なので、観てくださる人がその四隅から外への広がりを意識できるように、工夫を凝らす必要があるということです。この点では、次の関連記事も参照してください。
関連記事:鉛筆画・デッサンの初心者から中級者必見!√2と光を中心とした中空の3角のテクニックで構図力をアップする方法
まとめ
この、鉛筆画・デッサン完全マスターガイドは、心象風景を描くための深い知識と技術を初心者から上級者までを提供する記事です。鉛筆だけで描き出される無限の表現力を探究し、基本から応用まで幅広くカバーしています。
初心者の人には、鉛筆の持ち方、線の引き方から始め、徐々に複雑な構図や陰影の表現へと進んでいきます。上級者の人には、より洗練されたテクニックや独自のスタイルを発展させる方法を提案します。
この記事を通じて、鉛筆画やデッサンの基本的な技術を学び、創造性を高めることができます。また、各章では具体的な作品例を通して、理論と実践のバランスを大切にしながら、技術の理解を深めることもできます。
心象風景の描画は、内面の感情や思考をビジュアルに表現する手段であり、このガイドを通じてあなた自身のアートスタイルを見つけ出し、発展させることも可能です。
読者一人ひとりのアートへの旅路が、この記事を通じてより豊かで充実したものになることを願っています。
最終的には、鉛筆画というシンプルな媒体を通じて、無限の創造性と表現の自由を享受し、あなたが展覧会や公募展で入選できることが、この記事の最大の目的です。
尚、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。
それは、あなたの制作する画面全体を使って、さまざまな構図や発想を駆使することにより、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事も参照してください。
関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは
ではまた!あなたの未来を応援しています。
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