どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
さて、このガイドでは、鉛筆画とデッサンの技術を用いて、ペンギンを描く方法を初心者から上級者まで段階的に解説していきます。基本的な形から始め、徐々に陰影や細部を加えていくプロセスを丁寧に紹介します。
そして、質感や動きの表現方法、練り消しゴムの使い方など、実践的なテクニックも盛り込みました。ペンギンの愛らしさを表現するコツを学び、あなたの鉛筆画技術を次のレベルへと引き上げましょう。
それでは、早速どうぞ!
鉛筆画やデッサンで描くペンギンのベストイメージ選定法
ファーストペンギンとは?
ファーストペンギンとは、集団で行動するペンギンの群れの中から、天敵がいるかもしれない海へ、魚を求めて最初に飛び込む果敢なペンギンを指します。
また、ペンギンの群れには猿などに見られるようなリーダーは存在せず、最初に動いた1羽に追従するという習性があります。
ビジネスでは、リスクを承知でだれも足を踏み入れたことのない領域に挑むベンチャー企業の創業者や、従来の価値観に縛られず「新しい価値観」や「新しい技術の開発」にチャレンジする人を「ファーストペンギン」と呼んでいます。
初心者向け!描きやすいペンギンの描画テクニック
そこで、今回は縁起の良い、この「ペンギン」をモチーフにして描いていきましょう。あなたも描きたいペンギンの画像を手元に置いてください。
それは、図書館から借りてきた写真集でも、あるいは、ネットからダウンロードやスクリーンショットしたものでもよいのです。ただし、著作権のある画像は注意して取り扱う必要があります。
その画像を元にして鉛筆画やデッサンを制作するので、問題はないはずですが、記事や作品をアップするようなことがある際に、元にした画像を掲載するようなときには注意が必要なので、無料の画像を活用しましょう。
尚、画像通りの描き方を考えなくてもよいのです。あなたの気に入った背景にするとか、余分な映り込みを省略(デフォルメ)するなどして、見てくれる人が混乱しないように整理することが必要です。
そして、今回のペンギンを含めた動物画、静物、人物、風景、心象風景すべてに言えることですが、初心者の場合には単純に対象だけを描くことでも良いのですが、中級者から上級者の場合には、構想を練ることと構図の導入が必要です。
構想を練る必要性に対しての詳細な説明は、次の関連記事を参照してください。また、構図の関連記事については、この記事最終部分にある「鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは」を参照してください。
関連記事鉛筆画・デッサンで差をつける:初心者から上級者までの制作構想の重要性とは?
ペンギンを描く際の鉛筆画やデッサンの初心者ガイド
最初は、細部は気にせずに描いていくのですが、一番気をつける必要があることはモチーフ全体の大きさと位置です。それは、制作が進んだ途中の段階から間違いに気づいても、大きさと位置はほとんどの場合に変えられないからです。
そして、モチーフ全体の大きさと位置の輪郭が決まりましたら、頭と体の比率、それから目やクチバシなど、大きいところから、小さいところの順に描いていきます。特に注意する点は、目やクチバシの位置及び大きさと形状です。
細部は後で修整しますので、描き始めは、全体の輪郭のバランスを取ることだけを考えて描いていきましょう。動物の場合には、輪郭の次に、目の位置から決めていくと描きやすい場合が多いものです。
鉛筆画やデッサンにおける陰影の基本テクニック
画面上に対象となるペンギンの輪郭が描けましたら、陰影をつけていきます。細部は、仕上げに近づいていく段階で少しづつ修整していく感じで描き進めましょう。
この段階では、作品全体の明暗を徐々に描き進めます。まず初めは、一番濃い色のところから陰影をつけていきましょう。
鉛筆画制作の効率的な進行方法
対象となるペンギンの背景も同じように描き進めていきます。あくまでもペンギンと背景は同時進行です。この段階でも大切なのは、作品全体のバランスを考えることです。
鉛筆画におけるタッチの方向とその重要性
タッチ(※)の向き(鉛筆を動かす方向)は、毛の流れだったり、そのモチーフに合った方向でつけます。それまでの制作の大まかな陰影はついているはずですから、少し細かい所にも目を向けて、描き込んでいきます。
※タッチとは、画材による点や線及び光と影によってできる明暗の変化や、鉛筆で描いたグレーの濃淡、明暗など、グラデーションの状態・ようすなどのことです。
形態を表現する鉛筆画やデッサンのタッチテクニック
本来、モチーフにタッチがあるわけではありませんが、鉛筆画やデッサンではタッチを用いて面の方向や形態を表現できます。
尚、タッチとは、「モチーフの形状の成り立ちを印象として判別できる手法」という解釈がありますし、「画面上に残された筆や絵具の跡が作家の個性を表わす要素」という見方もできます。
そして、モチーフが前光(真上からの光)の状態で、調子(※)がわずかしかない場合や、白いモチーフをあまり黒くせずに表現したい場合にタッチを使い分けると効果的です。
※ 調子とは、光と影によってできる明暗の変化のことであり、 鉛筆で描いたグレーの濃淡、明暗など、階調の状態・様子のことです。
鉛筆画やデッサンで細部にこだわる描画方法
細かいところを見て描写していくと、どんどん濃淡の色数が増えます。まずは、一番濃い色のところを確定させて、その色に合わせてその他の部分のトーンの濃さを決め、全体の陰影のバランスをとっていくと割とスムーズに描き進められます。
逆に、明るい色から描き進んでいくと、最終的な濃い色がどんどん濃くなっていく傾向になってしまいますので、注意が必要です。
ご自身の目で見て、この色が一番濃い色(黒)というところを基準にして、徐々に明るくしていくという方が制作の手順がスムーズです。
それでも、調整しにくい場合には、最終的にそれまで一番濃い色であったところを、後から、もう一段濃くして折り合いをつけてもよいのです。あくまでも制作しやすくするための手順と考えて、あなたが描きやすい方法で進んでいきましょう。
鉛筆画やデッサンにおける練り消しゴムの使い方と完成度を高めるコツ
桃色線:仕上げ時に濃い色を必要とする部分
水色線:微妙な陰影が必要な部分
描画対象の詳細な観察方法とその重要性
今回の制作例は、ペンギンがもともと白黒のモチーフなので割と簡単に描くことができました。腹部と背の境目の脇腹辺りの細かな模様だけは、面倒でも描き込みが必要です。
そして、白い腹部ではあっても、微妙な陰影のあることを意識しましょう(水色線部分)。制作例では、2H・3Hの優しいタッチでの縦横斜めの線でトーンを入れています。
また、あまり考え過ぎないようにして、描き進めていきましょう。確定的な筆圧の強い描き方を避けて描くことで、あとから修整をいくらでもきかせることができるからです。
尚、練り消しゴムは、プラスチック消しゴムなどよりも紙を痛めずに優しく消せますし、「消す」というよりは「描く」イメージで、白抜きしたいところに使います。
練り消しゴムは、濃く塗り過ぎた陰影も、ヘラのような形状にして「優しくなぞって」調整することもできます。
今回の制作例では、ハイライト部分に、先端部分をマイナスドライバーのような形状にして、念入りに拭き取っています。
写実的な鉛筆画を描くための陰影の基本
第1回個展出品作品 ガラパゴスペンギン 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
今回の制作例では、モチーフの背の部分には、HBでとりあえず黒い部分を一様に描き込み、光を受けているところから、光を受けていないところに向かってB→2B→3Bで描き込んでいます。
そして、羽はBから徐々に濃くしていき、足の部分も、いきなり濃い色で描き込むのではなく2Bから徐々に濃くしていく感じで描き進み、最終的には5Bまで使っています。
また、腹部や股の部分(水色線部分)にも、いきなり濃い色を入れるのではなくて2Hや3Hなどのトーンを慎重に入れる必要があります。
さらに、仕上げに向かっては、クチバシ・目・眼窩・頬・首・羽・尻周り・足などに濃いトーンを入れて仕上げます(前掲の桃色線部分)。これらの一番濃い部分には最終的に、すべて5Bまで使っています。
尚、背景は波なのですが、細密描写をしてしまうと主役が目立たなくなりますので、今回の波に限らず、主役を目立たせる背景を常に意識しましょう。つまり、何となくわかればよいので、「意図的に手を抜く」ことも必要なのです。
鉛筆画やデッサン制作に役立つさまざまな材料と道具
絵画教室の先生方は、実物をモチーフにして制作することにこだわっている人が多いので、写真及びネットからのダウンロードやスクリーンショットを使うことを、聞いたら「顔を真っ赤にして怒る」人がいるかもしれません。^^
しかし、そんなことはどうでもよいのです。最初から、モチーフは立体のものを描きなさいとか、定規を使ってはいけない、コンパスなどはもってのほかというようなことは無視してかまいません。
とにかく自由に、あなたが楽しんで描けることが一番重要です。ただし、「激怒する人」がそばにいる時に、平然とそれらのものを使うのは止めましょう。^^
あくまでも、自宅での制作時には何でもありと理解してください。基本的なデッサンのポイントの細かいことは、あなたが描くことに慣れるにしたがって、継続して考えていけばよいのです。
アートに触れる:美術館訪問のススメ
絵画鑑賞におすすめな公募展案内
たまには絵を観に行きましょう。私の印象では、日展は「きれいなだけで個性的で野心的な作品は少ない」印象しかありません。
おすすめは第一に国画会の展覧会である「国展(4月末~5月中旬)」、次いで独立美術協会の展覧会である「独立展(10月)」や、新制作協会の展覧会である「新制作展(9月下旬~10月上旬)」です。
展覧会(全国公募展)へ行きましたら、細かな技法ばかりを見るのではなくて、作品から受けるあなたの印象が重要です。
最初の内は、よくわからなくてもあなたがどのように感じたかが一番肝心です。やがてそれが、緊張感の出し方や画面構成のバランスなどに活用することができるでしょう。
国展:第98回国展(2024年) 出品要項 出品票請求フォーム | 国展 (kokuten.com)
絵画鑑賞時の要点とポイントの掴み方
私は、恥ずかしながら、抽象画がいまだによくわかりませんが、気に入った具象画を見て帰ってくると、大づかみな印象を自身の作品に、どのように取り入れることができるかを考えるようにしています。
しかし、そっくりまねることはやめましょう。著作権がありますし、意味もありません。
細かいところまでを全部取りこもうとするのではなく、構図などの大きな成り立ち及び配置や濃淡のつけ方、画面の持っている「新たな着想」などを取りこむようにするということなのです。
もっと具体的に言えば、構図やデッサンは当然一番重要ではあり充分観察が必要ですが、4隅(4つの角の周辺処理)をどのように充実させているかということもとても重要です。
つまり、制作画面は、外部につながる景色の一部なので、観てくださる人がその四隅からの広がりを意識できるように、工夫を凝らす必要があるということです。この点では、次の関連記事を参照してください。
関連記事:鉛筆画・デッサンの初心者から中級者必見!√2と光を中心とした中空の3角のテクニックで構図力をアップする方法
まとめ
「鉛筆画やデッサンで描くペンギンのベストイメージ選定法」では、ペンギンの特徴の理解とイメージ選びの方法を、初心者でも分かりやすく解説します。「ファーストペンギンとは?」では、ペンギンの海中における躍動を作品にするヒントを学びます。
初心者向けには、「描きやすいペンギンの描画テクニック」と「鉛筆画やデッサン初心者ガイド」で基本的な描画方法を紹介しながら、本格的な絵画作品には、まず最初に構想を練ることの必要性と、構図導入の重要性を痛感できます。
さらに、「陰影の基本テクニック」と「鉛筆画やデッサン制作の効率的な進行方法」を通して、リアルな質感と効率的な作業プロセスを掌握します。
タッチの方向とその影響を学ぶ「タッチの方向と重要性」、「形態を表現するタッチテクニック」もリアルな表現には欠かせません。
細部へのこだわりは、「鉛筆画やデッサンで細部にこだわる描画方法」と「練り消しゴムの使い方」でカバーしています。対象の深い観察方法を「描画対象の詳細な観察方法とその重要性」で、写実的な描画のコツを「陰影の基本」で学びます。
「鉛筆画やデッサン制作に役立つさまざまな材料と道具」では、道具選びの重要性を強調。ひらめきを得るための「美術館訪問のススメ」と「公募展案内」、さらに「絵画鑑賞時の要点とポイントの掴み方」で、作品鑑賞から学ぶことの重要性を説明します。
これらのガイドは、ペンギンを題材にした鉛筆画の技術を磨き、アート作品としての完成度を高めるための総合的なアプローチを提供します。
尚、この記事の他にも、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。
それは、あなたの制作する画面全体を使って、さまざまな構図や発想を駆使することにより、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事も参照してください。
関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは
ではまた!あなたの未来を応援しています。
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