鉛筆画・デッサン完全マスターガイド:初心者から上級者まで学べる心象風景描画テクニックⅣ

心象風景画の描き方

 どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

 さて、鉛筆画とデッサンの技術を身につけたい方へ、心象風景描画の全てを学べる究極のガイドをご提供します。

 初心者から上級者まで役立つこのガイドは、基本的な描画技法から、さらに深い表現のコツまでを網羅。

 エスキースの作り方から、構想の練り方、画面構成の考え方、そして本制作への進め方まで、一歩一歩丁寧に解説していきます。鉛筆だけで描き出される世界に、あなたも足を踏み入れてみませんか?

 それでは、早速見ていきましょう! 

  1. 心象風景とは? – 鉛筆画・デッサンで描く内面の風景
  2. 鉛筆画・デッサン制作のプロセス解説 – 初心者から上級者までの各段階
    1. 鉛筆画・デッサンの準備 – 基本から始める準備方法
    2. ざっくりとした構想のメモ描き – 鉛筆画・デッサン制作のためのアイデア抽出
    3. 鉛筆画・デッサン本制作入門 – 初心者ガイド
  3. 鉛筆画・デッサンの構想の練り方 – 制作のヒントとテクニック
    1. 鉛筆画・デッサンの目的と構成 – 明確な芸術作品の作り方
    2. 鉛筆画・デッサン制作のための必要物品 – 完璧な準備リスト
    3. 鉛筆画・デッサンのキャラクター作り – 主役から脇役までの描き方
  4. 鉛筆画・デッサンの構想: 創造性を引き出す方法
    1. 競争に勝てる個性の発揮方法
    2. ブランディング構築の重要性
  5. 鉛筆画・デッサン制作のモチーフ選び – 効果的なテーマの決め方
  6. 初心者向けエスキースの作り方 – 鉛筆画・デッサンの下絵作成法
    1. 鉛筆画・デッサンエスキースへの構図基本線の引き方
    2. 鉛筆画・デッサンエスキースの作成 – ステップバイステップガイド
    3. 効果的な鉛筆画・デッサンエスキースの構図分割基本線の使い方
    4. 鉛筆画・デッサンのエスキースに長辺短辺の2等分割線と対角線を引く方法
    5. 鉛筆画・デッサンのエスキースでの「抜け」の考え方
    6. 鉛筆画・デッサンの「抜け」の効果と応用
    7. 鉛筆画・デッサン全体の画面レイアウトを考える
    8. 鉛筆画・デッサン中心点の扱い方 – 効果的なレイアウトテクニック
    9. 鉛筆画・デッサンの基本線と下絵(エスキース)の整合性について
    10. 視線を意識した鉛筆画・デッサン制作 – 視覚的アプローチ
    11. 鉛筆画・デッサンの画面構成で考えるべき点
  7. 鉛筆画・デッサン本制作へのステップ – 画面サイズ測定の必要性
  8. 鉛筆画・デッサンの本制作における構図基本線の引き方
    1. 黄金分割点(線)の設定 – 鉛筆画・デッサン本制作での応用
  9. 鉛筆画・デッサン本制作での構図基本線とモチーフの整合
    1. 鉛筆画・デッサン本制作における描画プロセス
    2. エスキースを基にした鉛筆画・デッサン本制作の配置
    3. 鉛筆画・デッサンで他の作品を描く際のノウハウ
    4. 鉛筆画・デッサン本制作での斜線の導線暗示の重要性
    5. 鉛筆画・デッサンでにおける導線暗示の取り入れ方
    6. 理想の画面を描く – 鉛筆画・デッサン本制作のアドバイス
  10. 鉛筆画本制作でのモチーフ配置と構図レイアウトの再考
    1. 鉛筆画本制作の最終仕上げ – メリハリの重要性
  11. 鉛筆画仕上げにおける明暗差の強調方法
    1. 鉛筆画で光る部分の強調 – 隣接する黒の調整
  12. 絵画鑑賞への招待 – アートの「ひらめき」を探す旅
  13. まとめ

心象風景とは? – 鉛筆画・デッサンで描く内面の風景

 海外の心象風景の著名な画家の作品では、グレコ「聖マウリテレスの殉教」・ゴッホ「星月夜」・ピカソ「アビニョンの娘たち」等、それ以外にもたくさんの大御所の作品群があります。

 心象風景とは、作者の心の中に思い描いた景色であり、体験及び感情や感覚によって生み出される想像上の風景です。

 つまり、あなたが描く自分自身の理想の風景であると言えますし、心の中で思い描くイメージやメッセージとも言い換えられます。

 あなたも、あなた自身の思い描くイメージをさまざまな画像を組み合わせて、且、鉛筆画・デッサンによる白と黒の劇的な対比で表現することができます。

鉛筆画・デッサン制作のプロセス解説 – 初心者から上級者までの各段階

鉛筆画・デッサンの準備 – 基本から始める準備方法

 最初に、あなたが手始めにすることは、次のようの順序です。

 また、できれば、あなたのリラックスできる音楽の用意と、部屋の中は心地よい温度や湿度に設定しましょう。そして、足は組まず、イスに深く腰掛けることで、長時間描いても疲れにくくなります。

 尚、本当の最初の取り組みの場合には、「絵画教室」で基本的なことを教えてもらうことをオススメします。

 それは、イーゼルやモチーフもたくさんあり、ごく初歩的なことも教えてもらえるからです。例えば、あなたがイーゼルにスケッチブックを乗せて、モチーフを捉える場合には、スケッチブックのすぐ左右でモチーフを捉えることが重要です。

 なぜかと言えば、頭を動かさずに、視線の移動だけで、モチーフと画面を移動できるようにすることが重要だからです。これ以外にも初歩的な光源のとらえ方なども含めて、教えてもらいましょう。

ざっくりとした構想のメモ描き – 鉛筆画・デッサン制作のためのアイデア抽出

 まずは、あなたの身の回りにあるA4サイズの紙を用意して、それを正確に半分に切り、今回のあなたの作品のまずはメモ描き程度で自由に構想を練りましょう。筆者の場合には、この段階では着想の整理程度で終わります。

鉛筆画・デッサン本制作入門 – 初心者ガイド

 エスキースが実際の制作画面よりも小さい時には、拡大していくことになりますので、そのことを頭に入れて画面に向き合いましょう。多少の違いは本制作画面で修整するくらいの気持で取り組めば問題は少ないはずです。

鉛筆画・デッサンの構想の練り方 – 制作のヒントとテクニック

鉛筆画・デッサンの目的と構成 – 明確な芸術作品の作り方

 今回の制作例では、木立の明るい隙間に向かって、植物の芽が「大地の中から姿を現し始めた瞬間」「大地から双葉が抜け出ようとしている動き」「明るい外界に向かって展開し始めた状況」を植物の芽3つのモチーフによって構成します。

 そして、一番手前の右下の角に「タバコの吸い殻」を置くことによって遠近感を強調します。

 尚、その「タバコの吸い殻」の斜線の延長上では外界を垣間見ることはできませんが、一方で、植物の芽の成長を目で追いかけていくと、外界へ通じる景色に出会い、未来へ続く希望を感じられるといったものです。

 また、画面上の特に左上の部分には早朝の靄のような空気が漂い、植物の芽の成長する方向性を画面上ではっきり右上と認識できるように、観てくださる人の視線を明るい、外界へ続く方向へ誘導します。 

鉛筆画・デッサン制作のための必要物品 – 完璧な準備リスト

 そこで、その後何をしたかといえば、近所の図書館へ行き、幼児向けの絵本で「植物の発芽」という大きな画像付きの本の中から使えそうな本と、樹木の写真集も借りてくることにしたのです。また、「タバコの吸い殻」も必要ですね。^^

鉛筆画・デッサンのキャラクター作り – 主役から脇役までの描き方

 今回の制作では、できる限り「誕生から成長と未来への展開の予感」を表現できるように工夫することにします。

 そこで、必要になることは鉛筆のトーンを効果的に使うことと同時に、一番近景の「タバコの吸い殻」にも効果の演出を担わせます。

 今回の作品では、植物の芽が主役であり、3つの成長過程のモチーフを登場させて、また、脇役の「タバコの吸い殻」という意外性のあるモチーフで遊びます。 

鉛筆画・デッサンの構想: 創造性を引き出す方法

競争に勝てる個性の発揮方法

 あなたが、絵画の制作を趣味で終わらせるのであれば、これ以上のことは申し上げません。しかし、「展覧会・公募展などへも出品したい」ということであれば、競争に勝てなくては入選及び入賞はできません。

 そこで、あなたは、展覧会・公募展などでの入選及び入賞を目指すものとして、主役・準主役及びレイアウトはどうするかを決めていく際には、できるものであれば、あなた独自のテーマを考えてみましょう。

 例えば、寛ぎのひと時をシリーズ化、季節を象徴する花・果物・野菜で季節を表現、夜の街をシリーズ化、夕暮れ時を専門的に描くなど、あなた独自の視点での制作が必要になってきます。

 それは、あなたが描きたいと思える「テーマを発見する」ことであり、静物、人物、動物、風景すべてに言えることです。

 その専門的なテーマが、あなたのオリジナリティーとなり、他の画家たちとの差別化を図れます。ここは、いきなり大きな情報になりますが、あなたがこれから制作を進める際に、一番に考えるべき重要な点です。

ブランディング構築の重要性

 それが、あなた独自のブランディングの構築になるということです。「この作風の絵はあの人の作品だな」と思われるようになりましょう。やみくもに描くことは、意味が少なく、効果的な展開には結びつきません。

 どの上級者であっても、この部分は常に考え続けている点なので、早い段階から、あなたがこの点に気づいて検討を進めることは、重大な意味を持ちます。この点は、画家にとって一生考え続けていく部分だからです。

 このことをわかりやすく説明するならば、モネの「睡蓮シリーズ(250点以上)」などは、まさにこのことの実践なのです。尚、着想を得るためのヒントでは、次の記事も参照してください。

関連記事:鉛筆画・デッサンで初心者から中級者必見!複合した構図で心象風景を描く方法Ⅱ

鉛筆画・デッサン制作のモチーフ選び – 効果的なテーマの決め方

 今回の筆者の心象風景の制作例は、テーマの主体である構図は、①黄金分割(主役・準主役の位置)②リズム(3つの植物の芽による)を入れる予定で進みます。

 それは、構図基本分割線上に、それぞれのモチーフを落とし込んで制作するということであり、各種構図基本線の配置に対して、何をどのように描いていくか考えることでもあります。

 あなたが今回の記事を参考にして制作する場合でも、主役・準主役及び脇役や全体のレイアウトはどうするかを決めていきましょう。

 尚、あなたが筆者の制作例に使っていないモチーフで、同じような構図で制作しても何ら問題ありませんが、筆者の制作例をそのまま使うことは、著作権がありますのでできません。あしからずご承知おきください。

初心者向けエスキースの作り方 – 鉛筆画・デッサンの下絵作成法

 まず最初に、あなたの身の回りにあるA4サイズの紙を用意して、それを半分に切り、今回のあなたの作品の、正確な縮尺をかけたエスキースを作っていきましょう。

 もしも、きちんと測って構図基本線を入れるとすれば、その線をボールペンで引いておくと、鉛筆で何度でも試行錯誤できます。

 具体的には次の画像のような基本線を引くことから始めます。

鉛筆画・デッサンエスキースへの構図基本線の引き方

 まずはこのように、各種構図基本線を引きましょう。具体的な構図基本線の引き方は、この先で詳述します。

鉛筆画・デッサンエスキースの作成 – ステップバイステップガイド

 メモ描き程度の構想を練ることが終了しましたら、次はあなたが取り組む本制作に入る画面の縮尺をかけたエスキースの画面に、構図基本線を引きましょう。

 尚、あなたの気に入ったモチーフを、あなたの気に入ったレイアウトに据えて、あるいは構図上の不足する部分に他のモチーフを加えたり、「削除」「省略」「修整」「強調」「変形」「拡大」「縮小」して、エスキースを作ります。

効果的な鉛筆画・デッサンエスキースの構図分割基本線の使い方

 あなたが、本制作に入る画面の大きさをF10のスケッチブックのサイズで取り組むものとして、そのエスキースをA4の紙の正確に2つに切ったもので制作する場合には、次のようになります。

 F10の長辺は528mm・短辺が454mmであり、あなたが手元に用意したエスキースは、その短辺のサイズは148mmなので、F10の短辺のサイズ454mmで割ると、0.3259という数値が出ます。

 そして、F10の長辺は528mmなので、この長さに上記の縮尺(0.3259)をかければ、172.07となりますので、あなたのエスキースの長辺を172mmにすれば、本制作に入るF10を正確に縮尺したエスキースの土台ができるということです。

鉛筆画・デッサンのエスキースに長辺短辺の2等分割線と対角線を引く方法

 次に、上記画像のように、長辺短辺の2等分割線(③④)及び各対角線(①②)を引きます。

鉛筆画・デッサンのエスキースでの「抜け」の考え方

  • 黄色線:斜線2本と縦横の分割線
  • 青色線:黄金分割線
  • 緑色線:「抜け」を表す線

 絵画の制作では、外界へ抜ける部分を意図的に作ることがあります。今回の制作例では、上記画像の緑色線がその部分です。

 画面の左上の方にはこの「抜け」を作らずに、早朝の靄のようなトーンを使って、見てくださる人の視線を、植物の芽の成長を追って右上の「抜け」に導きます。この各種基本線は、2Bや3Bなどの柔らかい鉛筆の軽いタッチで描き込みます。

 この時筆圧を強く描き込んでしまうと、のちの工程で練り消しゴムでは消しきれなかったり、跡が残ってしまうので、そのためには筆圧をかけ過ぎず優しく引くことが必要です。

鉛筆画・デッサンの「抜け」の効果と応用

 画面上に「抜け」があることによる効果は、観てくださる人の息苦しさを解消できます。それは、意識がその「抜け」の先にある外界のひらけた空間に向けられて、解放感を与えられるからです。

 この「抜け」とは、作品によっては窓などを作って外界への「抜け」を作ることもできます。また、その効果は、心象風景以外のどのジャンル(花・人物・静物・動物・風景)にも応用できます。

鉛筆画・デッサン全体の画面レイアウトを考える

  • 黄色線:斜線2本と縦横の分割線(①②③④)
  • 青色線:黄金分割線(⑤⑥⑦⑧)
  • 桃色線:観てくださる人の視線を誘導する方向を表す線(①と同じ方向)
  • 赤色線:地平線を表す線(⑦と同じ)

 そして、描き込んだ基本線の黄金分割の位置にモチーフを置きますが、この点につきましては順を追って説明していきます。

 また、この時に、作品によってはそれ以外のモチーフも検討して、各導線との交わり方や導線の導き方も同時に考えていきます。

 今回の制作例では、モチーフの主役は植物の芽であり、成長の過程をあらわす3つのモチーフで構成します。

 このモチーフ3つが何を意味するかといえば、3つ以上の同一のモチーフを用いることで、観てくださる人へ「リズム」を与えられるのです。

鉛筆画・デッサン中心点の扱い方 – 効果的なレイアウトテクニック

 絵画の制作上においては、意識的に中央にモチーフを配置する場合は別として、複数のモチーフで構成する画面には、できるだけ画面の寸法上の中心点を避けて制作しましょう。

 それは、画面の寸法上の中心点に、主役や準主役の中心を重ねてしまうと「動きが止まってしまう」からです。

 尚、意図的な制作例以外では、人物画や動物画などで、画面の中の面積を大きくとる必要があるときには、これらのことは該当しませんのでご安心ください。^^

鉛筆画・デッサンの基本線と下絵(エスキース)の整合性について

 今回の完成時のイメージは、画面左下の角Cから右上方の角Bへ抜けていく視線(前掲の桃色線の方向)を意識して、通っている斜線上に3つのモチーフを配置します。

 そして、画面上の構図の中心点となる「黄金分割」の位置に、この2つの特徴的なモチーフを配置します。また、地平線には画面縦の黄金分割線(⑦)をそのまま使います。

 さらに、樹木は主役の水滴を持った芽を一番目立たせるために、その背景に樹木の濃いトーンが来るように配置して、できる限り画面上の構図基本線という大きな力を持った線を有効に使うことを心がけて制作していきます。

 つまり、各構図基本線を使って、できるだけモチーフの位置・高さ・幅、あるいは中心点になるように考慮して画面構成を考えるということです。

視線を意識した鉛筆画・デッサン制作 – 視覚的アプローチ

 全体のレイアウトをおこないながら、最終的な主役の画面上の輝き加減も考慮して、地平線上の樹木の隙間の「抜け」といえどもわずかにトーンを入れることにします。

 そうすることで、黄金分割構図基本線⑥上にある主役の輝きを画面全体のモチーフの中で一番大きくして、主役を引き立てることができるからです。

 つまり、主役をカバーできる樹木の濃い色を持ってくる一方で、画面左上の角方向へは、3H~2Hのトーンで靄を演出します。また、抜けの部分には8H~9H程度のトーンを慎重に入れていきます。

鉛筆画・デッサンの画面構成で考えるべき点

 ここで肝心なのは、すべてのモチーフの中で主役や準主役以外のモチーフを細密描写し過ぎてしまうと、観てくださる人の注意をその部分に集中させてしまいます。

 そこで、主役や準主役以外のモチーフに注意が集中しすぎないように描き込むようにします。制作例であれば、画面左上奥の樹木群や一番手前右下の「タバコの吸い殻」は、細かく描き込みすぎないように注意しましょう。

 言ってみれば、意図的に手を抜くということになります。観てくださる人からすると、吸い殻を見て「これなあに?」というくらいが良いのです。

 良くわからない描写をすることで、さらに画面の中に引き込まれていきますし、やがて、その人は道端に落ちている吸い殻を見かけて、初めて気づくかもしれません。

 これらのことを、A4の半分のメモ程度の紙に、「描いては消し描いては消し」を繰り返して、いかにして基本線を有効に使ったレイアウトや充分な強調ができるかを考えて、エスキースを完成させます。

鉛筆画・デッサン本制作へのステップ – 画面サイズ測定の必要性

 スケッチブックのメーカーによっては、若干寸法が異なることがありますので、制作当初に実際のサイズを確認して正確な構図基本線を引きましょう。

 このことは、スケッチブック以外にも、例えばパネルに水張りをした画面で制作する場合のF100やそれ以上の大きさの画面にも共通して言えることです。

 あなたも制作を進める時には、実際に描き込む画面のサイズに合わせて構図基本線を引きましょう。これは最も重要な点です。

鉛筆画・デッサンの本制作における構図基本線の引き方

 実際に制作する画面に黄金分割構図基本線を引きます。

  •  黄色線:構図基本線(対角線①②、画面縦横の2分割線③④)
  •  青色線:黄金分割線(上下⑦⑧、左右⑤⑥、各2本…下記に詳述します)

黄金分割点(線)の設定 – 鉛筆画・デッサン本制作での応用

 次に、黄金分割構図基本線を引く際には、既成のF10で制作を進める場合、筆者の使っているF10のスケッチブックの大きさは長辺が528mmで短辺は454mmです。

 なので、例えば既成のF10で制作を進める場合には、短辺の454mm÷1.618=280.59mmになるので、280.5mmの位置が黄金比率の分割点になります。この分割点は、左右どちらからでも設定することができます(⑤⑥)。

 同じく、長辺の黄金比率を求めるならば、528mm÷1.618=326.32となり、326mmの位置が黄金比率の分割点(線)になります。この分割点は、上下どちらからでも設定することができます(⑦⑧)。

鉛筆画・デッサン本制作での構図基本線とモチーフの整合

  • 黄色線:斜線2本と縦横の分割線(①②③④)
  • 青色線:黄金分割線(⑤⑥⑦⑧)
  • 桃色線:観てくださる人の視線を誘導する方向を表す線(⑦と同じ方向)
  • 赤色線:地平線を表す線(⑦と同じ)

鉛筆画・デッサン本制作における描画プロセス

 構図基本線上に、先ほど制作したエスキースに基づいてレイアウトします。実際に描き始める際には、まず全体を大づかみでとらえて描き進んでいきます。

 細かいことはさておいて、2Bや3Bなどの柔らかい鉛筆を親指・人差し指・中指でつまむように軽く持ち、対象物全体の輪郭を大きく腕をうごかすように、優しいタッチで描いていきましょう。

 そして、この段階では、今後あなたの制作作品によっては、必要ならば長め・短めの定規やコンパスもどんどん使いましょう。フリーハンドで直線や曲線を描くことは、制作を続けていく中でゆっくりと慣れていけばよいのです。

エスキースを基にした鉛筆画・デッサン本制作の配置

  • 黄色線:斜線2本と縦横の分割線(①②③④)
  • 青色線:黄金分割線(⑤⑥⑦⑧)
  • 桃色線:観てくださる人の視線を誘導する方向を表す線(⑦と同じ方向)
  • 赤色線:地平線を表す線(⑦と同じ)

 モチーフを実際にレイアウトしますが、今回の「心象風景描画テクニックⅣ」では、上記の黄金分割構図基本線や3つのモチーフによるリズムを意識しながら、上の画像のような状態をイメージします。

 この制作例では、主役(⑥上の植物の芽)や準主役(⑤上の植物の芽)が、いかにそれらしく見えるかが一番重要なので、背景のモチーフに主役や準主役が目立つようにトーンを入れていきます。

 また、観てくださる人の視線を右上に誘導するために、左上の方向へは樹木を密集させると同時に、うすい靄のようなトーンを入れて視線を遮ります。

 一方で、画面右上の樹木の隙間には、8Hほどの薄いトーンを慎重に入れます。ここはある程度のトーンを入れておかなくては、主役の植物の芽の光輝いている部分を強調できないからです。

 また、画面右下の角には、タバコの吸い殻のフィルターがありますが、これは一番手前にあるフィルターが大きいことによって、画面全体の遠近感を演出できます。

 また、斜線上に乗せているのは、画面右下の外部への広がりも表しています。このように、あなたが、ふと視線を落とした僅かな地上のスペースにもドラマがあるのです。

鉛筆画・デッサンで他の作品を描く際のノウハウ

 作品の制作にあたっては、構図基本線を意識してレイアウトしますが、作品によって画面に納まりきれない部分は画面の外にハミ出てよいのです。あなたの描く画面には、あなたの必要とする部分だけを切り取って描きましょう。

 モチーフ全体を無理に画面に収めようとすれば、窮屈になってしまうからです。逆に、画面からハミ出ることによって、画面の外への広がりが表現できることになります。

 このことは、どの作品を描いていくうえでも言えることで重要なことなので記憶しておいてください。

 尚、画面最下部の底線CD上にモチーフを「乗っけた」ようにレイアウトすることは、重大な禁じ手なのでこれも覚えておきましょう。

鉛筆画・デッサン本制作での斜線の導線暗示の重要性

 今回の制作例では、画面右下の角Dには「タバコの吸い殻」を斜線②に乗せて、見てくださる人が左上の角に視線を向けると靄のかかったような状態です。

 また、木々の密集している景色も確認しますが、外界へ抜けていく部分がないので意識がその先へは及びません。

 一方、画面左下の角Cから斜線①は、大地から姿をわずかに表し始めている植物の芽から始まって、合計3つのモチーフが画面右上の角Bへ向かっています。

 そして、このうち「大地から双葉が抜け出ようとしている動き」「明るい外界に向かって展開し始めている状態」を、縦横の黄金分割線にかかるように配置します。また、地平線も黄金分割線⑦を活用します。

 さらに、重要な役割を担っている樹々は黄金分割線を活用した配置にしますが、重要ではない木々については、若干斜めにしたり薄く描いて空気遠近法も取り入れて、目立たせる部分と、そうではない部分のバランスを取ります。

 樹々は遠くなるほどに、薄く描くことによって、遠近感を表現できます。本記事冒頭の画像の左上にある樹々の部分で表現しています。また、樹々に限らず、あらゆるもので、この空気遠近法は活用できますので覚えておきましょう。

 そして、今回の制作例では、主役のモチーフを黄金分割構図基本線⑥上に配置して、水滴の中心や双葉の片方の中心を斜線①に乗せます。

鉛筆画・デッサンでにおける導線暗示の取り入れ方

 尚、あなたが作品を制作する際には、斜線が通っていることを画面上のレイアウトや、モチーフの凹凸なども含めて暗示しましょう。

 制作例では、「水滴」や「タバコの吸い殻」なども上手に使いこなせば充分役に立つことを示しています。

 場合によっては、この画面上の構図基本線などの暗示として、「枯葉の虫食い」などであっても、活用することができます。そして、この各種基本線は、2Bや3Bなどの柔らかい鉛筆の軽いタッチで描き込みます。

 この場合、筆圧を強く描き込んでしまうと、のちの工程で練り消しゴムでは消しきれなかったり、跡が残ってしまうので、そのためには筆圧をかけ過ぎず優しく描くことが必要です。

理想の画面を描く – 鉛筆画・デッサン本制作のアドバイス

  • 黄色線:斜線2本と縦横の分割線(①②③④)
  • 青色線:黄金分割線(⑤⑥⑦⑧)
  • 桃色線:観てくださる人の視線を誘導する方向を表す線(⑦と同じ方向)
  • 赤色線:地平線を表す線(⑦と同じ)

 尚、実際のモチーフの形状は構成上修整することもあります。これは、どの画家もほとんど行っていることで、デフォルメと呼ばれています。

 これらの構図基本線との重ね合わせは、構図の成り立ちを示すためでもあり、その暗示も含めて画面全体のバランスをとっているのです。

 デフォルメは、風景画の場合であれば、実際の景色には電柱や電線があっても、作者の意図する一番見映えのする画面にするために省略してしまうこともあります。

 それは、現存する制作対象物の状態に修整を加える事であり、「省略」「削除」「修整」「変形」「強調」「つけたし」「拡大」「縮小」など何でもアリです。つまり、「あなたの都合に合わせる」ということです。

鉛筆画本制作でのモチーフ配置と構図レイアウトの再考

  • 黄色線:斜線2本と縦横の分割線(①②③④)
  • 青色線:黄金分割線(⑤⑥⑦⑧)
  • 桃色線:観てくださる人の視線を誘導する方向を表す線(⑦と同じ方向)
  • 赤色線:地平線を表す線(⑦と同じ)

 最初に描き込んだ、全体の輪郭を取った際のたくさんの線を練り消しゴムで整理しますが、こののちトーンを入れていくところにある線はそのままにしておきましょう。

 なぜならば、そこへはこれからトーンを入れていくので消す必要がないからです。そして、モチーフにかかっている線や抜けの中にある線は消しておきましょう。

 仕上げに向かって、明るい部分にするところにある無駄な線は目立ってしまうので、必ず消しておく必要があります。

 また、練り消しゴムで消したところは、その後トーンを入れていくと、消していないところと比較すると鉛筆の乗り具合が少しだけ違ってくることがあります。そこで、できるだけ練り消しゴムで消す部分を少なくすることが必要です。

鉛筆画本制作の最終仕上げ – メリハリの重要性


        国展入選作品 誕生 2007-Ⅱ F130 鉛筆画 中山眞治

 練り消しゴムでたくさんの線を整理した後は、いよいよ各モチーフのレイアウト後の制作工程に入りますが、その際には一番暗いところからトーンを入れていきましょう。

 制作例の描き始めでは、黒さの際立つ樹は主役の背景にあるので、2Bから描き始めて、中心部分に様子を見ながら3B→4Bと濃くしていきます。

 そして、主役の植物の芽の足元部分にはHBで描き始め、奥の地表部分はHで描いていきます。また、画面右横の樹には、Bから描き進み、様子を見ながら中心に向かって2B→3Bと描き進めます。

 主役の背景の樹の左側の樹もBから描き進み、様子を見ながら中心に向かって2B→3Bと描き進みます。それ以外の樹々には、奥に行くに従ってトーンを弱くして、空気遠近法の効果を高めます。

鉛筆画仕上げにおける明暗差の強調方法

鉛筆画で光る部分の強調 – 隣接する黒の調整

 完成が近くなってきましたら、全体を観察してみて本来ハイライトであるべきところが、もう一つ明るくないこともあるでしょう。

 そうした場合には、その光っているべきところと隣接している部分や背景の黒さの度合いが足りていないことがあります。

 光をより光らしくしたい場合には、隣接する部分や背景をより濃い黒にすることで、まぶしく光っているべき部分を強調することができます。

 制作例で一番明るいところは、主役のモチーフの輪郭線部分と水滴です。つまり、一番明るいところは下地の紙の色ということです。

絵画鑑賞への招待 – アートの「ひらめき」を探す旅

 ところで、たまには絵を見に行きませんか。私の印象では、日展は「きれいなだけで個性的で野心的な作品は少ない」印象しかありません。

 おすすめは第一に国画会の展覧会である「国展(4月末~5月中旬)」、次いで独立美術協会の展覧会である「独立展(10月)」や、新制作協会の展覧会である「新制作展(9月下旬~10月上旬)」です。

 展覧会(全国公募展)へ行きましたら、細かな技法ばかりを見るのではなくて、作品から受けるあなたの印象が重要です。

 最初の内はよくわからなくても、あなたが強く惹かれた・感性に響いた作品の印象をあなたの作品にどう反映できるかを考えるのです。

 やがてそれが、緊張感の出し方や画面構成のバランスなどに発展させることができるでしょう。

 私は恥ずかしながら、抽象画がいまだによくわかりませんが、印象に残る具象画を見て帰ってくると、その印象を自分の作品に、どのように取り込むことができるかを考えるようにしています。

 そして、そっくりまねることはやめましょう。著作権がありますし、意味もありません。

 細かいところまでを全部取りこもうとするのではなく、構図などの大きな成り立ち及び配置や濃淡のつけ方、画面の持っている「新たな着想」などを取りこむようにするということなのです。

 もっと具体的に言えば、構図やデッサンは当然一番重要ではあり、充分観察が必要ですが、4隅(4つの角の周辺処理)をどのように充実させているかということがとても重要です。

参考情報

国展:第96回国展デジタル版 | 日本最大級の公募展。第96回国展web 版。 (kokuten.com)

独立展:独立展|第89回独立展 (dokuritsuten.com)

新制作展:2022年第85回新制作展 日程 | 新制作協会 (shinseisaku.net)

まとめ

 鉛筆画やデッサンにおける心象風景描画は、単なる技術以上のものです。それは、観てくださる人に感動を与え、描く者には無限の創造性を刺激する芸術形式です。

 本ガイドでは、初心者が基本を学び、上級者がさらに磨きをかけるためのさまざまなテクニックを提供しました。

 構想を練る重要性から、エスキースの必要性、構図の基本、具体的な制作プロセス、そして作品に命を吹き込む細かなヒントに至るまで、鉛筆だけで表現できる無限の可能性を探求してきました。

 筆者は、あなたがこのガイドを通じて新しい発見をし、自身だけのアート作品を創造する旅に出かけることを心から願っています。アートは旅です。終わりはありません。常に新しい発見があり、成長する機会があります。

 このガイドがあなたのアート制作の一部となり、素晴らしい作品が生まれることを楽しみにしています。何より、鉛筆とスケッチブックや紙を持って、心象風景の探求を楽しんでください。

 尚、この構図記事の他にも、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。

 それは、あなたの制作する画面全体を使って、さまざまな構図や発想を駆使することにより、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事も参照してください。

関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは

 ではまた!あなたの未来を応援しています。

コメント

  1. whoiscall より:

    Thanks.

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