鉛筆画・デッサンで初心者から上級者まで必見!静物描画ガイドⅣ

鉛筆画

 どうも。鉛筆画家の中山眞治です。寒い日が続きますが、樹木は既に新芽を膨らませ始めています。元気でお過ごしですか?^^

 さて、鉛筆画・デッサンの世界へようこそ!本ガイドは、静物描画の魅力を初心者から上級者まで幅広くご提供します。

 モチーフの選び方から構想の練り方、エスキースの作成、そして最終仕上げに至るまで、各ステップを丁寧に解説します。

 画面構成のコツや光と影の表現方法など、実践的なノウハウを豊富に盛り込みました。このガイドを通じて、あなたの鉛筆画・デッサンの技術を一段と深めましょう。

 それでは、早速どうぞ! 

  1. 【初心者向け】鉛筆画の基本:モチーフの選び方とは?
    1. 静物を描く鉛筆画・デッサンのメリット
    2. 鉛筆画・デッサンで描くべき最適なモチーフの見つけ方
  2. 鉛筆画・デッサン制作のための完全ガイド:着想の育て方
    1. 鉛筆画・デッサンのアイデア生成:初心者でも簡単な方法
    2. 鉛筆画・デッサンの構成目的を明確にするステップ
    3. 効果的な脇役の使い方:鉛筆画・デッサンに深みを加える
  3. 鉛筆画・デッサンの構想: 創造性を引き出す方法
    1. 競争に勝てる個性の発揮方法
    2. ブランディング構築の重要性
  4. 鉛筆画・デッサンの制作プロセス:ステップバイステップ
    1. 鉛筆画・デッサン制作の準備:初心者も安心のチェックリスト
    2. 鉛筆画・デッサンの構想:実践的な試行錯誤テクニック
    3. 鉛筆画・デッサンのエスキースと下絵作成のコツ
    4. 本制作での心構え
  5. 鉛筆画・デッサンでの下絵(エスキース)作成:基本線の描き方をマスター
    1. 鉛筆画・デッサンの構図基本線:エスキースへ縦横斜めの線の引き方
    2. √2の構図基本線の活用法:初心者でも簡単
    3. 鉛筆画・デッサンのレイアウト:全体的なバランスの考え方
    4. 「空白の効果」:鉛筆画・デッサンに深みを与える「抜け」の活用法
    5. 鉛筆画・デッサンの基本:エスキースと基本線の整合性の重要性
    6. 鑑賞者を魅了する鉛筆画・デッサン:視線を意識した制作テクニック
    7. 鉛筆画・デッサンの画面構成:美しい作品のための配慮点
  6. 鉛筆画・デッサンの描画サイズの選定と制作準備
  7. 鉛筆画・デッサンの本制作:構図基本線の引き方とポイント
    1. 鉛筆画・デッサンの基本:構図基本線の柔らかな描き方
    2. 効果的な構図分割:鉛筆画・デッサンにおける基本線の引き方
  8. 鉛筆画・デッサンの本制作:モチーフと構成の整合性
    1. 鉛筆画・デッサン制作の進め方:エスキースを基にした配置方法
    2. 鉛筆画制作の進め方:エスキースを基にした配置方法
    3. 鉛筆画・デッサンの画面制作ノウハウ:初心者でもわかる
    4. 効果的な画面構成:斜線を使った導線暗示の技法
    5. 創造性を活かす鉛筆画・デッサン:理想の画面を現実にする方法
    6. 鉛筆画・デッサンの初期ステップ:輪郭線の整理と構図の設定
    7. 鉛筆画・デッサン全体が整ってきましたらモチーフそれぞれの輪郭線を整理する
  9. 鉛筆画の仕上げ:明暗のコントラストを活かす
    1. 鉛筆画のメリハリ:最終仕上げのポイント
    2. 鉛筆画の光と影:映り込みを活用した表現方法
    3. デッサンのコツ:失敗を防ぐ方法とは?
    4. 鉛筆画・デッサンの精度向上:コンパスや定規の使い方
    5. 鉛筆画で光る部分の強調法:初心者向けの技法
    6. 鉛筆画・デッサンの中心点の扱い:慎重なアプローチ方法
  10. 鉛筆画・デッサンの学びを深める:絵画鑑賞のススメ
  11. まとめ

【初心者向け】鉛筆画の基本:モチーフの選び方とは?

静物を描く鉛筆画・デッサンのメリット

 静物画といえば、歴史上の海外の有名な画家は、セザンヌ、ゴッホ、マネ、ルノアール、シスレー、ピサロ、ゴーギャンなど、まだまだたくさんの有名な画家がいらっしゃいます。

 やはり、身近なモチーフで構図などを工夫して描くことができるとすれば、野外へスケッチに行く必要もないので天候にも左右されず、日照時間などの時間的な制約も受けないことが大きいのではないでしょうか。

 静物を使って、構図にそれぞれのモチーフをいかに構成していくかをじっくりと考えることは、室内で落ち着いて、時間を気にせずに取り組めるので、絵画の制作に没頭できる至福の時間を満喫できます。

鉛筆画・デッサンで描くべき最適なモチーフの見つけ方

 今回の筆者の制作例は、テーマの主体である構図に、①√2分割②逆三角形を意識して進みます。

 それは、構図基本分割線上に、それぞれのモチーフを落とし込んで制作するということであり、各種構図基本線に対して、何をどのように関連付けて描いていくかということを考えることでもあります。

 そして、あなたが今回の記事を参考にして制作する場合でも、主役・準主役及び全体のレイアウトはどうするかを決めていきましょう。

 尚、あなたが、私の制作例に使っていないモチーフで、同じような構図で制作しても何ら問題ありませんが、私の制作例をそのまま使うことは、著作権がありますのでできません。あしからずご承知おきください。

鉛筆画・デッサン制作のための完全ガイド:着想の育て方

鉛筆画・デッサンのアイデア生成:初心者でも簡単な方法

 暗闇に点(とも)る、ランプやロウソクの「灯(あかり)」というものは、ゆったり眺められて心が癒されるものです。

 また、キャンドルの炎や、キャンプなどでの焚火の炎などを静かに見ていると、くつろげる反面、真実や本心を語りたくなるような不思議な力があります。

 一方、たとえ灯(あかり)が点(とも)っていないランプであっても、見ていると何となく落ち着いた気持ちになるのは不思議なものです。それは、そこには本来明かりが点っているイメージができるからでしょう。

 そこで今回は、灯を点していないランプを使うことで、同時に構成する静物画の象徴とも言える石膏像の白さを際立たせて、くつろぎをイメージできるカップ&ソーサーも配置して画面構成することにします。

 このように、灯あるいは光を構図の中心に持ってくることで、画面構成をすることは、光と影の対比効果を最大限に高めることができますので、一度はあなたも是非挑戦してみてください。

 この、光を画面の構図上の中心とした構成を、シリーズ化するなんてのはどうですか?過去からの海外の著名な作家は、この劇的な効果でさまざまな傑作を作り出しています。

 代表的な作家には、レンブラント・マグリッド・カラヴァッジョ等たくさんいらっしゃいます。鉛筆画・デッサンはモノトーンの表現ですが、光と影の劇的な対比による作品にはもってこいなのです。この点をお忘れなく。

鉛筆画・デッサンの構成目的を明確にするステップ

 画面構成上、石膏像の白さを充分引き立てるためには、隣り合わせに濃い色が必要になります。

 そのためにも、石膏像の右側後ろ部分にはだんだんと濃い色を加えていき、光が左上から石膏像に差し込んでいる状態で全体を仕上げていきます。

 今回の制作例では、画面の各√2分割線上に石膏像とランプを配置して、画面手前の縦の中心線上にカップ&ソーサーを置いて逆三角形の構図を構成します。

効果的な脇役の使い方:鉛筆画・デッサンに深みを加える

 全体の構成では、見てくださる人に、完成した作品を見ることで「妙に落ち着く」ような感覚の静物画を目指します。また、スペースの関係もあり、今回の制作例では脇役を使わずにシンプルな構成とします。

 他の作品制作の場合では、脇役による影や小物を有効に使って空間表現したり、導線に活用したりしますが、今回はそれもありませんが「在室感」を高められるようにイメージして描き進みます。

鉛筆画・デッサンの構想: 創造性を引き出す方法

競争に勝てる個性の発揮方法

 あなたが、絵画の制作を趣味で終わらせるのであれば、これ以上のことは申し上げません。しかし、「展覧会・公募展などへも出品したい」ということであれば、競争に勝てなくては入選及び入賞はできません。

 そこで、あなたは、展覧会・公募展などでの入選及び入賞を目指すものとして、主役・準主役及びレイアウトはどうするかを決めていく際には、できるものであれば、あなた独自のテーマを考えてみましょう。

 例えば、寛ぎのひと時をシリーズ化、季節を象徴する花・果物・野菜で季節を表現、夜の街をシリーズ化、夕暮れ時を専門的に描くなど、あなた独自の視点の制作が必要になってきます。

 それは、あなたが描きたいと思える「テーマを発見する」ことであり、静物、人物、動物、風景すべてに言えることです。

 その専門的なテーマが、あなたのオリジナリティーとなり、他の画家たちとの差別化を図れるからです。ここは、いきなり大きな情報になりますが、あなたがこれから制作を進める際に、一番に考えるべき重要な点です。

ブランディング構築の重要性

 それが、あなた独自のブランディングの構築になるということです。「この作風の絵はあの人の作品だな」と思われるようになりましょう。やみくもに描くことは、意味が少なく、効果的な展開には結びつきません。

 どの上級者であっても、この部分は常に考え続けている点なので、早い段階から、あなたがこの点に気づいて検討を進めることは、重大な意味を持ちます。この点は、画家にとって一生考え続けていく部分だからです。

 このことをわかりやすく説明するならば、モネの「睡蓮シリーズ(250点以上)」などは、まさにこのことの実践なのです。尚、着想を得るためのヒントでは、次の記事も参照してください。

関連記事:鉛筆画・デッサンで初心者から中級者必見!複合した構図で心象風景を描く方法Ⅱ

鉛筆画・デッサンの制作プロセス:ステップバイステップ

鉛筆画・デッサン制作の準備:初心者も安心のチェックリスト

 最初に、あなたが手始めにすることは、次のようの順序です。また、できれば、あなたのリラックスできる落ち着いた音楽の用意と、部屋の中は心地よい温度や湿度に設定しましょう。

鉛筆画・デッサンの構想:実践的な試行錯誤テクニック

 まずは、あなたの身の回りにあるA4サイズの紙を用意して、それを正確に半分に切り、今回のあなたの作品のまずはメモ書き程度で自由に構想を練りましょう。

鉛筆画・デッサンのエスキースと下絵作成のコツ

 エスキースのサイズを実際に測って、構図分割線を入れていきます。この分割線の入れ方はこの先で詳述します。

 そして、構図基本線を入れるならば、その線はボールペンで入れておくと、そこへ鉛筆で描き込んでいけば何度でも試行錯誤できます。

 最終的に、あなたの気に入ったモチーフをあなたの気に入ったレイアウトに据えて、あるいは構図上の不足する部分を他のモチーフも加えて補うことにより、エスキースを完成させることができます。

本制作での心構え

 エスキースが実際の制作画面よりも小さい時には、拡大していくことになりますので、そのことを頭に入れて画面に向き合いましょう。多少の違いは本制作画面で修整するくらいの気持で取り組めば問題は少ないはずです。

鉛筆画・デッサンでの下絵(エスキース)作成:基本線の描き方をマスター

鉛筆画・デッサンの構図基本線:エスキースへ縦横斜めの線の引き方

 メモ書き程度の構想を練ることが終了しましたら、次はあなたが取り組む本制作に入る画面の縮尺をかけたエスキースの画面に、構図基本線を描き込みましょう。

 あなたが、本制作画面をF10のスケッチブックで取り組むとした場合は次の通りです。

 筆者のF10のスケッチブックのサイズの長辺は528mm・短辺が454mmなので、あなたが手元に用意した紙がA4の紙を2つに切ったものならば、短辺の縮尺は148mm÷454mmなので、0.3259という数値が出ます。

 F10の長辺は528mmなので、この長さに上記の縮尺(0.3259)をかければ、172.07となります。

 そこで、あなたの手元に用意した紙がA4の紙を2つに切ったものの長辺を172mmにすれば、あなたが本制作に入るF10を正確に縮尺したエスキースの土台ができます。

√2の構図基本線の活用法:初心者でも簡単

  • 黄色線:構図基本線(対角線・画面縦横の2分割線)
  • 青色線:√2分割線(上下左右の各2本)

 このエスキースの土台画面に、√2構図分割基本線を引く場合には、縦横共にそれぞれの長さ÷1.414で値を求めます(具体的な説明はこの先で行います)。

 この値を、画面横の場合であれば、上記画像のように左右からそれぞれ2つの分割点(線⑤⑥)を設定できます。縦の場合でも、上記画像のように上下からそれぞれ2つの分割点(線⑦⑧)を求められます。

 そして、上記画像のように、画面の縦横の2分割線(③④)と画面上の対角線(①②)を引くことによって、この黄金分割構図基本線は完成します。

鉛筆画・デッサンのレイアウト:全体的なバランスの考え方

  • 黄色線:構図基本線(対角線・画面縦横の2分割線)
  • 青色線:√2分割線(上下左右の各2本)
  • 桃色線:逆三角形の構図を表す線

 そして、描き込んだ基本線の√2分割の位置にモチーフを描き込んでいきますが、この点につきましても順を追ってご説明します。また、この時に、モチーフと各導線との交わり方や、導線の導き方も同時に考えます。

 今回の制作例では、モチーフの主役は、中心点右側の√2分割線⑥上にある石膏像であり、準主役は√2分割線⑤上にあるランプです。ご覧のように、カップ&ソーサーも準主役として石膏像とランプの前の中心線上に配置していきます。 

「空白の効果」:鉛筆画・デッサンに深みを与える「抜け」の活用法

 尚、作品によっては、画面上に窓や外界へ抜けていく部分を作ると、別の効果を期待できますので、今後の制作でも検討していきましょう(以降これを「抜け」と呼びます)。

 この「抜け」があることによる効果とは、見てくださる人の息苦しさを解消できます。

 それは、意識がその「抜け」の先にある外界のひらけた空間に向けられて、解放感を与えられるからです(参考例は記事最下部にある<鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは>を参照してください)。

 そして、その効果は静物以外のどのジャンル(花・人物・動物・風景・心象風景)にも応用できます。さらに、画面の中心点には、それぞれのモチーフがかからないように配置します。

 その理由は、画面の寸法上の中心点に、主役や準主役の中心点を重ねてしまうと、画面の動きを止めてしまうからです。

鉛筆画・デッサンの基本:エスキースと基本線の整合性の重要性

 今回の完成時のイメージは、各構図基本線を使ってモチーフの位置や高さ、あるいは中心点になるように画面構成を考えます。

 そして、主役のモチーフを√2分割構図基本線⑥上に石膏像の中心がくるように、また、準主役のランプも√2分割構図基本線⑤上に配置して、その2つのモチーフの前面の中心線上にカップ&ソーサーを置きます。

 また、各モチーフの配置は逆三角形になるように構成します。この場合、画面中心点を避けて配置することを忘れないようにします。

 尚、本制作画面へ実際に描き進む場合は、それぞれの基本線にかかるようにそれぞれのモチーフをデフォルメして配置していきましょう。

 つまり、導線にかかるように描きたくても高さの足りないモチーフは、意識的に導線にかかる高さにするということです。逆に縮めて使うこともできます。幅についても同じことです。「あなたの都合に合わせる」ということです。

鑑賞者を魅了する鉛筆画・デッサン:視線を意識した制作テクニック

 √2分割構図基本線⑥上にある主役の「石膏像」をより目立たせることができるように、それ以外のモチーフには濃いトーンを使うことで、より「石膏像」を引き立てることを意識します。

 そして、今回の制作例では、特に、石膏像に光が当たって、その光の反射をランプが受けている部分や、カップ&ソーサーのソーサーとスプーンがカップ本体に映り込んでいる部分などにもリアルな描写を心がけます。

 また、「石膏像」の陰影を強調することと、ランプやカップ&ソーサーをリアルに表現することが、作品全体の完成度を高めることにつながることを意識して、制作を進めます。

鉛筆画・デッサンの画面構成:美しい作品のための配慮点

 ここで肝心なのは、今回の制作例では、石膏像に当たっている光がランプやカップ&ソーサーにも反射しているので、全体に各モチーフを克明に描き込んでも、見てくださる人の視線は白く輝いている「石膏像」に集中しますので問題ありません。

 ただし、白く輝いている「石膏像」が充分に目立つためには、背後のトーンを思い切って濃くすることや、ランプやカップ&ソーサーへのトーンの入れ方にも注意が必要です。

 中途半端なトーンでは、「石膏像」が充分に目立たないということです。これらのことを、エスキースに「描いては消し描いては消し」を繰り返して、いかにして基本線を有効に使ったレイアウトや充分な強調ができるかを考えて完成させます。

 一方、今回の制作例以外では、すべてのモチーフの中で主役以外のモチーフを細密に描き込み過ぎてしまうと、見てくださる人の注意をその部分に集中させてしまいます。

 そこで、細密描写は主役や準主役だけと覚えておきましょう。あるいは、主役以外の個々のモチーフのハイライト部分には、薄くトーンを入れて目立たないようにすることで、主役や準主役を引き立てる方法もあります。

鉛筆画・デッサンの描画サイズの選定と制作準備

 スケッチブックのメーカーによっては、若干寸法が異なることがありますので、実際に鉛筆画・デッサンを制作する画面のサイズを確認して、正確な構図基本線を引きましょう。

 このことは、スケッチブック以外にも、例えばパネルに水張りをした画面で制作する場合のF100やそれ以上の大きさの画面にも共通して言えることです。

 あなたも制作を進める時には、実際に描き込む画面のサイズに合わせて構図基本線を引きましょう。これは最も重要な点です。

鉛筆画・デッサンの本制作:構図基本線の引き方とポイント

鉛筆画・デッサンの基本:構図基本線の柔らかな描き方

 この各種基本線は、2Bや3Bなどの柔らかい鉛筆の軽いタッチで描き込みます。

 この時筆圧を強く描き込んでしまうと、のちの工程で練り消しゴムでは消しきれなかったり、跡が残ってしまうので、そのためには筆圧をかけ過ぎず、優しく描くことが必要です。

効果的な構図分割:鉛筆画・デッサンにおける基本線の引き方

 既成のF10で制作を進める場合には、筆者の使っているF10のスケッチブックの大きさは長辺が528mmで短辺は454mmです。

 今回の制作例で、長辺の√2分割比率を求めるならば、528mm÷1.414=373.40となり、373mmの位置が√2分割点(線)になります。この分割点(線)は、左右どちらからでも設定することができます(⑦⑧)。

 また、短辺の長さは454mmなので、454mm÷1.414=321.07となりますので、321mmの位置が√2分割点になります。これは左右どちらからでも設定できます(⑤⑥)。

 尚、あなたの使うスケッチブックの大きさに合わせて、正確な分割点(線)を描き込みます。実際に測って描線することを忘れないようにしましょう。

鉛筆画・デッサンの本制作:モチーフと構成の整合性

  • 黄色線:構図基本線(対角線・画面縦横の2分割線)
  • 青色線:√2分割線(上下左右の各2本)
  • 桃色線:逆三角形の構図を表す線

鉛筆画・デッサン制作の進め方:エスキースを基にした配置方法

 構図基本線上に、先ほど制作したエスキースを落とし込んでレイアウトします。実際に描き始める際には、まず全体を大づかみでとらえて描き進んでいきます。

 細かいことはさておいて、2Bや3Bなどの柔らかい鉛筆を親指・人差し指・中指でつまむように軽く持ち、全体を優しいタッチで描いていきましょう。当初の輪郭線の描画では、大きく腕を振って描くような動作も必要です。

 そして、この段階では、今後あなたの制作作品によっては、必要ならば長め・短めの定規やコンパスもどんどん使いましょう。フリーハンドで直線や曲線を描くことは、制作を続けいく中でゆっくりと慣れていけばよいのです。

鉛筆画制作の進め方:エスキースを基にした配置方法

 モチーフを実際にレイアウトしますが、今回の「静物」では、√2分割構図基本線と逆三角形の構図を意識しながら、上の画像のような状態をイメージします。

鉛筆画・デッサンの画面制作ノウハウ:初心者でもわかる

 作品の制作にあたっては、構図基本線を意識してレイアウトしますが、作品によって画面に納まりきれない部分は画面の外にハミ出てよいのです。あなたの描く画面には、あなたの必要とする部分だけを切り取って描きましょう。

 それは、モチーフ全体を無理に画面に収めようとすれば、窮屈になってしまうからです。逆に、画面からハミ出ることによって、画面の外への広がりが表現できることになります。

 このことは、どの作品を描いていくうえでも言えることで重要なことなので記憶しておいてください。

 尚、画面最下部の底線(CD)上にモチーフを「乗っけた」ようにレイアウトすることは、重大な禁じ手なのでこれも覚えておきましょう。

効果的な画面構成:斜線を使った導線暗示の技法

 制作例では、画面左上の角Aからの斜線②は、ランプの上方部の角を抜けて石膏像の下部の角とコーヒーカップの持ち手をかすめ通り画面右下の角Dへ到達させます。

 また、画面右上からの斜線①は石膏像の帽子の角を通って、あごの先端から胸の頂点を通り、ランプの燃料タンクのフタの下から画面左下角のCへ到達しています。

 つまり、斜線が通っていることを画面上のレイアウトや、モチーフの凹凸なども含めて表現するということです。

 尚、作品によっては「水滴」や「枯葉の虫食い」なども上手に使いこなせられれば、導線に充分活用できることも記憶しておきましょう。

創造性を活かす鉛筆画・デッサン:理想の画面を現実にする方法

 絵画の制作では、実際のモチーフの形状を画面の構成上修整することがあります。これは、どの画家もほとんど行っていることでデフォルメと呼ばれており、鉛筆画・水彩画・油彩画・アクリル画等すべての制作技法について言えることです。

 デフォルメは、風景画の場合であれば、実際の景色には電柱や電線があっても、作者の意図する一番見映えのする画面にするために省略してしまうこともあります。

 それは、現存する状態に修整を加える事であり、「省略」「削除」「変形」「強調」「つけたし」「拡大」「縮小」など何でもアリです。

 尚、これらの構図基本線との重ね合わせは、構図の成り立ちを示すためでもあり、その暗示も含めて画面全体のバランスをとっているのです。

鉛筆画・デッサンの初期ステップ:輪郭線の整理と構図の設定

  • 黄色線:構図基本線(対角線・画面縦横の2分割線)
  • 青色線:√2分割線(上下左右の各2本)
  • 桃色線:逆三角形の構図を表す線

鉛筆画・デッサン全体が整ってきましたらモチーフそれぞれの輪郭線を整理する

 最初に描き込んだ、全体の輪郭を取った際のたくさんの線を練り消しゴムで整理しますが、こののちトーンを入れていくところにある線はそのままにしておきましょう。

 なぜならば、そこへはこれからトーンを入れていくので消す必要がないからです。そして、モチーフにかかっている線や抜けの中にある線は消しておきましょう。

 仕上げに向かって、明るい部分にするところにある無駄な線は目立ってしまうので、必ず消しておく必要があります。

 また、練り消しゴムで消したところは、その後トーンを入れていくと、消していないところと比較すると鉛筆の乗り具合が少しだけ違ってくることがあります。このため、できるだけ練り消しゴムで消す部分は少なくすることを心がけましょう。

鉛筆画の仕上げ:明暗のコントラストを活かす

        
    第2回個展出品作品 ランプのある静物 1999 F50 鉛筆画 中山眞治 

鉛筆画のメリハリ:最終仕上げのポイント

 練り消しゴムでたくさんの線を整理した後は、いよいよ各モチーフのレイアウト後の制作工程に入りますが、その際には、鉛筆の持ち方を「文字を書く持ち方に変えて」暗いところからトーンを入れていきましょう。

 制作例の描き始めでは、画面の縦の2分割したテーブルをBで、背景の壁は、画面左側はHBから描き進めて、石膏像の背後では2B→3B→4B→5B→6Bと全体の様子を見ながら徐々に濃くしていきます。

 画面縦の2分割をしたテーブル上の石膏像の後ろはやはり3B→4B→5B→6Bと、全体の様子を見ながら濃くしていきます。ここは石膏像の後ろの壁の濃さと合わせる必要があります。

鉛筆画の光と影:映り込みを活用した表現方法

 石膏像の胸の頂点の前のランプの持ち手には、石膏像と隣あっている持ち手の部分には光の反射を、そしてその持ち手の内側部分には濃いトーンを入れることを忘れずに行います。

 カップ&ソーサーのリアルな光と影及び反射には入念な描写を行いましょう。そして、テーブルに映り込んでいるそれぞれのモチーフの影の描写も重要です。

 影の中といえども、光っている部分があることと、より濃い影になっている部分があることを忘れてはいけません。

 今回の制作例では、最終的に様子を見ながら、一番濃いトーンのところには9Bを使って仕上げています。各モチーフの接地面や石膏像の帽子の中の奥などです。

デッサンのコツ:失敗を防ぐ方法とは?

 これは、あまり大きな声では言いたくない話ですが、筆者の場合には、例えば構図基本線⑤上にあるランプについてですが、ランプの「ホヤ」の曲線部分の左右が同じように描けない場合どうしたらよいのか。

 あるいは、画面上のランプの持ち手やカップ&ソーサーの楕円形の左右の輪郭線がうまく描けない場合などには、まず定規を用意して、モチーフに中心線を薄く描き込みましょう。

 そして、うまく描けている側の線を中心線から測って、反対側の位置に鉛筆で点を打ちましょう。

 その方法で2~3cm間隔で同じように下へ点を打っていき、最後はその並んだ点を結べば描けます。尚、この場合、その点は強く打ち込んでしまうと後から消すのに苦労しますので、2Bや3Bの軟らかい鉛筆で、優しく点を打ちましょう。

鉛筆画・デッサンの精度向上:コンパスや定規の使い方

 絵画教室の先生方は、フリーハンドでの描線にこだわる人が多いので、こんな話を聞いたら「激怒もの」ですが、そんなことはどうでもよいのです。あなたが楽しく鉛筆画・デッサンを描くことができることが最優先事項です。

 今回の制作例の「テーブル」の奥のラインは、画面の分割中心線④を使い定規を使って描いています。また、丸いものはコンパスを使いましょう。

 私は作品によっては、「洗面器」を使って曲線を描いたこともあります。あなたも直線や円及び曲線を描くのに不安があるならば、躊躇なくこれらの道具を何でも使いましょう。

 ここで、コンパスを使う場合の注意点をお伝えしておきます。それは、コンパスの針を画面にできるだけ浅く刺して使うということです。深く刺して使った場合には、その穴を埋めるのに困ることがあるからです。

 そこで、場合によっては、画面上のコンパスの針を立てるところに、小さな板やプラスチック片を置くことによって、画面に穴をあけない使い方もできます。

 ただし、「激怒する先生」がそばにいる時にはやらないようにしましょう。^^そして、制作を繰り返していくうちにこれらの直線や円あるいは曲線などについても慣れます。制作経験が増えていけば、どなたでも描けるようになれます。

鉛筆画で光る部分の強調法:初心者向けの技法

 完成が近くなってきましたら、全体を観察してみて本来ハイライトであるべきところが、もう一つ明るくなくて、光っているように見えないこともあるでしょう。

 そうした場合には、その光っているべきところと隣接している部分や背景の黒さの度合いが足りていないことがあります。

 「光」をより「光」らしく見えるようにする場合には、隣接する部分や背景をより濃い黒にすることで、光るべき部分がより一層輝き出します。

 尚、制作例で一番明るいところは、当然ですが石膏像の一番明るいところになります。つまり、石膏像の一番明るいところは下地の紙の色ということです。

鉛筆画・デッサンの中心点の扱い:慎重なアプローチ方法

 制作例の寸法上の中心点は、石膏像の胸の頂点のすぐ左下の位置であり、中心点をわずかに避けています。

 意識的に中央にモチーフを配置する場合は別として、複数のモチーフで構成する画面では、できるだけ画面の寸法上の中心点を避けて制作しましょう。

 それは、画面の寸法上の中心点に、主役や準主役の中心点を重ねてしまうと「動きが止まってしまう」ので注意が必要なのです。

 しかし人物画や動物画など、画面上で大きく面積を使うモチーフの場合などでは中心点を避けることはできませんし、する必要もありませんのでご安心ください。^^

 尚、絵画制作上の中心点とは、構図導入による分割点を言いますのでお間違えなく。勿論、画面に大きな面積を使った肖像画などでは、中心と言われれば寸法上の中心点になりますが、一般的にはこのような認識なので覚えておきましょう。

鉛筆画・デッサンの学びを深める:絵画鑑賞のススメ

 ところで、たまには絵を見に行きませんか。筆者の印象では、日展は「きれいなだけで個性的で野心的な作品は少ない」記憶しかありません。

 おすすめは第一に国画会の展覧会である「国展(4月末~5月中旬)」、次いで独立美術協会の展覧会である「独立展(10月)」や、新制作協会の展覧会である「新制作展(9月下旬~10月上旬)」です。

 展覧会(全国公募展)へ行きましたら、細かな技法ばかりを見るのではなくて、作品から受けるあなたの印象が重要です。

 最初の内はよくわからなくても、あなたが強く惹かれた・感性に響いた作品の印象をあなたの作品にどう反映できるかを考えるのです。やがてそれが、緊張感の出し方や画面構成のバランスなどに発展させることができるでしょう。

 筆者は恥ずかしながら、抽象画がいまだによくわかりませんが、印象に残る具象画を見て帰ってくると、その印象を自分の作品に、どのように取り込むことができるかを考えるようにしています。

 しかし、そっくりまねることはやめましょう。細かいところまでを全部取りこもうとするのではなく、構図などの大きな成り立ち及び配置や濃淡のつけ方、画面の持っている「新たな着想」などを取りこむようにするということなのです。

 もっと具体的に言えば、構図やデッサンは当然一番重要ではありますが、4隅(4つの角の周辺処理)をどのように充実させているかということはとても重要です。

参考情報

国展:国展 (kokuten.com)

独立展:独立展|独立春季新人選抜展2024 (dokuritsuten.com)

新制作展:新制作協会 (shinseisaku.net)

まとめ

 この鉛筆画・デッサン静物描画ガイドを通じて、初心者から上級者までが静物画の魅力とテクニックを深く理解できたことでしょう。

 モチーフの選び方から始まり、具体的な構想の練り方、エスキースの作成方法、そして実際の制作プロセスと仕上げの技術に至るまで、鉛筆画の奥深い世界を一つ一つ探求してきました。

 画面構成や光と影の表現、メリハリのある仕上げ方など、静物描画において重要な要素を網羅的に学ぶことができたはずです。

 このガイドが、あなたの芸術的旅路の中で貴重な一部となり、今後の作品制作において大きな助けとなることを願っています。

 鉛筆画・デッサンは、練習と情熱があれば、どのレベルのアーティストにも無限の可能性を開く芸術形態です。

 このガイドが提供する知識と技術を用いて、あなた自身のスタイルを発展させ、静物描画の美しい世界をさらに探求してください。

 尚、この構図記事の他にも、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。

 それは、あなたの制作する画面全体を使って、さまざまな構図や発想を駆使することにより、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事も参照してください。

関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは

 ではまた!あなたの未来を応援しています。

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