鉛筆画・デッサンで初心者から上級者まで必見!心象風景描画ガイドⅢ

心象風景画の描き方

 どうも。鉛筆画家の中山眞治です。さて、夕日にイチョウの絨毯が映えて、きれいな光景がみられる時期になりました。元気でお過ごしですか?^^

 このガイドは、鉛筆画・デッサンの制作における心象風景の表現から始まり、作品制作の全工程を網羅しています。

 鉛筆画・デッサンの初心者から上級者までが学べる内容で、準備段階から構図の考え方、下絵の作成方法、本制作への移行方法を解説します。

 また、画面構成、モチーフの選定、最終的な仕上げに至るまでのテクニックを具体的に提供し、あなたが自身の作品をより一層引き立てる方法を学べます。

 尚、デッサンとは、3Dの立体を2Dの平面に再現する作業を指しますので、形を正確に写し取るための観察力と、光と影の扱いが非常に重要です。

 それでは、早速見ていきましょう!

  1. 心象風景の魅力と鉛筆画・デッサンでの表現法
  2. 鉛筆画・デッサンの完全マスターガイド:手順の確認
    1. 鉛筆画・デッサンの制作準備: 必要な手順とヒント
    2. 鉛筆画・デッサンでの構想の試行錯誤とメモの活用法
    3. エスキースを用いた鉛筆画・デッサンの構図作りのコツ
    4. 本制作に入る
  3. 鉛筆画・デッサン制作でのモチーフ選定のコツ
  4. 鉛筆画・デッサンの構想: 創造性を引き出す方法
    1. 鉛筆画・デッサン構成の戦略: 心遊ぶイメージの拡大による構想発展
    2. 競争に勝てる個性の発揮方法
    3. ブランディング構築の重要性
    4. 鉛筆画・デッサンの必需品: 画面構成のための資料集め
    5. 鉛筆画・デッサンの役割分担: 主役と脇役のバランス
  5. 鉛筆画・デッサンの下絵エスキース: 効果的な作り方
    1. 基本線の引き方: 鉛筆画・デッサンの下絵(エスキース)
    2. 鉛筆画・デッサンエスキースの作成: 身近な材料を使って制作
    3. エスキースの作成法: 正確な縮尺のエスキースの土台を作成
    4. エスキースの線分割法: 基本線の描画
    5. 鉛筆画・デッサンの「抜け」: 画面上の効果的な空間利用
    6. 鉛筆画・デッサンの「抜け」:鑑賞者への効果
    7. 鉛筆画・デッサンの画面全体のレイアウトを考える
    8. 鉛筆画・デッサンの中心点の扱いは慎重にしましょう
  6. 鉛筆画・デッサンの基本線とエスキース: 整合性の確保
    1. 視線を意識した鉛筆画・デッサン: 鑑賞者の視点
    2. 鉛筆画・デッサンの画面構成: 重要な配慮点
  7. 鉛筆画・デッサン本制作: 実際の制作画面サイズの測定
  8. 鉛筆画・デッサン本制作の描線技術: 効果的なアプローチ
    1. 黄金分割点: 鉛筆画・デッサン本制作の秘訣
    2. 鉛筆画・デッサン本制作画面の黄金分割点の求め方
    3. 鉛筆画・デッサン本制作: 構図基本線の効果的な活用
    4. 鉛筆画・デッサン本制作画面への描き進め方
    5. 鉛筆画・デッサン本制作画面へエスキースを元に配置しよう
    6. 鉛筆画・デッサンの他の作品を描く際のノウハウ
    7. 鉛筆画・デッサンでの効果的な導線暗示
    8. 理想の鉛筆画・デッサンを実現する: エスキースから本制作へ
  9. 鉛筆画・デッサン本制作: 構図とレイアウトの統合
    1. 鉛筆画の仕上げ: メリハリを意識する
  10. 鉛筆画・デッサンの光と影の対比技術: 明暗のコントラスト
    1. 鉛筆画の明るい部分の強調方法: 隣接する暗部に濃いトーンを入れる
  11. アートの鑑賞: 鉛筆画のインスピレーションを高める
    1. あなたにおすすめな公募展
    2. 感性に響いた作品のノウハウを吸収しよう
  12. まとめ

心象風景の魅力と鉛筆画・デッサンでの表現法

フィンセント・ファン・ゴッホ 星月夜 1889年(※)

 海外の心象風景の著名な画家の作品では、グレコ「聖マウリテレスの殉教」・ゴッホ「星月夜」・ピカソ「アビニョンの娘たち」等、それ以外にもたくさんの大御所の作品群があります。

 心象風景とは、作者の心の中に思い描いた景色であり、記憶及び感情や感覚によって生み出される想像上の風景です。

 つまり、あなたが描く自分自身の理想の風景であると言えますし、心の中で思い描くイメージやメッセージとも言いかえられます。

 あなたも、あなた自身の思い描くイメージをさまざまな画像を組み合わせて、且、鉛筆画・デッサンによる白と黒の劇的な組み合わせによる制作で、表現することが可能なのです。 

※ この星月夜には、星降る夜空が重要な役割を担っています。 ゴッホが星空を「死後の世界」の象徴として表現したのは、ヴィクトル・ユゴーやジュール・ヴェルヌといった作家への憧れに基づいていると言われています。

鉛筆画・デッサンの完全マスターガイド:手順の確認

鉛筆画・デッサンの制作準備: 必要な手順とヒント

 まず最初にあなたが手始めにすることは、次のようの順序です。また、できれば、あなたの落ち着くことのできる音楽の用意と、部屋の中は心地よい温度や湿度に設定しましょう。

 心地よい部屋の環境と、あなたのリラックスした姿勢と寛いだ心が、絵画の制作に没頭できる条件です。日常の慌ただしい現実から離れて、「心を遊ばせる」ことで、イメージが膨らみ、制作に集中できます。

鉛筆画・デッサンでの構想の試行錯誤とメモの活用法

 まずは、あなたの身の回りにあるA4サイズの紙を用意して、それを正確に半分に切り、エスキース(下絵)にします。今回のあなたの作品の、まずはメモ描き程度で自由に構想を練りましょう。

エスキースを用いた鉛筆画・デッサンの構図作りのコツ

 尚、このエスキースのサイズを実際に測って、構図分割線を入れていきます。そして、構図基本線を入れるならば、その線はボールペンで入れておくと、そこへ鉛筆で描き込んでいけば何度でも試行錯誤できます。

 最終的に、あなたの気に入ったモチーフをあなたの気に入ったレイアウトに据えて、あるいは構図上の不足する部分を他のモチーフも加えて補うことにより、エスキースを完成させることができます。

本制作に入る

 エスキースが実際の制作画面よりも小さい時には、拡大していくことになりますので、そのことを頭に入れて画面に向き合いましょう。多少の違いは本制作画面で修整するくらいの気持で取り組めば問題は少ないはずです。

鉛筆画・デッサン制作でのモチーフ選定のコツ

 今回の筆者の心象風景の制作例は、テーマの主体である構図に、①黄金分割(主役の位置)②曲線(地平線)③平行四辺形④三角形、(及び生と死の対比と躍動するイメージの強調)の構図を入れる予定で進みます。

 それは、構図基本分割線上に、それぞれのモチーフを落とし込んで制作するということであり、各種構図基本線の配置に対して、何をどのように描いていくかということを考えることでもあります。

 あなたが今回の記事を参考にして制作する場合でも、主役・準主役及び脇役や全体のレイアウトはどうするかを決めていきましょう。

 尚、あなたが私の制作例に使っていないモチーフで、同じような構図で制作しても何ら問題ありませんが、私の制作例をそのまま使うことは、著作権がありますのでできません。あしからずご承知おきください。 

鉛筆画・デッサンの構想: 創造性を引き出す方法

鉛筆画・デッサン構成の戦略: 心遊ぶイメージの拡大による構想発展

 筆者の今回の制作例は、以前からぼんやりと考えていた構想でした。

 それは、広々とした大地と空へ視界の広がりを感じる空間で、植物の芽がのびのびと育っていく、近くには蝶が飛び、遠景では鳥も飛んでいる。雲も沸き立って動いている。

 そして、これからタンポポの種が大地に到達して根を下ろそうとしている・発芽した芽がある・それらの対照的な死の象徴として、背景には枯葉がある。

 この、生と死の循環が連綿と繰り返される大地での営みや動きを、傍観者である「カエル」が見ているといったものです。

競争に勝てる個性の発揮方法

 あなたが、絵画の制作を趣味で終わらせるのであれば、これ以上のことは申し上げません。しかし、「展覧会・公募展などへも出品したい」ということであれば、競争に勝てなくては入選及び入賞はできません。

 そこで、あなたは、展覧会・公募展などでの入選及び入賞を目指すものとして、主役・準主役及びレイアウトはどうするかを決めていく際には、できるものであれば、あなた独自のテーマを考えてみましょう。

 例えば、寛ぎのひと時をシリーズ化、季節を象徴する花・果物・野菜で季節を表現、夜の街をシリーズ化、夕暮れ時を専門的に描くなど、あなた独自の視点の制作が必要になってきます。

 それは、あなたが描きたいと思える「テーマを発見する」ことであり、静物、人物、動物、風景すべてに言えることです。

 その専門的なテーマが、あなたのオリジナリティーとなり、他の画家たちとの差別化を図れるからです。ここは、いきなり大きな情報になりますが、あなたがこれから制作を進める際に、一番に考えるべき重要な点です。

ブランディング構築の重要性

 それが、あなた独自のブランディングの構築になるということです。「この作風の絵はあの人の作品だな」と思われるようになりましょう。やみくもに描くことは、意味が少なく、効果的な展開には結びつきません。

 どの上級者であっても、この部分は常に考え続けている点なので、早い段階から、あなたがこの点に気づいて検討を進めることは、重大な意味を持ちます。この点は、画家にとって一生考え続けていく部分だからです。

 このことをわかりやすく説明するならば、モネの「睡蓮シリーズ」などはまさにこのことの実践なのです。尚、着想を得るためのヒントでは、次の記事も参照してください。

関連記事:鉛筆画・デッサンで初心者から中級者必見!複合した構図で心象風景を描く方法Ⅱ

鉛筆画・デッサンの必需品: 画面構成のための資料集め

 そこで、その後何をしたかといえば、近所の図書館へ行き、幼児向けの絵本で「植物の発芽」という大きな画像付きの本を見つけました。その本を広げてみると、植物が発芽して双葉を広げている、ちょうど参考になる画像が見つかりました。

 さらに、カエル・タンポポの種・鳥・蝶・雲を集めた、それぞれの写真集を借りてきて、合成することにしたのです。

鉛筆画・デッサンの役割分担: 主役と脇役のバランス

 さらに、その躍動を強める主役の背景には、生とは真逆の対象である死の象徴として「枯葉」を置き、「生と死の対比」をすることによって、より生命の躍動感を強調します。

 今回の制作例では、できる限り「春の大地の息吹」を表現できるように工夫することにして、そこで必要になることは、鉛筆のトーンを効果的に使うと同時に、遠景の雲も効果的に使えるようにトーンの度合いなどを工夫します。

 そして、今回の制作例では、植物の芽が主役なので黄金分割線上に配置して、落下してくるタンポポの種・したたろうとしている双葉の水滴・枯葉の虫食い・丸い地平線との接点を結んで構成した平行四辺形の構図です。

 尚、地平線とは、俯瞰すれば曲線なので、水平ではなくて穏やかな曲線にすることによって、のびのびとした広がりを表現できます。

 また一方では、画面右下の角にいるカエルの視線によって導かれる、画面左上の角方向の遠景の鳥と、そこから降りてきた主役の双葉の足元、そして画面右上の蝶を結んだ逆三角形による構図も意識します。

鉛筆画・デッサンの下絵エスキース: 効果的な作り方

 まず最初に、あなたの身の回りにあるA4サイズの紙を用意して、それを半分に切り、今回のあなたの作品の、まずはメモ描き程度で自由に構想を練りましょう。

 フリーハンドや実際に測ってでも良いのですが、構図分割線を入れます。もしも、きちんと測って構図基本線を入れるならば、その線はボールペンで引いておくと、そこへ鉛筆で描き込んでいけば何度でも試行錯誤できます。

 最終的に、あなたの気に入ったモチーフをあなたの気に入ったレイアウトに据えて、あるいは作品によっては構図上の不足する部分に、他のモチーフも加えて補うことにより、エスキースを完成させることができます。

 具体的には次の画像のような基本線を引くことから始めます。

基本線の引き方: 鉛筆画・デッサンの下絵(エスキース)

 まずはこのように、各種構図基本線を引きましょう。

鉛筆画・デッサンエスキースの作成: 身近な材料を使って制作

 メモ描き程度の構想を練ることが終了しましたら、次はあなたが取り組む本制作に入る画面の縮尺をかけたエスキースの画面に、構図基本線を引きましょう。

 あなたが、本制作に入る画面の大きさをF10のスケッチブックのサイズで取り組むものとして、そのエスキースをA4の紙を正確に2つに切ったもので制作する場合には、次のようになります。

エスキースの作成法: 正確な縮尺のエスキースの土台を作成

 F10の長辺は528mm・短辺が454mmであり、あなたが手元に用意したエスキースは、その短辺のサイズは148mmなので、F10の短辺のサイズ454mmで割ると、0.3259という数値が出ます。

 そして、F10の長辺は528mmなので、この長さに上記の縮尺(0.3259)をかければ、172.07となりますので、あなたのエスキースの長辺を172mmにすれば、あなたが本制作に入るF10を正確に縮尺したエスキースの土台ができるということです。

エスキースの線分割法: 基本線の描画

 次に、上記画像のように、長辺短辺の2等分割線(③④)及び各対角線(①②)を引きます。

鉛筆画・デッサンの「抜け」: 画面上の効果的な空間利用

 絵画の制作では、外界へ抜ける部分を意図的に作ることがあります。

 今回の制作例では、曲線の地平線上にかかっているのは雲ですが、広々とした空を描き込みますので、部分的な外界へ抜ける空間を含みます(以降このことを「抜け」と呼びます)。

 作品によっては、画面上に窓や外界へ「抜け」ていく部分を作ると、見てくださる人の息苦しさを解消できます。それは、意識がその「抜け」の先にある外界のひらけた空間に向けられて、解放感を与えられるからです。

 具体的には、画面右上の角BからAB上の⑥を下に降りて、交点Fや交点Hを右に進み、BD上の交点を結んで「抜け」にするということです。

鉛筆画・デッサンの「抜け」:鑑賞者への効果

 このような縦横の黄金分割で区切った「抜け」を使った大胆な構図は、審査する人に強烈な印象を与えられます。

 そして、画面左側にも同じように使うことができますが、画面左上を使う場合には、「過去」を暗示することにもなります。画面右上を使った「抜け」は「未来」を暗示することになることも覚えておきましょう。

 また、本来画面の寸法上の中心点には、主役・準主役以外の中心点を重ねないようにしまが、今回の制作例では、広げた片方の葉の中心が画面の中心にかかっています。これは全体の構成上、意図的に配置したものです。

 尚、この「抜け」の効果は静物以外のどのジャンル(花・人物・動物・風景・心象風景)にも応用できます。この各種基本線は、2Bや3Bなどの柔らかい鉛筆の軽いタッチで描き込みます。

 この時筆圧を強く描き込んでしまうと、のちの工程で練り消しゴムでは消しきれなかったり、跡が残ってしまうので、そのためには筆圧をかけ過ぎず優しく引くことが必要です。

鉛筆画・デッサンの画面全体のレイアウトを考える

  • 黄色線:斜線2本と縦横の分割線
  • 青色線:黄金分割線
  • 赤色線:地平線
  • 桃色線:平行四辺形の構図を表す線
  • 緑色線:三角形の構図を表す線

 そして、描き込んだ基本線の黄金分割の位置にモチーフを置きますが、この点につきましては順を追って説明していきます。

 また、この時に、作品によってはそれ以外のモチーフも検討して、各導線との交わり方や導線の導き方も同時に考えていきます。

 今回の制作例では、モチーフの主役は植物の芽であり、空間を漂っているタンポポの種と枯葉が、生死の循環をあらわしている主要なテーマの表現部分です。

 そして、主役の背景に、そのモチーフを引き立てるために死のイメージの「枯葉」には、主役を引き立てるべく濃い色のトーンを入れていきます。

 また、曲線の地平線や平行四辺形のメインの構図と三角形の構図についても意識しながら描き込んでいきます。

鉛筆画・デッサンの中心点の扱いは慎重にしましょう

 制作例では、中心点部分に双葉の片側がかかっていますが、今回の制作例のように意識的に中央にモチーフを配置する場合は別として、複数のモチーフで構成する画面では、できるだけ画面の寸法上の中心点を避けて制作しましょう。

 そして、複数のモチーフなどで構成する画面においては、画面の寸法上の中心点に主役・準主役の中心点を重ねてしまうと「動きが止まってしまう」ので注意が必要です。

 尚、今回の制作例では、画面中心部分に片側の葉の中心点と重ねることにより、逆に画面全体の賑やかな動きを鎮める効果も狙っています。

 一方、意図的な制作例以外では、人物画や動物画などで、画面の中で制作面積を大きくとる必要があるときには、中心点を避けて制作することはできませんので、これらのことは該当しませんのでご安心ください。^^

鉛筆画・デッサンの基本線とエスキース: 整合性の確保

 今回の完成時のイメージは、画面左下の角Cから右上方の角Bへ抜けていく視線や、「カエル」の視線も意識しています。各構図基本線を使ってモチーフの位置・高さ・幅、あるいは中心点になるように考慮して画面構成を考えます。

視線を意識した鉛筆画・デッサン: 鑑賞者の視点

 全体のレイアウトをおこないながら、最終的な主役の画面上の輝き加減も考慮して、地平線上の雲群の中にある「抜け」といえどもわずかにトーンを入れることにします。

 そうすることで、黄金分割構図基本線⑤上にある主役の輝きを画面全体のモチーフの中で一番大きくすることで、主役をしっかりと引き立てることができるからです。

 そして、主役の背後の「大地」には、雲群を引き立てるために、主役の位置から地平線へ向かって、徐々にトーンを暗くしていきます。

 雲群にもトーンを淡く入れますが、この地平線に向かって徐々に濃くなる階調(グラデーション)によって、遠景の雲群も存在感を高められます。

鉛筆画・デッサンの画面構成: 重要な配慮点

 ここで肝心なのは、すべてのモチーフの中で主役・準主役以外のモチーフを細密に描き込み過ぎてしまうと、観てくださる人の視線をその部分に集中させてしまいます。

 そこで、主役・準主役以外のモチーフに視線が集中しすぎないように描き込みます。制作例であれば、鳥・蝶・枯葉は、細かく描きすぎないように注意します。

 もっと言えば、主役・準主役以外には、効果的に手を抜くということであり、何となくわかる程度でよいのです。あるいは、脇役などをある程度細かく描いた上からトーンを入れることで、目立たなくすることもできます。

 また、主役・準主役以外のモチーフに、細かな模様などがあった場合には、ありのまま細かく描いてしまわないで、省略する・大雑把に描く・光っている部分に淡くトーンを入れることなども考えてみて制作しましょう。

 これらのことを、A4の半分のメモ程度の紙に、「描いては消し描いては消し」を繰り返して、いかにして基本線を有効に使ったレイアウトや充分な強調ができるかを考えて、エスキースを完成させます。

鉛筆画・デッサン本制作: 実際の制作画面サイズの測定

 スケッチブックのメーカーによっては、若干寸法が異なることがありますので、制作当初に実際のサイズを確認して、正確な構図基本線を引きましょう。

 このことは、スケッチブック以外にも、例えばパネルに水張りをした画面で制作する場合のF100やそれ以上の大きさの画面にも共通して言えることです。

 あなたも制作を進める時には、実際に描き込む画面のサイズに合わせて構図基本線を引きましょう。これは最も重要な点です。

鉛筆画・デッサン本制作の描線技術: 効果的なアプローチ

黄金分割点: 鉛筆画・デッサン本制作の秘訣

 実際に制作する画面に黄金分割構図基本線を引きます。

  •  構図基本線(対角線①②、画面横の2分割線③、画面縦の2分割線④)
  •  黄金分割線(上下⑦⑧、左右⑤⑥、各2本…下記に詳述します)

鉛筆画・デッサン本制作画面の黄金分割点の求め方

 次に、黄金分割構図基本線を描く際には、既成のF10で制作を進める場合、筆者の使っているF10のスケッチブックの大きさは、長辺が528mmで短辺は454mmです。

 なので、例えば長辺の黄金比率を求めるならば、528mm÷1.618=326.32となり、326mmの位置が黄金比率の分割点になります。この分割点は、左右どちらからでも設定することができます(⑤⑥)。

 短辺も同じく、既成のF10で制作を進める場合には、454mm÷1.618=280.59mmになるので、280.5mmの位置が黄金比率の分割点になります。この分割点も、上下どちらからでも設定することができます(⑦⑧)。

鉛筆画・デッサン本制作: 構図基本線の効果的な活用

鉛筆画・デッサン本制作画面への描き進め方

 構図基本線上に、先ほど制作したエスキースに基づいてレイアウトします。実際に描き始める際には、まず全体を大づかみでとらえて描き進んでいきます。

 この場合において、先ほどF10を本制作画面とした場合の、正確な縮尺を施したエスキースに描いた内容を、主役・準主役の輪郭の主要な位置を測り、0,3259で割れば、F10の画面上の位置を特定できます。

 そして、細かいことはさておいて、2Bや3Bなどの柔らかい鉛筆を親指・人差し指・中指でつまむように軽く持ち、全体を優しいタッチで描いていきましょう。

 また、この段階では、今後あなたの制作作品によっては、必要ならば長め・短めの定規やコンパスもどんどん使いましょう。フリーハンドで直線や曲線を描くことには、制作を続けていく中でゆっくりと慣れていけばよいのです。

鉛筆画・デッサン本制作画面へエスキースを元に配置しよう

  • 黄色線:斜線2本と縦横の分割線
  • 青色線:黄金分割線
  • 赤色線:地平線
  • 桃色線:平行四辺形の構図を表す線
  • 緑色線:三角形の構図を表す線

 モチーフを実際にレイアウトしますが、題名にもある今回の「心象風景描画ガイドⅢ」では、上記の黄金分割構図基本線や平行四辺形の構図と三角の構図を意識しながら、上の画像のような状態をイメージします。

 この制作例では、主役がいかに主役らしく見えるかが一番重要なので、背景のモチーフに主役が目立つようにトーンを入れていきながら、一方では、地平線上部の雲群にも、主役を目立たせるためのトーンを淡く慎重に入れましょう。

 また、枯葉を選ぶ際には、複雑な曲がり方をしている枯葉を選ぶのはやめましょう。この作品のエスキースにある、どこにでもあるような枯葉でも良いでしょうし、虫食い部分は「あなたの都合の良いイメージ」で作ればよいのです。

鉛筆画・デッサンの他の作品を描く際のノウハウ

 作品の制作にあたっては、構図基本線を意識してレイアウトしますが、作品によって画面に納まりきれない部分は、画面の外にハミ出てよいのです。あなたの描く画面には、あなたの必要とする部分だけを切り取って描きましょう。

 それは、モチーフ全体を無理に画面に収めようとすれば、窮屈になってしまうからです。逆に、画面からハミ出ることによって、画面の外への広がりが表現できることになります。

 このことは、どの作品を描いていくうえでも言えることで重要なことなので記憶しておいてください。

 尚、画面最下部の底線CD上にモチーフを「乗っけた」ようにレイアウトすることは、重大な禁じ手なのでこれも覚えておきましょう。

鉛筆画・デッサンでの効果的な導線暗示

 今回の制作例では、主役のモチーフを黄金分割構図基本線⑤上に配置して、左側の葉のしたたろうとしている水滴の中心や、右側の双葉の先端を画面縦横の黄金分割点の交点F及び斜線①に乗せます。

 そして、あなたが作品を制作する際には、斜線が通っていることを画面上のレイアウトや、モチーフの凹凸なども含めて暗示しましょう。制作例では、「水滴」や「葉の虫食い」なども上手に使いこなせば充分役に立つことを示しています。

 また、前述していますが、今回の制作例では、植物の芽が主役なので黄金分割線⑤上に配置して、落下してくるタンポポの種・双葉の水滴・枯葉の虫食い・丸い地平線との接点を結んで構成した平行四辺形の構図です。

 一方では、画面右下の角にいるカエルの視線によって導かれる、画面左上の角方向の遠景の鳥と、そこから降りてきた主役の双葉の足元、そして画面右上の蝶を結んだ逆三角形によっても構図を構成します。

 尚、この各種基本線は、2Bや3Bなどの柔らかい鉛筆の軽いタッチで描き込みます。この時筆圧を強く描き込まないように注意しましょう。 

 それは、のちの工程で練り消しゴムでは消しきれなかったり、跡が残ってしまうので、そのためには筆圧をかけ過ぎず優しく描くことが必要です。  

理想の鉛筆画・デッサンを実現する: エスキースから本制作へ

  • 黄色線:斜線2本と縦横の分割線
  • 青色線:黄金分割線
  • 赤色線:地平線
  • 桃色線:平行四辺形の構図を表す線
  • 緑色線:三角の構図を表す線

 尚、実際のモチーフの形状は、構図の構成上修整することもあります。これは、どの画家もほとんど行っていることで、デフォルメと呼ばれています。

 これらの構図基本線との重ね合わせは、構図の成り立ちを示すためでもあり、その暗示も含めて画面全体のバランスをとっているのです。

 デフォルメは、風景画の場合であれば、実際の景色には電柱や電線があっても、作者の意図する一番見映えのする画面にするために省略してしまうこともあります。

 それは、現存する状態に修整を加える事であり、「省略」「削除」「変形」「強調」「つけたし」「拡大」「縮小」など何でもアリです。

鉛筆画・デッサン本制作: 構図とレイアウトの統合

  • 黄色線:斜線2本と縦横の分割線
  • 青色線:黄金分割線
  • 赤色線:地平線
  • 桃色線:平行四辺形の構図を表す線
  • 緑色線:三角形の構図を表す線

 最初に描き込んだ、全体の輪郭を取った際のたくさんの線を練り消しゴムで整理しますが、こののちトーンを入れていくところにある線はそのままにしておきましょう。

 なぜならば、そこへはこれからトーンを入れていくので消す必要がないからです。そして、モチーフにかかっている線や抜けの中にある線は消しておきましょう。

 仕上げに向かって、明るい部分にするところにある無駄な線は目立ってしまうので、必ず消しておく必要があります。

 尚、練り消しゴムで消したところは、その後トーンを入れていくと、消していないところと比較すると鉛筆の乗り具合が少しだけ違ってくることがあります。そこで、できるだけ練り消しゴムで消す部分を少なくすることが必要です。

鉛筆画の仕上げ: メリハリを意識する

              国展入選作 誕生2002-Ⅰ(大地の息吹) F100 中山眞治

 練り消しゴムでたくさんの線を整理した後は、いよいよ各モチーフのレイアウト後の制作工程に入りますが、その際には一番暗いところからトーンを入れていきましょう。

 制作例の描き始めでは、主役の植物の芽の足元部分にはHBで描き始め、その周辺はBで地平線に向かって、2B→3B→4B→5Bと、様子を見ながら描き込んでいきます。最終的に地平線の際(きわ)の部分には、6Bで描き込んでいます。

鉛筆画・デッサンの光と影の対比技術: 明暗のコントラスト

(画面に薄く映り込んでいるのは、筆者の個展開催時の来場客の影や、反対側の壁面にかかっている作品群です。)

鉛筆画の明るい部分の強調方法: 隣接する暗部に濃いトーンを入れる

 完成が近くなってきましたら、全体を観察してみて本来ハイライトであるべきところが、もう一つ明るくなくて、光っているように見えない場合があります。

 その場合には、その光っているべきところと隣接している部分や、背景のトーンの濃さの度合いが足りていない可能性があります。

 光をより光らしくする場合には、隣接する部分や背景をより濃い黒にすることで、光っているべき部分が輝きだします。

 尚、制作例で一番明るいところは、主役のモチーフの輪郭線部分と水滴です。つまり、一番明るいところは下地の紙の色ということです。

アートの鑑賞: 鉛筆画のインスピレーションを高める

あなたにおすすめな公募展

 ところで、たまには絵を観に行きませんか。私の印象では、日展は「きれいなだけで個性的で野心的な作品は少ない」記憶しかありません。

 おすすめは第一に国画会の展覧会である「国展(4月末~5月中旬)」、次いで独立美術協会の展覧会である「独立展(10月)」や、新制作協会の展覧会である「新制作展(9月下旬~10月上旬)」です。

 展覧会(全国公募展)へ行きましたら、細かな技法ばかりを見るのではなくて、作品から受けるあなたの印象が重要です。

 最初の内はよくわからなくても、あなたが強く惹かれた・感性に響いた作品の印象をあなたの作品にどう反映できるかを考えるのです。

 やがてそれが、緊張感の出し方や画面構成のバランスなどに発展させることができるでしょう。

参考情報

国展:国展 (kokuten.com)

独立展:独立展 (dokuritsuten.com)

新制作展:2023年 第86回新制作展 展覧会の記録 ~開催時の動画等~ | 新制作協会 (shinseisaku.net)

感性に響いた作品のノウハウを吸収しよう

 具体的には、あなたの感性に響いた作品の中の、主役や準主役のモチーフ・構成・構図・主役や準主役の強調の仕方・光と影の取り入れ方・独創的な構成やアイデア、などを確認するということです。

 尚、その内容を帰ってきて、そっくり真似をするのではなく、あなたの考える別のモチーフで、あなた流の「ひとひねり」を加えて仕上げるということです。

 私は恥ずかしながら、抽象画がいまだによくわかりませんが、印象に残る具象画を見て帰ってくると、その印象を自身の作品に、どのように取り込むことができるかを考えるようにしています。

まとめ

 このブログでは、鉛筆画の制作における全工程を詳細に解説しています。初心者から上級者まで、どのレベルの芸術家にも役立つ内容が満載です。

 心象風景の捉え方から始まり、鉛筆画の制作準備、構想の練り方、構図の基本線設定、そして本制作への進行方法に至るまで、各ステップを丁寧にガイドします。

 さらに、モチーフの選定のあり方、構図の検討手法、エスキースの作成方法、正確な画面サイズの測定が必要な理由、描線技術、最終的な仕上げに関するアドバイスまで、鉛筆画・デッサン制作の隅々まで触れています。

 読者はこれらのガイドを通じて、自身の作品をより魅力的に、そして技術的に洗練されたものにする方法を学べます。また、展覧会などでの絵画鑑賞の重要性についても触れ、芸術への理解を深めるためのアドバイスも提供しています。

 このブログは、鉛筆画・デッサンの技術を磨きたいと考えるすべての人にとって、必読のリソースとなるでしょう。

 尚、この構図記事の他にも、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。

 それは、あなたの制作する画面全体を使って、さまざまな構図や発想を駆使することにより、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事も参照してください。

関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは

ではまた!あなたの未来を応援しています。

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