どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
さて、鉛筆画・デッサンの魅力は、シンプルな道具で無限の創造を実現できることにあります。
この記事では、初心者の人から上級者の人までが学べる、鉛筆画・デッサンの基本技法から応用技術、特に美しいスズランの描画法を、わかりやすく解説します。
そして、あなたのアートワークに新たな息吹をもたらし、表現の幅を広げるためのヒントやインスピレーションをご提供します。
それでは、早速見ていきましょう!
- 花の絵を描く名画家たち: 花の魅力を伝えるアートの巨匠
- 鉛筆画・デッサンの基礎: 初心者から上級者までの完全ガイド
- 鉛筆画・デッサンの構想の練り方: 創造性を高めるテクニック
- インスピレーションを形に – 鉛筆画・デッサンで表現する独創力
- 効果的な鉛筆画・デッサンでの下絵の作り方: エスキースの基本
- 鉛筆画・デッサンでのレイアウト計画: 画面全体のバランスを考える
- 鉛筆画・デッサンでのサイズ測定: 本制作における前準備
- 鉛筆画・デッサン本制作のための構図と整合: モチーフと構成の調和
- 鉛筆画・デッサンの仕上げにおけるメリハリの重要性: 最終的なアクセントのつけ方
- 絵画鑑賞のススメ: アートからインスピレーションを得る
- まとめ
花の絵を描く名画家たち: 花の魅力を伝えるアートの巨匠
海外の花の絵の著名な画家では、ルノワール・ラトゥール・マネ・セザンヌ・ルドン・ゴッホ・ルソー・モネ等々、それ以外にもたくさんの大御所がいらっしゃいます。
花の絵は、手がけられる方が非常に多い画題です。カラフルな絵具を使って描くことが多いと思います。
しかし、このガイドは鉛筆画やデッサンであり、光と影(白と黒)によって制作しますので、今回のモチーフのような白くてかわいらしい花は、取り組みやすい画題であると言えます。
尚、日本のすずらんの花言葉は、「再び幸せが訪れる・幸せの再来・純粋」などです。恋人や家族、友人など愛する人にプレゼントしたい花言葉ですね。^^
ちなみに、花言葉は国によって異なっており、英語圏では「再び幸せが訪れる・母性」などがあるようです。そして、フランスでは「幸せな再会」・「喜び」・「愛する喜び」などの花言葉をスズランは持っています。
あなたも、あなた自身の思い描くイメージを、鉛筆画やデッサンの光と影よる劇的な対比によって、印象に残る花の絵を制作することができます。
参考:アート名画館 公式ブログ いろんな画家が描いた「花」
いろんな画家が描いた「花」 | アート名画館 公式ブログ (shop-pro.jp)
鉛筆画・デッサンの基礎: 初心者から上級者までの完全ガイド
鉛筆画・デッサンを始める前の準備: 必要な材料と心構え
最初に、あなたが手始めにすることは、次のような順序です。また、できれば、あなたのリラックスできる静かな音楽の用意と、部屋の中は心地よい温度や湿度に設定しましょう。
鉛筆画・デッサンのアイデアを形にする: 効果的な構想の磨き方
まずは、あなたの身の回りにあるA4サイズの紙を用意して、それを正確に半分に切り、今回のあなたの作品のまずはメモ描き程度で自由に構想を練りましょう。私の場合には、この段階では着想の整理程度で完了します。
鉛筆画・デッサンのエスキース作成法: 効果的な構図分割基本線の引き方
次に、下絵(エスキース)のサイズを実際に測って、構図分割基本線を入れていきます。そして、構図分割基本線を入れるならば、その線はボールペンで入れておくと、そこへ鉛筆で描き込んでいけば何度でも試行錯誤できます。
尚、ここで用意したA4サイズの紙を正確に半分に切ったものを、エスキースとして使うことも充分可能です。
最終的に、あなたの気に入ったモチーフをあなたの気に入ったレイアウトに据えて、あるいは構図上の不足する部分に他のモチーフを加えたり、「削除」「省略」「修整」「強調」「変形」「拡大」「縮小」して補うことにより、エスキースを完成させることができます。
鉛筆画・デッサン制作への道: 本制作に移る前の準備
エスキースが実際の制作画面よりも小さい時には、拡大することになりますので、そのことを頭に入れて画面に向き合いましょう。多少の違いは、本制作画面で修整するくらいの気持で取り組めば問題は少ないはずです。
鉛筆画・デッサンの構想の練り方: 創造性を高めるテクニック
第2回個展出品作品 君の名は? 2000 F30 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画・デッサンのアイデア出し|構想の練り方
あなたが初心者の場合には、まだこの点に注意を払わなくても良いのですが、その先の道のりを知っておく必要もあるでしょう。
つまり、あなたが各種展覧会や公募展へ出品する際には、ただ単にモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。つまり、入選するということは、競合他者に勝てなくては入選できないということです。その内容は以下に続きます。
観察とイマジネーションのバランス
初心者の人は楽しく描くことに専念することが重要
静物画を描く上で、実際のモチーフを観察することは非常に重要ですが、それに頼りすぎることなく、自身の内面から湧きあがるイメージを大切にすることも必要です。
観察によって得られるリアリズム(写実)と、あなたのイマジネーション(想像)によって生まれる構成のバランスを見つけることも、鉛筆画やデッサンで静物を描く重要なポイントです。
しかし、初心者の人は、描き始めでは、構図や構成など何も考えずに5~10作品くらいまでは、楽しく描くことだけに重点を置いて制作することを心がけましょう。
中級者以上の人には構想力や画面構成が必要な理由
中級者以上の人では、何となく描いているような絵、あるいは構図や構成を考えていない絵や、モチーフだけ上手に描いた絵では、観てくださる人及び展覧会や公募展で審査してくださる人の支持を得られません。
それは、あなたが中級者以上になり、あなたの作品を見てくださる人に感動を与えることができて、各種展覧会や公募展へも出品することを望む場合には、あなた独自の視点や独創性が必要なのです。
競合他者に差をつけるノウハウとは
制作以前にしっかりと構想を練り、画面全体を使い切って、構図や構成及び、あなたの制作する作品の主役や準主役が、最高に引き立てられる仕上がりを常に意識することが重要だということです。
あなたが、この点に早い段階から気付いて取り組むことは、重大な意味を持ちます。つまり、競合他者に圧倒的な差をつけられるノウハウがここにあります。
また、折角作品を描く以上は、作品にも展覧会や公募展での入選という「日の目」を見せてあげてください。あなた自身にも励みになることをお約束します。その励みを得られ続けることが、プロ画家になるための秘訣と言っても過言ではありません。
インスピレーションを形に – 鉛筆画・デッサンで表現する独創力
水滴Ⅶ 2019 F3 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画及びデッサンは、アーティストのインスピレーション(ひらめき)を形にする強力なツールです。本章では、独創力を最大限に引き出す鉛筆画やデッサンテクニックを紹介します。
インスピレーションの見つけ方
創造的な鉛筆画やデッサンを始める前には、インスピレーションを得ることが重要です。自然、日常生活、他者の作品など、周囲の環境からインスピレーションを得る方法を探りましょう。
また、異なるアートスタイルや、過去の著名な作家の作品を研究することも、新たなアイデアを生み出す源になります。この部分では、次の関連記事も参考になるはずです。
関連記事:鉛筆画・デッサンで初心者から中級者まで必見!複合した構図で心象風景を描く方法Ⅱ
クリエイティブな表現の追求
鉛筆画やデッサンで独創力を表現するには、伝統的な技法にとらわれず、自分なりのスタイルを開発することが重要です。
実験的な線の使い方、大胆な構図、独特の思い切った光と影の扱い方など、自分だけの表現を追求しましょう。このプロセスは、アーティストとしての個性を形成し、作品に独自性をもたらします。
鉛筆画・デッサンの計画: 構成の狙いを明確にする方法
スズランの花は、通常下を向いて咲いていますが、さまざまな方向を向いているスズランの花の中で、一つだけこちらを向いている小さな花を描くことで、(実際にはありませんが)花の視線を使って緊張感を出すことや、全体の描き方に遠近感を感じられるように意識して描くこともできます。
尚、この小さくてかわいらしいスズランの花を強調するためにも、モチーフの主役や準主役には特に背景に濃いトーンを使う一方で、モチーフ全体の外側にも濃いトーンを使い、劇的な印象を残すことを意識して制作していきます。
独創力の育み方と発展性
参考例:第1回個展出品作品 トルコ桔梗 1996 F6 鉛筆画 中山眞治
例えば、イメージしてみてください。
画面の中央に小ぶりなテーブルがあるとします。その上に黒光りする陶磁器の一輪挿しがあって、そこに真っ白な一輪の花が活けられている、画面左上から斜め右下へ窓からの光が落ちる中に、画面の横と縦の黄金分割のクロスする位置にその花の中央部を据えるとします。
その背景には、濃い色の鉛筆6B程度以上で背景を埋めるとすると、劇的な光と影の対比から、そのたった一輪の白い花が、鮮烈な鮮やかさを放つことができるはずです。
また、一輪挿しへの細密描写によって、写実を極めた描写の作品が仕上がるイメージを持てたのではないでしょうか。一輪挿しについては、上の画像のような雰囲気です。
こんな風にして、あなたが描きたいモチーフを、「いかにして描くか」を考えてください。この場合には、「何とか描くモチーフ及び構図や構成を考えなくてはならない」と考えてしまうと、修行のようで行き詰ってしまいます。^^
そうではなくて、あなたが描きたいモチーフをまず見つけて、そのモチーフを主役とした場合に、準主役や脇役を考え、たくさんある構図の中から、あなたが取り組みたい構図を選び出して当てはめて考えて行くとすれば、イメージが次から次へとあふれ出てくるはずです。
そうです。何が一番大切かというと、あなたの「自由に遊んでいる心が一番大切」なのです。そして、モチーフも次々と、静物・人物・動物・風景・心象風景などへ挑戦していきましょう。さまざまな経験が、あなたの技術をさらに高めていくステップになります。
この独創力開発の取り組みは、競合他者に決定的な差をつけられると同時に、あなたのブランディングに役立つ骨格と言っても良いくらいです。これらのハッキリとした画面構成の構築技術が、あなたのブランディングに役立ち、ひいては各種展覧会や公募展への入選を可能にします。
関連記事:鉛筆画・デッサンで差をつける:初心者から上級者までの制作構想の重要性とは?
鉛筆画・デッサンに必要な材料: 完璧な画面構成のための準備
そこで、その後何をすれば良いかといえば、図書館などでスズランの画像を入手しても良いでしょうし、ネットから無料の画像やスクリーンショットした画像を集めて、自由にレイアウトするのでも良いでしょう。
前掲の「君の名は?」の制作例では、単に花のアップでは意味がないと考えたので、直立する葉の画像や斜めに伸びた葉の画像も使って構成しています。
これは、実際の角度と違う葉を意図する角度に変えていますし、右下の葉の高さなども実際にはもっと丈の高かったものを都合の良い高さに変えています。
尚、あなたが制作した作品をネットなどにアップする場合に、元になっている画像も同時にアップするとなると「著作権」に抵触することが考えられますので、安全を考えて「無料の画像」やご自身で撮影した画像などを使いましょう。
鉛筆画・デッサンでで物語を描く: 主役と脇役のバランスの取り方
今回の制作例では、スズランの花をさまざまな方向へ向けつつ、正面を向いている花の画像を主役として、準主役の花も目立つ位置の黄金分割点に据えますが、正面には向けずに主役を引き立てます。
そして、主役と準主役以外にはトーンを入れて目立たないように描き込みます。また、遠近感を強調するためにも、主役と準主役の下の花々は、徐々にやや大きく描き、トーンも濃くしてして描き進みます。
鉛筆画・デッサンのテーマとモチーフの選び方: 強調したいメッセージを決定する
今回の筆者のスズランの制作例では、テーマの主体である構図は、次の通りです。
①正面を向いている主役の花を画面横の黄金分割線上に配置②準主役の花は画面横と縦の黄金分割点を中心に配置しても正面を向かせない③(モチーフの大きさで遠近感を出す)、を入れる予定で進みます。
それは、構図基本分割線上に、それぞれのモチーフを落とし込んで制作するということであり、各種構図分割基本線の配置に対して、何をどのように描いていくかを考えることでもあります。
あなたが、今回の記事を参考にして制作する場合でも、主役・準主役及び脇役や全体のレイアウトはどうするかを事前に決めましょう。
尚、あなたが私の制作例に使っていないモチーフで、同じような構図で制作しても何ら問題ありませんが、私の制作例をそのまま使うことは、著作権がありますのでできません。あしからずご承知おきください。
効果的な鉛筆画・デッサンでの下絵の作り方: エスキースの基本
まず最初に、あなたの身の回りにあるA4サイズの紙を用意して、それを半分に切り、今回のあなたの作品の、まずはメモ描き程度で自由に構想を練りましょう。
フリーハンドや実際に測ってでも良いのですが、構図分割線を入れます。もしも、きちんと測って構図分割基本線を入れるならば、その線はボールペンで引いておくと、そこへ鉛筆で描き込んでいけば何度でも試行錯誤できます。
最終的に、あなたの気に入ったモチーフをあなたの気に入ったレイアウトに据えて、あるいは作品によっては構図上の不足する部分に他のモチーフも加えて補うことにより、エスキースを完成させることができます。
具体的には次の画像のような基本線を引くことから始めます。
鉛筆画・デッサンのエスキースに基本線を加える: 画面構成のコツ
まずはこのように、各種構図基本線を引きますが、具体的な分割点の割り出し方は順を追って記載していきます。
鉛筆画・デッサンでのエスキース作成プロセス: 完璧な下絵のためのステップ
メモ描き程度の構想を練ることが終了しましたら、次はあなたが取り組む本制作に入る画面の縮尺をかけたエスキースの画面に、構図分割基本線を引きましょう。
そして、あなたが、本制作に入る画面の大きさをF10のスケッチブックのサイズで取り組むものとして、そのエスキースをA4の紙の正確に2つに切ったもので制作する場合には、次のようになります。
尚、当初大雑把に取り組む際の、構想を練る際に使用する紙を、あなたが取り組む本制作画面の縮尺をしたもので取り組む際には、そのまま正式な下絵(エスキース)として使うこともできます。
効果的な鉛筆画・デッサンでのエスキース: 構図分割基本線の活用法
F10の長辺は528mm・短辺が454mmであり、あなたが手元に用意したエスキースは、その短辺のサイズは148mmなので、F10の短辺のサイズ454mmで割ると、0.3259という数値が出ます。
そして、F10の長辺は528mmなので、この長さに上記の縮尺(0.3259)をかければ、172.07となりますので、あなたのエスキースの長辺を172mmにすれば、あなたが本制作に入るF10を正確に縮尺したエスキースの土台ができるということです。
もっとわかりやすく説明するならば、F10の短辺をエスキースの短辺のサイズに縮小して、その際の縮尺に合わせて、エスキースの長辺の長さも決められるということです。
鉛筆画・デッサンでのエスキースにおける線の引き方: 2等分割線と対角線の重要性
次に、上の画像のように、長辺短辺の2等分割線(③④)及び各対角線(①②)を引きます。
鉛筆画・デッサンで「抜け」の効果をマスターする: 画面の空間感を高める
絵画の制作では、外界へ抜ける部分を意図的に作ることがあります。
今回の制作例には設定していませんが、窓を模した「抜け」を作る場合などであれば、観てくださる人の視野に外界へ抜けるイメージから解放感を与えられます。この各種基本線は、2Bや3Bなどの柔らかい鉛筆で、軽いタッチで描き込みます。
この時に、筆圧を強く描き込んでしまうと、のちの工程で練り消しゴムでは消しきれなかったり、画面上のくぼみとなって残ってしまうので、そのためにも筆圧をかけ過ぎず優しく引くことが必要です。
鉛筆画・デッサンでにおける「抜け」の応用: さまざまな効果の活用方法
画面上に「抜け」があることによる効果は、見てくださる人の息苦しさを解消できますので、その効果は、花以外のどのジャンル(人物・静物・動物・風景・心象風景)にでも応用できます。
鉛筆画・デッサンでのレイアウト計画: 画面全体のバランスを考える
- 黄色線:画面の各斜線(①②)と縦横の2分割線(③④)
- 青色線:画面縦横の黄金分割線(⑤⑥⑦⑧)
そして、描き込んだ構図分割基本線の黄金分割の位置⑥に主役のモチーフを配置して、準主役のモチーフは構図分割基本線の⑤と⑦の交点を中心としますが、主役は正面を向き、準主役には正面を向かせないことで主役を引き立てます。
この点につきましては、順を追って説明していきます。また、他の作品の制作時の場合でも、このタイミングでそれ以外のモチーフも検討して、各導線との交わり方や導線の導き方も同時に考えていきます。
鉛筆画・デッサンにおける中心点の扱い方: 効果的な焦点の設定
今回の制作例では、主役のスズランの花の左側の枝のすぐ横あたりが画面の寸法上の中心点になっています。
絵画の制作においては、意識的に画面の寸法上の中央点へモチーフを配置する場合は別として、複数のモチーフで構成する画面には、できるだけ画面の寸法上の中心点を避けて制作しましょう。
それは、画面の寸法上の中心点に(主役・準主役などの)モチーフの中心を重ねてしまうと「動きが止まってしまう」からです。
尚、意図的な制作例の人物画や動物画などで、画面の中でモチーフの面積を大きくとる必要があるときには、これらのことは該当しませんのでご安心ください。^^
鉛筆画・デッサンでの基本線とエスキース: 整合性を保つ方法
今回の完成時のイメージは、観てくださる人の視線を画面右下の角D付近から真ん中の主役のモチーフを見ていきつつ、準主役を通って、画面左上部の角Aへとつながっていく導線を使います。
そして、主役と準主役の大きさよりも画面右下へ下がっていくにしたがってモチーフを大きくして遠近感を出します。
また、主役の下の花も画面の縦の黄金分割基本線⑧上に配置して、さらに、主役のモチーフの右側のスズランの葉の先端部分を縦の黄金分割基本線⑦上に置き、画面を落ち着かせます。
このように、画面上の構図分割基本線という大きな力を持った線を有効に使うことを心がけて制作します。
つまり、各構図基本線を使って、できるだけモチーフの位置・高さ・幅、あるいはモチーフの中心点になるように考慮して画面構成を考えるということです。
視線を引きつける鉛筆画・デッサンでの制作: 観る人を意識したアートの作り方
全体のレイアウトをおこないながら、最終的な主役の画面上の輝き加減も考慮する必要があります。主役のモチーフを輝かせたい場合には、画面全体はもちろんのこと、モチーフの背後や隣接する部分には特に濃いトーンを入れましょう。
鉛筆画・デッサンにおける画面構成のポイント: 考慮すべき重要な要素
ここで肝心なのは、すべてのモチーフの中で主役以外のモチーフを克明に描き込みすぎてしまうと、観てくださる人の注意をその部分に集中させてしまいます。そこで、主役や準主役以外のモチーフに注意が集中しすぎないように描き込むようにします。
制作例であれば、主役は構図分割基本線上にあって正面を向いていますが、準主役は縦横2つの黄金分割線の交点を中心としていながらも横を向いています。
それ以外の花は下を向いたり、左上に向いていたりしているので、実際には存在しませんが、視線を感じる花は主役の1つだけということになります。
このように、主役や準主役以外のモチーフには、細かく描き込みすぎないように注意しましょう。言ってみれば、意図的に手を抜くということになります。
これらのことを、A4の半分のエスキース(下絵)に、「描いては消し描いては消し」を繰り返して、いかにして基本線を有効に使ったレイアウトや充分な強調ができるかを考えて、エスキースを完成させます。
鉛筆画・デッサンでのサイズ測定: 本制作における前準備
スケッチブックのメーカーによっては、若干寸法が異なることがありますので、制作当初に実際のサイズを確認して正確な構図分割基本線を引きましょう。
このことは、スケッチブック以外にも、例えばパネルに水張りした画面で制作する場合のF100や、それ以上の大きさの画面にも共通していえることです。
あなたも制作を進める際には、実際に描き込む画面のサイズに合わせて構図分割基本線を引きましょう。これは最も重要な点です。
鉛筆画・デッサンでの構図分割基本線の引き方: 本制作への適用
F10のスケッチブックで描き進む場合に、それぞれの線についての説明は次の通りです。
- 黄色線:画面の各斜線(①②)と縦横の2分割線(③④)
- 青色線:画面縦横と上下の黄金分割線(⑤⑥⑦⑧)短辺の黄金比率を求めるならば、454mm÷1.618=280.5となり、280.5mmの位置が黄金分割点(線)になります。この分割点(線)は、左右どちらからでも設定することができます(⑤⑥)。
また、長辺の黄金比率を求めるのならば、528÷1.618mm=326.3mmとなるので、326mmの位 置が黄金比率の分割点(線)になります。この分割点(線)は、上下どちらからでも設定することができます(⑦⑧)。
- 桃色線:右側が主役、左側が準主役です
- 赤色線:水滴を導線に使っていることを示す線
- 緑色線:見てくださる人の視線を導く線
- 紫色線:構図基本線をモチーフの先端で暗示していることを示す線
鉛筆画・デッサン本制作のための構図と整合: モチーフと構成の調和
鉛筆画・デッサンの制作プロセス: エスキースから本制作への移行
構図分割基本線上に、先ほど制作したエスキースに基づいてレイアウトします。実際に描き始める際には、まず全体を大づかみでとらえて描き進んでいきます。
細かいことはさておいて、2Bや3Bなどの柔らかい鉛筆を親指・人差し指・中指でつまむように軽く持ち、全体を優しいタッチで描いていきましょう。
そして、この段階では、今後あなたの制作作品によっては、必要ならば長め・短めの定規やコンパスもどんどん使いましょう。フリーハンドで直線や曲線を描くことは、制作を続けていく中でゆっくりと慣れていけばよいのです。
尚、F10を正確に縮尺したエスキース上の、モチーフの主要な位置は、エスキース上の距離を先ほどの縮尺値0.3259で割れば、F10のスケッチブック上へ正確に再現できます。
鉛筆画・デッサン制作でのエスキースの活用: 効果的な配置のコツ
観てくださる人の視線を左上に誘導するために、画面右下の角D付近から出発した視線を斜線②に沿って導くためにも、視線の出発点D付近にあるスズランの花は大きめに描いて、主役と準主役に向かってだんだん小さく描いていきましょう。
また、視線の出発点付近にあるスズランの花には濃いめのトーンを入れ、主役や準主役に近づくにしたがって明るくしながら、主役と準主役を一番明るくなるように描き進みます。
鉛筆画・デッサン制作のノウハウ: 他の作品を描く際の技術
作品の制作にあたっては、構図分割基本線を意識してレイアウトしますが、作品によって画面に納まりきれない部分は画面の外にハミ出てよいのです。あなたの描く画面には、あなたの必要とする部分だけを切り取って描きましょう。
それは、モチーフ全体を無理に画面に収めようとすれば、窮屈になってしまうからです。逆に、画面からハミ出ることによって、画面の外への広がりが表現できることになります。
尚、画面最下部の底線CD上にモチーフを「乗っけた」ようにレイアウトすることは、重大な禁じ手なのでこれも覚えておきましょう。私はこれをやって叱られたことがあります。^^
鉛筆画・デッサンにおける斜線の導線暗示: 構成の深化
画面左上の角Aからの斜線②では、その角にほど近い場所で直立しているスズランの葉の水滴の中心を通り、スズランの枝の一番上の花の中心も通ってから準主役を抜けて、途中まで枝に沿って、やがて画面右下の角Dへ到達しています。
一方、画面右上の角Bからの斜線①は、スズランの葉のヘリの方向と同じように下り、画面左下のスズランの葉についている水滴の中心を通って画面左下の角Cへ到達させます。
鉛筆画・デッサンの導線暗示: 簡単な工夫で実現する方法
尚、あなたが作品を制作する際には、構図分割基本線や斜線が通っていることを画面上のレイアウトや、モチーフの凹凸なども含めて暗示しましょう。制作例では、水滴の中心点なども役に立つことを示しています。
場合によっては、この画面上の構図基本線などの位置を示す暗示として、「枯葉の虫食い」やモチーフの中心部分(壁掛け時計など)などであっても、活用することができます。
理想の鉛筆画・デッサンを目指して: 本制作画面の変換テクニック
尚、実際のモチーフの形状は、画面構成上修整することもあります。これは、どの画家もほとんど行っていることで、デフォルメと呼ばれています。
これらの構図分割基本線との重ね合わせは、構図の成り立ちを示すためでもあり、その暗示も含めて画面全体のバランスをとっているのです。
デフォルメは、風景画の場合であれば実際の景色には電柱や電線があっても、作者の意図する一番見映えのする画面にするために省略してしまうこともあります。
それは、既述していますが、現存する状態に修整を加える事であり、「省略」「削除」「修整」「変形」「強調」「つけたし」「拡大」「縮小」など何でもアリです。
鉛筆画・デッサン制作の構図とレイアウトの再考: モチーフの配置と線の整理
最初に描き込んだ、全体の輪郭を取った際のたくさんの線を練り消しゴムで整理しますが、こののちトーンを入れていくところにある線はそのままにしておきましょう。なぜならば、そこにはこれからトーンを入れていくので消す必要がないからです。
そして、モチーフにかかっている線や抜けの中にある線は消しておきましょう。仕上げに向かって、明るい部分にするところにある無駄な線は目立ってしまうので、必ず消しておく必要があります。
また、練り消しゴムで消したところは、その後トーンを入れていくと、消していないところと比較すると鉛筆の乗り具合が少しだけ違ってくることがあります。そこで、できるだけ練り消しゴムで消す部分を少なくすることが必要です。
鉛筆画・デッサンの仕上げにおけるメリハリの重要性: 最終的なアクセントのつけ方
練り消しゴムでたくさんの線を整理した後は、いよいよ各モチーフのレイアウト後の制作工程に入りますが、その際には一番暗いところから描き、その一つ明るい暗さの部分を描くというような順番で、トーンを入れていきましょう。
制作例の描き始めは、左側の葉の背景部分であり、5B→6Bです。右側の葉の背景の上下では3B→2B、主役の背景では6B→7Bを使っています。
尚、画面上の影だけを見てみると、同じトーンで描いていないことが分かるはずですが、このように変化をつけることで、画面に変化やメリハリが生まれることも意識しましょう。
鉛筆画・デッサンの明暗を強調する: 仕上げのコツ
完成が近くなってきましたら、全体を観察してみて本来ハイライトであるべきところが、もう一つ明るくなくて、光っているように見えない場合には、その光っているべきところと隣接している部分や背景の黒さの度合いが足りていない場合があります。
鉛筆画・デッサンにおける光の強調: 効果的な隣接する黒の活用
光をより光らしくする場合には、隣接する部分や背景をより濃い黒にすることで、まぶしく光っているべき部分を強調することができます。
制作例で一番明るいところは、主役のモチーフの花びら部分です。つまり、一番明るいところは下地の紙の色ということです。
絵画鑑賞のススメ: アートからインスピレーションを得る
絵画展訪問のおすすめ: 芸術への理解を深める
ところで、たまには絵を観に行きませんか。私の印象では、日展は「きれいなだけで個性的で野心的な作品は少ない」記憶しかありません。
おすすめは第一に国画会の展覧会である「国展(4月末~5月中旬)」、次いで独立美術協会の展覧会である「独立展(10月)」や、新制作協会の展覧会である「新制作展(9月下旬~10月上旬)」です。
展覧会(全国公募展等)へ行きましたら、細かな技法ばかりを見るのではなくて、作品から受けるあなたの印象が重要です。
最初の内はよくわからなくても、あなたが強く惹かれる・感性に響いた作品の印象をあなたの作品にどう反映できるかを考えるのです。
絵画鑑賞で大切なポイント: アートの要素を掴む方法
筆者は恥ずかしながら、抽象画がいまだによくわかりませんが、印象に残る具象画を観て帰宅すると、その印象を自分の作品に、どのように取り込むことができるかを考えるようにしています。
しかし、そっくりまねることはやめましょう。著作権がありますし、意味もありません。
細かいところまでを全部取りこもうとするのではなく、構図などの大きな成り立ち及び配置や濃淡のつけ方、画面の持っている「新たな着想」などを取り込むようにするということです。
もっと具体的に言えば、構図やデッサンは当然一番重要ではあり充分観察が必要ですが、あなたの感性に響いた作品の4隅(4つの角の周辺処理)は、どのように充実させているかということを研究することはとても重要です(今回の制作例ではこの件を如実に表していると言えます)。
参考情報
国展:第98回国展(2024年) 出品要項 出品票請求フォーム | 国展 (kokuten.com)
まとめ
すずらん 2021 F1 鉛筆画 中山眞治
この記事を通じて、初心者の人から上級者の人までが、鉛筆画やデッサンの世界で新たな表現方法を発見する手助けになり、あなたが各種展覧会や公募展で入選できるようになれることが筆者の願いです。
そして、それは鉛筆画やデッサンに没頭できることによって、あなたの生活の充実した核が形成され、何物にも代えがたい心の支えや、未来に向かっての目標にもなり、プロ画家へのゴールさえ視野に入ってきます。
この記事を通じて、鉛筆画・デッサンの基本的な技術だけでなく、作品に命を吹き込むための構想の練り方、構成の狙い、画面の効果的な使用方法など、より高度な技術も身につけることができるでしょう。
さらに、画面全体のレイアウトの考慮や視線の引き込み方など、視覚的魅力を最大限に引き出す方法や、あなたの作品が他者と差別化できるようなヒントも提供しています。
また、鉛筆画・デッサンにおける「抜け」の効果的な使い方から、暗い部分と明るい部分のコントラストを深める技術、そして最終的な仕上げに至るまで、あらゆる技術を網羅しました。
鉛筆画やデッサンは、単なる趣味を超えた深い芸術表現の形態にもなります。この記事では、スズランなどの繊細な自然の植物から始まり、具体的な技術や表現方法まで、幅広い要素を取り込んでいます。
特に、エスキースの作成から本制作に至るまでのプロセス、構図の考え方、光と影の扱い、そして視線の動きを意識した画面構成のテクニックには、あらゆるレベルのアーティストが価値を見出すでしょう。
アートを愛するすべての人に、この記事がインスピレーションとなり、次の作品への一歩を踏み出す勇気を与えてくれることを願っています。
尚、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただ簡単に構想を練っただけとか、モチーフを上手に描けるだけでは入選できません。
それは、あなたの制作する画面全体を使いきって、作品全体を魅力的な構図や構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事も参照してください。
関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは?
ではまた!あなたの未来を応援しています。
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