どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
今回は、鉛筆画・デッサンを初心者が簡単に複合した構図で描く方法!(心象風景Ⅸ)というテーマで、あなたが構図を導入した場合の心象風景画の描き方についてご紹介します。
尚、今回の記事は、先日東京都美術館で開催された「国際美術大賞展 (2023年6月14日~6月21日)」で、マツダ賞を受賞した私の作品の「静かな夜Ⅱ」を基にして、画面と構図の関わり方などを明らかにしていきます。
また、鉛筆画・デッサンの制作にあたっては、ほど良い構図の入れ方を考えて余裕をもって描いていきましょう。構図を入れた作品で仕上がれば、公募展などへの出品でも充分健闘できます。しかし逆に、構図のない作品は入選すらおぼつきません。
しかし、何はさておき、あなたが好きなモチーフで自由に取り組んで制作を続けられることが一番重要です。この取り組みは、あなたが鉛筆画から水彩画や油彩画など他の技法へ移行する場合であっても充分役立てることができて無駄になりません。
なぜならば、すべての絵画の根本は構図でありデッサンだからです。また、心象風景画の初歩的な部分につきましては、次の関連記事も参照してください。
そして、鉛筆画は老若男女どなたでも簡単・気軽・手軽に楽しめて、初心者の方でも、高卒でも、美大を出ていなくても、あなたの取り組み方次第ではプロ画家を目指せます。それは、なぜかと言えば、私自身がそうだからです。^^
また、私の構図に関する「基本的な複合した構図5種類」は、この記事の最下部に掲載してありますので、是非参考にしてみてください。あなたが構図に取り組む初めの段階で、この5種類の構図を用いれば当面の展開ができるはずです。
それでは、早速見ていきましょう!
- 心象風景とは?
- 鉛筆画・デッサンの制作に向けた各段階
- 鉛筆画・デッサン制作の構想を練る
- 鉛筆画・デッサンの下絵(エスキース)に構図基本線を引きましょう
- 鉛筆画のエスキースの画面で「抜け」を考える
- 鉛筆画・デッサンの中心点の扱いは慎重にしましょう
- 鉛筆画・デッサン本制作画面に取りかかる際には画面のサイズを実際に測ろう
- 鉛筆画・デッサン本制作画面に構図基本線を入れてモチーフや全体の構成を整合させよう
- 鉛筆画本制作画面の仕上げでは暗い部分はより暗く、明るい部分はより明るくすることが重要です!
- たまには絵画鑑賞に出かけましょう
- 絵画は大きな視野の中から切り取った一部という認識が大切です
- おすすめな出品できる公募展について
- まとめ
心象風景とは?
海外の心象風景の著名な画家の作品では、グレコ「聖マウリテレスの殉教」・ゴッホ「星月夜」・ピカソ「アビニョンの娘たち」等、それ以外にもたくさんの大御所の作品群があります。また、日本の画家では、宮沢賢治や東山魁夷などが有名です。
心象風景とは、作者の心の中に思い描いた景色であり、体験及び感情や感覚によって生み出される想像上の風景です。つまり、あなたが描く自分自身の理想の風景であるといえますし、心の中で思い描くイメージやメッセージとも言い換えられます。
あるいは、非日常感の強い・不思議で通常では得られない・通常の観念ではありえない風景ともいえる、創作した絵画作品ということができるのではないでしょうか。
あなたも、あなた自身の思い描くイメージをさまざまな画像を組み合わせて、且、鉛筆画による白と黒(光と影)の劇的な組み合わせによる制作で心象風景を表現することができるのです。
参考:バリアート ショールーム シュピース・スタイル
Spies Style | スタイル一覧 | バリアートショールーム (balikaiga.com)
鉛筆画・デッサンの制作に向けた各段階
鉛筆画・デッサンの制作に向けた準備
最初に、あなたが手始めにすることは、次のような順序です。また、できれば、あなたのリラックスできる静かな音楽の用意と、部屋の中は心地よい温度や湿度に設定しましょう。
メモ書き程度でざっくりとした構想を繰り返し試行錯誤する
まずは、あなたの身の回りにあるA4サイズの紙を用意して、それを正確に半分に切り、今回のあなたの作品のまずはメモ書き程度で自由に構想を練りましょう。私の場合には、この段階では着想の整理程度で完了します。
構図基本線のある下絵(エスキース)に構想を落とし込み本制作に向けて試行錯誤する
次に、下絵(エスキース)のサイズを実際に測って、構図基本線を入れていきます。そして、構図基本線を入れるならば、その線はボールペンで入れておくと、そこへ鉛筆で描き込んでいけば何度でも試行錯誤できます。
尚、上記で用意したA4サイズの紙を正確に半分に切ったものを、そのままエスキースとして使うこともできます。
そして、最終的に、あなたの気に入ったモチーフをあなたの気に入ったレイアウトに据えて、あるいは構図上の不足する部分に他のモチーフを加えたり、デフォルメ(「削除・省略」「修整」「強調」「変形」)して補うことにより、エスキースを仕上げることができます。
本制作に入る
エスキースが実際の制作画面よりも小さい時には、拡大していくことになりますので、そのことを考慮に入れて画面に向き合いましょう。多少の違いは本制作画面で修整するくらいの気持で取り組めば問題は少ないはずです。
鉛筆画・デッサン制作の構想を練る
鉛筆画・デッサン制作の構想や構成の狙いを明確にする
今回の制作例では、主役のモチーフは画面の中の手前の「ガス灯」です。深夜の帰宅途中の道すがら、自身の立てる靴音さえはばかられる静けさと、ふと見た景色に帰宅の安らぎを覚えるような、妙に落ち着くイメージを目指します。
鉛筆画・デッサンの画面構成のために必要なものを揃える
そこで、その後何をするかといえば、以前ネットで入手した「パリの夜景」の画像を用意して、上記の構想を当てはめるための手順を確認します。また、画面上に登場させる、「猫のシルエット」もネットで探して用意します。
この構図にモチーフを落とし込むためには、まず構図基本線を引き、描こうとしているモチーフのパーツを構図基本線にかかるように構成していくのです。
鉛筆画・デッサン制作の構図とモチーフの配置を決める
今回の私の制作例は、次のような構図及び全体構成とします。
(1) 主役のガス灯を頂点とする3角形の構図を構成。
(2) 主役のガス灯の「灯(あかり)」を画面縦横の黄金分割及び画面右上角から画面左下角へ向かう斜線の交点に据える(左右上下の黄金分割線を活用して全体も配置する)。
(3) X型遠近法の構図を使う(画面左右の建物をそれぞれの画面左右の角からの斜線を使ってX型を構成する)…このX型遠近法を使うにあたって、構図基本線も一部分使用して建物を構成する。
(4) 主役の建ち位置の地表面を本来の黄金分割線に対して、わずかに左へ傾けて動きを出す。
(5) (4)の動きの制御と同時に、画面右上角から画面左下角への導線を暗示する2つの意味を持つモチーフを配置する。
(6) 画面左上から画面右下への導線を暗示するためのモチーフで、同時に深夜を意識させるべく猫のシルエットを配置する。途中の空間で、旗竿の先端部分もこの斜線を暗示させるための補助として使う。
(7) 画面上空の暗い空に、空間のバランスをとるための、画面左右の黄金分割線上に輝度を抑えた「おぼろ月」を配置する。
(8) 見てくださる人の視線は、主役の「ガス灯」から「おぼろ月」へ、そして画面中央の遠景の灯になるように配慮して制作を進め、画面深度を深めるように意識する。
この構図とモチーフの配置を決める段階では、構図基本線上に、それぞれのモチーフを落とし込んで制作するということであり、各種構図基本線の配置に対して、何をどのように描いていくかということを考えることでもあります。
あなたが、今回の記事を参考にして制作する場合でも、主役・準主役及び脇役や全体のレイアウトはどうするかを入念に考えて決めていきましょう。
尚、あなたが私の制作例に使っていないモチーフで、同じような構図で制作しても何ら問題ありませんが、私の制作例をそのまま使うことは、著作権がありますのでできません。あしからずご承知おきください。
鉛筆画・デッサンの下絵(エスキース)のつくり方
まず最初に、あなたの身の回りにあるA4サイズの紙を用意して、それを半分に切り、今回のあなたの作品の、まずはメモ書き程度で自由に構想を練りましょう。実際に測る場合やフリーハンドでも良いのですが、構図基本線を入れておきます。
最終的に、あなたの気に入ったモチーフをあなたの気に入ったレイアウトに据えて、あるいは作品によっては構図上の不足する部分に他のモチーフを加えて補うことにより、エスキースを造ることができます。具体的には次の画像のような基本線を引くことから始めます。
鉛筆画・デッサンの下絵(エスキース)に構図基本線を引きましょう
まずはこのように、各種構図基本線を引きますが、具体的な分割点の割り出し方は順を追って記載していきます。
鉛筆画・デッサンのエスキースを造る
メモ書き程度の構想を練ることが終了しましたら、次はあなたが取り組む本制作に入る画面の縮尺をかけたエスキースの画面に、構図基本線を引きましょう。
あなたが、本制作に入る画面の大きさをF10のスケッチブックのサイズで取り組むものとして、そのエスキースをA4の紙を正確に2つに切ったもので制作する場合には、次のようになります。
鉛筆画・デッサンのエスキースは構図基本線が入っていれば、画面全体を効果的に使えます
F10の長辺は528mm・短辺が454mmであり、あなたが手元に用意したエスキース(A4の紙を正確に2分割した物)は、その短辺のサイズは148mmなので、F10の短辺のサイズ454mmで割ると、0.3259という数値が出ます。
そして、F10の長辺は528mmなので、この長さに上記の縮尺(0.3259)をかければ、172.07となりますので、あなたのエスキースの長辺を172mmにすれば、あなたが本制作に入るF10を正確に縮尺したエスキースの土台ができるということです。
この正確に縮尺をかけた画面に、ボールペンなどで構図基本線を引いて、あなたの自由な構想を鉛筆で展開しましょう。しっくりくる構想がまとまりましたら、F10で本制作に入る場合には、重要な点や線は、画面の中の寸法を拡大すれば再現できます。
鉛筆画・デッサンのエスキースに長辺短辺の2等分割線及び各対角線を引きましょう
次に、上記画像のように、長辺短辺の2等分割線(③④)及び各対角線(①②)を引きます。
鉛筆画のエスキースの画面で「抜け」を考える
今回の制作例では、画面左右の建物の谷間から上部にかけてが「抜け」になりますが、それ以外の制作例などで、例えば地平線と建物で区切られた部分で「明るい外界」を構成すると、見てくださる人は、画面全体から受ける作品の印象に「息苦しさ」を感じないで済みます。
違う言い方をすれば、作品の左右上部のどちらでも良いのですが、室内から外界が見える窓などを構成すれば、この「抜け」を表現することができます。
尚、作品によっては意図的に窓などを作って、外界への「抜け」を作ることもできますし、その効果は、心象風景以外のどのジャンル(花・人物・静物・動物・風景)にでも応用できます(この記事の最下部に掲載している5つの記事を参照してください)。
鉛筆画・デッサンの画面全体のレイアウトを考える
あなたが、選んだ各種モチーフを、構図を反映した場所へ効果的に配置して全体を構成するということを記憶しておきましょう。見たままを描くばかりが絵画ではないということです。見たままは「写真」で充分なのです。
絵画・デッサンの構図基本線は優しく描き込みましょう
構図基本線を描き込む際には、筆圧を強く描き込んでしまうと、のちの工程で練り消しゴムでは消しきれなかったり、跡が残ってしまうので、そのためには筆圧をかけ過ぎず優しく引くことが必要です。
この各種基本線は、2Bや3Bなどの柔らかい鉛筆の軽いタッチで、親指・人差し指・中指でつまむように持ち、優しく描き込みます。
- 黄色線:斜線2本と縦横の2分割線(①②③④)
- 桃色線:画面縦横の黄金分割線(⑤⑥⑦⑧)、主役のガス灯の「灯(あかり)」は画面縦横の黄金分割線(⑥⑦)及び画面右上角から画面左下角へ続く斜線(①)の交点になるように配置する
- 赤色線:主役の建つ地表面を黄金分割線(⑧)を、やや左に傾けた新たな地表線を作り画面に動きを出す
- 水色線:主役の「ガス灯」の建つ画面縦の黄金分割の頂点を起点とした3角形を構成する
- 緑色線:上記の左にやや傾けた地表線の補助としての水平線と、画面右上角Bからの斜線①を暗示させるための2つの役割を同時にこなすモチーフを表す線
- 紫色線:深夜をイメージさせる猫を画面左上角Aからの斜線②を暗示させるために配置する
- 灰色線:暗く広い夜空を画面上でバランスをとるために、画面横の黄金分割線上(⑤)に「おぼろ月」を配置(「おぼろ月」の中心点は黄金分割線上に置く)
- 黒色線:見てくださる人の視線を導く線、見てくださる人の視線は、主役の「ガス灯」の次には、上空にかかる輝度を抑えた「おぼろ月」へ、そして、その次は画面中央付近の遠景の灯へと続くことを意識する
画面制御のモチーフ
今回の制作例の中で、画面左下角にかかっている緑色の3角形のモチーフがなくなるとすれば、画面の動きを制御することができず、「まとまりのない・落ち着かない不安定な作品」になってしまいます。
逆に、水平と垂直だけで描かれた絵は、動きがなくて、単調な印象になってしまいます。そこで、上手にこれらを組み合わせることが必要になってくるのです。
そして、傾けて動きを出した場合には、それだけで放っておかずに、その動きを鎮めたり抑制するポイントが必要です。
鉛筆画・デッサンの中心点の扱いは慎重にしましょう
絵画の制作上においては、意識的に中央へモチーフを配置する場合は別として、複数のモチーフで構成する画面には、できるだけ画面の中心点を避けて制作しましょう。
特に、画面の中心点に、主役・準主役などのモチーフの中心を重ねてしまうと、「動きが止まってしまう」ので注意が必要です。
尚、意図的な制作例の人物画や動物画などで、画面にモチーフの面積を大きくとる必要があるときには、これらのことは該当しませんのでご安心ください。^^
画面上のモチーフに意外な発見があると、見てくださる人を楽しませることができます
今回の制作例では、「猫のシルエット」を入れていますが、このシルエットだけで、「深夜のような雰囲気」や「導線を暗示」することもできます。ここで重要なのは、その際に、猫の体の模様や表情などは細密に描かない方が良いということです。
もしも、この作品の猫を細密描写してしまったとしたら、見てくださる人の視線をそこへ集めてしまうからです。ましてや、主役の地表面に届いている「ガス灯」の明かりの中へ入れるようなことがあると、どれが主役なのかがよく分からなくなってしまいます。
このようにモチーフを目立たないように描くことで、「何が描いてあるのかよくわからない」という部分も大切です。なんでもあからさまに描くことが必ずしも良いことではありません。見てくださる人が「ひょっとして〇〇では!」という程度で良いのです。
そして、画面上の構図基本線という大きな力を持った線を有効に使うことを心がけて制作します。つまり、各構図基本線を使って、できるだけモチーフの位置・高さ・幅、あるいはモチーフの中心点になるように考慮して画面構成を考えるということです。
その際には、実際のモチーフの大きさでは高さが足りないとか・大きすぎるという場合には、意図的に大きさをデフォルメして使えるように修整するということです。幅についても同じことがいえます。
鉛筆画・デッサンを見てくださる人の視線を意識した制作を心がけよう
全体のレイアウトをおこないながら、最終的な主役の画面上の輝き加減も考慮しますが、主役のモチーフを一層輝かせたい場合には、主役の周囲のトーンをさらに濃くするということになります。
尚、画面の中で「窓」などの「抜け」を構成する場合には、その部分にも慎重にトーンを入れることで、画面全体のモチーフの中で主役の輝きを一番大きくして、主役を引き立てることが必要です。
鉛筆画・デッサンの画面構成上の配慮すべき点
ここで肝心なのは、主役以外のモチーフには注意が集中しすぎないように描き込むようにします。言ってみれば、意図的に手を抜くということです。
これらのことを、A4の半分のメモ程度の紙に、「描いては消し描いては消し」を繰り返して、いかにして構図基本線を有効に使ったレイアウトや効果的な強調ができるかを考えて、エスキースを完成させます。
鉛筆画・デッサン本制作画面に取りかかる際には画面のサイズを実際に測ろう
スケッチブックのメーカーによっては、若干寸法が異なることがありますので、制作当初に実際のサイズを確認して正確な構図基本線を引きましょう。
このことは、スケッチブック以外にも、例えばパネルに水張りした画面で制作する場合のF100や、それ以上の大きさの画面にも共通していえることです。
あなたも制作を進める際には、実際に描き込む画面のサイズに合わせて構図基本線を正確に引きましょう。これは最も重要な点です。
鉛筆画・デッサン本制作画面に構図基本線及び黄金分割線を引く
今回の作例の黄金比率は実際の作例の大きさはF10なので、長辺が528mmで短辺は455mmであり、例えば長辺の黄金比率を求めるならば、528mm÷1.618=326.3になるので、326mmの位置が黄金比率の分割点になります。
この分割点は、左右どちらからでも設定することができます(⑤⑥)。短辺も同じく、455mm÷1.618=281.2mmになるので、281mmの位置が黄金比率の分割点になります。この分割点は、上下どちらからでも設定することができます(⑦⑧)。
鉛筆画・デッサン本制作画面に構図基本線を入れてモチーフや全体の構成を整合させよう
上の画像には、意図的に上空にかかる「おぼろ月」を描き込んでいません。それは、「おぼろ月」がない場合と、ある場合とを比較してもらうためにそのようにしていますので、先のところの「おぼろ月」があった場合と比較してみてください。
上空のまとまり上、「おぼろ月」が必要であることが理解していただけるはずです。尚、この場合、「おぼろ月」ではなくても、黄金分割の位置に遠空を飛ぶ鳥や雲であっても良いのです。
鉛筆画・デッサン本制作画面へ実際に描き進むにあたって
構図基本線上に、先ほど制作したエスキースに基づいてレイアウトします。実際に描き始める際には、まず全体を大づかみでとらえて描き進んでいきます。
細かいことはさておいて、2Bや3Bなどの柔らかい鉛筆を親指・人差し指・中指でつまむように軽く持ち、全体を優しいタッチで描いていきましょう。
そして、この段階では、今後あなたの制作作品によっては、必要ならば長め・短めの定規やコンパスもどんどん使いましょう。フリーハンドで直線や曲線を描くことは、制作を続けていく中でゆっくりと慣れていけばよいのです。
鉛筆画・デッサン本制作画面へエスキースを元に配置しよう
絵画の制作では、主役がいかに主役らしく見えるかが一番重要なので、主役が目立つように周囲にトーンを入れていきましょう。
鉛筆画・デッサンの他の作品を描く際のノウハウ
作品の制作にあたっては、構図基本線を意識してレイアウトしますが、作品によって画面に納まりきれない部分は画面の外にハミ出てよいのです。あなたの描く画面には、あなたの必要とする部分だけを切り取って描きましょう。
それは、モチーフ全体を無理に画面に収めようとすれば、窮屈になってしまうからです。逆に、画面からハミ出ることによって、画面の外への広がりが表現できることになります。
尚、画面最下部の底線CD上にモチーフを「乗っけた」ようにレイアウトすることは、重大な禁じ手なのでこれも覚えておきましょう。私はこれをやって叱られたことがあります。^^
鉛筆画・デッサン本制作画面の構成では斜線の導線暗示も大切です
尚、画面左上の角Aからの斜線②は、途中の建物の一部と旗竿の頂点をかすめ通り、画面の中心点と猫の耳先を通って、画面右下の角Dへ到達させます。
一方、画面右上の角Bから出発した斜線①は、途中の建物の一部と主役のガス灯の灯と画面中心を通って、画面左下のモチーフに導かれながら画面左下の角Cへ到達しています。
鉛筆画・デッサンの導線暗示はちょっとした工夫で取り入れることができます
尚、あなたが作品を制作する際には、構図基本線や斜線が通っていることを画面上のレイアウトや、モチーフの凹凸なども含めて暗示しましょう。地表面での水平線を使うために、「マッチ棒の燃えカス」を水平線に見立てて使うことで傾斜をコントロールすることもできます。
このように、主役や準主役のレイアウト以外にも、画面全体のさまざまな要所のポイントを、例えば「水滴」・「枯葉の虫食い」・「モチーフの中心点(壁掛け時計等)」などでも導線暗示に活用することができます。
鉛筆画・デッサン本制作画面はあなたの思い描く理想の画面に変換しましょう
尚、実際のモチーフの形状は画面構成上修整することもあります。これは、どの画家もほとんど行っていることで、デフォルメと呼ばれています。
これらの構図基本線との重ね合わせは、構図の成り立ちを示すためでもあり、その暗示も含めて画面全体のバランスをとっているのです。
デフォルメは、風景画の場合であれば実際の景色には電柱や電線があっても、作者の意図する一番見映えのする画面にするために省略してしまうこともあります。
それは、現存する状態に修整を加える事であり、「省略・削除」「修整」「変形」「強調」「つけたし」など何でもアリです。
鉛筆画・デッサン本制作画面へ各モチーフを入れ、各種線の整理後に再度意識すべき構図とレイアウト
最初に描き込んだ、全体の輪郭を取った際のたくさんの線を練り消しゴムで整理しますが、こののちトーンを入れていくところにある線はそのままにしておきましょう。なぜならば、そこへはこれからトーンを入れていくので消す必要がないからです。
そして、モチーフにかかっている線や「抜け」の中にある線は消しておきましょう。仕上げに向かって、明るい部分にするところにある無駄な線は目立ってしまうので、必ず消しておく必要があります。
また、練り消しゴムで消したところは、その後トーンを入れていくと、消していないところと比較すると鉛筆の乗り具合が少しだけ違ってくることがあります。そこで、できるだけ練り消しゴムで消す部分を少なくすることが必要です。
ところで、どうですか?上空に「おぼろ月」がない場合とある場合で、あなたはどちらが良いと思いますか?バランス的に私はこちらが良いと判断しました。しかし、この場合には、「おぼろ月」の輝度は慎重に抑える必要があります。
鉛筆画・デッサン本制作画面の最終的な仕上げではメリハリを意識しよう
国際美術大賞展 マツダ賞 F10 静かな夜Ⅱ 2023 中山眞治
練り消しゴムでたくさんの線を整理した後は、いよいよ各モチーフのレイアウト後の制作工程に入りますが、その際には暗いところからトーンを入れていきましょう。
制作例の描き始めは画面左側の建物で、一番濃いところは6Bで描いています。次に描き進めるのは画面右側の建物ですが、屋根部分には6Bを使い、その下の方では2B~3B程度のトーンにします。縦に並んでいる窓の各階の暗い窓の中のトーンは3B~4B程度です。
その次には、画面左下角の三角形のモチーフは3Bで塗りつぶし、主役の建っている地表面はBを使い、光の当たっている地表面には、Hの軽いタッチで描き込んでいます。また、猫のシルエットは、2B~3Bで仕上げています。
鉛筆画本制作画面の仕上げでは暗い部分はより暗く、明るい部分はより明るくすることが重要です!
完成が近くなってきましたら、全体を観察してみて本来ハイライトであるべきところが、もう一つ明るくなくて、光っているように見えない場合には、隣接する部分や背景をより濃い黒にすることで、まぶしく光っているべき部分を強調することができます。
ところで、制作例で一番明るいところは、主役のガス灯の「灯(あかり)」です。つまり、一番明るいところは画面の紙の色ということです。
たまには絵画鑑賞に出かけましょう
絵画を見に行く際のおすすめな公募展
ところで、たまには絵を見に行きませんか。私の印象では、日展は「きれいなだけで個性的で野心的な作品は少ない」記憶しかありません。
おすすめは第一に国画会の展覧会である「国展(4月末~5月中旬)」、次いで独立美術協会の展覧会である「独立展(10月)」や、新制作協会の展覧会である「新制作展(9月下旬~10月上旬)」です。
展覧会(全国公募展等)へ行きましたら、細かな技法ばかりを見るのではなくて、作品から受けるあなたの印象が重要です。最初の内はよくわからなくても、あなたが強く惹かれた・感性に響いた作品の印象をあなたの作品にどう反映できるかを考えるのです。
絵画鑑賞では大きな要素を掴みましょう
私は恥ずかしながら、抽象画がいまだによくわかりませんが、印象に残る具象画を見て帰ってくると、その印象を自分の作品に、どのように取り込むことができるかを考えるようにしています。
しかし、そっくりまねることはやめましょう。著作権がありますし、意味もありません。細かいところまでを全部取り込もうとするのではなく、構図などの大きな成り立ち及び配置や濃淡のつけ方、画面の持っている「新たな着想」などを取り込むようにするということです。
絵画は大きな視野の中から切り取った一部という認識が大切です
もっと具体的に言えば、構図やデッサンは当然一番重要であり充分観察が必要ですが、あなたの感性に響いた作品の4隅(4つの角の周辺処理)は、どのように充実させているかということを研究することはとても重要です。
言い換えれば、「自分だったらどう描くかを考える」ことが、生きた勉強になります。また、デッサンの仕方とともに、濃淡のつけ方や、4隅の充実などについても研究することは、あなたの制作に役立ってきます。
4隅の充実とは、絵画の4隅がその外へ広がる表現をどのように行っているのかを研究することです。私たちの見ている絵画の画面は、全体の大きな視野から切り取った一部なので、外界へと繋がる広がりを見てくださる人へどのように伝えるかという認識を持つことが大切です。
参考情報
国展:第96回国展デジタル版 | 日本最大級の公募展。第96回国展web 版。 (kokuten.com)
独立展:独立展|第89回独立展 (dokuritsuten.com)
新制作展:2022年第85回新制作展 日程 | 新制作協会 (shinseisaku.net)
おすすめな出品できる公募展について
あなたが、10作品ほど描いて、鉛筆画の制作にある程度慣れて来ましたら、この記事の一番最後にある<鉛筆画・デッサンで初心者が簡単に構図を取り込む方法・構図関連5記事>を参考にして、「構図を入れた作品」に仕上げましょう。
難しいことは何もありません。私のどれか一つの記事を参考にして、あなたの構成したいモチーフを配置して描いていくだけです。また、一番手前が薄暗い・中景は暗い・遠景は明るいで構成すると、遠近感を強調できます。
また、出品する際には、その出品する公募展の出品規定を取り寄せて確認しましょう。肝心なのは、作品の最大の大きさと出品点数及び額装が必要かどうか、その場合にはガラスはだめでもアクリルであればOKなのかなどです。因みに私は、ガラスもアクリルもつけていません。
おすすめは、出品規定最大の大きさにすることと、出品点数最大数を仕上げて出品することです。これらのことは、全国公募展以外にも、県展・市展・区展などでも全部共通して言えることです。
普通あまり教えてもらえない貴重な情報
尚、知っておくと大変役に立つ情報について触れておきます。例えば、公募展での出品規定が最大100号で県展の大きさも最大が100号であった場合には、公募展で入選できなかったとしても、その作品を再度県展へ出品することができます。
市展も仮に100号までの大きさであった場合には、県展で入選できなかった場合に市展へ再度出品できます。要は、落選した作品は「未発表作品」でいられるからです。ここを間違わないようにしてください。
もっと言えば、全国公募展・県展・市展にオールマイティーな大きさの作品を2~3枚仕上げて、全国公募展・県展・市展の順序で出品していくことができます。これを知っていて実行していけば、入選どころか、入賞率が思いっきり高まります。
勿論作品自体の完成度が充分でなければ、どこへ出しても入選すらできませんけどね。しかし、あなたがとにかく描き続けていくことで、この問題は解決できるはずです。
画歴の構築は画家としての肩書になります
私は、某公募展で落選した作品を、かの有名な「青木繁記念大賞展」へ出品したところ、「奨励賞」を受賞した経験があります。このように「使い回し」することを考えて実行していけば、「画歴」を容易に構築していくことができます。
これはフェアな行為なので安心して取り組みましょう。画歴とは、あなたの作家活動の克明な記録であり、受賞歴・入選歴などを肩書に加えることができることを指します。あなたが画家として進んでいくうえで、入賞・入選歴は重要なアピールポイントになるのです。
尚、説明が長くなりましたが出品できる、おすすめな公募展につきましては次の通りです。何がおすすめなのかといえば、30号以下の小さな作品でも出品できるからです。
〇 国際美術公募大賞展 Home | 日本選抜美術家協会 (nissenbijutu.jp)
〇 全国公募 第6回 日美展(絵画部門) 公募概要|全国公募 日美展 (nichibi-kaiga.site)
〇 鉛筆画・色鉛筆画コンテスト
第3回 鉛筆画・色鉛筆画コンテスト – コンテスト 公募 コンペ の[登竜門] (japandesign.ne.jp)
〇 世界絵画大賞展 第19回世界絵画大賞展 2023 応募要項 (sekaido.co.jp)
まとめ
今回の、鉛筆画・デッサンを初心者が簡単に複合した構図で描く方法!(心象風景Ⅸ)では、冒頭の関連記事の「鉛筆画で初心者が簡単に風景を描くポイントとは?」で初歩的なことも理解して、まずは描き始めることを優先しましょう。
描く対象はこの他にも、花・静物・人物・動物・風景等、興味をそそられる対象はたくさんあるはずです。そのためにも、あなたが鉛筆画を描くことに慣れてきましたら、構図の基本書を1冊購入しましょう。
そして、たまに時間があるときなどに、各段階で基本的なことを繰り返し見直していくような状態がベストだと私は思いますし、私自身もそのようにしてきました。
私が使っている構図の本は、東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサンです。かれこれ30年も使っていますが、いまだにたびたび参考にしています。ネットでも確認しましたが、今でも買えるようです。しかし、どの本でもよいのです。あなたが気に入った構図の基本書を1冊手元におきましょう。
あなたは、もしも画家になりたいのであれば、私のように高卒で過去に全く絵を描いたことがなくても、自分自身の中の埋もれている「可能性」を目覚めさせる努力さえできれば実現できます。
やってみなければ解らないことはいくらでもあります。おじけづかないで、のびのびと楽しんで取り組んでいきましょう。そして、あなたがどのような絵を描いていくにしても、「絶えず研究してたくさん描くこと」で、必ず上達できます。
個展や県展・全国公募展へ出品するのは、はっきり言って最初は「ドキドキもの」ですが、大胆に行くことも人生には必要です。振り返ってみると、意外に大きな壁ではありませんよ!
ではまた!あなたの未来を応援しています。
<鉛筆画で初心者が簡単に構図を取り込む方法・構図関連5記事>
・第1記事 鉛筆画で初心者が簡単に構図を取り込む方法とは! (黄金分割と垂直・水平線)
・第2記事 鉛筆画で初心者が簡単に構図を取り込む方法とは! (√2と光を中心とした中空の三角)
・第3記事 鉛筆画で初心者が簡単に構図を取り込む方法とは! (√3と逆三角形)
・第4記事 鉛筆画で初心者が簡単に構図を取り込む方法とは! (3分割と√3)
・第5記事 鉛筆画で初心者が簡単に構図を取り込む方法とは! (4分割と3角形×2)
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