心象風景を鉛筆画やデッサンで描く:初心者から上級者までの完全ガイド!

心象風景画の描き方

 どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

 さて、この記事では、鉛筆画やデッサンの技術を使って、見えない内面世界や心象風景をスケッチブックや紙の上に描き出す方法を、初心者から上級者まで分かりやすく解説します。

 基本的な鉛筆の持ち方から、細かいシェーディングの技術まで、あなたの鉛筆画のスキルを次のレベルへと引き上げるための知識とインスピレーションもご提供します。観てくださる人の心を揺さぶる作品を創り出す旅に、あなたも踏み出しましょう。

 それでは、早速どうぞ!

  1. 鉛筆画で心象風景を描くための基礎
    1. 描き始める際の環境造り
    2. 心象風景描画のための鉛筆選び
    3. 基本的な鉛筆の持ち方とストローク
    4. シェーディングの基本
    5. 観察とイマジネーションのバランス
      1. 初心者の人は楽しく描くことに専念することが重要
      2. 中級者以上の人は構想力や画面構成が必要な理由
      3. 競合他者に差をつけるノウハウとは
  2. インスピレーションを形に – デッサンで表現する独創力
    1. インスピレーションの見つけ方
    2. クリエイティブな表現の追求
  3. デッサンを通じた情景並びに雰囲気及び感情や思考の表現方法
    1. 独創力の育み方と持続的な維持方法
      1. 独創力を育む方法
      2. 独創力を維持する方法
      3. 独創力は構想を練ることから出発する
  4. 初心者向け:鉛筆画やデッサンの基本技術
    1. 適切な鉛筆の持ち方
    2. 基本的な線の引き方
    3. シェーディングの基礎
    4. 形と構造の理解
    5. 練習の重要性
  5. シェーディングでリアリティを出す方法
    1. シェーディングの基本
    2. 陰影で立体感を表現する
    3. 質感の表現にシェーディングを活用する
    4. 光と影のバランス
  6. 内面世界を表現するためのアイデアとインスピレーション
    1. 日記や夢日記を描く
    2. 音楽や文学からインスピレーションを得る
    3. 自然との対話
    4. 5感に響く素材の探求
    5. 抽象的な表現を探る
    6. 他者の作品から学ぶ
  7. 上級者のための高度な鉛筆画やデッサン技術
    1. 高度なシェーディング技術
    2. パースペクティブと構図の高度な理解
    3. パースペクティブの種類
    4. 透視図法
    5. 細部の観察と表現
    6. 動きと表情の捉え方
    7. 実験とスタイルの開発
  8. 上級者のための鉛筆画・デッサンテクニック – 細部の描写と表現
    1. 細部への注意深い観察
    2. 細部描写の技術
    3. 表現の豊かさ
    4. 総合的な構成とバランス
  9. 鉛筆画やデッサンにおける頻出問題とその解決策
    1. 不均一なシェーディング
    2. 比率とプロポーションの誤り
    3. 線の過度な使用
    4. 光と影の不正確さ
    5. 練習不足
    6. デッサン困難時の対処法
  10. まとめ

鉛筆画で心象風景を描くための基礎

    青木繁記念大賞公募展 奨励賞 郷愁2001 F100 鉛筆画 中山眞治

 心象風景を鉛筆画やデッサンで描くことは、単なる技術以上のものです。それは見えない、あるいは現実には存在しない、情景並びに雰囲気及び感情や思考を形にする芸術的な表現です。

 本章では、鉛筆画やデッサンで心象風景を描くための基礎を紹介し、あなたが自身の内面を探求し、表現するための第一歩を踏み出すお手伝いをします。

 蛇足ながら、上の画像は、帰りたいけれど帰れない、故郷の両親や兄弟及び懐かしい海及び山や川への想いが迫ってくるという、郷愁をテーマにしています。このような作品でも、心象風景と呼べるものになります。

描き始める際の環境造り

 鉛筆画やデッサンの描き始め当初は、絵画教室で基礎的なことを全て教えてもらうことが近道です。絵画教室では、扱いやすいイーゼルがあり、モチーフもたくさんあって、特に初心者の人が取り組みやすい材料が豊富です。

 そして、ほど良い温度と湿度が確保されているので、イスに足を組まずに深く腰掛けることで、長時間の制作でも疲れにくい状態を維持しながら、絵画の制作に集中できます。また、自宅で制作する場合には、あなたの落ち着ける音楽も用意しましょう。

 描き方のコツは、あなたがイーゼルにスケッチブックを載せた状態で、頭を大きく動かすことなく、目線の移動だけで、モチーフと画面を移動できるようにすることです。

 また、スケッチブックの左右どちらでもよいのですが、あなたの描きやすいアングルの確保が必要です。画面のすぐ脇で、モチーフを見られるようにセッティングしましょう。これらの細かいことも絵画教室の講師が教えてくれます。 

心象風景描画のための鉛筆選び

 鉛筆選びは、心象風景を描き始める上で最初の重要なステップです。

 異なる硬度の鉛筆を使い分けることで、繊細な質感や深い陰影を表現できます。2H・H・HB・B・2B・3B・4Bの鉛筆から始め、慣れて来ましたら、徐々に色数を増やしていきましょう。

基本的な鉛筆の持ち方とストローク

 鉛筆の持ち方は、描く線の質感や太さに直接影響します。軽やかなタッチで風景の雰囲気を表現するには、鉛筆を人指し指・中指・親指で軽くつまむように持ち、優しいタッチで腕を大きく動かすような動作で描き進みましょう。

 最初の段階では、あなたの描こうとしているモチーフ全体の、位置及び大きさや比率に注意してバランスを考えることに集中して輪郭を描いていきましょう。ざっくりと何本もの線を引きながら、やがて「これだ」と思える線に出会えます。

 全体の複数の線の輪郭づくりが終了しましたら、練り消しゴムで不要な線を整理して、今度は鉛筆を「文章を書く持ち方」に変えて描き進んでいきましょう。

シェーディングの基本

 心象風景を鉛筆画で描く際、シェーディング(陰影技法)は感情を表現するための重要な要素です。光と影を使って形や空間の深みを描き出し、心象風景に生命を吹き込みましょう。

 軽く細かいストロークで始め、徐々に筆圧を加えて濃淡をつけることで、立体感のある描写が可能になります。

観察とイマジネーションのバランス

初心者の人は楽しく描くことに専念することが重要

 心象風景を描く上で、実際の風景を観察することは非常に重要ですが、それに頼りすぎることなく、自身の内面から湧き出るイメージを大切にすることも必要です。

 観察によって得られるリアリズム(写実)と、イマジネーション(想像)によって生まれる創造性のバランスを見つけることが、鉛筆画やデッサンで心象風景を描く鍵となります。

 初心者の人は、描き始めでは、構図や構成など何も考えずに5~10作品くらいまでは、楽しく描くことだけに集中して描いていくことが重要です。

中級者以上の人は構想力や画面構成が必要な理由

 中級者以上の人では、何となく描いているような絵、あるいは構図や構成を考えていない絵や、モチーフだけ上手に描いた絵では、観てくださる人及び展覧会や公募展で審査してくださる人の支持を得られません。

 それは、あなたが中級者以上になり、あなたの作品を見てくださる人に感動を与えることができて、各種展覧会や公募展へも出品することを望む場合には、競争に勝てなくては入選できません。つまり、あなた独自の視点や独創性が必要なのです。

競合他者に差をつけるノウハウとは

 制作以前にしっかりと構想を練り、画面全体を使い切って、構図や構成及び、あなたの制作する作品の主役や準主役が、最高に引き立てられる仕上がりを常に意識することが重要だということです。この部分は次に続いていきます。

 あなたが、この点に早い段階から気付いて取り組むことは、重大な意味を持ちます。つまり、競合他者に圧倒的な差をつけられるノウハウがここにあります。

 また、折角作品を描く以上は、作品にも展覧会や公募展での入選という「日の目」を見せてあげてください。あなた自身にも励みになることをお約束します。その励みを得られ続けることが、プロ画家になるための秘訣と言っても過言ではありません。

インスピレーションを形に – デッサンで表現する独創力

水滴Ⅶ 2019 F3 鉛筆画 中山眞治

 デッサンは、アーティストのインスピレーション(ひらめき)を形にする強力なツールです。本章では、独創力を最大限に引き出すデッサンテクニックを紹介します。

インスピレーションの見つけ方

 創造的な鉛筆画やデッサンを始める前には、インスピレーションを得ることが重要です。自然、日常生活、他者の作品など、周囲の環境からインスピレーションを得る方法を探りましょう。

 また、異なるアートスタイルや、過去の著名な作家の作品を研究することも、新たなアイデアを生み出す源になります。この部分では、次の関連記事も参考になるはずです。

関連記事:鉛筆画・デッサンで初心者から中級者まで必見!複合した構図で心象風景を描く方法Ⅱ

クリエイティブな表現の追求

 鉛筆画やデッサンで独創力を表現するには、伝統的な技法にとらわれず、自分なりのスタイルを開発することが重要です。

 実験的な線の使い方、大胆な構図、独特の思い切った光と影の扱い方など、自分だけの表現を追求しましょう。このプロセスは、アーティストとしての個性を形成し、作品に独自性をもたらします。

デッサンを通じた情景並びに雰囲気及び感情や思考の表現方法

    第2回個展出品作品 ランプのある静物 2000 F50 鉛筆画 中山眞治

 デッサンは、情景並びに雰囲気及び感情や思考を表現する手段でもあります。

 澄明な空気感及び神秘的な雰囲気や癒される情景、悲しみ、喜び、平和など、さまざまな情景並びに雰囲気及び感情や思考を、鉛筆画やデッサンを通じて表現する方法を探り出しましょう。

 また、グラデーションの施し方、筆圧の強弱、構図や構成などを通じて、さまざまなニュアンスを伝えることもできます。

 尚、鉛筆画やデッサンは、モノトーンの表現ではあっても、白と黒の鮮烈で劇的な対比によって得られる印象は、油彩にも負けません。   

独創力の育み方と持続的な維持方法

独創力を育む方法

 独創力を育む秘訣は、「何とかインスピレーションを得なくてはならない」、と考えてしまうとなかなか見つからないものです。

 かたや、あなたの主役にしたいモチーフに、他のどんなモチーフを組み合わせて、構図(※)の本を参考に、どのような配置にしたら面白いだろうか、と考えると、視野が広がってきます。

 そうです。何よりもあなたが、どうすればもっと面白くなるかなと「心が遊んでいる状態」で考えましょう。そうすることで、次から次へとイメージが膨らんできます。

 その最初の取り組みでは、あなたが描きたい対象をまず探して、関連性を膨らませることが必要です。例えば、ランプの明かりを中心にして描いてみたい・一輪挿しにあなたの好きな花を活けて、それを中心として描いてみたいなど何でも良いのです。

 あるいは、構図の本の中から、どれか一つを選び出して、あなたなりのモチーフをレイアウトしたシミュレーションを行ってみるとかです。

※ 構図については、この記事の最終部分に掲載されている、関連記事:「鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは?」を参照してください。

独創力を維持する方法

 そして、独創力を持続的に維持するには、常に新しいことに挑戦し、インスピレーション(ひらめき)を得る必要があります。異なるテーマや素材での実験や、新たな試みを積極的に行うことも重要です。

 具体的な一例では、モノトーンであっても、鉛筆の他に、木炭(チャコール)及びインクやボールペンなどでの制作や、場合によっては、同じ画面上で複合した素材による制作ということも手段の一つでしょう。

 ただし、この場合には、鉛筆が一番弱い色になりますので、強い他の素材による黒が入ると、バランスを崩しかねませんので、一番暗いトーンにのみ使うなどの制作の検討が必要でしょう。

独創力は構想を練ることから出発する

 尚、中級者以上の人は、やみくもに制作するのではなくて、制作にあたってはまず、じっくりと構想を練ることから始めましょう。あなた独自の画面構成や構図を含んだ、あなたの世界を展開するための検討が必要だということです。

 つまり、あなたが各種展覧会や公募展へ出品する際には、入選するということは他者との競争に勝てなくては入選できませんので、観てくださる人や審査員を惹きつけるための魅力が必要なのです。

 その場合には、構想を練ることの重要性について、改めて考えてみることも必要になってきますので、興味のある人は次の関連記事も参照してください。

関連記事:鉛筆画・デッサンで差をつける:初心者から上級者までの制作構想の重要性とは?

初心者向け:鉛筆画やデッサンの基本技術

第1回個展出品作品 静物Ⅱ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画やデッサンは、美術の基本ともいえる重要な技術です。この技術を身につけることで、あらゆるジャンルの絵画やイラストレーションに応用することも可能になります。

 初心者が、鉛筆画やデッサンを始める際に身につけたい基本技術を、わかりやすく解説します。

適切な鉛筆の持ち方

 鉛筆画やデッサンの基礎は、まず適切な鉛筆の持ち方から始まります。描く線の太さや強さをコントロールするためには、鉛筆を安定して動かせるようにすることが重要です。

 既述していますように、描き始めでは、三本の指で鉛筆を「つまむ」ように持ち、大きな腕の動きで全体を捉えていきましょう。

基本的な線の引き方

 鉛筆画やデッサンでは、さまざまな線を使って対象を表現します。直線、曲線、斜線など、基本的な線の引き方をマスターすることが大切です。

 優しいタッチで柔らかい線から描き始め、徐々に筆圧を加えて線を強調することで、形や影の深みを表現できます。この辺の、基本的なことは絵画教室で、事細かに教えてもらえます。

シェーディングの基礎

 シェーディング(陰影技法)は、モチーフの形や質感、光の当たり方を表現するためには欠かせない技術です。スケッチブックや紙に対して、軽く描線を重ねていくことで、滑らかなグラデーション(階調)を作り出すことができます。

 異なる筆圧を使って、明るい部分と暗い部分のコントラスト(明暗の差)を作ることが、立体感を出すポイントです。

 そして、陰影を作る際には、縦横左右から斜めの4種類の線で面を埋めていくことも必要です。これをクロスハッチングと呼びますが、描きにくい方向の線は、スケッチブックや紙の方を動かすことによって簡単に描くことができます。

 尚、画面上でモチーフを際立たせる方法では、モチーフの光を受けている部分の背景には、濃いトーンを持ってくる一方で、モチーフの濃いトーンの背景には、明るめのトーンを持ってくることで、モチーフを引き立てられます。

誕生2021-Ⅲ F4 鉛筆画 中山眞治 

形と構造の理解

 デッサンで上達するためには、描きたい対象の形と構造を正確に把握することが必要です。対象を単純な幾何学形に分解してみると、全体のバランスや比率が掴みやすくなります。このアプローチは、複雑な対象を描く際にも役立ちます。

練習の重要性

         ・引用元:アートラボゼロプラス

 特に、球体の曲面にできている陰影は上の画像のように、一様に真っ黒ではなくて、中央部が濃い影であり、下の部分にはむしろ床面の反射光を受けて、微妙に明るいのです。そして、床面との接点部分には一番濃いトーンを使うことで安定感が生まれます。

 また、鉛筆画やデッサンのスキルは、継続的な練習によって向上します。毎日少しずつでも、練習を続けることが大切です。初めはシンプルな形から始め、徐々に複雑な対象に挑戦してみましょう。

 このガイドを通じて、初心者が鉛筆画やデッサンの基本技術を身につけ、自信を持って鉛筆画やデッサンを楽しめるようになれることを願っています。基本をしっかりとマスターすることで、あなたのデッサンは大きく向上できるでしょう。

シェーディングでリアリティを出す方法

国画会展 入選作 誕生2015Ⅱ F130 鉛筆画 中山眞治

 シェーディング(陰影技法)は、鉛筆画やデッサンにおいて作品に深みとリアリティ(現実性)をもたらす重要な要素です。

 この技術を習得することで、平面的なスケッチを立体的で活き活きとした作品に変えることができます。本章では、シェーディングを効果的に使って、リアリティを出す方法について解説します。

シェーディングの基本

 シェーディングとは、異なるトーンを用いてモチーフの形状や質感を表現する技術です。鉛筆の傾きや筆圧を変えることで、軽いトーンから濃いトーンまで幅広いグラデーションを作り出すことができます。

 シェーディングの基本は、光が当たる方向とモチーフの形状を理解し、それに応じて陰影をつけることです。

 まずは、簡単な形から始めて、徐々に複雑な形状に挑戦してみましょう。前掲の、3つの画像のようなモチーフから出発することがおすすめです。

陰影で立体感を表現する

 陰影を適切に描くことで、モチーフに立体感を与えることができます。光が当たっていない部分には濃いトーンを、光が直接当たる部分にはトーンを入れません。このトーンの差が立体感を生み出します。

 尚、複合したモチーフ同士からの反射や、床面からの反射光の細密描写は、重要な要素であり、これらの描写には充分な観察が欠かせません。

 つまり、制作画面の中の反射光を表現することで、よりリアリスティック(写実的)な効果を得ることができます。モチーフの周りの環境を観察しながら、どこに反射光が出ているかを充分に確認して、軽いトーンで描き始めましょう。

質感の表現にシェーディングを活用する

 シェーディングは、モチーフの質感を表現するのにも重要です。例えば、滑らかな表面は淡いグラデーションで、粗い表面には、はっきりとしたトーンの差で表現します。質感に合わせた描写で、見る人に物体の「感触」を伝えられます。

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高沢哲明 氏

光と影のバランス

 全体の輪郭を取った後には、陰影を入れていきますが、その順序としては、あなたの制作する画面の中で一番濃いトーンのところから描いて、徐々に明るいところへと描き進めていくことが一番描きやすいです。

 最終的に必要であれば、それまで一番濃いトーンであった部分をもう一段濃いトーンにして折り合いをつけても良いのです。

 シェーディング(陰影技法)を施す際は、光と影のバランスを意識することが重要です。全体のバランスをよく観察しながら、明るい部分と暗い部分が調和できるようにしましょう。

 また、過度に暗い部分を作りすぎないように注意し、リアリティ(現実性)を保ちながらも作品全体の雰囲気を大切にすることが大切です。

 シェーディングは、練習と経験を積むことで上達します。これらの技術を駆使して、より、リアリティのある鉛筆画やデッサンを目指しましょう。

内面世界を表現するためのアイデアとインスピレーション

        国画会展 入選作 誕生2007-Ⅱ F130 鉛筆画 中山眞治

 自己の内面を鉛筆画やデッサンで表現することは、探求と創造の世界です。本章では、あなたの情景並びに雰囲気及び感情や思考、そして理想の画面を可視化することを目指します。

 以下では、内面世界を探るためのアイデアとインスピレーション(ひらめき)を得られる手法を提供し、あなたの創造的な表現を深められる方法を解説します。

日記や夢日記を描く

 自己の内面を表現する最も直接的な方法の一つは、日記や夢日記を鉛筆画やデッサンで描くことです。日々の経験や夢からインスピレーションを得て、それらを抽象的な形やシンボルで表現してみましょう。

 また、就寝時に枕元にメモ帳を置いておき、朝の寝起きの、まだ覚えている夢の部分だけでもメモをしておきましょう。荒唐無稽な夢であっても、使える場合があります。

 この実行は、 潜在意識からのメッセージを解読し、自己理解を深めることに役立ちます。

音楽や文学からインスピレーションを得る

 音楽や文学は、自己の内面を探求する際の強力な触媒となり得ます。特定の曲や詩から感じる感情や、イメージを鉛筆画やデッサンに落とし込むことで、内面の感情やストーリーを具現化することができます。

 ある曲が引き起こす感情や、ある物語のキャラクターに共感することで、深い個人的な体験をアートに変えることもできるのです。音楽や文学の世界に没入することで、さまざまなイメージが広がります。

 悲しい情景から、雨のそぼ降る街角の一コマや、楽しい華やぐこころで光と影の劇的な対比による陽光のまぶしさの表現や、初秋の涼やかな風が吹き始めた頃のコスモス畑にいる恋人たちなど、イメージはいくらでも湧いてくるのではありませんか?

自然との対話

 自然は、自己の内面の探求に無限のインスピレーションを提供します。静かな森の中での瞑想や、海辺での散歩など、自然との対話を通じて感じた感情や、思考を鉛筆画で表現できないものか検討しましょう。

 自然界の美しさや複雑さを通じて、自己の内面の感情や思索を反映させることもできます。

5感に響く素材の探求

 あるいは、人の感じる5感を刺激する仕掛けを考えるのも方法の一つではないでしょうか?

 つまり、観る・聴く・触る・嗅ぐ・味わう、の中の複数の種類の要素を制作に取り入れてみるということです。たとえば、観ると聞くの複合的な作品は下の画像のようなものがあります。水滴が滴って、音までが聴こえてきそうでしょ。

 あるいは、幻想的な雰囲気を探求するのも良いのではないでしょうか。その参考例は、前掲の「鉛筆画・デッサンで初心者から中級者まで必見!複合した構図で心象風景を描く方法Ⅱ」を参照にしてみてください。

抽象的な表現を探る

 自己の内面には、しばしば言葉では表現しきれない複雑さを持っています。抽象的な形、線、グラデーションを用いて内面の感情や状態を表現することで、より直感的で感覚的な芸術作品を創り出すことができます。

 自由な発想で、心の中に浮かんだイメージをスケッチブックや紙に描いてみましょう。手っ取り早いところで、これも既述していますが、あなたの描きたいと思うモチーフをイメージしてみましょう。

 そして、そのモチーフに何を組み合わせたら、心象風景として使えるか考えてみるのです。筆者の作品例では、植物の発芽を3つのモチーフの連続描写でリズムを出しながら、生命の誕生の神秘や無限の可能性などを表現している作品が多くあります。

 そして、その時のレイアウトは、構図の基本線を利用した位置に据えて展開し、一枚の地表に落ちていた鳥の羽を手に取ったところから始まり、鳥が飛んでいく情景をイメージできたので、下の作品にまとめました。右の窓には雲が見えています。

 その参考例の詳細な制作過程は、前掲の「鉛筆画・デッサンで初心者から中級者まで必見!複合した構図で心象風景を描く方法Ⅱ」を参照してください。

 このように、あなたの「自由に遊ぶ心」を大事にして、イメージを膨らませて行きましょう。修行のような心では、良い発想は生まれません。^^

他者の作品から学ぶ

 他のアーティストが自己の内面世界をどのように表現しているかを研究することは、大きなインスピレーションの源となります。

 美術館を訪れたり、アートブックを読んだりして、さまざまなアーティストの作品を鑑賞しましょう。異なる時代や文化のアーティストから新たな視点や技法を学び、自身の作品に取り入れることもできます。

 自己の内面世界を表現する旅は、個人的な発見と成長のプロセスです。これらのアイデアとインスピレーションを活用して、自己の内面を深く探り、独自の視点でそれをアートに変えてみましょう。

上級者のための高度な鉛筆画やデッサン技術

        国画会展 会友賞 誕生2013-Ⅰ F130 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画やデッサンの上級者になるためには、基本技術を超えた高度な技術と表現方法を身につけることが必要です。

 本章では、上級者がさらにスキルを磨き、鉛筆画やデッサンを次のレベルへと引き上げるための高度な技術に焦点を当てます。

高度なシェーディング技術

 高度なシェーディング(陰影技法)には、細かいグラデーション(階調)や写実的な質感の表現が含まれます。この技術を習得するには、異なる鉛筆の硬度を使い分け、細かい線の重ね合わせで複雑な陰影を作り出すことが必要です。

 そして、微妙なグラデーションを重ねるためには、6H~10Hまでのごく淡いトーンが必要になる場合もありますし、より光と影の対比を強烈に表現するためにも、6B~10Bのような濃いトーンが必要になることもあるでしょう。

 また、光と影の微妙なニュアンスを捉え、物体の形状や質感をよりリアルに表現する方法を学ぶ必要もあるでしょう。さらに、複数のモチーフで制作した場合の、モチーフ同士への映り込みなども重要な要素です。

 下の作品は静物画ですが、ヤカンへの映り込みや、マグカップに、スプーンが室内の照明を受けた、反射の映り込みの描写などがその例です。

パースペクティブと構図の高度な理解

 パースペクティブとは「遠近法」のことで、絵を描く技法のひとつです。パースと呼ばれることもあり、遠近法における物の見え方のことを指しています。

 絵を描くことは、人間の目でみた3Dの世界を紙の上の2Dに表現することであり、これをデッサンと呼んでいます。そして、2Dでどのように立体感・奥行きを出すかということの手段に用いているのが遠近法です。

 簡単に言えば、近くのものは大きく、遠くのものは小さく描くことで遠近感を出せますが、単に大小で描けばいいというものでもありません。本章では、パースペクティブについて解説していきます。

パースペクティブの種類

 パースペクティブにはいくつか種類があり、それぞれについて理解し使い分けることで、さまざまな表現に役立てることができます。その内容については、次の透視図法に則って描かれます。

透視図法

 透視図法とは、遠くにある物ほど小さく描いていき、地平線上の「消失点」で消えるように描く方法です。その透視図法は3種類あります。

出典:【パース入門講座】遠近感のある絵が描きたい!【透視図法】 | イラスト・マンガ描き方ナビ (clipstudio.net)

 上級者の鉛筆画やデッサンでは、パースペクティブ(遠近法)と構図の理解が不可欠です。複数の消失点を用いた複雑なパースペクティブをマスターすることで、空間の深みとリアリティを表現できます。

 また、画面内でのモチーフの配置やバランスを考えることで、鑑賞者を視覚的に引き込む作品を創り出せます。

細部の観察と表現

 細部に対する深い観察力と、それを表現する能力は、上級者にとって欠かせないスキルです。

 モチーフの細部の詳細を正確に捉え、それを鉛筆画やデッサンで表現することにより、作品に生命を吹き込むことができます。特に、人物の肖像画や動植物の描写では、この技術が作品の質を大きく左右します。

     第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅠ F10 鉛筆画 中山眞治 

動きと表情の捉え方

 活き活きとした鉛筆画やデッサンを描くためには、動きや表情を捉える技術が必要です。これらを表現するためにも、対象の動きや表情の瞬間を捉え、それを線で的確に表現することが求められます。

 特に人物画では、微細な表情の変化を捉えることで、作品に感情やストーリーを吹き込むことができます。

第1回個展出品作品 人物Ⅵ 1996 鉛筆画 中山眞治

実験とスタイルの開発

 上級者としてさらに成長するためには、既存の技術にとらわれず、新しい表現方法やスタイルの開発が必要です。

 異なる材料や技法を試し、自分だけの独自のスタイルを確立することで、他のアーティストと差別化した作品を創り出すことができます。

 これらの高度な技術をマスターすることで、鉛筆画やデッサンの上級者としてのスキルをさらに発展させ、より深みのある表現力豊かな作品を創り出すことが可能になります。

 常に学び、実験し続けることで、無限の可能性を秘めた鉛筆画やデッサンの世界を極めてください。

 心象風景であっても、静物・人・動物・風景などの組み合わせで、あなたの作品を観てくださる人へメッセージを伝えることもできるのです。

上級者のための鉛筆画・デッサンテクニック – 細部の描写と表現

       国画会展 入選作品 誕生2014-Ⅱ F130 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画やデッサンの上級者にとって、細部の描写と表現は、作品の質を格段に向上させる重要な要素です。本章では、これらの高度な技術に焦点を当てます。

細部への注意深い観察

 上級者の鉛筆画やデッサンでは、モチーフの細部への注意深い観察が必須です。

 細かな質感、微妙な光の変化、影の複雑さなど、細部の観察と描写は作品に深みを与えます。実物をじっくりと観察し、その特徴を細かく捉える練習をしましょう。

細部描写の技術

 細部を描く際には、細密さと繊細さが求められます。細かい線を使って質感を表現し、微妙な影のニュアンスを捉える技術が重要です。

 異なる硬さの鉛筆を使い分け、細かい部分には極細の線を、大きな部分には幅のある線を使用します。

表現の豊かさ

 上級者の鉛筆画やデッサンでは、ただ細部を正確に描くだけでなく、その表現に豊かさを加えることも大切です。

 あなたが、複数のモチーフを一つの画面に収める場合には、その中の主役と準主役を決めて細密描写を施し、それ以外の脇役などには、「意識的に手を抜く」ことも必要です。そうすることによって、主役や準主役が引き立ちます。

 脇役を細密描写しないか、あるいは、脇役のモチーフのハイライトを抑えて描くことによっても、主役や準主役が引き立ちます。

 あなたの描こうとしている、モチーフ及び構図や構成によって、あなた自身の感動を観てくださる人に伝える努力が必要なのです。

 構図や構成を取り入れることなく、全部のモチーフを細密に描き、ハイライトの調整もしないとなると、「何を言いたいのか分からない作品」になってしまいます。

 特に、細かい模様や柄のあるモチーフをしっかり描いてしまうと、観てくださる人の視線をその部分に集めてしまいますので、それが脇役の特長だったとすると、主役や準主役へ視線を集めにくくなることを記憶しておきましょう。

 逆に、主役に、細かい模様や柄のあるモチーフを細密に描き込むことは理想的であるとも言えます。このように、テクニックの足し算引き算も考えて制作していきましょう。

総合的な構成とバランス

 主役や準主役の細部の描写に集中する一方で、作品全体の構成とバランスを見失わないように注意が必要です。全体の調和を保ちながら、あなたの強調したいところへ視線が集まるように構成することが、上級者デッサンの鍵です。

 また、観てくださる人の導線暗示は必用なことであり、それを実現するためにも構図を学び、観てくださる人の視線を誘導するためにも、斜線や導線を暗示するレイアウトが必要であり、「抜け」の活用も必要になります。

 これらのテクニックについても、前掲の関連記事である「鉛筆画・デッサンで初心者から中級者まで必見!複合した構図で心象風景を描く方法Ⅱ」を参照してください。

鉛筆画やデッサンにおける頻出問題とその解決策

第2回個展出品作品 蕨市教育委員会教育長賞 1999 F30 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画やデッサンを学ぶ過程で、多くのアーティストが共通の問題に直面します。

 ここでは、これらの一般的な問題を特定し、それぞれに対する効果的な解決策を提供します。これらのヒントを活用して、鉛筆画やデッサンの技術を向上させましょう。

不均一なシェーディング

 不均一なシェーディング(陰影技法)は、鉛筆の筆圧を一貫して保つことが難しいために発生します。この問題を解決するためには、優しいタッチから始めて徐々に筆圧を加える練習をすることが必要です。

 また、異なる硬度の鉛筆を使い分けることで、より滑らかなグラデーション(階調)を生み出すこともできます。

国画会展 入選作品 誕生2001-Ⅱ F80 鉛筆画 中山眞治

比率とプロポーションの誤り

 モチーフの比率や、割合が正しくないことは一般的な問題です。この問題に対処するには、基本的な形(円、四角形、三角形など)から始めて、モチーフを単純化し、基本形から始めることが効果的です。

 また、モチーフをより小さな部分に分けて観察し、全体の割合を確認しながら進めることが役立ちます。

 下の画像では、人の腕や足を円筒形の単純化した形から始めていますし、さらに、その下の画像では、反り返った平板な形のような形で、人の上体の基本形状を捉えています。

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 三澤寛志 氏

線の過度な使用

 デッサンにおいて、輪郭線などを過度に描き込み過ぎてしまうと、作品が硬く、生命感に欠けるように見えることがあります。

 この問題を避けるためには、線ではなく形と光と影を使ってモチーフを定義する練習をすることが重要です。陰影技法を活用して形を表現し、線の使用を最小限に抑えましょう。

 ここで、どうしてもモチーフの輪郭線を改めて描き込む必要がある際などでは、2段階落としたトーンの鉛筆を使いましょう。例えば、それまでにBを使っていたとしたら、Hの鉛筆で優しく輪郭線を描き込むということです。

光と影の不正確さ

 光と影を正確に描写することは、写実を追求する上で欠かせません。光源の位置を常に意識し、それに応じてモチーフの陰影を描くことが必要です。

 実際のモチーフを観察し、光がどのように影響するかを理解することで、より写実的な鉛筆画やデッサンが可能になります。

 この光と影の不正確さの原因の一つには、外(窓)からの陽光を頼りにして描いている場合に、太陽が動いていくことによる陰影の変化があげられます。

 このような場合には、陰影を入れる際には、夜の室内の照明でできた陰影を入れるとか、あなたのデスク上の蛍光灯を使い、モチーフに光を斜め上からあてて、室内の照明を消して、制作するという手もあります。

 筆者の場合には、室内の照明を消し、スポットライトをあてて、制作した作品もあります。この時は、擬人化した傘を描いていましたが、パイプハンガーに釣り用の透明なテグス(釣り糸)を使って傘を吊り、制作しました。下の作品がそうです。

 あなたが、何とかしてモチーフや、その正確な影までも描きたいと願うのであれば、このようにスポットライトや自在に動くデスク上のライトを使えば、魅力的な影までも含めた作品を制作できます。

      第1回個展出品作品 男と女 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

練習不足

 多くの一般的な問題は、単純に練習不足によるものです。技術を向上させるためには、定期的かつ継続的に練習を続けることが不可欠です。

 毎日少しでも時間を割いてデッサンを行い、さまざまな対象物やテクニックに挑戦することで、徐々に問題を克服し、スキルを向上させることができます。

 これらの頻出問題と解決策を理解し、適用することで、あなたの鉛筆画やデッサンの技術は大きく改善されるでしょう。常に学び、成長し続けることがアートの旅で最も重要です。

デッサン困難時の対処法

 これは、あまり大きな声では言いたくない話ですが、筆者の場合には、例えば左右対称の、ランプの「ホヤ」やボトルなどの曲線部分の左右や、カップやソーサーの楕円形の左右の輪郭線が、同じように描けない場合にはどうしたらよいのか。

 と、言うことがしばしばあるでしょう。これは、制作を続けていけばやがて描けるようになってきますが、それまでの間は、できるだけあなたのフリーハンドで試行錯誤してもできない場合に、次のようなことも考えてみましょう。

 それには、まず定規を用意して、うまく描けないモチーフに、中心線を縦に薄く描き込みましょう。そして、うまく描けている側の線を中心線から測って、反対側の位置に鉛筆で点を打ちましょう。

 その方法で2~3cm間隔で同じように下へ点を打っていき、最後はその並んだ点を結べば描けます。尚、この場合、その点は強く打ち込んでしまうと後から消すのに苦労しますので、2Bや3Bの軟らかい鉛筆で、優しく点を打ちましょう。

まとめ

第2回個展出品作品 灯(あかり)の点(とも)る静物 1999 F30 鉛筆画 中山眞治 

 この記事を通じて、初心者から上級者までが、鉛筆画やデッサンの世界で新たな表現方法を発見する手助けになり、あなたが各種展覧会や公募展で入選できるようになることが筆者の願いです。

 この鉛筆画やデッサンに没頭できることによって、あなたの生活の充実した核が形成され、何物にも代えがたい心の支えや、未来に向かっての目標にもなり、プロ画家へのゴールさえ視野に入ってきます。

 今回、筆者が紹介した各種提案は、ただの描写技術を超えて、あなたの創造力とアートへの取り組みを深められるでしょう。構想を練ることが、あなた独自のオリジナリティーの形成に役立つことも理解していただけたと思います。

 鉛筆画やデッサンは、単なる描画技術を超えた、深い感情や内面世界を表現するための強力なツールにもなります。

 この記事では、鉛筆デッサンの基本から高度な技術、さらには内面世界を表現するアイデアやインスピレーションに至るまで、幅広いテーマを取り上げました。

 基本的な鉛筆の持ち方や線の引き方から始まり、シェーディングや陰影を使ってリアリティを出す方法、そしてパースペクティブと構図の高度な理解に至るまで、鉛筆画やデッサンの技術は多岐にわたります。

 また、心象風景や内面の感情を表現する際には、個々のアーティストの独自の視点や創造性が重要となり、これらを支える豊富なアイデアとインスピレーションが不可欠です。

 鉛筆画やデッサンにおける頻出問題と、その解決策を理解することで、アーティストは自身の作品に対する課題を克服し、技術を磨くことができます。

 この記事全体を通して、鉛筆画やデッサンの奥深さと、アートを通じて内面を探求するプロセスの豊かさを強調しました。

 尚、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。

 それは、あなたの制作する画面全体を使って、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事も参照してください。

関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは?

 ではまた!あなたの未来を応援しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました