アーティスト必見!鉛筆選択の秘訣と硬度の活用法

鉛筆画の道具

 どうも。私は、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

 さて、この記事では、鉛筆の硬度とそれぞれの使用シーンについて掘り下げ、アーティストが直面するさまざまな描画課題に対し、適切な鉛筆の硬度を選ぶ方法を解説します。

 繊細な細部から大胆な陰影技法まで、各シーンに最適な鉛筆の選び方を提案します。初心者から上級者まで、すべてのレベルのアーティストに役立つ情報満載のガイドです。

 それでは、早速見ていきましょう!

鉛筆の硬度とは?基本的な理解

出典画像:リアル絵・デッサンの鉛筆の持ちかた リアル絵の描き方 リアル絵・デッサンの鉛筆の持ちかた | 3度見される絵を描こう~リアル絵の描き方 (realdrawing.jp)

鉛筆の硬度の範囲と分類

 鉛筆の硬度は、その芯の軟らかさや硬さによって異なります。

 硬度は通常、H(Hard、硬い)とB(Black、黒くて柔らかい)の表示によって分けられ、HBはこの中間を示します。Hシリーズは硬く、細かい線を描くのに適しています。 一方、Bシリーズはより柔らかく、濃い陰影の描画に最適です。

なぜ鉛筆の硬度が重要か

 鉛筆の硬度は、描画の質とスタイルを大きく左右します。硬い鉛筆は、細部や軽いタッチのスケッチに適しており、柔らかい鉛筆は、影や濃い線の表現に優れています。

 鉛筆の硬度の、適切な活用方法を理解することで、アーティストは描きたいものを最適な方法で表現できます。

鉛筆の硬度の選び方

 鉛筆を選ぶ際は、描きたいものと技法を考慮することが重要です。例えば、細かい線を描く場合はHシリーズ、濃い影を描く場合はBシリーズが適しています。また、一般的なスケッチには、Bや2Bがよく使用されます。

 鉛筆の硬度を理解することは、アートを学ぶ上で基本的かつ重要な要素です。それぞれの硬度が持つ特性を把握し、自身の作品や技法に最適な鉛筆を選ぶことで、より表現豊かな芸術作品を創り出すことができます。

シーン別:鉛筆硬度の選択法

出典画像:リアル絵・デッサンの鉛筆の持ちかた リアル絵の描き方 リアル絵・デッサンの鉛筆の持ちかた | 3度見される絵を描こう~リアル絵の描き方 (realdrawing.jp)

 鉛筆の硬度を選ぶ際、その使用シーンを考慮することが重要です。異なる芸術表現や描画技術によって、最適な鉛筆の硬度は変わります。本章では、異なるシーンに合わせた鉛筆の硬度の選び方を探求します。

細かい線や細密な描画のための鉛筆

 細部や細密な描画が必要な場合、硬い鉛筆が最適です。Hから4Hまでの範囲の鉛筆は、細かい線や細部の描画に最適で、クリアで繊細な線を得られます。これらは、細密画や建築物のスケッチに特に適しています。

 ただし、H系の鉛筆は硬いので、スケッチブックや紙の表面に筆圧をかけると、ヘコミができますので、修整をする場合には、そのヘコミが消せないことにもなりかねませんので、描き始めは優しいタッチで取り扱う必要があります。

 しかし、画面にヘコミができた場合でも、鉛筆状の砂消しゴム「MULTILITH ERASER 40-2547」などであれば、そのスケッチブックの画面上のヘコミさえもこそぎおとすことができます。

 ただし、そのこそぎ落とした後へ鉛筆を乗せると風合いが若干変化しますので、それほど筆圧をかけないで、細密な描写と修整をしていきながら、修整が必要なくなるほどの状態になれば、改めて筆圧をかけて仕上げに向かうと考えればよいわけです。

肖像画や写実的な描画のための鉛筆

     第1回個展出品作品 金剛力士像「吽形」 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 肖像画や写実を追求する作品には、Bから4Bまでの範囲の鉛筆が適しています。これらの柔らかい鉛筆は、濃い陰影技法や豊かなトーンを生み出すのに理想的で、肖像画や写実的な描画において深みと表現力を提供します。

 上の制作例では、最終的に顔の向かって右側・脇の下・衣服のヒダの部分などの、一番濃いトーンは8Bを使って仕上げています。

一般的なスケッチや日常の描画

 一般的なスケッチや日常的な描画には、Bや2Bの鉛筆が適しています。これらは中程度の硬度を持ち、多様なシーンに柔軟に対応できます。Bはバランスの取れた線質を得られ、2Bは少し濃い線や陰影技法に適しています。

細密描写における鉛筆の選び方

出典画像:リアル絵・デッサンの鉛筆の持ちかた リアル絵の描き方 リアル絵・デッサンの鉛筆の持ちかた | 3度見される絵を描こう~リアル絵の描き方 (realdrawing.jp)

 細密描写では、鉛筆の選択が作品細部の表現に大きく影響します。本章では、細部を豊かに表現するための、鉛筆選択の知識と技術を提供します。

精密な細部の描画のための硬い鉛筆

      第1回個展出品作品 昼下がりの桟橋 1996 F10 鉛筆画 中山眞治 

 精密な細部の描画には、Hから6Hの範囲の硬い鉛筆が最適です。これらの鉛筆は、細い線を鮮明に描くことができるので、細部の精度を高められます。特に植物の細かい葉脈や建築物の繊細な線に適しています。

 上の制作例の、クルーザーの本体やガラス窓にも、H~6Hまでの鉛筆を使っています。フロントガラス(6H)が、光を受けて反射しているように見える効果を得られました。

中程度の細密描写に適した中硬度の鉛筆

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高沢哲明 氏 

 中程度の細密描写には、F(※)からHBの範囲の中硬度の鉛筆が適しています。上の画像の「木綿」や「薄手の生地」などの描写に適合します。

 この鉛筆は、細かさと濃淡のバランスが良く、中程度の細部や微妙な陰影技法に最適です。例えば、人物の表情の細かい変化や、服のしわなどに有効です。

※ Fとは、HとHBの中間の濃度・硬度の鉛筆です。手持ちにない場合には、Hで代用しましょう。

複合細部における複数の硬度の鉛筆を使用

     第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅠ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 複雑な細密描写には、異なる硬度の鉛筆を組み合わせることが有効です。例えば、基本的な輪郭にはBを、細部にはHシリーズを使用することで、作品に深みと写実性をもたらします。

 この技法は、自然の風景や動物の毛並みなど、多様な質感を持つ対象に特に有効です。上の制作例では、耳の中や画面右下の毛並みの影などへは6Bを使っていますが、それ以外にはHから4Bまでを用いています。

 尚、あごの下の毛並みの部分は、一旦Hの縦横斜めのクロスハッチングで面を埋め、そこへ「練り消しゴムを練って先端を鋭くした状態」にして、毛並みを描き込み、その後、あご下の影を入れて仕上げています。

陰影技法と鉛筆の硬度

出典画像:リアル絵・デッサンの鉛筆の持ちかた リアル絵の描き方 リアル絵・デッサンの鉛筆の持ちかた | 3度見される絵を描こう~リアル絵の描き方 (realdrawing.jp)

 陰影技法は、アート作品に深みと次元を与える重要な技法です。本章では、陰影技法を行う際に最適な鉛筆の硬度を選ぶ方法について解説します。

柔らかい鉛筆による豊かな陰影技法

          第1回個展出品作品 夜の屋根 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 深く豊かな陰影を作り出すためには、Bから8Bまでの柔らかい鉛筆が最適です。これらの鉛筆は、濃い色調や滑らかな階調(グラデーション)を生み出すことができ、特に肖像画や自然の風景において効果的です。

 6Bや8Bの鉛筆は、特に深みのある影を表現するのに適しています。上の制作例の画面一番手前の濃いトーンや、画面中央部の建物の屋根の影の部分には8Bを使っています。

 それ以外の配色には、遠くへ行くにしたがってトーンを弱めていくことで、空気遠近法が使えます。また、画面中央の建物に、画面左下から投映されている光を表現して、作品に深みを持たせ、その背景にある窓に乱反射を加えて味を出しています。

 また、制作例では、遠くの場所にある明かりも加えることで、奥行きや余韻を出すことも試みています。

硬い鉛筆を使用した細密な陰影技法

反射 2018 F1 鉛筆画 中山眞治

 細かい質感や、繊細な階調(グラデーション)を表現するには、Hから4Hの範囲の硬い鉛筆が有効です。

 これらの鉛筆は、細かく制御された陰影技法に適しており、建築物の表面や細かい質感を描く際に役立ちます。また、光の反射や輝きを描く際にも使用されます。

 上の制作例では、室内の照明をスプーンが受けて、卵へ反射しているという、一風変わった趣の作品に仕上げることができました。床面の模様以外は、全てH~3Hで仕上げています。

バランスの良い陰影技法のための中硬度鉛筆

坂のある風景 2019 F1 鉛筆画 中山眞治

 バランスの良い陰影技法を求める場合、HBから2Bの範囲の中硬度の鉛筆が適しています。

 これらの鉛筆は、柔らかさと硬さのバランスが取れており、多目的に使用できます。特に日常的なスケッチやさまざまな質感を持つ対象に有効です。

 上の制作例は、西日を受けた風景画ですが、HB・B・2Bの3種類をメインにして仕上げています。

鉛筆選択のコツ:アーティストの視点

 アーティストが鉛筆を選ぶ際には、作品の意図と個人的な描画スタイルを考慮する必要があります。本章では、アーティストの視点から鉛筆選択のコツを探ります。

自己表現を高める鉛筆の選択

 アーティストにとって、鉛筆は自己表現のツールです。あなたのスタイルや表現したい感情に合わせて、適切な硬度の鉛筆を選ぶことが重要です。

 例えば、感情的で力強い作品には柔らかい鉛筆が、緻密で繊細な作品には硬い鉛筆が適しています。

個性を反映する鉛筆の使い分け

      第2回個展出品作品 ランプのある静物 2000 F50 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆の使い分けは、アーティストの個性を反映します。異なる硬度の鉛筆を使い分けることで、作品に独自の質感や深みを与えることができます。

 複数の硬度を組み合わせることで、より複雑で表現豊かなアート作品を創り出すことが可能になります。

 上の制作例では、少女の胸像の帽子の中の影には8B・9B、胸像の胸のあたりの肌の部分の一番明るいところには8H、テーブル上は3B、背景の明るいところにはHBをそれぞれ使っています。

 この制作例では、石膏の真っ白な「少女像」を引き立てるために濃いトーンが必要であることと、手前のコーヒーカップの映り込み部分を詳細に描くことで、リアリティーを強調しています。

実験と練習による適切な鉛筆の発見

鉛筆を選ぶ際には実験と練習が必要です

 最適な鉛筆を見つけるには、実験と練習が不可欠です。異なる硬度の鉛筆を試し、それぞれの特性を理解することで、自身のスタイルに最適な鉛筆を見つけることができます。また、練習を重ねることで、鉛筆の扱い方も自然と身につきます。

 尚、鉛筆の使い心地は、メーカーによっても変化します。筆者の印象では、ステッドラーはカリカリとした感触であり、ファーバーカステルと三菱ユニはしっとりとした使い心地で、ステッドラーよりも色が濃く画面に乗せやすい印象です。

 ただし、どこの画材店でも買える鉛筆と考えれば、ステッドラーや三菱ユニがオススメですが、使われるアーティストのそれぞれの感性は異なるので、自身で実験と練習によって、使いやすい鉛筆の、まずはメーカーを見つけましょう。

最初は1社のメーカーの鉛筆で揃えましょう

 尚、いろいろなメーカーの鉛筆を混ぜて使うのも良いのですが、前述のように描き味は若干異なりますので、最初は同じメーカーの鉛筆で使い始めて、徐々にいろいろ試すというような具合がオススメです。

 その際には、当初は2H・H・HB・B・2B・3B・4Bの7種類から始めて、あなたがその先も鉛筆画・デッサンを続けていくことに自信を持てましたら、徐々に幅を広げていくのが良いでしょう。

 ちなみに、鉛筆は10H~12Bまでありますので、下記の関連記事も参照してください。

関連記事:初心者必見!鉛筆画・デッサンで最適な鉛筆の選び方とその特性ガイド

まとめ

 鉛筆は、アーティストにとって最も基本的かつ重要なツールの一つです。その硬度と使用法を理解することは、アート作品の質を高める鍵となります。

 この完全ガイドでは、鉛筆の硬度の基本から、シーン別の選択法、細密描画、陰影技法、そして鉛筆選択のコツまで、幅広い知識を提供します。

 初めに、「鉛筆の硬度とは?基本的な理解」の章で、HからBへの硬度スケールとその特性について解説しました。

 続いて、「シーン別:鉛筆硬度の選択法」では、細密描写から肖像画、一般的なスケッチまで、目的に応じた鉛筆選択のアプローチを提示しました。

 「細密描画における鉛筆の選び方」では、精密な細部に最適な硬い鉛筆から、中程度の細部に適した中硬度の鉛筆の使用法を探りました。

 また、「陰影技法と鉛筆の硬度」の章では、深みのあ陰影技法を実現するための柔らかい鉛筆の利用方法を紹介しました。

 そして、「鉛筆選択のコツ:アーティストの視点」では、自己表現を高めるための鉛筆の選択と、個性を反映するための使い分け方、さらには実験と練習によって最適な鉛筆を見つける方法を探求しました。

 尚、あなたが展覧会や公募展へ出品を希望する際には、ただモチーフを上手に描けるだけでは入選できません。

 それは、あなたの制作する画面全体を使って、作品全体を魅力的な構成にする必要があるのです。その内容について興味のある人は、次の関連記事も参照してください。

関連記事:鉛筆画・デッサンの魅力を最大限に引き出す!構図導入の必要性と方法とは?

 ではまた!あなたの未来を応援しています。

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